IS-蒼き鬼神ー リメイク版   作:種電

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もうすぐ寝ると天皇陛下の誕生日〜。
え、十二月のイベントはそれだけだろ?
え、クリスマス?彼女?え、なに聞こえない?


第二十二話

セシリア・オルコットは夢を見ていた、幼き日……まだ両親が健在だった頃の夢だ。幼児の頃からも今もずっと住んでいるオルコット家の代々受け継がれてきた洋館の中庭で、セシリアと両親はお茶をしていた。

いつもヘラヘラと自信なさそうに笑う父と口数が少ない寡黙な母の二人とまだ幼いセシリアの三人で代々オルコット家を支えてきた執事の家系の初老の男性が淹れたお茶を中庭を眺めながら飲んでいた。

 

セシリアは正直に言うと父親があまり好きではなかった、いつもいつもヘラヘラと自信のない笑みを浮かべ、母の顔色を伺っている父親にどうやって好意的に観れるのだろうか?故にセシリアはずっと疑問だったことがあった。

そして、夢の中の幼いセシリアは母に問うた。

 

ーーーお母様はお父様のどこが好きになったの?

 

幼いセシリアがそう問うと先程まで特に表情を出さなかった母がピクリと若干震え、チラチラと父親を見ながら言った、その頬は少し紅かった。

 

ーーーセシリア、私が彼を好きになったのは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、ここでセシリアは夢から醒めた。

夢から醒めたセシリアが最初に思ったのは、随分と久しぶりにあの夢を見たなだった。母と父を失ってからの一年間の間は毎日見ていた夢、しかし次第に時が進むにつれ、その夢は見なくなり、最後に見たのはいつだろうか?と思い出せないくらいに前だ。

そして、いつも母が父を好きになった理由を話そうとした時に夢は醒める。小さい頃はそれがずっと気になっていたのに見なくなってからはすっかり忘れていた、そしてそれと同じようにセシリアは父のあることがとても好きだったのだがそれも思い出せなかった。

 

 

 

 

 

 

しかし、何故今更こんなことを思い出したのだろうか?とセシリアは疑問に思った。この悩みを打ち明けた者はあまりにも少ないし、皆して忘れた方がいいと言った。

だから、セシリアは忘れたのだ。

なのに、何故今となって?

セシリアがそんな自問自答を繰り返しながら、周りを確認し、身体を上げる……どうやら、自分は保健室にいるようだ、薬品の臭いが鼻につく。

その薬品の臭いがあの日母と父が死んだ日を思い起こす。

 

 

 

 

 

ーーーあの日、セシリアは叔父のトレーズと買い物に出掛けていた。

母と父はとある用事が出掛けており、代わりにトレーズがセシリアの面倒を見ていた。口々に「エレガント」と煩い叔父だが優しく凛々しい人物でセシリアは叔父のトレーズが大好きだった。

あの日もトレーズ叔父様と買い物をし、ルンルン気分で歩いているとトレーズ叔父様がもうすぐ母と父が向かいに来ると言った。

実はこの日セシリアは通っている学校での図工の授業で母と父の絵を書いていた、この日が母と父の結婚記念日でセシリアは子供らしく二人に絵をプレゼントしようとしていた。

トレーズ叔父様もきっと喜ぶと言ってくれた、父の喜びは分かり易いが母の喜びは表情にでないため分かりにくいが、しかし嬉しいことなどがあると泣きそうになり、我慢のためにプルプルと震える癖があると今日叔父様に教えてもらった。

何でも知ってるんだなと感心していると叔父様は悪戯っぽい笑みを浮かべ、君の父に教えてもらったことだけどねと言った。

 

少し意外だった。

 

トレーズ叔父様が言うには父ほど母を理解し愛している男は他にはいないと何処か誇らしげに言った。

何故誇らしげに言うのか、幼いセシリアには理解出来なかったが道路を見ると見慣れた車……セシリアの母と父が乗った車がセシリア達に向かっているのに気付いた。

そして、セシリアは手を振った瞬間だった。

 

一台のトラックが、セシリアの母と父が乗った車の真横から衝突し、セシリアの両親が乗った車を巻き込みながら激しく転倒した。

 

凄まじい音が響き、セシリアの視界から母と父が乗った車が消え、トラックの荷台だけが映った。しかし、セシリアは動じなかった……否、動けなかったのだ、あまりにも唐突すぎる現実に頭が追いつかないのだ。

セシリアが呆然としているとトラックの荷台から薬品の臭いが溢れる、どうやら衝突の衝撃で荷台の扉が開き、載せていた薬品が割れたのだろう。

薬品の臭いと焦げ臭い臭いが道路をセシリアを包んだ、どうやら発火したらしい、次の瞬間である叔父のトレーズがセシリアを抱きかかえ、走り出した。

 

あっーーー。

 

その時、今日書いてきた絵がセシリアの手から落ちる、そして漏れた薬品やガソリンに発火した火が引火し、爆発を起こした。

セシリアはギリギリ爆発に巻き込まれることはなかった、トレーズが助けに来なければ死んでいただろう。

トレーズが必死にセシリアの無事を確認するがセシリアにその声は届いていなかった。

 

そして、セシリアが呆然としている間に時間は進む、セシリアの両親の葬式に衝撃したトラックを所持する会社と荷台に載せていた薬品を取り扱っていた会社などからの謝罪及び裁判。

セシリアが気付いたときには広い屋敷には自分と叔父のトレーズと執事とその孫以外に誰もいなかった。

 

母も。

 

父も。

 

もういない。

 

セシリアの思考にジワジワと現実が染み渡る。

そして、両親の多額の保険金と運送会社や薬品会社からの慰謝料などの多額の金銭がセシリアに渡った。

 

次にセシリアが気付いたときには、その金に群がる無数の人間。

自分が泣いていることをいいことに周りのやらしい人間達は金を全て奪おうとする。叔父や執事が必死に守っているが時間の問題だった、泣いている暇などなかった。

 

 

 

ーーーこの日を境にセシリアは泣くのをやめた。

 

 

 

母のように強く凛々しくあろうとした、父のような腑抜けた男を嫌い、自分に金目的で媚びてくる者を徹底的に拒絶した。

 

強く、強く、強くーーー。

 

セシリアは強くあろうとした。

誰にも負けない強者に、母の凛々しく。

セシリアは努力した、ただひたすらに努力し続けた。その努力もあり、セシリアはイギリスの代表候補に選ばれ、イギリス政府から専用機まで渡されるほどに強くなった。

両親の死を嘆くのも泣くのもやめた成果だった、セシリアは自分は強くなったと思っていたーーーしかし、あの日あの瞬間、博覧会に現れた蒼い死神により、全てを覆され、その死神を殺した蒼い鬼にセシリアの努力が無駄だったことを彼女に痛感させた。

 

悔しかった。

あの日からずっと支えてきてくれた叔父のトレーズや執事とその孫のメイド達を裏切ったようだった。

だから、コウに挑んだ。

自分の方が優れていると示すためだったが、結果は惨敗だ。実力差があまりにも大きい、小さなアリ一匹が人間に挑むくらい無謀で滑稽。それでも勝ちたいと願った、勝ちたいと思った。

負け戦とわかってもただ、ただ悔しかった。

 

「はぁ……」

 

セシリアはゆっくり溜息を吐き出し、天井を見上げた。

 

「悔しい……ですわ」

 

コウに勝つために努力もしたし、色んな人にも協力してもらった。

 

「わたくしはどうすれば……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

あまりにも唐突で突飛ようしもない単語に驚き、セシリアは声のした方を向く。

そこには無数の人間らしきモノが立っていた。

 

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

 

無数の人間らしきモノ達はただそう繰り返していた。

セシリアがよく見ると彼らはーーー人間ではなかった、正確には”元人間”だ。彼らには無数の穴があり、身体の一部分がなくなっていた、それはあのIS博覧会ででた死人と同じように見えた。

 

死人達はゆっくりとゆっくりとセシリアに近付き、手を伸ばす。

 

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

 

「ち、違います!?わたくし達は、わたくしは必死に!」

 

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

 

 

「ち、ちが」

 

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

 

セシリアが弁解しようとしても死人達はそれを無視して、セシリアに迫る、セシリアは逃げようとして気付く、囲まれていた。

しかもその死人の中にはセシリアの両親に執事にその孫とトレーズ達やあの事件を通して知り合った簪達や挙げ句の果てにはクラスメイトの箒達がいた。

死人達は手を伸ばし、セシリアを掴もうとする同じ言葉を呟きながら。

 

「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

「人殺し」「人殺し」「人殺し」

 

「わたくしは、わたくしは……」

 

セシリアは頭を抱え、赤子のように泣き喚きながら、自分の身体を丸め抱きしめた。しかし、そんなので伸びる手が止まるはずはなく、あと少しで手が届きそうになったときである。

突然、天井から光が差し込んだ、セシリアはその光に気付き、顔を上げるとその光の中から手が現れるのが見えた死人達はその光を恐れるように恨むように呪詛の言葉をセシリアに投げつけるがセシリアは無我夢中で手を握った。

そして、声が聞こえた。

 

『泣くな、俺が側にいるから』

 

その手はとても暖かった。

 

 

 

 

 

 

 

セシリアが唯一、父で好きだったところのあの暖かい手のように。

 




最近見直して思うんだ……なんであんなのをメインヒロインにしたのかな、私は。
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