我ら艦これ傭兵団   作:ヨロシサン製薬

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最終話 これから

あの決戦から数ヶ月。

日本にもアジアにも俺達にも、様々な変化が起こっていた。

 

俺達と縁が切れて海上輸送に再び混乱が出始めた日本は、大規模デモにより現政権が倒れた。

また艦娘兵器論を連日紙面一杯に主張していた朝日新聞は、社屋が暴徒に破壊されたらしい。ざまぁ。

 

海に囲まれた半島国家のため弱体化していた韓国は、大陸と地続きで国力的にそれほど追い込まれなかった北朝鮮に飲み込まれた。

偽朝(韓国)との講和条約は無効だから改めて謝罪と賠償を要求すると言い出し、日本の新政府はその対応に追われているそうだ。

ちなみに今の新政権は旧第一野党であり、左翼が多くを占めているので日本の未来は暗い。

過去では賠償艦として艦娘を半数引き渡せという要求にあっさり応じてしまうくらい、国防をまったく考えていない頭がラブ&ピースな政権だった。

 

そして俺達もまた、大変なトラブルに巻き込まれた。

霧の艦隊と呼称される正体不明の艦隊が出現し、成り行きで蒼き艦隊と共闘するはめになったのだ。

ゲーム知識でいう所のアルペジオコラボなのだが、これまでの100回では全く絡みがなかったのでびっくりした。

鉄底海峡の突破が分岐点だったのだろうか。

霧の艦隊はレーザー射出による複数艦同時攻撃をしてくる難敵だったが、イオナ無双のおかげで割と余裕だった。

イオナ神を称え過ぎてうちのシオイが拗ねてしまったのが唯一の被害だ。

 

「カーニバルだぴょん! ぷっぷくぷー」

「こら、卯月! 待ちやがれ!」

 

……シオイが拗ねてしまった問題以外にも、まだまだ彼女達が残した爪痕は大きいようだった。

 

 

 

最近は東南アジアの復興が目覚ましい。

自画自賛ではないが、俺達の泊地があるため海の平穏が保たれている効果が大きいと思う。

 

国と関わるのは懲りていたため、ここの泊地はインドネシア政府に無許可でこっそり建てたものだ。

いつかは咎められて出て行かざるを得ないと考えていたのだが、索敵機によって判明した南西海域沖の敵後方根拠地を殲滅したあたりから流れが変わった。

インドネシアやマレーシア、タイやシンガポールなどが鎮守府の誘致合戦を始めたのだ。

特にシンガポールからの熱烈なラブコールは、こちらが戸惑ってしまうほどだった。

 

 

日本の冷遇に慣れきっていた俺達は気づいていなかったが、シーレーンを回復させた辺りから貿易港を持つ国での俺達の評価は爆上げだったそうである。

東南アジアはまだまだ戦役の傷跡が生々しいが、復活しつつある貿易と荒廃した町の復興で人々の熱気が凄まじい。

外貨獲得のため南方海域遠征で手に入れた鉄鋼をたまに売りに行くのだが、賑やかな港町は滞在しているだけでウキウキしてしまう。

周囲からちやほやされてご機嫌な俺達は、すっかりバカンスモードである。

ぼちぼち遠征を回しつつ、後は海辺で泳いだり買い物をしたり間宮特製ナシゴレンを食べたりと休暇を満喫していた。

 

そんな中、俺は日本に思いを馳せる。

郷愁とかではなく、滅亡から救うべきか否かということにだ。

そろそろミッドウェー方面から深海棲艦が、圧倒的な戦力で日本に押し寄せてくる時期なのである。

以前1度だけ経験したことがあるのだが、無謀な作戦や理不尽な命令で弱体化していた艦隊に抗う術はなかった。

ぼろ負けして逃げ帰り、少数の艦娘達と最後の防戦を行おうとした所で、北朝鮮の核攻撃で敵ごと殲滅されたのだ。

 

残りの99回?

敗戦やら暗殺やらでこの時期まで生き残れなかったよ!

 

そんな過去を考えると、日本を見殺しにしたい気持ちになる。

しかし艦娘の大多数は日本の艦船なのである。

善良な彼女達は、きっと日本を救いたいと考えているはずだ。

その証拠に、最近長門の鼻息が荒い。

いつ俺が日本防衛の作戦を言い出すか、一日千秋の思いで待っているのだろう。

ならばその気持ちに答えるのが、彼女達の提督である俺の役割である。

 

「近日中にAL/MI作戦を発動する」

「どういうことだ、提督! 深海棲艦の大軍に襲われる日本は放っておくつもりか!」

 

顔を寄せて唾を飛ばしながら叫ぶ長門を宥め、こちらの真意を説明する。

多分連中は、ゲームのAL/MI作戦最終E6に出てくる本土近海に来襲した敵別動隊なのだろう。

ただし当時はAL作戦もMI作戦もやらなかった。

それらの敵が合流した結果が、あの海を覆い尽くすような敵艦隊だったのだと思われる。

 

AL/MI作戦自体は艦娘にとってアイアンボトム・サウンドと同じくらい大事な意味を持っているため、やらないという選択肢はない。

であるならば、わざわざ敵が集合して日本に攻め込むのを待つこともないだろう。

どういう戦術を選択するか、主導権を握るのは常にこちらであるべきだ。

 

「ふむ、つまり各個撃破ということか」

「その通りだ。まぁMI作戦なのだから主役は空母機動部隊になるが、お前には万が一の時の日本防衛を任せたいと考えている」

「それこそがこの長門の望むところだ!」

「ああ、その時には頼んだぞ、長門」

 

AL/MI作戦を完遂した際、ゲームのように敵別動隊が日本を襲ってくるかは分からない。

だが今の艦隊には余裕があるので、主力の長門や陸奥を予備戦力とすることも十分に可能だ。

 

かつて圧倒的な戦力差で蹂躙された俺達の全力を、深海棲艦に見せつけてやるのだ。

 

 

 

 

 

 

AL作戦の概要を一言で説明すると、いわゆる陽動作戦だ。

史実でいう所のダッチハーバー空襲などで敵戦力の目を引き付ける役割である。

 

那智、摩耶、龍驤、隼鷹、雷、電の北方部隊に、敵北方港湾を叩かせる。

何度か大破撤退を繰り返したものの、むしろその方が陽動作戦としては成功なように思う。

 

港湾の強襲に成功して敵の目をAL海域に引き付けたら、いよいよMI作戦が始まる。

史実でのミッドウェー海戦は、日本軍が太平洋戦争の主導権を失い戦局の劣勢が方向づけられた最大の敗戦である。

主役はもちろん一航戦と二航戦で編成した空母機動連合艦隊だ。

 

「慢心、ダメ、ゼッタイ!」

「対空見張りも減と現と言と、あわわっ」

 

ミッドウェーの海底に沈んだ南雲機動部隊の誇りを取り戻す戦い。

正規空母の皆は前のめりになり過ぎ、少々テンパり気味である。

こういう時こそ勝利の男飯、カツ丼だ。

クソでかい戦艦空母用の丼ぶりに、俺の気持ちを込めておかずを盛っていく。

 

戦果も修練も食欲も人一倍の赤城には、ロースカツにヒレカツ・エビフライ・メンチカツをトッピングした全部乗せカツ丼を。

制空の鬼として航空戦を支配する加賀には、チキンカツにタレ替わりの生姜味付から揚げを山盛りに積み込んだタレカツ丼を。

飛行隊長に爆撃王江草を擁する蒼龍には、日本から取り寄せた三元豚と烏骨鶏の卵をふんだんに使った特選カツ丼を。

最後の反撃で帝国の栄光を示した飛龍には、ミルフィーユ状にしたカツにスペシャルソースたっぷりのソースカツ丼を。

 

「まずはたっぷり食って、英気を養ってくれ」

「は、はい、提督。……あら、美味しい。意外と、あら、いけますね」

 

口を動かす毎に、緊張気味だった空母達が落ち着いてくる。

丼ぶりの中身が無くなる頃には、すっかり平常心に戻っていた。

 

「いつも通りの力を出し切ればいい。お前達の思いを全てミッドウェーの敵艦隊にぶつけてこい!」

「はい、提督!」

 

きりっとした表情で返事をする赤城。

その頬についた米粒をとってやると、彼女は真っ赤な顔で俯いたのだった。

 

 

 

慢心しては駄目。

常日頃から口癖のようにその言葉を発していた赤城の思いが、とうとう報われる時が来た。

彼女の積んでいる彩雲が、先に敵空母を発見したのだ。

 

「第一次攻撃隊、発艦して下さい!」

 

赤城の攻撃に合わせて、加賀・蒼龍・飛龍も一斉に航空機を飛ばす。

加賀の戦闘機が制空権を確保すると、赤城や飛龍の攻撃機が雷撃で取り巻きの戦艦や重巡洋艦を潰し、そして蒼龍の彗星江草隊がお家芸の急降下爆撃で敵空母を撃滅した。

 

魔の5分間、その意趣返しが始まった。

そしてそれは誘い出された敵艦隊がすべて海底に沈み、中間棲姫が護衛要塞ごと殲滅されるまで続いたのだった。

 

 

 

「赤城から緊急入電、敵別動隊の本土への進撃を確認したとのことだ」

「ふっ、後はこの私に任せておけ。旗艦長門、出撃するぞ!」

 

赤城艦隊はこれまでの連戦で燃料や艦隊機不足に陥っているため、敵別動隊に対する追撃は不許可である。

しかし問題はない。

なぜならこの時のために長門艦隊を予備戦力として待機させていたのだから。

 

ただし懸念事項もあった。

残念ながら我が艦これ傭兵団は日本と現状敵対しているような関係なので、いつ後ろ弾を食らうか分からない。

そのため日本の勢力範囲で敵を待ち受けることが出来ず、長門艦隊は泊地からの出撃となった。

後は時間との勝負である。

 

「陸奥よ、この長門に続け! 第一戦隊突撃、主砲一斉射! てーッ!」

「戦艦陸奥、突撃するわ! 主砲一斉射! てーッ!」

 

長門と陸奥の一斉射が敵侵略部隊主力艦隊を打ち砕いた。

その場所は東京の最終ラインである浦賀水道から僅か50海里、房総半島の目と鼻の先であった。

想定以上にギリギリとなってしまったが、日本を防衛した事実は変わらない。

 

長門にとって悲願といえる日本防衛作戦の完遂。

その達成感を胸に、艦隊は拠点へと進路を反転させたのだった。

 

 

 

 

 

 

数年後。

俺達は各国の依頼を受けて、相変わらず深海棲艦を打倒する日々を送っている。

 

「それにしても、こんなに長生きするのは初めてだな」

「司令官、20代前半じゃないですか。まだまだこれからですよ」

「そうだな、吹雪。更なる長寿のためにも、まずは目先の依頼を片付けますか」

 

結局俺達は、どこかの国に鎮守府を置くことはなかった。

強いて言えば南西諸島に作った最初の泊地が本拠地である。

 

永遠の友好国はなく、永遠の国益だけが存在する。

かつての世界帝国の言葉だが、それは俺達にも当てはまる。

結果的に判断ミスであったが、友好的だった日本の総理大臣でさえ国益のために俺達を裏切った。

それは欧米だろうが東南アジアだろうが変わらない。

だから今のように各国と付かず離れずの適切な距離感を保った方が、お互いのためというものである。

 

日本との関係が悪くなれば南西諸島に行き、南西諸島との関係が悪くなれば欧州に行く。

深海棲艦が存在する限り、俺達を必要とする国はなくならない。

 

日本で思い出したが、隣国がやらかしても国家は引っ越し出来ないので、今わりと大変なことになっている。

周辺国にマウントを取るためだろうか、北朝鮮(南はなくなったが)が日本海で核実験を行ったのである。

その結果、怒った深海海月姫がビキニ諸島からはるばる日本海に住居を移したのだ。

怨念が強すぎてクロスロード組の攻撃すら効果が無く、その怒りが静まるまでは放置するしかない状況だ。

沿岸部は砲台子鬼で埋め尽くされてボロボロだし、最近は朝鮮半島自体が溶けて縮んできた気がする。

日本も放射能と深海海月姫のダブルパンチでいい迷惑である。

 

「目先の依頼と言うと、日本政府からのですか?」

「それは先月失敗して、今は無理だって答えが出ただろ。後1年くらい放置だ」

「あ、じゃあロシアのやつですか?」

「そうそう、北の痴女。ガングート達にやらせるつもりだけど、まずは作戦を立案するぞ。大淀を呼んできてくれ」

「はい、司令官!」

 

どこかの国が滅亡しても、国家に属さない俺達の戦いは問題なく続いていく。

我ら艦これ傭兵団は、全ての深海棲艦が浄化されるまで戦い続けるのだ。




最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

艦これは礼号作戦あたりから始めて、そこから今までずっとプレイしています。
その割にはいまいち世界観が掴めていなくて申し訳ありませんでした。

13年秋(鉄底海峡)や14年夏(AL/MI作戦)への憧れが、これを書くきっかけです。
復刻イベント、いつか実装して欲しいですね。
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