円香がフランに掃除を教える回
「円香、最近あなた部屋掃除してるの?」
紅魔館に来て10日目。よそよそしさ──そんなの元からなかったが──も無くなり、本当の家族のような生活になり始めた頃、咲夜さんにそう言われた。
確かに、ここに来てから全く掃除をしてないような……。
俺は首を力無く横に振った。
「でしょうね。丁度いいから、妹様にも掃除を覚えてもらいましょう。お嬢様は、円香と妹様が『
スール……あぁ、姉妹のことか。あれ、冗談じゃなかったんだな。
「そうと決まれば……あっ、フランにもこの話しないと」
「そうね。今の時間は部屋にいると思うわ」
初めてここに来た時にも降りた階段に、今度は一人で来た。
一段毎にコツッ、コツッと気味の悪い足音が鳴る。最下段を降りて、フランの部屋にまっすぐ行く。そして、固いドアノブを開いて……押した途端、向こう側に引っ張られた。
「……? あっ、円香お姉さまだ。お姉さまの方から来るなんて、珍しいね」
「なんか用?」
「あー、ちょっとね。掃除しなさいって咲夜さんに言われたから、せっかくならフランも誘おうって」
「えー、わたし掃除やだ……」
「掃除できないと、ずっと友達できないままだよ」
フランは初めて会った日からずっと、友達が欲しいと嘆いていた。だがしかし、箱入りすぎて常識──幻想郷では常識に囚われてはいけないとは、誰の言葉だったかな──的な行動も取れないので、外の妖精や妖怪どころか妖精メイドですら仲良くできていない。
だから、掃除とかから常識を学んでほしいと……まぁこれは、フランを掃除に誘う第二の理由なのだが……。予想通り、行きたくないと言いだした。だから、今『友達』を切り札に出した。
「むぅ……本当に友達ができるなら、行くよ……」
よし。これで第一のミッションはクリアだ。
「あら、遅かったわね」
「うるさいやい。文句ならフランに言ってね」
「なんでさー……」
そんな他愛ない会話をしながら、私の部屋へ……。……!?今、俺、私って言ったか!?味覚に引き続き、とうとう脳内まで身体に侵食され始めたか……!?心の中は男のままでありたかったが……。
「ケホッ、ケホッ」
俺の部屋に入るなり、フランは咳をし始めた。
「うーん……ちょっと埃っぽいわね……。窓、開けるわよ」
「どーぞ」
「円香は雑巾、妹様は箒とはたき、あとはちりとりね」
咲夜さんから掃除用具を貰って、掃除を始める。
あとは窓拭き……。と思っていたら。
ガシャン!!
と大きな音を立てて、バケツが倒れ、水が溢れてしまった。原因はフランが足で蹴ってしまったせいらしい。
「ごめんなさい……」
フランはちょっと目を逸らしながら私……俺に謝ってくる。
俺は手をフランの頭の上にかざす。叩かれるとでも思ったのか、目尻が震えている。
そしてその手を頭に乗せ、そっと撫でる。
「大丈夫だよ。さっ、掃除掃除」
「怒って、ない……?」
「大丈夫大丈夫」
30分後。トータル1時間くらいかかって、掃除を大体終わらせることができた。
「うん、合格ですね」
咲夜さんが微笑む。例の溢した場所にはタオルを敷いている。
「やったよお姉さま!合格だって!」
「うん、聞いた聞いた!」
フランが抱きついてくる。円香の細い体は少しよろめいたけど、なんとか体勢を戻して抱き上げる。
咲夜さんは……鼻血をハンカチで抑えていた。
「あはは、お姉さま、変な顔ー」
咲夜さんを見ていたら、いつのまにか変な顔になっていたらしい。フランが姿見を持ってきたことで気づいた。
「ぷっ、ふふふ……」
その自分の顔に笑ってしまう。はしたない笑いをしようとしてる顔を無理に普通に戻そうとして、結果的にわけのわからん顔になっていた。
まぁ、一件落着……?なのかー?
─続く─
終盤見ててニヤニヤが止まらなかった