翌日。服はあのワンピース一つしか無いので、霊夢の私服を借りている。
朝食を食べている間、霊夢が話し始めた。
「円香にも、程度の能力ってあるのかしら」
「程度の能力?」
また、未知の言語。程度、とは?
「この幻想郷にいる多くの妖怪や神が持つ力。時々、人間が能力に覚醒することもあるわ。私は『空を飛ぶ程度の能力』を持っているの」
空を飛ぶ……マリサさんのを見た後だと普通に思えてくる。いや、人間が空を飛ぶなんて、不思議でありえないことなんだけどな。
「後、『程度の能力』を使用した決闘法、『弾幕ごっこ』についても言っておきましょうか。弾幕ごっこは──」
「──と言うものよ。強さより、美しさが重視されるわ」
「ほえぇ……おr私もできるのかな」
俺っていいかけてしまった……覚えないと……。
「霊力か魔力があったらね」
前世でよくファンタジーもののゲームをしていたからか、魔力は大体わかる。霊力も、霊夢みたいな巫女さんが使うものだって言うのは大体想像がつく。
昼間。縁側でくつろいでいると、手に葉っぱが集まってきた。今は初夏だから青々しい。
「ふぇ?」
いや、さっきまで冷静だったが、こんなこと普通じゃありえない。葉っぱが一人でに、しかも自分の手に集まってくるなんて。
「れーいむー!!ちょっとこっち来てー!!」
葉っぱを手から外そうとするも、むしろもう片方の手にもくっついてしまう。
「なーにー?……ってわっ、何それ」
「手から離れないのー……」
「一旦手から力を抜いてみなさい」
すぅ……はぁ……と深呼吸をして、手から力を抜いていく。
すると、葉っぱは元あった位置にするするすると戻っていく。
「何、これ……」
今のは霊夢の言葉だ。
「円香ちゃん、能力に覚醒したのね」
「「!!」」
昨日の夜出会った金髪の女性が、昨日と同じ姿勢で話しかけてきた。
「……昨日ぶりですね」
「え、昨日ぶりって、まさか……」
「ええ、そのまさかよ。ちょっとお邪魔させてもらったわ」
「紫……円香は“一応”お客様よ?聞いておくけど、どんな話をしたわけ?」
霊夢は金髪の女性を『ユカリ』と呼んだ。きっと、女性の名字か名前なのだろう。
「あら、それはまだ言えないわ」
「どうして」
「聞き返すけど、どうしてそんなに円香ちゃんのことを聞きたいの?」
「……今聞いているのは、どんな話をしたか、よ」
「……強いて言うなら、円香ちゃんのこの後のこと」
霊夢はユカリさんの言葉を聞いた後、口を閉じて俯いた。言い返す言葉も無いのだろう。
霊夢はそのままとぼとぼと室内に入っていった。
「そうだ、円香ちゃん、貴女に良いものをあげる」
「良いもの?」
俺がそういうと、ユカリさんは宝石を手に載せてきた。
これは……聞いたことがある、というか、模造品だが学校に見せびらかしに来てたブルジョワ女子の話で聞いた。
これは『シャンパンガーネット』だと。
「シャンパンガーネット……?」
「あら、知ってたのね。そうよ。それに、これは本物よ」
……この人は心でも読めるのか?
それはさておき、宝石の説明でもしようか。
色は円香の髪の色と同じような桜色、大きさは卵くらい。かなり大きい方だと思う。金の飾りで象られている。
「それを持って、魔力を注いでみて」
「ええっと……」
「体じゅうに流れてる妙な感覚を、それに込めるように」
目を閉じて、イメージを練る。魔力を液体だとして、それを宝石というコップに注ぐ感じで……。
カタン
目を開けると、宝石は無くなっていた。その代わり、足元に金色の指輪が落ちていた。
「これは?」
「この宝石は、本当はマジックアイテム。まぁ、お守りみたいなものだけれど」
「瀕死になった時に役立つわ」
瀕死になることなんてあるのか……。
指輪はさっき言った通り、金色の環で出来ている。側面には、さっきの大きかった宝石と同じ色のものが、スパンコールやビーズみたいなサイズになって埋め込まれていた。
それを、中指にはめる。薬指じゃちょっとブカブカだからだ。
無意識に、宝石がある側を掌にしていた。
「似合ってるわね。あっ、そうそう、卵型の宝石に戻す方法なんだけれど」
そういうと、ユカリさんは簡潔に説明してくれた。曰く、魔力をちょっとだけ、例えるならかき氷をスプーンですくったくらいだけ自分の体に戻せば、卵型になるらしい。
試してみた。できた。
少し重いので、すぐに指輪に戻した。
「じゃあ、そういうわk「待って」何?」
「私まだ、あなたの名前聞いてない」
「あ……。私は八雲紫。紫って書いてユカリと読むの」
紫さんか……。いや、カリスマオーラがさっきからどしどし出てるから、紫様か。
「紫様、……ありがとうございます」
「いえいえ、だって……貴女には幻想郷の妖怪たちを救ってもらうんだから」
「え?なんて?」
「なんでもないわ。どういたしまして。それじゃあ、さようなら」
紫様がスキマに入って、消えていく。
待ってましたと言わんばかりに、霊夢が中から出てきた。
「ごめんね、ちょっと気分が悪くて。なんかされなかった?」
「いや、お守りをもらっただけ」
「ん? ちょっと見せて」
「ん」
指輪をつけた左手を霊夢の目の高さまで持っていく。
「指、輪……?」
「そうだよ。形態を変えることもできる」
俺は、霊夢の前で宝石の形態を変えてみせた。
「ふーん……紫が円香にそんなものあげるなんて。絶対何か隠してるわね」
「いや、そんなはずないよ……」
そんなことはないと信じたい。
いつのまにか夕焼けの時間になっていて、幻想郷は真っ赤になっていた。
俺は、指輪をなぞりながら、これからのことを夕飯ができるまで考え続けた──。
─続く─
指輪のくだりやってたらいつもよりかなり長くなってしまった。
でも、普通の物書きさんからしたら少ないんだよなぁ……。