日本にあるオフィスビル街の外れに一つのコンクリートで作られた古いビルがあった。そのビルには、年代物のネオンを使った看板があり、それは今や使われていなかった。
というよりも、そのビル自体、長い間使用されてえらず、ビルには何重にも施錠がされていた。
オフィスビル街から外れにある廃墟同然のビル、それが世間の認知だった。むしろ、このビル自体が認知されているのか、怪しいぐらいだった。
だが、それは“表の話“である。
そのビル内部は見た目同様に古く、殆どが朽ち果ていた。そんな朽ち果ているビル内部に一つだけ、綺麗な扉があった。
関係者以外立ち入り禁止と書かれた扉だけは真新しく、綺麗で今だに人が使っていそうであったが、関係者以外に開くことはない。
もし、関係者以外が開いたのなら、その者は朝日を拝むことは二度とないだろう。
そのビル内部の立ち入り禁止の扉の先には大きな鏡がついた一つの部屋があり、そこには最新の機材が置かれ、何人かがそれを操作していて、大きな鏡の前には二人の女性、織斑千冬とクラリッサがいた。
クラリッサが大きな鏡の近くにあるボタンを押すと、先程まで二人を写していた鏡は消え、その代わりに隣の部屋と一人の少年を写した、この鏡はマジックミラーと呼ばれ、見た目はただの鏡だが、実際は鏡の向こうからは見えているのだ。
二人は一人の少年ーーー神楽坂幸を見ながら、話を始めた。
「何か話したか?」
「今だにだんまりですよ」
先程から入れ替わり、入れ替わりに尋問官がコウに説いただしてはいるが、コウはずっと無言無表情を貫いている。その光景は異常であった。
それ以前にただの学生に本職の尋問官を使う自体が異常である。
「そうか……それでこいつの扱いはどうなる?」
「ただの学生ーーーというわけにはいきませんが、あの件は事故扱いだそうです」
「ふん、やはりか」
千冬は予想はしていたが、まさか本当にあの件を事故扱いにした上の判断に納得がいかなかった。
「仕方ありませんよ、元々は警備を疎かにした我々に非がありますから」
あの件ーーー神楽坂幸の殺人である。
あれから五時間、世間には知れ渡っていないが千冬やクラリッサの上司達というより、各国の首脳達は慌てていた。
ーーー世界初の男性ISパイロットが殺人を犯した。人数は七人、しかも元々は自分達が警備を疎かにし、ある宗教団体に付け入る隙を与え、その結果七人もの狂信者の侵入を許し、挙句にはその狂信者七人は世界初の男性ISパイロット、しかもただの中学生が殺したとあれば、慌ててるのは質然である。
とりあえずは殺人の証拠は消し、あの七人は事故に遭い、死んだと処理することとなり、神楽坂幸を一度拘束し、別の場所に移動をさせた。
それがこの廃墟同然のビルであり、このビルの持ち主はある一族の物でもあった。その一族は裏社会に派閥を広げ、世界各国に顔が利く、かなりの力を持った一族である。
「しかし、さすがは更識家ですね、こんな場所があるなんて」
「まったくだ、油断できんな」
「人を悪人みたいな言い方は傷つきますよ?」
その声に気付き、二人が振り向くとIS学園の制服を着たにこやかに笑う水色の髪の少女がいた。
「更識か」
「こんにちは、織斑先生」
クラリッサは彼女が噂に聞く“更識“の人間だとすぐにわかった。なるほど、噂通り胡散臭い……だが、今はそんなことはどうでもいい、重要なことじゃない。
クラリッサは爽やかに笑いながら、更識の少女に手を差し出す。
「場所の提供ありがとうございます、私はクラリッサ・ハルフォーフ大尉です」
「ハルフォーフ大尉、お噂はかねがね……こちらも彼に興味がありましたから」
「そうですか」
爽やかに笑うクラリッサとにこやかに笑う更識の少女、一見仲が良さそうには見えるが見えるだけで、お互い水面下では全力で互いを牽制していた。
千冬は蚊帳の外だった。
その時である、千冬の携帯が鳴った。
「すまない、少しいいか?」
「「どうぞ」」
お互い笑って握手したまま、千冬に同時に顔を向ける。
そんな二人に何か君悪さを抱きながら、千冬は携帯に出る。
「私だ」
『織斑先生、私です、山田です』
「あぁ、山田先生」
電話をかけてきたのは後輩の山田麻耶だ。彼女は今、国連本部にIS学園の学園長と共に出向し、神楽坂幸の今後についての話し合いに学園長の補佐として出席していた。
千冬は山田先生にもし話し合いに進展があったら、自分に報告をできる限りにするように頼んでいた。
「話し合いに進展か?」
『はい、良くない進展です』
「……で」
『世界の警察官が彼をモルモットにすべきだと言い始めて、それに賛成する国が多くいて、このままだと』
「ちっ、もう、そんな話に」
あの国は世界初の男性ISパイロットが自分の国とは無関係なのが気に食わないのだろうし、さっさとデータが欲しいだけなのだろう。
まったく、昔からあの国は何様のつもりだろうか?と千冬は何度も何度も頭を悩ませてきた。自分達を世界の王とでも勘違いしているのでは?と疑いたくなるほどの傍若無人っぷりである。
だいたい、IS学園を経費などの全てを日本持ちにさせたのもあの国であり、一銭も経費などを払わないくせに美味しいところは必ず寄越せと言うのだから、たちが悪い。
「ありがとうございます、山田先生」
『いえ、大丈夫です』
「急ぎます」
千冬はそういい、電話をきり、今だにニコニコと笑いながら握手をする二人をよそに隣の部屋に移動を始める。二人が千冬が隣の部屋に移動したことに気付いたときは既に千冬は隣の部屋にコウの前に座っていた。
コウは先程から入れ替わりに来ていた尋問官らしき人物達と違い、尋問などは明らかに素人であろう目の前の女性に拍子抜けをした。
何故、急に素人を連れてきた?
罠か?
とコウが思考を巡らせていると千冬は座った椅子から身を乗り出し、顔をコウに近づけ、問うた。
「神楽坂、単刀直入に言おう」
「ん?」
「貴様は何者だ?」
「資料あるんだろ、それに書いてあるのが全てだ」
机の上に投げ出されたように置かれている多数の資料をコウは指差した。前のその前の前の前の前も全ての尋問官もコウの目の前にいる千冬と同じことを聞いてきた。
なので、無視するのも飽きたので適当に答えた。
確かに投げ出されたようにある多数の資料の中にはコウの今までの人生の縮図が書かれており、そこにはもちろんコウが今から五年前に拾われた子供であることも書かれていた。
「嘘をつくな、あの動きは貴様の年齢ではありえん」
「……無我夢中で何のことやら」
やはり、アレはやり過ぎたなとコウは反省をした。
純粋な殺し合いになると、どうも殺人衝動が抑えきれない。あの出来事以来から、ずっとこうでシャアや部下達などからも口を酸っぱく言われているのが、我慢をしろだ。何故か、コウはMSなどを使った殺し合いは殺人衝動を抑えることが出来るが生身と生身の殺し合いの際の殺人衝動だけは抑えきれない。
昔、医者に診てもらったことが何でも強いストレスなどが原因らしい……原因はアレだろうがと、コウは昔の苦い思い出を思い出しながら、息がかかる距離まで詰め寄っている千冬に意識を向ける。
「お前の空白の十年はなんだ?」
「覚えてない」
「……なら、貴様はこれからどうする?」
「生きたいねー、普通に」
このままだとよくて解剖、悪くてモルモットの未来が待ってる、モルモットかぁ……そういや、ブルーいたな。
嫌だなぁ、昔みたいに役に立つのかわからない機体に乗るの。
「なら、さっさと決めろ」
「えっと、何を?」
「貴様はどの国に所属する?」
ーーーどの国?
あ、あ〜、そういや、ISって各国が別々に管理してるんだっけ?
で、確か四年に一度各国から代表を一人決めて、その代表の国が四年間の間、世界を支配できるってルールだったけ?
興味がないから、覚えてないな。
「いや、そう言われても」
「早くしろ、時間がないぞ」
「あのさ、一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「俺、今年受験生なんだよね……学校は希望校に行けるのかなーなんて」
多分、無理だろう。
「行けるぞ、希望校」
「お、マジで」
「その代わりに二度と太陽の光を見れなくなる可能性が高いがな」
「やだ、怖い」
ナニソレ、ヒドイ。
「まぁ、一応IS学園になるだろうな、入学」
あ、入学は決まってるんだ。
これって、所謂裏口入学?ってやつか……世界一嫌な裏口入学の仕方だ。
さて、さっさと答えを言わないと人生モルモットか試験管内のどちらかになる……さて、どうしますかな?
「IS、IS学園、IS学園?」
「どうした?」
「あの一つ提案が……」
「なんだ、言ってみろ」
「その提案はーーー」
俺は一か八かの提案を出した。
ダメなら、日本かドイツのどちらかにしよう、そうしよう。
そして、IS博覧会事件から時がたち、年が明け。三月上旬全世界に世界初となる男性ISパイロットの名前と所属が公開された。
『神楽坂 幸』『所属国家未定』『所属 ジオニック社テストパイロット』
たった、この三つだけが世界に公開された。
こうして、物語の幕が上がろうとし
「神楽坂 幸ね……あの時のISが……こいつ」
「リン、何してるのじゃ?」
「あ、おはよう、おじいちゃん、新聞見てんの」
「ふむ、新聞か……わしも見るかの」
「そんなことよりも朝稽古行ってよ、お弟子さん達待ってるわよ
「むー、そうか……どうだ、リン、お前さんも」
「嫌よ、あたしは流派東方不敗なんて興味ないし」
「ガーン、じじぃショック!?」
役者が揃い出す。
「神楽坂 幸さんですの……」
「セシリア、その名前が君を助けた」
「えぇ、多分」
「うむ、中々エレガントな名前だ」
「エレガントとは、何ですの?トレーズ叔父様」
「エレガントな名前はエレガントな名前さ、セシリア」
「意味がわかりませんの」
誰も台本を知らない物語が始まる。
「神楽坂 幸か……」
「シャルロット、誰だ、その名前はぁ!?」
「お兄ちゃん!?部屋はノックして入ってきてよ!」
「そんなことよりも私の可愛い愛らしいシャルロットが男の名前を言ったことが重要だ!」
「ほら、この人!この人!」
「こいつが私のシャルロットを誑かした男だな!」
「違うというか、僕はお兄ちゃんのものじゃないんだけど!?」
「この乙女座のグラハム・デュノアがいる限り、シャルロットは渡さん!」
「頭が痛い」
だが、それがいいのかもしれない。
「ふむ、新しい電話番号は」
「……新しい電話番号は」
「「0721-1919」」
「……お前、名は」
「更識 簪」
「私は篠ノ之 箒だ、同志よ」
「よろしく」
その方が幸せだろう。
「クラリッサ」
「なんでしょう、隊長」
「何故、私の下着を頭につけている?」
「健康のためです」
「そうかなら、仕方ないな」
「はい」
何故なら絶望を知らずにすむ。
「よし、今日は藍越学園の受験日……ここに合格するば、千冬姉に恩返しが」
「ふ、だが道に迷った……適当に行こう」
何故なら希望を失わずにすむ。
「ん、なんだこりゃ、IS?」
「……触ってみよ」
何故なら、自分が死ぬ日を知らずに過ごせるのだから。
「あ、やべ、また更識先輩の大切なデータをワザと壊しちゃった、まいっか」
「よくない、よくないわよ、神楽坂くん」
ーーー何故なら絶望も死も恐れずに生きれるのだから。
「やぁ、ようこそ」
「初めまして、ミス・内海」
「世話になる」
「こちらこそ、初めまして、お世話になるよ」
ーーーリボンズくん、ギニアスくん。
では、ISー蒼き鬼神ーの始まり、初まり。
ボツネタ。
問、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。この三人の性格を表したある動物を使った句を三人のなから一人選び、答えなさい。
答、神楽坂 幸
織田信長
鳴かぬなら殺してしまえ、ほとどぎす
教師のコメント
正解です。
貴方が織田信長を選ぶのは予想してました。
答、篠ノ之箒
鳴かぬならベッド上で鳴かせよう、ウグイス嬢!
教師のコメント
貴女がそう書くのも予想してました。
頼みますから、高校生からは真面目になってください。