WW2の時、大日本帝国は東西南北の全方面と敵対していた。
それはすなわち深海棲艦が日本を中心とした全方面に大規模な勢力を誇っており、俺達は各地を転戦して海を取り戻す必要があるということだ。
南西諸島海域のとある島にこっそり泊地を作って集中的な輸送遠征を行い備蓄的な意味で一息つけた俺達は、まず南方海域の敵艦隊前線泊地に殴り込みをかけた。
確保した南西諸島海域の安全強化という意図もあるが、主に今後の大規模作戦に繋げるための第1手である。
この作戦、実は今まで何十回も経験している。
当然とても苦い思い出だ。
なぜなら俺が所属させられていた当時の日本海軍には「各資材2万で十分なのよ」みたいな風潮があったからだ。
そのため俺達が遠征で得た資材は、その大半を上納させられていた。
だからラストダンスですら水雷戦隊を主体に編成し、そこに泊地攻撃に必須である三式弾を装備した重巡洋艦を1人混ぜるのが精いっぱいだったのだ。
しかし今回は十分な資材を準備した上での作戦発動なので、艦隊に戦艦や空母を混ぜることが出来る。
それだけで素晴らしく幸せな気分になれる不思議だね。
研究用とか言われて水上観測機や主砲を徴収されてもいないので、なんと主主観弾での弾着観測も可能なのである!
「勝手は! 榛名が! 許しません!」
「私がいなきゃ話にならないじゃない! って、もう泊地棲姫が沈んでるじゃない!」
「あら。もしかしてぇ、お・わ・り? ……今までの苦労はなんだったのかしら」
もともと装備と補給さえあれば、俺の艦娘達が苦戦するような作戦ではないのだ。
以前から溜まっていたフラストレーションが、一気に晴れていくような気持ちだった。
大規模作戦の前哨戦を終えた俺達は、消費した資材を回復しつつ北方海域の攻略へ乗り出した。
南西諸島ほどではないが、北方海域も資材の宝庫と言ってよい。
しかも激戦区の海域の1つなので、日本の防衛という意味でも放置は出来ない海域である。
日本といえば、最近船団護衛の面々から不穏な情報が度々舞い込んでくる。
どうも船団護衛中やその前後に、乗員の外交官や軍人などから詰問を受けていると言うのだ。
君達は日本の艦船じゃないのか、なぜ俺に従っているのか、日本に所属するべきだと思わないのか、エトセトラ。
これがだんだんエスカレートしてくると、「艦娘は日本国の所有物なのだからこちらに引き渡せ」という艦娘兵器派の出来上がりである。
個人的にはそんな奴らのためになど指一本動かしたくない。
しかし艦娘達の大多数は日本の艦船なので、彼女達の思いを汲むと必然的に日本の防衛には気を使わざるを得ないのだ。
もっともそのために無理をして攻略を急ぐつもりはまったくない。
南西諸島海域の時とは異なり、資材を回復しながらちょっとずつ海域を攻略していった。
北方海域のうち開放済のエリアには既に遠征艦隊を送って北方ネズミ輸送をさせていたのだが、ある日ベールヌイが持って帰ってきた大発の中には油ではなく魚介類がぎっしりと詰まっていた。
彼女は護衛退避なのにおにぎりを食べちゃったりと、クールな外見に反してお茶目な所がある。
まぁ資材に余裕は出来つつあるし、こういう気持ちのゆとりも大切なので、目くじらを立てるつもりはない。
暇してそうな艦娘達を呼んで、海辺で浜焼きパーティーだ。
「北の海は海産物が美味いな」
「ハラショー。こいつはいいな。ウォッカにも合う」
「おい、同志ちっこいの。カニミソばかり狙うな。貴様さてはブルジョワジーか?」
「同志ただいまー、楽しそうなことをやっているね。この空色の巡洋艦も仲間に入れておくれよ」
青い色を取り戻した北洋は、世界でも屈指の高漁場である。
今後も定期的に海産物を持って帰って来てもらおうと思った。
3ヶ月程かけて北方海域の完全攻略に成功したら、ターゲットを南方海域に戻す。
この海域は本当に一筋縄では行かないので、作戦も複数回に分ける必要があるのだ。
今回の作戦では南方海域の強襲偵察を実施する。
作戦域は南方海域へ進出するための海峡入口周辺部。
敵の大型戦艦を始めとする敵戦力が門番のように巡回している要所である。
したがって偵察活動で敵艦隊の集結地を発見して無力化し、大型超弩級戦艦を補足、撃滅するのが本作戦の主眼となる。
この大型超弩級戦艦というのが、とにかく硬い。
うちの最終兵器である時雨が四連装酸素魚雷後期型を3積みしても装甲を抜けないことがザラなのだ。
もちろん敵の取り柄は硬さだけでなく、その馬鹿げた攻撃力も脅威的である。
その砲撃は、無傷のフィニッシャーを余裕で一撃大破させるのだ。
俺はこれから始まる大激戦の予感に、身を震わせるのだった。
「アドミラルよ、ここで余のネルソンタッチは流石にずるいのではないか?」
「久しぶりの実戦でした。大和、嬉しい。提督、感謝です」
「相棒よ、まぁ随伴も嫌いではないが、次こそはこの武蔵に旗艦の指名を頼むぞ!」
いやー、南方棲戦姫は強敵でしたね。
いよいよ南方海域の本命作戦といきたいところだが、その前に後顧の憂いを断つべく西方海域の攻略を行うことにする。
次の大規模作戦は一大決戦となるため、全兵力を集中運用したい。
したがって泊地に置く戦力を最小限まで減らすために、西方海域を開放して南西諸島を安置とする作戦である。
また西方海域の解放は、すなわちシーレーンの回復を意味する。
日本では最近、新聞やテレビを中心に艦娘兵器論が幅を利かせているらしい。
そろそろ日本との軋轢も限界が見えてきたことだし、俺達が手を引いたあと日本が滅亡して艦娘達が罪悪感を抱かぬよう置き土産を残すのも悪くはないだろう。
さて、それでは西方海域の攻略戦を始めようか。
ところで西方海域といえばカレー洋、カレー洋といえばインドカレーである。
俺達艦これ傭兵団も、日本海軍と変わらず金曜カレーが大好きだ。
そもそも俺が好きなカレーとは、実は大きく分けて3種類存在する。
インドやネパールなどの国外のカレーと、日本のカレー。
そしてもう1つは、実家のカレー。
だから間宮に無理を言って厨房を貸してもらい、大好きだった実家のカレーの味を再現しようと試行錯誤してみた。
トマト缶、すりおろし生姜、ウスターソース。
そこにひとつまみのインスタントコーヒーを足した時、実家のおふくろの姿が頭をよぎった。
あと一味、その一味とはおそらくこれ、プレーンヨーグルト。これしかない!
え、戦闘の話?
うん、普通に勝ったよ。
「ハローワールド。1年近くお付き合いを頂いたこの番組も、本日が最終回だ。突然のことにびっくりしているかもしれないが、理由がわからないとは言わせない。
まぁ最後だし、ギスギスした感じは止めようか。おーい文月、ここにおいで」
「司令官、何ですか何ですか? えへへ」
「ほら、まずは自己紹介だ」
「あたし、文月っていうの。よろしくぅ~」
世に文月のあらんことを。
「じゃあ文月、そろそろお別れの挨拶だ」
「は~い、見てくれてありがとうね~」
「こちらこそありがとう。ではまたな、文月」
「ばいばーい」
「さて諸君。……こんな可愛い娘が兵器なわけないだろうが! ぶち殺すぞゴミ共!
んっ、んっ、コホン。あー、失礼、つい本音が出てしまったよ。さて、最近日本では艦娘が兵器だの所有権がどうのと、ごたごたしているみたいだな」
俺は水を一口飲み、言葉を続ける。
「君達は一体何を考えているんだ?
日本近海を開放したのは誰だ?
北方海域、南西諸島海域、西方海域を開放したのは誰だ?
中国からの援助と引き換えに俺の艦娘達を引き渡す約束でもしたのか?
それで我々に圧力を掛けようとしているつもりなのか?
だがその援助物資が積まれた船を日本まで護衛しているのは誰なんだ?」
ここで言葉を止め、深呼吸。
さあ、決別の時だ。
「君達には失望したよ。もう契約は終了だ。我ら艦これ傭兵団は父島から出ていくから、後は勝手に生きてくれたまえ。なに、海は我々が取り戻したんだ。護衛なしでも3回に1回くらいは無事に物資を運べるさ。
では、君たちの幸運を祈る」
これで世のしがらみからは解き放たれた。
後は俺達の因縁にケリをつけるだけ。
大規模作戦の本番、その舞台はアイアンボトム・サウンドだ。