「お前、外来人か?」
「……はい?」
金髪に黒い服を着た女の子が訳の分からない言葉を聞いてくる。多分、名詞なんだろうけど。
「外来人っていうのは、外の世界から幻想郷にやってきた人間を言うのよ」
「…………へ?幻想郷?」
またもや『わけがわからないよ』って言いたくなるような言葉が使われる。
「幻想郷っていうのはな、簡単に言うとこの世界だ!」
「…………だいたい分かりました」
「いや分かっちゃいけないでしょ。幻想郷っていうのは──」
霊夢がゲンソウキョウについて説明してくる。大結界がどーのこーのとか博麗の巫女がどーのこーのっていう内容だったが。
「──というところよ」
「幻想郷ってどんな字で書くの?」
「幻、想う、郷で幻想郷だ」
幻想郷……霊夢の話では、忘れ去られた者たちの最後の楽園、だったな。
「というか、あなたはなんて名前なの?」
「私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ!」
マリサ、あまり聞きなれない名前だな……。その辺も流石幻想郷って感じだ。魔法使いって言うのは、魔女見習いとかそんな感じか?
「お前は?なんて名前なのぜ?」
「夜桜円香。円かに香るって書いて、円香」
「円香、だな!覚えたのぜ!」
今回は間違えずに言えた……。
その夜、霊夢が厠──トイレのこと。昼間に教えてもらった──に行っている間、謎の女性がやってきた。
「円香ちゃん」
「!?」
俺は慌てて振り向いた。両端にリボンのついた、裂け目みたいな形で、内部には人の目が大量にある、悪趣味なモノから上半身を出した金髪の女性がこちらを向いていた。こわい。
「いや、真くんの方がよかったかしら?」
「……何の用ですか」
俺は金髪の女性をキッと睨みつける。だって、もう真の身体ではないから。
「やだ、そんなに怒らなくてもいいじゃない?私は“貴女”に話があるんだから」
金髪の女性は若干支離滅裂なセリフを吐いて、真剣な表情に戻る。
「貴女、どうやって幻想郷に入ってきたの?」
数秒間、沈黙する。早く霊夢が戻ってくるように願いながら、言葉を絞り出す。
「………………分かりません」
「分からない、ねぇ…………。私は外の世界……貴女が住んでいた場所を指すんだけど、そこから時折、この“スキマ“を使って神隠しをするのよ」
「は、はぁ……」
「でも、貴女は神隠しで入ってきていない。しかも、外の世界で死亡した」
やっぱり死んだんだ……。
「そして何よりも、性別が変わっている。だから、貴女が不思議でしょうがないのよ」
「はぁ……。あっ、生姜ならありますよ」
「そういうことを言いたいんじゃなくて……貴女が性転換している事を、無闇に他人に言わないでほしいの」
大体理由は想像がつく。
「幻想郷に混乱を招くから」
金髪の女性はそう言うと、頷く暇も与えず、裂け目──スキマと言ったか、その中へと消えていく。
その後すぐに、霊夢が厠から戻ってきた。
「どうしたの、そんな顔して……」
「……なんでもない」
昼間、言い間違いを誤魔化したときよりも重い声で表情と──落ち込んだ気分を誤魔化す。
金髪の女性に言われた事が脳内で反芻する。あっ、名前聞いてない……。
その日は風呂に入ってすぐに寝ることにした。ワンピースから中に履いていたドロワーズまで洗ってくれるらしい。
今は霊夢の優しさに惚れつつ、ゆっくりと眠りにつこうとしている……。
─続く─
主人公が分からない言葉はセリフ上では漢字で書きます。地の文ではカタカナかひらがな
魔理沙と紫の口調微妙
次回は能力発覚すると思います