結論からいえば、あの戦いは本当に最後の試練だったようだ。
あかねとれいのドッキングによって、ラスボスことカラスを撃破した結果。
ご褒美とばかりになにもかもが元通りになった。
そう、なにもかも。
***
白い吐息が、灰色の空に溶けていく。
ブルーアイランドの住宅街、学校へ続く道をあおいはひとりで歩いていた。
制服は冬服になり、上にはダッフルコートを着て、首にはマフラーを巻いている。
そこにうしろから声をかけられてふりむく。ダウナーな声。
「おはよ、あおい」
「おはよう、ひまわりちゃん。今朝ははやいんだね」
「なんか目がさえちゃって」
ひまわりはあおいと同じく、冬服の上にダッフルコートを着ていた。
首元に巻いているマフラーをみて、つとあおいは目をそらす。
ふいに、ひまわりが不思議そうな声を出した。
「あおい。あかねはいっしょじゃないの?」
いつもあおいといっしょに登校している、一色兄妹の不在に気がついたようだ。
「なにかあったのか」と言外に問いかけるひまわりに、あおいは答える。
「バイトで遅刻するかもしれないから、先に行っててほしいって」
朝。あおいのケータイに連絡が入ったのだ。
母は退院し、祖父も研究者として復帰。もうバイトをしなくてもよくなったはずが、あかねは未だバイトを続けている。『ほかにやることもないしね』ということらしい。さすがに数は減らしたが、朝の配達は今も続けているバイトのひとつだった。ひまわりは眉をしかめる。
「めずらしい」
「そうだね」
うなずくあおい。転校初日を除き、あかねがバイトで遅くなったことはなかった。ケータイ越しに聞いた声は元気だったので、事故や厄介なトラブルに巻き込まれたわけではないようだが。
とあおいが話したところで、ひまわりはこころなしほっとした様子で続ける。
「ももは……そっか、修学旅行だっけ」
「うん、いまごろは飛行機で北海道にむかってるところじゃないかな?」
2泊3日の修学旅行。小樽でスキーをやったりするそうだ。
どちらともなく肩を並べて歩き出すふたり。
「きょうは冷えるね、ひまわりちゃん」
「こっちで暮らしてから、ダッフルコートなんてはじめて着た」
「ひまわりちゃんはちゃんちゃんこ派だもんね」
「いや、そういうことじゃないから……って、わかっていってるでしょ?」
口元にそっと右手を当て、「うふふ」と品よくほほ笑むあおい。
「あらあら。ひまわりさんったら失礼ですわ。そんなことあるわけないでしょう? お嬢さまキャラはいつだって天然ですのよ」
完璧なお嬢さまスマイルに、ひまわりはいつも通りダウナーな視線を向ける。
「あおいのいう天然って、総天然色だよね」
「その心は?」
「どちらも作りものでしょう」
「いまどきの女子中学生は総天然色なんて言葉しらないよ」
「あたしもあおいがわかるとは思わなかった」
じゃれあいながら歩くふたりだが、いつもより口数はすくなかった。
慣れない寒さがあおいたちの唇を重くしていたのだ。
ひまわりが少しずり落ちたマフラーを口元まであげようとして、ふいにつぶやく。
「人間ってぜいたくだよね」
「なにが?」
「どんなにハッピーエンドでも、それでも『なんかちがう』っておもうの」
どこか遠くをみつめるひまわり、あおいは目を伏せる。
「……そうだね」
本当に、なにもかもが元通りになった。撃墜された戦闘機も。破壊された建造物も。死んでいった人々も。滅んだ世界も。みーんな元通り。これ以上ないってくらい文句なしにハッピーエンドで、誰も傷つかない最高の結末だというのに。だけど――なんかちがう。
「ほんとうにぜいたくだよね」
あおいはつぶやく。
なにもかも元通りになって――黒騎れいという目の上のたんこぶも消えたのに。
どうしてか、それを喜べない自分がいた。
「ほんとうに……、ぜいたく」
***
3ヶ月前。カラスとの戦いが終結した直後。
示現エンジンの屋上で、あかねと合流したあおいたちは、れいと相対していた。
れいのすぐ後ろには、元いた世界に通じているという扉がある。
「ごめんなさい、一色さん」
そういってあかねに頭を下げるれい。
ドッキングしたからだろうか、あかねはすぐに理由が思い当たったらしい。
「いいよ黒騎さん、あの夜のことなら気にしないで」
「でも……」
うつむくれいに、あかねは「そうだ」となにか思いついた様子で口を開く。
「じゃあ、黒騎さんのことを下の名前でよんでいいかな?」
「……下の名前で?」
「うん」
「……そんなことでいいの?」
「それじゃあ、黒騎さんもオレを下の名前でよぶこと。これで手打ちってことで、ね?」
逡巡して、れいはおずおずと口を開く。
「……あかね」
「なにかな、れいちゃん?」
やさしげにほほ笑むあかね。頬を染めるれい。その様子をじーっとみつめるあおい。
視線に気づいたのか、はっとした表情を浮かべるれい。
こころなし気まずげに目を泳がせると、今度はあかねにお礼をいう。
「……いろいろありがとう、あかね」
次はあおいたちに目を向ける。
「二葉さん、三枝さん、四宮さんも、その……」
「わたしも下の名前でいいよ、れいちゃん」
にわかに目を見開くれい。
あおいの言葉が意外だったようだが、あかねが下の名前で呼ばせたのならそれに倣うだけだ。わかばとひまわりも追従する。
「わたしもだよ! れいちゃん!」
「あたしも呼び捨てでいいから、れい」
「……あおい、わかば、ひまわり、みんなもいろいろありがとう」
そういってから伏し目がちになるれい。やがて意を決した様子で顔を上げた。
「あおい」
首に巻いていたマフラーを取ると、両手であおいに差し出す。
「その……。これを、うけとってほしいの」
「……なんで?」
「あのとき助けにきてくれて、ほんとうにうれしかった、だから」
恩返しのつもりか。しかしそれは筋違いだとあおいは口を開く。
「……いったでしょ? あれは」
「それだけじゃない。あおいのおかげで謝ることができたの。だから、うけとって」
なにが『だから』なのか、あおいにはわからなかった。
そもそも好きでもない他人が使い古したマフラーなんか渡されても困る。
あおいのそんな気持ちを察したのだろう、れいはそっと目を伏せた。
「めいわくだとはわかってるわ。でも、お礼がこれくらいしか思い浮かばなくて……」
そんなものは自己満足もいいところだ。要らないものはいらない。
断ろうとして。れいの切実な目。あおいは口を開く。
「……もらっても、つかわないとおもうよ?」
あおいの言葉をうけ、顔をにわかに輝かせるれい。
「かまわないわ」
「……それなら、うけとるけど」
マフラーを両手で受け取るあおい。
れいはほっとした表情を浮かべると、あおいたちの顔を見回す。
「みんな、ほんとうにありがとう……さようなら」
そういって最後に一礼すると、れいは扉を開こうとあおいたちに背を向ける。
一瞬みえた横顔がさびしげに揺れていて、あおいは声をかけた。
「ちがうでしょ」
「え?」
おもわずといった様子で振り返ったれいに、あおいは不機嫌そうに続ける。
これでおわりだなんて冗談じゃなかった。劇的な勝利の末、別離。こんなドラマチックな幕引きじゃ、それこそあかねの心にいつまでも残り続けてしまうではないか。だから。
「またね、だよ」
おわりになんかしてやらない。ひまわりもまた、むすっと続く。
「こんな中途半端なおわり方、ゆるさないから。またね」
わかばも苦笑しながら、ふたりに続いた。
「ふたりとも素直じゃないっていうか、素直すぎるっていうか……まあ、そういうことだからさ。またね」
そして最後にあかね。みんなを代表するように。
「またね、れいちゃん」
口を開けてぽかんとしているれい。ぽろぽろと、両目から涙が流れ落ちるのがみえた。うつむいて両手でぬぐうが、ぬぐってもぬぐっても、れいの涙は止まる気配がない。それでも顔をあげて、涙でぐっしょり頬を濡らしながら、あおいたちに精一杯の笑顔をむける。
「またね、みんな……!」
それっきり、れいは扉の向こうに消えていった。
***
左手でマフラーに触れていたことに気がついて、そっと手を離すあおい。
その直後だった。
「ひまわりちゃーん!」ダキツキ
「ひゃあ!?」
かわいらしい悲鳴。何事かと隣をみれば、緑髪の変質者が背後からひまわりに抱きついていた。ウェーブのかかった髪の毛に顔を押し付けながら、スンスンにおいを嗅いでいる。
「いいにおいだね……。シャンプーはなにをつかってるのかな?」スンスン
「や、やめ……」ゾワワ
ひまわりは変質者から逃れるべく首を横に動かしたものの、そのまま首筋をスンスンされてもはや涙目だ。これはまずい! あおいは友を救うべく両手でカバンを振り上げる。
「ひまわりちゃんから離れて! この変質者!」
「え? あおいちゃん、わたし……」
「もんどうむよう!」
あおいの一撃が、緑髪の変質者の顔にクリーンヒットした。
「ぐえっ!」
バターンとあおむけにたおれる緑髪の変質者。
あおいはすかさず、ひまわりをかばうように抱き寄せた。
「ひまわりちゃん!」
「あ、あおい……」
胸元のひまわりは涙目で小動物のようにふるえていた。
すがるようにあおいに抱きついている。
「『ひゃあ』って、ひまわりちゃんのあんな声、はじめて聞いたよ」
「あたしもあんな声、はじめて出したよ……」
あおいはひまわりを背中に回すと、路上でひっくり返る緑髪の不審者を鋭く一瞥する。
「で、なにか釈明することはある? わかばちゃん」
「人はね、太陽がなければ生きていけないんだよ、あおいちゃん」
「……ごめんなさい。よくわからないんだけど」
「空に太陽がなければ、地上の太陽に惹かれてしまうのは必然だとおもわない?」
スクッと立ち上がるわかば。その際やたら艶やかな流し目を送られ、背後のひまわりが喉の奥で「ひぃ」と小さく悲鳴をあげた。トラウマにならなければいいが。とまれ、ひまわりはわかばにとって太陽らしい。「もちろんあおいちゃんもだよ」とわかば。ひぃ。
わかばは少し腫れた鼻をさすりさすり、ぶーたれる。
「でもひどいよふたりとも、単なるスキンシップだったのに」
「「わかば(ちゃん)だとシャレになってないの!」」
ふたりのツッコミにてへぺろするわかば。こいつ――わかってやってやがる! あんまりにもあおいたちが警戒しすぎたせいか、どうも最近はいろいろ開き直って持ちネタ化していたりする。あおいはため息をつくと、わかばに問いかける。
「それで、今日はどうしたの? 朝練の時間じゃないの?」
「きょうは休みだったんだ。ほら、天気予報でさ」
「あ、そっか。あけがたから雪がふるって話だったね」
「うん、それで。でも、けっきょく今朝はふらなかったんだよね。雪」
大島では十数年ぶりの大雪になると、ニュースで気象予報士がいっていたことをあおいは思い出す。もっとも、この寒さならいつ降りだしてもおかしくはないと思うが。ひとりだけ冬服の上に何も着ていないわかばは、両手を腰に当てて暑苦しく口を開く。
「もちろん休みのぶんは自主練でフォローしたけどね。いまもほら、家からここまで走ってきたばかりよ!」
いわれてみればたしかに身体から湯気が立っている。朝っぱらからエネルギッシュなわかばに、あおいはこころなし圧倒される気分だった。いつのまにか隣に移動していたひまわりは露骨にげんなりしている。低血圧にこれはキツいだろう。いろんな意味で。
「じゃあ、いこっか!」
わかばにうながされ、今度は3人で肩を並べて歩き出す。
他愛のない会話をしつつ歩いていると、ふいにわかば。
「こうやって3人で登校するのって、そういえば初めてじゃない?」
「そうだね」
相づちを打つあおい。たしかにめずらしい状況だった。わかばは朝練で、ひまわりは朝が苦手だからと、普段はそれぞれ別々に登校している。一方で、あおいといつも登校しているあかねとももは不在。さらには十数年ぶりの大雪。どこかいつもと様子がちがう朝。ぽつりとひまわり。
「こういうのって、漫画とかだとだいたいなにかが起こるフラグだよね」
「現実と漫画はちがうよ、ひまわりちゃん」
「ついさいきんまで、漫画より漫画みたいなことをやってきたのに?」
それをいわれるとあおいはうなずくしかない。女子中学生が鼓笛隊みたいな服を着て怪獣と戦ってたなんて、客観的に考えれば相当に非現実的な話だ。元カワウソ曰く「アローンとの戦闘は最重要機密じゃ! 他言無用じゃぞ!」だそうだが、こんなこと話しても誰も信じないと思う。
「それじゃあ、たとえばなにが起こるとおもう?」
「たとえば――」
わかばの問いかけ、ひまわりが口を開きかけたところに、「おーい」と背後から声。よくうしろから声をかけられる日だとふりむけば、エアバイクに乗ったあかねが手を振っていた。
「みんなー!」
どうやら遅刻は免れたようだ。あおいもまた手を振って応じようと、右手を上げたところで固まった。あかねの後ろに人影。誰かと目を凝らしてみて、見開く。
「よっと」
立ち尽くすあおいたちの手前で、エアバイクを停めるあかね。あかねに促されて、エアバイクから下りる影。黒の長髪。切れ長の瞳。あおいは呆然とその名を呼んだ。
「れい、ちゃん?」
気まずげでいて、でもうれしそうな様子で、おずおずと声を上げるれい。
「その……」
なんでとか、どうしてとか、訊きたいことは山ほどあった。けれど、最初にあおいの口からついて出た言葉は。
「負けないから」
あおいの言葉にぽかんとするれい。すぐに、あおいの首もとを見てはっとなる。なにかをこらえるようにうつむくと、目尻を両手で拭う。次に顔を上げると、綺麗な笑顔を浮かべていた。
「……わたしだって!」
***
いつの間にか雪が降り始めていた。
視線の先、あかねを挟んで火花を散らすどころか、あおいの眼力に押されっぱなしのれいの姿があった。それでも、れいは負けじと懸命に向き合っている。
あかねたちから少し離れたところで、ひまわりは隣に立つわかばに声をかけた。
「たのしそうだね、あおい」
「そうだね。れいちゃんがいなくなって、ずっと塞ぎこんでたからよかったよ」
「れいちゃんも楽しそうだし」と、わかば。いつもどことなくれいに漂っていた翳は、すっかり消え去っている。歳相応の笑顔。
「わかばは、気がついてた?」
「なにかな?」
「あかねが頬をかくのって、あおいがいるときだけなの」
「うん、しってる」
苦笑しながらうなずくわかば。
「最初のころなんか、ドッキングするたびにあおいちゃんとの思い出ばかり流れこんできたっけ。どうしてあれで気づかないんだろうね、ふたりとも」
「あかねはまだおこちゃまなだけ。しかたない」
色恋沙汰よりも、友だちと遊んでいるほうが今はまだ楽しいのだろう。この場合の友だちは自分たちであるというのが、ちょっとフクザツなところだが。
仮に愛の告白をしたところで、『ごめんね。そういうの、まだよくわからないんだ』と、こちらが申し訳ない気持ちになるほど真摯に謝られるのが関の山だろう。
「じゃあ、あおいちゃんは?」
「ただのヘタレ」
バッサリといい切るひまわりに、わかばは頬をひきつらせる。
「て、てきびしいね、ひまわりちゃん」
「事実だからしかたない」
いつもあかねのことばかり考えてるくせに、いざとなると急に及び腰になるのだ。
お昼休み。お弁当のおかずをあかねに「あーん」しようとして、やっぱり自分で食べてしまう姿を何度みたことか。そしてなにより、れいに気を使っていたのだろう。『もどってくるまで勝負はおあずけ』だなんて、バカ正直に考えていたにちがいない。或いは、言い訳か。
「まったくもってヘタレだよ、あおいも……あたしも」
あおいが動かないのであれば、ひまわりからあかねにアプローチすればよかったのだ。しかしここ3ヶ月、いや思えばその前からひまわりはなにもしなかった。わかばは静かにいう。
「それをいったらわたしもだよ、ひまわりちゃん」
結局、ひまわりもわかばも踏み出す勇気がなかった。文字通り心通わせた友人たちと過ごす、ぬるま湯のような日々が心地よくて、それを壊したくなかったのだ。けれど、それも今日でおしまい。"部外者"であるれいがもどってきた以上、自分たちの関係も変わらざるをえない。あおいはもうそのために踏み出している。わかばは、ひまわりに問いかける。
「あかねくんのこと、あきらめる気はないんだよね」
「もちろん」
ふたりは視線を交差させ、口元に笑みを浮かべる。ならば、やることは一つだった。
「それじゃ、いこっか」
「うん」
ひまわりとわかばは、3人に向かって駆けていく。
「あかね!」
「あかねくん!」
そのままあかねの両腕に、左右それぞれ抱きついた。
「……え?」
「な……!?」
ぽかんとするれい。唖然とするあおい。
「ひ、ひまわりちゃん? わかばちゃん?」
いきなり腕に抱きついたふたりに、困惑するあかね。
わかばは左腕に抱きついたまま、笑顔でいう。
「寒いからあったまろうかな、って。あかねくんもあったかいでしょ?」
「たしかにあったかいけど、その……」
チラと右腕のひまわりに視線を向けるあかね。
ひまわりはそ知らぬ顔で問いかける。
「……その?」
「む、むねが……」
「むねが?」
ぐいっと、ひまわりはあかねの右腕に胸を押し付ける。厚着だから効果は薄いかなとおもったが、ほおを赤く染め、言葉に詰まるあかね。あまり自分の身体を武器にするようなマネはしたくないが、今回ばかりは手段を選ぶ気がなかった。なぜならば。
「ね、ねえ、あかねくん。わたしも押しつけてるんだけど」
「え、なにを?」
固まってるわかばはさておき、なぜならば。
「な、な……」
わなないているあおいと、きょとんとしているれいに対して、ひまわりはべえと舌を出す。あたしたちの存在を忘れるな、と。あおいは即座にその意を理解したようだった。深く息を吸い込むと、口元に引きつった笑みを浮かべる。
「上等だよ。ひまわりちゃんも。わかばちゃんも。れいちゃんも。みーんなまとめて、相手してあげるから!」
望むところだった。つまるところ、決め手となるのはあかねの判断だ。タイムリミットはあかねが色気づくまで。おそらくはここ1~2年が勝負になるだろう。それまでに、あかねの心に自分という存在を根付かせてみせる。ひまわりはぎゅっとあかねの腕を抱きしめなおす。このぬくもりを手放す気はなかった。視線を向ければ。笑顔の仮面をかぶることも忘れ、歯噛みしているあおい。
「うぐぐ……」
あおいの様子に気がついたらしく、心配そうに声をかけるあかね。
「あおいちゃん?」
「なんでもないよ、あかねくん!」
にこりと満面の笑みを浮かべるあおい。安心したのかほほ笑むあかね。
むむむと頬をふくらませるひまわり。固まっているわかば。困惑しつつも楽しそうなれい。
かくして、その日がくるまで――二葉あおいは懊悩する。
〆
これにて完結です。ご愛読ありがとうございました。