後、セシリア戦までいけなかった。
セシリア・オルコットからクラス代表をかけた決闘を挑まれた日の放課後、コウはIS学園の生徒会室に足を運んでいた。
あの後、対戦日時や対戦内容、場所などを決闘の審判を務めることになった織斑千冬を交えて話し合い、三日後の第二アリーナにて、通常試合を行うことにお互い合意した。
その後、通常通りに授業を終え、生命の危機を感じ、逃げようとした一夏は千冬に呆気なく捕まり、「死にたくなーい、死にたくなーい!」と泣き叫びながら、何処かへと連れて行かれたが誰も見ないようにしていた。放課後も一夏に勉強を教えるつもりだったコウは暇になり、暇潰しに生徒会室に来ていた。
ちなみに箒はここでも剣道を続ける気らしく、ここの剣道部に入ると言い、剣道部の道場に向かったのである。
暇潰しに来たコウは、生徒会室の主、IS学園に通う生徒達の頂点に立つ少女『更識楯無』生徒会長と生徒会室のテーブルで将棋をしていた。
「入学早々にやるわね」
「何がだ?」
コウと楯無は会話をしつつ、パチパチと乾いた音を生徒会室に響き渡せながら、着々と駒を進め、討ち取る。
「決闘よ、決闘」
楯無のトレードマーク、アイデンティティとも言える文字が書かれている扇子を開く。そこには『決闘!!』と漢らしい殴り書かれていた。
コウは以前から思っていたのだが、この楯無という小娘は一体いくつの扇子を所持しているのだろうか?と気になっていた……余談だが、コウはシャアのあの仮面は予備がいくつもあったと知ったときは驚きよりも、こいつアホだなと思った。
「あぁ、アレか……情報が早いな」
「うふふ、私が貴方と彼がいるクラスに駒を送らない理由がないわ」
「それもそうか、王手」
「あら、誰か気にならないの?」
「興味がない、王手」
スパイや監視者など興味がない。
ジオン軍時代には、部隊を持ったときに派遣された部下三人のうち二人がキシリア・ザビの息のかかった人間だったし、エューゴのときは常にアポリーとロベルトが側にいた。
「あら、そう」
楯無はつまらなさそうに呟きながら、将棋の盤上を見て、凍りついた。
……気付いたら、自分の駒が王将以外なく、四方八方をコウの駒に囲まれていた。
ーーー王将。
別に餃子とは関係なくもない将棋の駒の一つであり、チェスでいうキング……そう、王将が討たれたら負けである。
「ま、待って!」
「いいぞ」
よし!と珍しく待ってくれたコウの優しやに歓喜しながら、楯無は盤上を見る。
前方2マス、後方2マスに飛車。
ーーー飛車、十字なら制限なく進めるが飛び抜けはできない駒。
成駒竜王になると更に斜め1マスに移動可能。
左右斜め2マスに角。
ーーー角行、斜めになら制限なく進めるが飛び抜けはできない駒。
成駒竜馬になると更に十字に1マス移動可能。
前方飛車の両隣には香車。
ーーー香車、前方なら制限なく進めるが角行、飛車同様飛び抜けはできない駒。
成駒は成香、金将と同じ動き可能になる……ちなみに後方飛車の両隣にはその成香がいる。
他にも様々な駒が王将の進路を全て妨害していた。
ーーー王将、周り8マスに移動可能。討ち取られたら、負け。
どう足掻いても絶望。
「あー、また負けたー」
「これで、百戦百勝だ」
「私は百戦百敗よー」
楯無は何よ、貴方ーと悔しそうに頬を膨らませながら、足をジタバタさせる。よほど悔しいのか、楯無は盤上の駒を何度も動かしながら、どうしてこうなったのか、何処からなら逆転できるのかを模索していた。
コウはそれを気にもせずに、生徒会の副生徒会長であり、楯無の右腕の『布仏 虚』から淹れてもらったブラックコーヒーを飲みながら、置いてあった雑誌を適当に読む。
そのブラックコーヒーを淹れた虚は生徒会の書類の整理をしており、会長宛の書類は全て生徒会長の席に積み重ねていた。
「で、貴方は結局何をしにきたの?」
幾ら考えても逆転の仕方がわからない楯無は盤上の惨状を諦めて、積み重ねられた書類を処理するために働きたいという腰を上げる。
「暇潰し」
「本当に暇潰しきたの?」
「あぁ」
コウは本当に暇潰しにきただけである。
「セシリア・オルコットの情報が欲しいとかじゃないの?」
「持ってんの?」
「一応」
「流石だ」
コウは流石は裏社会の人間だと付け加えるように言い、笑った。
ーーー更識家。
古く代々から続く家系であり、その昔は忍者であり、『更識流忍術』が存在し、楯無はその忍術を既に免許皆伝し、師範でもある。
更識家は忍者の家系であり、古くから日本を裏から支え続けた組織でもあった、様々な情報を持ち、権力を持つ。
例え、日本の総理大臣であろうと彼らに指図はできない、できるのは代々彼らが仕えてきた天皇家だけである。
「まぁ、私達でも貴方の空白の十年間はまだ掴めてないわ」
「そ」
コウは素っ気なく、興味がなさそうに答える。
コウが神楽坂勉の養子になるまでには空白の謎の十年間がある。
それは誰も勉老人も楯無も世界もあの天災でさえも、コウ本人でさえわかっていないということになっている。
「だ・か・ら、教えて?」
楯無は可愛らしく首を傾げながら、お願いする。
楯無の容姿は悪くない、寧ろ誰もが振り向く美少女である、そんな美少女にお願いされたら、男なら答えてしまうだろう。
ーーーだが、コウはそんなに甘くはない。
「知りたければ、俺に勝つんだな、小娘」
「む、誰が小娘よ」
「更識楯無」
コウはニッコリと笑いながら答える。実際、前々回の人生、前回の人生の生きていた年齢と今回の人生の今の年齢を足したら、コウは既に齢六十を超える老人と分類される人間である。
しかも、その人生の大半が壮絶な人生だったので人生経験が豊富で、楯無や千冬果てにはハマーンでさえ、コウからしたら、まだまだ尻の青い小娘である。
「貴方より年上なのに、何故こんなにも説得感があるのかしら……」
「ふっ、さぁな」
コウは余裕のある笑みを零しながら、コーヒーを飲み切ると読んでいた雑誌や散乱している雑誌、小説などを全て片付けた。
やりたいことをやり、片付けも終わったので何をしようかとコウが頭を悩ませていると校内放送が入った。
【一年一組 神楽坂 幸君、織斑先生がお呼びです、至急職員室まで来てください。】
校内放送は再度同じ内容を告げるとき、コウは首を傾げた。
何故、自分は呼び出しをくらったのだ?
織斑千冬には自分の携帯番号を教えているはずだ。わざわざ、呼び出す必要はあるのだろうか?とコウは思いながら、とにかく職員室に向かうことにした。
「あら、何かしたのかしら?」
「これでも人前ではいい子だ、俺は」
「なら、そのいい子を人前以外でも出しなさい」
努力するとコウは言い残し、生徒会室を後にし、小走りで職員室に向かう。その後姿を見ながら、楯無はため息を吐きながら、ポケットに入れてあるIS学園の生徒手帳を取り出し、メモ欄のところに開くとそこにはズラリとコウと今までやってきたボードゲームの戦績が書かれていた。
頭を使うタイプのボードゲームでは完敗ばかりが続き、運が必要なボードゲームでは戦績が半々である。
まったく勝てないわけではないが勝ち星が圧倒的に少ないのが現状であった。
「はぁ……」
悔しさばかりが積もりながら、楯無は淡々と書類をさばいていく。
生徒会室からしばらくして、コウは職員室前まで来ていた。生徒会室から職員室までは何故かそれなりに離れており、とても不便である。
だが、一々学校の設計に文句を言うのは面倒なのでやめておいた。
職員室の扉を開けようとしたら、先に扉が開き、中から一人の髪の色が水色で眼鏡をかけた少女がいた。
眼鏡をかけているが何処と無く、更識楯無に似ているとコウは思った。
少女はコウに気付くと軽く会釈をする、コウも返すように軽く会釈を返し、入れ替わるようにすれ違い、コウは職員室に入り、少女は職員室を出た。
すれ違う瞬間、少女はコウを見た。
コウはそれに気付いたが、特には気にしなかった。
コウが職員室に入ると千冬がコウに気付き、こっちに来いと言うように手を振る。
コウはさっさと千冬の席まで行くと白目で死んでいるような一夏がいたが、気にしないように踏みつけた。
「で、何か用ですか?」
「いや、何普通に人の弟を踏んでるんだ、お前は……」
千冬は何事もないように当たり前のように自分の弟を踏みつけているコウにいろんな意味で戦慄を覚えた。
しばらくして、一夏が息を吹き返したように起き上がるとコウと千冬に気付くと、というか何故自分は職員室にいるのか、わからなかった。
「え、なんで、俺は職員室にいるの?」
「さて、お前らを職員室に呼んだ理由を話そう」
「え、俺呼ばれたの?俺、千冬姉に半殺しにされた記憶が……」
「気のせいだ」
いや、絶対気のせいではないとコウは思ったが「なーんだ、気のせいかー」と馬鹿面を晒して納得している一夏に「お前が救いようのない馬鹿だから、織斑千冬に半殺しにされた」なんて、言いたかったが話が長くなりそうだったのでやめた。
「で、お前達を呼び出したのはこれを渡すためだ」
千冬は散らかり過ぎているディスクテーブルの引き出しから、二つの鍵を二人に手渡した、もちろん引き出しも散らかっていた。
二人は千冬の散らかし具合に呆れながら、受け取った鍵を見ると二人とも同じ部屋番号が書かれていた。
「えーと、これは?」
「お前達の部屋の鍵だ、当初は適当な奴と同じ部屋にするつもりだったが、一部の先生や生徒達から男は男同士同じ部屋にすべきだと言われてな」
「そりゃ、当たり前だ」
その適当な奴が箒だったら、IS学園から逃げる覚悟にはコウにはあった。
「後、そっちの方が捗るし、ウッホ☆なことになるかもしれないとか言っていたな」
「よし、そいつらは誰だ、教育してやる」
コウはそれはそれは素晴らしい満面の笑みをした、満面の笑みなのに見たら、死を覚悟しそうな笑みだが。
隣にいた一夏はコウのその笑みに恐怖し、流石の千冬も頬をひきつらせながら答えを濁しながら答えた。
「……さぁ、誰だったかな」
「ちっ、思い出したら教えてくださいね、そいつとは話し合いをしたいですから」
「話し合い?」
「あぁ、
その話し合いという言葉に何故か恐怖を一夏は感じたが気にしないようにした。というか、気にしたら自分が死にそうな気がした。
「まぁ、同性同士なら気が楽だろう」
「で、荷物は?」
「そうだよ、俺のは」
「一夏のは家から適当に持ってきた、神楽坂は部屋から後で運べ」
コウはへいへいと答えた。
その時、一夏はある疑問が浮かんだ。
「部屋って……あれ、幸っていつからIS学園にいるんだ?」
「半年前だ、あの事件以来からずっといる」
「あの事件って、博覧会のか?」
「ほぅ、さすがに知ってるか」
「いや、さっきトイレでIS関連のニュースを探してたら見つけて初めて知った」
よし、今度からこいつに毎日必ず新聞やニュースを見せなければいけないと心の底から決めた、コウだった。
しばらく、部屋内部の設備の説明や寮の説明などがあり、コウは知っているので適当に聞き流しながら、箒と同じ部屋ではないことを安堵した。
「と、まぁ、こんなもんだ」
「うん、わからん」
「……まぁ、そのうち、覚えるよな、うん」
千冬は何処か諦めたかのような頷きながら、部屋割りをコウに見せた。
「ちなみに箒を隣だ」
「oh……それはそれで気まずいな……まぁ、同室じゃないだけマシか」
「え、なんで?箒は変態だけど、いい奴だぜ」
「いや、元カノと同じ部屋って気まずいだろ?」
「へぇ、そうなのか」
「ふむ、そうなのか」
「「うん?」」
その頃、IS学園の剣道部の道場では剣道部員が新しく来た新入生に試合を見せていた。箒はそれを見ながら、部屋割りのことを思い出していた。
先程、道場に行く前に山田麻耶から手渡された部屋割りの紙に書かれた部屋割りはあまり興味がなかった。
というより、IS学園にもIS自体にも興味がない、むしろISにはそれを作った姉には憎しみしかない。
「死ねばいいのに」
「む、どうした、箒」
箒の隣に座っている友人【長門 勇】が箒の小さな呟きはちゃんとは聞こえなかったが、何かを呟いたのは聞こえていた。
「いや、なんでもない」
ーーー私、篠ノ之箒は
「なんでもないんだ」
ーーー篠ノ之束を殺したいほど憎い。
最近、ダクソ2やエスコンで忙しい。