日本近海から敵勢力を排除して青い海を取り戻し、海軍に破壊された父島の我が鎮守府も妖精さん達の尽力により無事に再建された。
そんな俺達が今真っ先にすべきこと、それは南西諸島海域の攻略である。
なぜなら東南アジアはWW2における重要な資源地帯、つまり深海棲艦の一大補給拠点だからだ。
深海棲艦にとっての補給拠点は、艦娘にとっても補給拠点となり得る。
海上のパワースポットから資源を集めて輸送する遠征任務こそ、無国籍な我が鎮守府を運営するための生命線なのだ。
もっとも日本国に所属していても、海上護衛任務や対潜警戒任務をしたにも関わらず無報酬だったり、むしろ俺達が獲得した資源を上納させられたりと、鎮守府運営にはマイナスでしかなかったが。
「旗艦、阿武隈。以下、曙、潮、漣、朧、瑞穂は南西諸島哨戒を実施、同海域の敵を排除して南西航路の安全を確保せよ!」
「阿武隈、ご期待に応えます!」
「旗艦、北上。以下、日振、大東、千歳、千代田、日進はバシー海峡に展開、防衛体制を強化せよ!」
「まぁ何ですかねー、気楽にいきますかねー」
「旗艦、蒼龍。以下、飛龍、妙高、那智、夕雲、巻雲はオリョール海に進出、敵通商破壊艦隊を排除せよ!」
「第二航空戦隊、出撃! 戦果を期待してね」
「旗艦、赤城。以下、加賀、摩耶、鳥海、時雨、夕立は沖ノ島海域へ出撃、襲来が予想される敵機動部隊を迎撃せよ!」
「加賀さんと私の一航戦の誇り、お見せします!」
俺と同じ繰り返しの時間で力を培った艦娘達は、全員が練度を極めている。
それでも、これだけは言わずにいられない。
「みんな分かっていると思うが、大破進軍だけは絶対に許さん。例え作戦が失敗しても、必ず全員で戻ってこい!」
「はいっ!」
もちろん南西諸島海域の敵勢力など、鎧袖一触だった。
そんなこんなで祝勝会である。
ここは序盤の山場と言ってよい、決定的なターニングポイントなのだ。
それを最短で達成出来たのだから、祝杯のひとつやふたつ当たり前である。
「赤城、見事なMVPだった。3水戦が取ってきたクジラ肉の竜田揚げが出来立てだぞ」
「ありがとうございます、提督。それでは遠慮なく頂きますね」
「提督、私も頂きます」
「加賀も制空権確保への貢献が素晴らしかったぞ。たくさん食べてくれ」
日本と傭兵契約を結んでいるので、復興や外交のための船団護衛の報酬で米や野菜には不自由しない。
しかし小麦や牛肉豚肉などが日本では手に入らないので、宴会料理に欠かせない肉類はもっぱらクジラ肉に頼ることになる。
「いつものパターンだと黄海沿岸とか大陸沿いに無駄な出撃をさせられるから、南西諸島海域の攻略がギリギリなんだよな」
「まるで私達への嫌がらせのように、毎回ギリギリ足りないという微妙なラインなんですよねぇ」
「久しぶりに艦隊機満載で出撃できました。さすがに気分が高揚します」
無表情がデフォルトの加賀から、「ぱぁぁぁ」という擬音が聞こえそうなくらいの幸せオーラが放出されている。
これまでの100回、空母達には本当に不自由を強いてしまった。
「お前達にボーキサイト不足のまま出撃させるなんてこと、今回は絶対にさせないからな」
「補給は大事」
「第一航空戦隊の本当の力、ようやく提督にお見せ出来ますね」
「ああ、これからも期待しているぞ」
赤城と加賀の前に山盛りの竜田揚げが乗った皿を置き、今度は手にビールを持って摩耶と鳥海を労いに行く。
「摩耶の対空射撃のおかげで、味方艦隊には小破すら出なかった。大物に固執せず空母の打ち漏らしを確実に仕留めてくれた鳥海の貢献も大きかった。2人とも、よくやってくれた」
「へへ、対空戦ならこのあたしに任せときな!」
「私の計算通りだったわ。もちろん司令官さんの戦略だから出来たのよ」
今までは補給の問題が大きすぎて戦術どうこう以前の問題だったから、鳥海には特に今回の戦闘が嬉しかったのだろう。
ニコニコしながら俺の腕を取って、興奮気味に戦いの推移を語ってくれた。
「ぽーい! 夕立も頑張ったっぽい! 提督さん、褒めて褒めてー」
「提督、僕はどうだったかな?」
思いがけず鳥海と長話になってしまったため、痺れを切らしたのだろう。
時雨を引き連れた夕立が、俺のお腹に飛び込んできた。
「夕立は相変わらず駆逐艦とは思えない夜戦火力だったな。時雨も期待通り、魚雷で敵旗艦のフラルに止めを刺してくれた。2人ともよく頑張った、偉いぞ」
「うん、ありがとう」
「ぽいぽいぽーい!」
抱きついてきた2人の頭を撫でながら褒める。
補給が軽い駆逐艦は、これまでの繰り返しの中でこの艦隊の主力を担ってきた。
もちろん十分な補給が出来るようになったからといって扱いは変わらない。
特にこれから先の大規模作戦では大事なフィニッシャーなのである。
そもそも大規模作戦とは何か。
通常の海域攻略は国土防衛という意味合いを持つことに対して、大規模作戦は人類の勢力圏拡大を目的とした攻勢である。
深海棲艦は過去に沈んでいった艦の怨念が実体化した存在だ。
だからWW2をなぞるようにして失敗した作戦を完遂し、彼らの無念を晴らし浄化することで深海棲艦の勢力を弱めることが出来る。
つまり大規模作戦を行わずして、人類の未来を守る術はないのだ。
ようやく自分達で戦略を立て、大規模作戦を実施することが出来る。
今度こそみんなで暁の水平線に勝利を刻むのだ!
そのためにも、やるべきことはただひとつ。
俺は資源の備蓄に励むべく、南西諸島海域への遠征計画と艦隊編成に思いを馳せるのであった。
「ハローワールド。南西諸島海域を攻略したぞ。今日は諸君らに我ら艦これ傭兵団の雄姿をお見せしよう。この戦争の終わりは近い(大本営発表)」
年若い男がテレビ画面から消え、代わりに赤い海が映し出される。
死と絶望の色をした海の上を、艤装に身を包んだ乙女達が駆けていく。
彼女達が放つ矢は攻撃機へと姿を変え、その爆撃は容易く敵駆逐艦を沈めていた。
彼女達の砲撃は、威力こそ人類の持つ兵器に劣るが、ほぼ必中で敵にダメージを与えていた。
そして避けられぬはずの敵攻撃を、彼女達は容易く回避していた。
人類が2年をかけて何の戦果も得られなかった深海棲艦との戦闘。
それを特に苦戦する様子もなく勝利し、実にあっさりと海が青い色を取り戻した所で放送が終了した。
「ふむ、艦娘といったか。見た目は人間だが、確かに全く別物だな」
「日本の外交官の話ですと、WW2時代の艦船を名乗る正体不明の存在とのことです、閣下」
「装備も含めて我が国であれらを研究させれば、より強力で機能的なモノが作れるはずだ」
「では向こうの要請通り日本への支援を実施し、その対価として艦娘を我が国に送らせましょう」
海洋国家が著しく地位を落としたため、相対的に大陸国家が力を増した現代。
忌々しい米国は太平洋に隔てられて極東への影響力を失い、アジアは中国の1強体制となっていた。
そのランドパワーが今、艦これ傭兵団に対して牙を剥き始めたのであった。