特に二十三話は幸せな気持ちになれた。
忘れていたアレを追加。
問題、自らも痛手をおいながら、相手にそれ以上に痛めつけることをなんと言うでしょうか?
神楽坂 幸の答え。
肉を斬らせて、骨を切る。
教師のコメント。
正解です。断つの方が有名ですが、切るもありますね。
篠ノ之 箒の答え。
服を切らせて、性的に襲う。
そして、殴られ、怒られる。
痛かった、こわかった。
教師のコメント。
それ、実体験じゃないですよね?
織斑一夏の答え。
肉を斬らせて、命を斬る。
教師のコメント。
やり過ぎです。
更織 簪の答え。
寝取られ、寝取る。
教師のコメント。
貴女は何を考えてるんですか?
女子だらけの中、織斑一夏はとても居心地が悪かった。別に彼が彼女達に何かをしたというわけではない、むしろ何もしていない。一夏は先程からずっと自分の席に座ったままだ。まぁ、むしろ、それが悪いのかもしれないが。
今、一夏がいる教室、IS学園一年一組には男子は一夏一人しかいない。一夏は少し前、教卓に教師が置き忘れただろう出席名簿を見つけ、 興味本位で見たときに【神楽坂 幸】と書かれているのを見つけた。それはTVで見た世界初の男性ISパイロットであり、自分と同じ歳の少年とまったく同じ名前だった。
もし、名前の読み方が違ったら、このクラスには一夏一人しか男子がいないということになる、そんなことになれば、一夏のストレスやSAN値などは酷いことになることは容易にわかるので、それだけは一夏は避けたかった。
一夏がそんなことを考え、神楽坂幸が男子生徒であることを神に祈っている差中、一年一組の教室の出入口や廊下方面の窓には他のクラスの生徒や年上の先輩方が一夏を一目見ようと多くの生徒が集まっていた。だが、そんなにも多くの生徒が集まっているにも関わらず、誰も一夏に話しかける素振りがなかった。
まるで動物園の客寄せパンダみたいな状態になった一夏、女子生徒達は決して一夏には近付かずに遠くで、一夏を品定めをしていた。
曰く、イケメン。
曰く、ヘタレっぽい。
曰く、ヘタレ受け。
曰く、総受け。
と本人が聞いたら、IS学園から逃げ出し、二度と人前に姿を現さなくだろうなことを女子生徒達の間で話し合っていた。幸いにも一夏は先程から男子がもう一人いますようにと神様にお祈りをするのに精一杯で、女子生徒達が一夏を見ていることを忘れ、さらに先程の会話はまったく聞こえていなかった。
しばらくして、女子生徒達がそろそろ話しかけるかどうかを話し合っていると予鈴の鐘が鳴る。それを聞いた生徒達は慌てて、各々のクラスや席に戻った。その時、一組の生徒全員も自分の席に戻り、一夏の後ろの席だけ、誰も座らなかったことに一夏はまったく気づいておらず、それどころか予鈴の鐘が鳴ったことすら、気付いていなかった。
予鈴の鐘が鳴り終わると同時に教室のドアが慌ただしく開き、一人の小柄な女性が入ってきた。
女性は身長は女子生徒達と然程変わらず、さらに顔も幼い……だが、胸だけは大きかった。誰かが「これがロリ巨乳か、邪道な」と呟いた。
生徒達はその身長と幼い顔立ちから同じ生徒かと思ったがよく見れば、その女性は制服を着ておらず、私服を着ており、手には出席名簿らしきものがあった。
「はぁ、はぁ、出席名簿が何処にも……あれ?」
女性は息を整えながら、教卓に向かうと教卓の上に堂々と置かれている出席名簿に気が付いた。
そして、恐る恐るに出席名簿を確認すると泣きそうな顔になりながら、先程まで持っていた出席名簿を近くにある教員用の机に置き、教卓の上に置いてあった出席名簿を両手で握りしめながら言った。
「み、皆さん、おはようございます……IS学園入学おめでとうございます」
今にも泣きそうな顔をしながら、女性は一夏と女子生徒達の入学を歓迎した。
「これから、皆さんの一年間の副担任を努めます、山田麻耶と言います、よろしくね」
彼女、山田麻耶教員がそういうと彼女の後ろにある電子黒板に大きく漢字で【山田麻耶】と表示された。山田先生は生徒達がどんな反応しているのか気になり、見てみると全員がえ、この人、教師……嘘でしょ?みたいな顔を一人を除いてしていた。
根っからのあがり症で人前に出るのが苦手という教師としては致命的な欠点をもつ山田先生は、生徒達のその表情はかなり傷ついた。だが、山田先生だって、この日に備え、約半年をかけてある生徒に毎日のように手伝ってもらい、毎日のようにダメ出しされ、毎日のようにバカにされたわけではない。
自分は変わらなければならないと意思でここにいて、わざわざ担任の先生に遅れて来てもらっているわけではない。
今こそ、約半年をかけて成長した自分の実力を使う時だ!と彼女は決意した。
「じゃじゃ、せ、席順でじ、自己紹介、い、いいかな?」
まぁ、やはり無理だったが約半年で根っからのあがり症で人前に出るのが苦手な人間が簡単に変わるほど、世の中は甘くないのだ。
何とも言えない空気の中、一年一組の生徒達の自己紹介が始まった。
その頃、世界初の男性ISパイロットであり、山田麻耶先生の苦手克服を手伝ったりした神楽坂 幸は一年一組担任の織斑千冬にこき使われていた。今日は生徒に配る教科書を台車で運ばされていた。
「織斑先生、山田先生上手くいってますかね」
「さぁ?」
コウは台車を押しながら、今一人で頑張っているだろう、山田先生のことを心配していた。
山田先生はコウがここIS学園に強制連行された約半年の間に色々と世話をしてくれた人であったため、コウはそれなりに尊敬はしているが前世の経験などをふまえ、山田麻耶は娘のように思うところがあった。
前世の前世、前世などを考えれば、コウはもう六十年以上生きていることになるのだ。そうなると山田麻耶や織斑千冬は娘または孫のようにも思うことがあるが、現状では年上であることにかなりの違和感があった。
コウは台車を押しながら、今までの約半年の軟禁状態のことをおもいだした。
今から約半年前、あの病院で起きたカルト教団である“無限の戦乙女“の狂信者に襲われ、やむ負えなく狂信者七名を殺害した。それは一応、おとがめなしにはなったが、各国は世界初の男性ISパイロットに何かあったら大変だと言い、コウを無理矢理IS学園に預け、その後の連絡を一切禁じた。もちろん、持っていた連絡可能な機器は取り上げられ、さらにIS学園に預けられた後も、限られた時間で決まった場所以外に外出は許されず、外出できないときはずっとIS学園から用意された部屋、織斑千冬の同室で勉強などをして約半年も過ごした。
外出が許された場所はIS学園にある第三アリーナだけで、そこにはトレーニング機器やISの操作練習などを行える設備しかなかったので、約半年のほとんどがISに関することで残りが中学生の勉強だった。
その時にお世話になったのが山田先生と織斑先生の二人の教師とIS学園の生徒会長である更識楯無の三人だった。他の教師も手伝いは可能だったが、国連が少人数で世話をするようにとしつこく言うので、この三人となった。
中学生の勉強は更識楯無に、ISに関する知識は山田麻耶に、ISの操作技術などは織斑千冬に教わった。だが、ISの操作技術に関しては約一ヶ月ほどで織斑先生が後は自学で充分だといい、操作技術はコウのみにやらせ、織斑先生は二人のサポートに専念した。
そして、コウは約半年の間、誰とも連絡を取らずに勉強と練習のみで過ごした。おかげで、かなりの物が身に付いていた。
といっても、たかが半年だ。一年以上、ISに関して勉強も練習を積んできた代表候補や一般生徒には敵わないだろうと国連の偉い人達やIS学園の教師達はそう思っていた……だが、織斑先生や山田先生、更識生徒会長の考えは違った。
ーーー神楽坂 幸は化け物。
それが三人の共通認識だった。
兎にも角にも、コウは約半年も前に既にIS学園にいて、半年の間も誰とも連絡をとっていない。普通の学生なら、半年も家族に連絡できないと不安などにかられるが伊達に残党軍時代に一年近く無補給無連絡の状態で連邦のMSや補給部隊を襲いながら、生きてきたわけではない。
それにコウの義理の父である勉の家には壊れた黒電話しかないので、連絡のとりようもないし、だいたい、あの村全体が圏外であるから、基本連絡手段は無線機かモールス信号と色々と連絡手段に問題がある村だった。ちなみにコウは携帯を持たせてもらっているが使うときは村から数キロ離れた高台からしか電話ができないので、携帯は普段から埃を被っているので気にしてなかった。
「そうだ、神楽坂」
「はい?」
「お前の携帯だが、国が最新型をくれるそうだぞ」
「そんな物よりも軍事系の」
「ちなみにお前の村でも電波が立つらしい」
「何それ、凄い」
コウは生まれて初めて携帯が欲しいと思った。
その頃、一年一組の教室は大変なことになっていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい!先生がいきなり軽々しく自己紹介なんて言って!」
「大丈夫です!大丈夫ですから!?」
「いーけないんだ、いーけないんだ、先生に言ってやろー」
「うっせーよ、箒!というか、先生だよ!」
「ごめんなさい、先生うるさくて!」
「いや、先生に言ったわけでは」
「あー、一夏がまた泣かした」
「あー、もう、お前は黙ってろ!」
カオスなことになっていた。
コウ達が一年一組に着くと、教室内が騒がしかった。織斑先生はコウに廊下で待ってろと言い、先に教室に入る。暇なコウが台車から荷物をおろしていると教室から、スパッン!と何かを叩いた音がなったがコウは気にせず、荷物を卸す。
荷物をほとんどおろし終わるころぐらいに、教室から今度は奇声があがり、教室内が騒がしくなる。
この時、コウは帰りたいと思ったが帰る場所はこの学園内だし、帰っても織斑千冬がまた散らかした部屋を片付けなければならないと思うと面倒でやめた。
ちなみにだが、コウがこのIS学園に来て、最初にやったのがこの約半年間も過ごした織斑千冬の部屋の掃除や洗濯物の片付け、汚れ物の洗濯などである。世間は織斑千冬のことを万能な人間だともてはやしているが、彼女は家庭が致命的なほど駄目で洗濯すると何故か余計に汚れたり、掃除をすると余計に散らかったり、時々掃除中に本を読み出したり、料理を作らせたら食えた物を作れないし、おにぎりを作らせたら砲丸の玉を作り出したりと家庭が致命的というよりも、絶望的、否もうするなレベルの駄目っぷりでコウは正直織斑千冬が今までどうやって生きて、清潔を保っていたのかがかなり気になった。
後で理由を聞いたら、家事が万能が弟がいるらしく、家事全般は弟任せで最近までは週一で自宅に帰り、弟に汚れ物の洗濯をしてもらっていたらしい。だが、それではいけないと思った織斑千冬は自分でやることを決意、約二時間の死闘の上、心が折れ、汚れ物や洗濯物を放置。
部屋は散らかり放題になり、まるで掃除ができない中年サラリーマンみたいな部屋に変貌した。おかげでIS学園に来て、丸2日は部屋の掃除と洗濯などに時間を割いたのは悪い思い出である。
……ちなみにだが、コウが織斑千冬の下着を見たときに反応もせずに小言を言いながら、回収されたときにはさすがの織斑千冬も女性として傷ついたらしい。あと、コウが何故平気なのかというとよく箒に買い物を連れていかれた際に、何故かいつも必ず女性物の下着売り場に連れていかれ、下着を見てくれ!と頼まれてははっ倒していたから、もう慣れたのだ。
コウがそんな嬉しくも何ともない慣れに違和感も感じずに廊下の窓から外を眺めていると一組のドアが倦き、織斑先生が入ってこいと言ったので嫌々ながら教室に入り、挨拶をした。
「所属国家無し、所属企業ジオニック社、職業学生兼ジオニック社テストパイロットの神楽坂 幸だ。
ま、よろしく頼む」
黒い髪に目つきの悪い黒い目、一夏より少し身長が高いコウはやる気なさそうに挨拶をした。