「ふっ、ふっ、ふっ」
まだ日も昇ってない早朝、IS学園に複数ある様々な部の道場の一つを借りて、凰鈴音は今日行われる試合のために身体の最終調整のために
鈴が使う格闘武術【流派東方不敗】、その歴史は古く今から三千年前からある武術だと中国政府は言うが鈴の祖父で流派東方不敗の師範【東方不敗】はそんなに古くはない、むしろ流派東方不敗の始祖は自分だという。ということはだ、軽く見積もっても三千年ではなく、百分の一の三十年ぐらいしか、歴史がない流派である。
しかし、流派東方不敗は現在存在するどの格闘武術の流派より、優れているのは確かで最強の格闘武術と言われているほどである。
鈴はその流派を継ぐ者で、その実力は師範の東方不敗やキョウジュには勝てないが若干十五歳にして、トップクラスの実力者でもある。だが、本人はその結果にまだ満足はしておらず、今もこうして日々鍛錬を続けている。
「せいや!」
鈴は今の自分の実力に満足なんかしていない、いやむしろするわけにはいかないのだ。
「だぁ!」
あの日、あの場所で知った己の無力。
「はぁあ!」
思い知られた力の差。
「ーーー!」
そして、死の恐怖。
いくら、最強とうたわれるISを身に纏おうが己の心の弱さ、恐怖までは守れない。なら、どうすればいい?
ーーー簡単だ、強くなればいい。
だがしかし、それがもっと修羅の道で険しいものだと鈴は知っている。だが、その道を歩ければいけない、進むしかない。
その道の先にある、祖父東方不敗を超えるという目的を果たすために、まずそれには。
「今日は勝つ」
鈴は静かに静かに、だが決して冷めることのない熱意を持って決意する。
今日、自分は神楽坂幸に勝利するーーーと。
「システム問題なし、各関節異常なし、出力問題なし、武装異常なし」
鈴が準備を進めている頃、コウもまた今日の試合に向けての機体の最終確認を行っていた。
コンソールに映し出された膨大なデータを一つ、一つ見落としなく確認する。膨大と言っても、MSの各関節やFCS(ファイヤーコントロールシステム=火器管理制御装置)などに比べてしまえば、ISの機体データ確認は簡単だ。しかし、武装管理の面倒臭さならISの方が面倒だ。
理由は拡張領域である。
拡張領域とは第二世代ISからが搭載している武装などをしまうことが領域であり、その拡張領域に収納すれば、わざわざ手に持たずに機動力を確保したまま移動が可能で相手に武装を破壊されるリスクを低くすることができる。簡単に言えば、パソコンの内蔵ハードディスクみたいな物である。
その拡張領域により、ISは様々な環境や状況に対処し易く作られているはずである。
MSにはなかった拡張領域という物はコウにとって、最初は気味が悪い物だったが慣れてしまえば、拡張領域という物は便利な物だ。拡張領域自体に内蔵できる容量の限界はさすがにあるが装備によって、機体の機動力や重量などが変わることがないのだから。
「・・・・終わりか」
「む、む、終わったか?」
確認作業が終わり、背伸びをしようとしたとき、コウの近くにある椅子で寝ていた箒が目を覚ました。
コウが最終確認をしようとISの整備室に行く途中でばったりと出会ってしまい、互いに何をしようと何をしていたのかを軽く話し合うと箒が作業を手伝いと言い出した。ちなみに箒は自主練をしていたらしく、また今日からクラス代表戦が終わるまでは全ての部活動は休みらしい。そのため、暇だったので朝から自主練をしていたとのこと。
それも終わり、暇になったので最終確認作業を手伝いと言い出した箒だったが、箒の能力では手伝うどころか、足を引っ張るだけなのでコウは丁重に「帰れ」とお引き取り願ったが箒が話を聞くことはなく朝からうるさかったのでしぶしぶ連れて行ったが、作業の五分も立たずうちに爆睡を始めたのだ。
そこはすでに予想済みなので、特に気にせず、ずっと起きるまで放置していた、そのおかげで作業はスムーズにいった。
「では、私が愛情あるオニギリを作ってやろうではないか!」
「いらん」
どうせ、ろくでもないモノが入っているか、ろくでもない握り方をしているかのどちらかだろう。
と、コウは思っているので食べたくなかった。現に過去にろくでもないモノや握り方をされたことがあるからだ。
「味は何がいいか?」
「いらん」
「アレか?わかめか?私のわかめ味か?」
「・・・・普通のでいい、普通ので」
箒がまったく折れないので面倒になったコウはもう頼むことにした。
箒は頑固で意地っ張りなとこがある。
「よし、まかせろ」
「頼むから手で握れよ、前みたいに脇や足ですんなよ」
「ーーーチッ・・・・わかってるよ、コウ」
「おい、今舌打ちしたよな、また脇とかで握る気だったのか!?」
「今回はーーー股だ!」
「お前、馬鹿だろ!?」
中学生のころから、変わらないやり取りをしながら、二人は自炊室へと向かった。
その頃、鈴は頭を悩ませていた。
先程からずっと繰り返し繰り返し、行っている脳内シミュレーション、内容は今日の試合運びだ。
様々なパターン、様々な攻撃方法や戦略を練るもコレだ!と言えるモノが中々出来ない、それどころか勝つ未来さえも視えない。
鈴は数日前からコウのこれまでの成績や戦闘データに全てを目を通し、見ては見直し、見直しては見直しを繰り返していた。そこでわかったのは神楽坂幸という人間の異常さだ。
常人では反応出来ない攻撃に反応し、さらに敵の行動や回避ルートなどを考慮した攻撃を一瞬にして練り上げ攻撃する。
他にも様々なデータに目を通しては自分との差を思い知った。
・・・・正直な話、勝てる自信など皆無に等しい。
違うのだ、スペックが数字が。
多少の差なら気合か根性でなんとかすると言えるが、鈴とコウの能力の差があまりにもあり過ぎる。
「試合前から何負ける気でいんのよ、あたしは」
「ーーーそれはいけないことだよ、鈴」
「へ?」
鈴は自分の名前を呼ばれ、振り返る、そこにいたのはーーー。
「キョウジュ兄さん!?」
「やぁ、鈴」
同じ流派東方不敗を学び、数少ない師範代であり、鈴の兄弟子のキョウジ・カッシュがいた。
「な、なんでキョウジ兄さんが!?」
「鈴!」
「!?」
「流派東方不敗は!」
「お、王者の風よ!」
「全新系裂!」
「天破挟乱!」
「「見よ!東方は赤く燃えている!!」」
「鈴よ、お前は私や師匠に挑むときにもどうせ負けると思っていたのか!?勝ちたいと思ったことはないのか!?」
「そ、そんなことはーーーない!」
「なら、今日の試合はどうする!」
「勝つ!!」
「よし!それでこそ、流派東方不敗の継承者よ!!」
キョウジは後方へとバク転をする、その瞬間に全身タイツで赤と黒と黄色のカラー、ドイツ国旗と同じ模様の全身タイツを身に纏い、頭にはブイ字のアンテナのようなモノがついている。
これこそ、キョウジ・カッシュのもう一つの姿、ゲルマン忍者シュバルツ・ブルーダーである!!
「リィィン!久々に手合わせをしようではないか!」
「上等!!」
二人は同時に駆け出し、同時に拳を振るったーーー。
そしてーーー。
『さぁて、始まりぃまぁしたぁ!!』
『IS学園の目玉行事の一つ!クラス代表戦の始まりだぁぁぁ!!』
『実況は、IS学園広報部兼新聞部に所属する射命丸蒼葉でーす!』
わぁぁぁぁ!!と大きな歓声が第三アリーナ内に響き渡る。
第三アリーナは満員御礼、観客はIS学園の生徒や教師といった関係者や各国家の総理大臣や大統領や大臣などの国のトップ、その各国家がIS開発にて契約を結んでいる様々な企業のお偉いさん方とIS自体を管理しているIS委員会の人間達まで来ていて、そのIS委員会のお抱えのテレビ局の撮影クルーまで多くの人間が今日から始まるクラス代表戦のために来ていたのだ。来る理由はもちろん試合を観るためだが、将来の国家代表となる者達の実力を知るためや自国のISがどこまで通用するかなどの自国の戦力や他国の戦力を知るためだったり、有能な選手をスカウトするためだったりと観る理由は多種多様である。
しかし、今日の第一試合は観客皆、同じ目的である。
『さぁて、クラス代表戦!記念すべき第一日目の第一試合は目玉中の目玉!』
『世界初の男性ISパイロット対中国代表候補との試合だぁぁぁ!!』
そう、世界初の男性ISパイロットの神楽坂幸と中国代表候補の凰鈴音の試合である。“公式な場“では初めてとなる男性ISパイロットの試合、誰もがその実力を観るために知るためにここに集まり、来れないものはテレビの前に陣取る。
『では!IS学園クラス代表戦、第一試合、一年一組代表神楽坂幸選手対一年二組代表凰鈴音選手との試合を開始準備を両者お願いしまーす!』