銃声と爆音がアリーナ内に鳴り響く、コウと鈴に援護にきたセシリアの三人同時攻撃がアッザムを襲う。コウはジャイアントバズーカⅡを直撃させるがアッザムは平然と浮いていた。
(チッ、ジャイアントバズーカは駄目か!)
コウが使うジャイアントバズーカⅡはⅡというだけあって、ジャイアントバズーカの発展改良型であり装填数や弾頭や爆薬などを改良した物であり、ケンプファーが装備する実弾系統の射撃武器では最高威力の物であった。
ジャイアントバズーカとは名前の通りジャイアント、大型のバズーカ砲で重量はかなり増えているがコウが使うケンプファーには現状は然程問題はないとは言えない。重量が増えれば増えるほど、機体の加速性や機敏性が失われていき、最終的には身動きができなくなってしまうがそこまで武装を増やす馬鹿はいるはずがない、身動きが取れなければただの的か砲台でしかないのだから。
そういう意味ではMAはただの的で凶悪な砲台だ。基本的にMAは一部を除けば機動力がなく、また機敏性や俊敏性もないほどに乏しい。
何よりもその巨体故に小回りが効きにくい、これがなかなかの致命的な弱点になりやすい。
現に三人はアッザムより機動力も機敏性も小回りも上回り、効くのでアッザムの射程に入らないようにグルグルと回るように攻撃を仕掛けていた。もちろん、回るだけではなく、左右上下に動き続け、アッザムを翻弄する。
アッザムの攻撃は当たることはないが、こちらの攻撃ではアッザムに効果が薄いようだった。
(しかし、これではジリ貧だな)
自分の攻撃もオルコットと凰の攻撃もアッザムの気を引く程度には役には立つがダメージを与えたようには見えず、やがてアッザムはこちらの攻撃を無視するだろう。
そんなことをさせないためにコウはワザとアッザムの周りをまるで人間の顔の周りをブンブンと鬱陶しく飛び回る蝿のようにひつこく目障りになるように飛んでいた。ちなみにだが何故蝿は人の顔の周りを飛び回るかというと一説には人が発する臭いや二酸化炭素に魅かれるらしく蝿はそれを好んでいるとかないとか。
とにかく鬱陶しいのにはかわらない。
(時間稼ぎはできるが・・・・)
確かに現状時間稼ぎはできてはいるがこれではアッザムの撃破など不可能だ。
面倒なことになったとコウは小さく舌打ちをしながら、アッザムの顔面らしきところにジャイアントバズーカを叩き込んだ。
その頃、一夏と箒はアリーナの外に向かって歩いていた、下手に走ったら危険だ。しかし、同時にチンタラと歩いている暇などないので小走りになっていた。
箒はあれから何も喋らず語らず、黙々と出入り口を目指していた。そんな箒に違和感を感じているのは箒とは幼い頃からの知り合いで友人で互いの姉も友人である、所謂幼馴染みだ。しかし、幼馴染みと言っても小学生の後半からは箒が家庭の事情で転校してしまい、IS学園に入学がし同じクラスになるまで一切会うことが出来なかったわけだが。
それでも一夏が知っている【篠ノ之箒】と今自分の前にいる【篠ノ之箒】とは別人に見えてしまうのだった。
「一夏、もうすぐで出入り口だ」
「・・・・あ、そ、そうか」
考え事をしていた一夏は箒の言葉に反応が遅れてしまった。箒が言っていた出入り口は未だ開いておらず、誰も通っていないことが明らかだった、箒が出入り口を開くと大勢の人が逃げていく背中が見えた。
「何で皆んな、こっちの方に来ないんだ?」
「みんなで渡れば怖くないと言うやつだ、みんながいくらから僕も私も行く」
箒はまるで同じ出入り口から逃げる人々を馬鹿にするように軽く言う。
一夏はそんな箒にやはり違和感があったーーー自分が知っている篠ノ之箒は思い遣りがある人間だったはずだからだ。しかし、今一夏の目の前にいる箒には思い遣りなど微塵もないように見える、いや思い遣りはあるのだろう、ただそれを向けるのはごく限られた人間、神楽坂幸だけだろうが。
昔の箒なら他の人にここの出入り口のことを教えたはずだ。だが、今の箒はそんなことをせずにさっさと出入り口の扉を閉めた。
「さて、逃げるか、一夏」
「・・・・箒、俺は」
一夏は他の人にここのことを教えたかった、そしてもう一つ目的があった。
「ふむ、他の人に教えるのは構わないが・・・・コウのところには行くなよ」
「っ!?」
見抜かれていた、この幼馴染みには自分の考えが。
そう、一夏はコウ達の援護に今更だが行こうとしていた。
「行っても死ぬだけだ」
「!、わからないじゃないか!!」
「いや、わかる、お前は邪魔だ」
「違う、俺は、俺は・・・・」
邪魔じゃないとは言い切れなかった、いや言い切れるはずがない。
わかっている自分が行っても戦力にならないことぐらいはわかってはいるが行かないわけにはならなかった。
「お前はセシリアのように射撃が上手いか?」
全然だ、オルコットの方が圧倒的に上だ。
「鈴のように回避や直感がすごいか?」
そんなの鈴にあの野生児に勝てるはずがない。
「コウのように強いか?」
強いはずがない、勝てるはずがない、コウは強い、圧倒的に他の誰よりもコウはきっと強い。
「そんな負けばかりのお前が行って、どうなる?コウを無駄死にさせる気か?もし、そうならーーー私はお前を殺す」
「ーーー!」
和かに優しく笑う箒・・・・だが、そこには明確な敵意と殺意がある、冗談なんかではない、箒は今自分がコウを助けに行くと言ったら本気で殺しにかかってくると一夏は理解してしまった。そして理解した、今目の前にいる篠ノ之箒はもう自分が知っている篠ノ之箒ではないことに。
一夏が箒の殺意に驚愕し、動けないでいると箒は一歩また一歩と確実に一夏に近付く、その表情は狂気に染まっておりゆっくりと一夏に手を伸ばそうとした、その時である。
「あら、駄目よ、篠ノ之箒さん♪」
箒と一夏の間に割って入る影がある、その影は【俺、参上!】と書かれた扇子を広げて、自分の口元を隠して笑うIS学園の生徒会長である更識楯無が一夏を庇うように突如現れた。その表情はニコニコと笑ってはいるがここは絶対退かないという意思が溢れていた。
箒はそれでも構うものかと歩を進めようとしたが、楯無の言葉に足を止めた。
「あ、そうそう、神楽坂くんから伝言【余計なことをするな、このアホ】だそうよ」
楯無がいうコウからの伝言を一瞬疑ったがもし本当だったら自分はコウを疑ったことになり、コウの意思を無視したことになる。そんな程度でコウは自分を嫌いにはならいだろうが今までのように接してくれない可能性があるーーーそれだけは駄目だ、それだけは駄目だ、それだけは駄目だそれだけは駄目だそれだけは駄目だそれだけは駄目だ。
箒はあるで憑き物が取れたように踵を返し、スタスタと歩き去って行った、その表情には先程のような狂気の感情はなかった。
箒がいなくなったことを確認した一夏はその場にへたり込み、深いため息を吐いた。
何だったんだ、さっきの箒は?と一夏は自分が知る篠ノ之箒とはまったく違う人間を見たような気がしてならなかった。
へたり込んだ一夏を見て、楯無はクスクスと笑う。
「ふふ、怖かったかしら?」
「えぇ、助かりました」
「お礼はいいわ、神楽坂くんから貰うつもりだし♪」
楯無はさて、行きましょうか?とへたり込んだ一夏に手を差し伸べる、一夏は男としてその手を取っていいのか?と思ったがこの学園に来て、男らしいことなんて一切してないことに気付き、今更だったのでその手を取り、楯無と共にアリーナから離れていった。
その頃、コウと鈴、セシリアの三人は徐々にだがアッザムに押されつつあった。その理由は残りエネルギーである、ISは常時エネルギーを当たり前だが消耗しており、特にシールドのせいで消耗しやすいのにアッザムをまくために高機動戦を繰り広げているので余計に消耗が激しくなっていた。
それに比べ、アッザムは純粋に自身の装甲だけで戦い、放つビームの回数も発射時間もフロートによる空中浮遊の消耗エネルギーを抑えながら戦っていた。
最早ジリ貧ではなく、不利だった。
このまま戦えば、どう足掻いても現状ではアッザムに部がある。だからといって、アッザムを無視して逃げるわけにはいかない、だいたい逃げ切れるかが怪しいからだ。
(装甲が固すぎて実弾もレーザーも通らない)
アッザムってこんなに強かったっけ?とアッザムに失礼なことを考えながらコウはジャイアントバズーカからシュトルムファウストを変え、直撃させるがアッザムは平然と反撃してくる。
なら、チェーンマインならどうだろうか?アレは
とにかく、チェーンマインなら効果があるかもしれないが効果がなかったら最悪だ。チェーンマインは構造は簡単だが大型の対戦車地雷を複数つけているので中々値が張ってしまうのが頭痛のタネだったりする。
(残された手は、やっぱりこれだよなー)
殆どの武装は使い切ってしまい、残されたのはほんの僅かでその中でも唯一他の武装とは系統が違う武装がある、それは銃でも爆弾でも地雷やバズーカでもない、言ってしまえば実弾でもない、実弾武装だらけのケンプファーの唯一無二の光学兵器ーーー。
(ビームサーベル)
それは命を焼き切る光の刄だった。
「だーもー、固すぎよ、もう!!」
コウから借りていた武器の弾は既に撃ち尽くしており、今は衝撃砲と殴ったり蹴ったりを繰り返している鈴、少し前まで使っていた自前の武器はアッザムに向かって全力で投げ、虚しく弾かれ、今は砂漠に虚しく突き刺さっていたので回収する気にもならない。
だから、一番得意とする格闘技を先程から繰り出してはいるのだがアッザムは鈴を完全に脅威とは感じてはいないのかコウやセシリアに比べ、鈴に対する攻撃回数は少なかった。
ただでさえ、固くってイライラしているのに自分を無視するデカタマネギに鈴は怒りを生まずにはいられなかった。
「がぁー、無視すんな、ゴラァァ!」
ミドルキックにヤクザキック、チョップにクロスサンダー、ラッシュ、108マシンガンなどなど思いつく限りの攻撃をするがアッザムの装甲を削ることはできなかった。
「こうなりゃ、奥の手を・・・・って現状使えるかぁぁぁ!」
「何一人ツッコミしてんだよ、働け!」
いつの間にか近くに来ていたコウに注意されるが鈴は鈴で頑張ってるので反論する。
「うっさい、さっきから殴ったり蹴ったりしてるわよ、バーカ、バーカ!」
「何で殴ったり蹴ったりしてんだよ、お前は!?」
「なら、なんか頂戴!」
「ほらよ」
コウは呆れて、まだ使ってないバレルの短いフルオートショットガンを鈴に渡し、ついでにカートリッジ式なのでカートリッジも渡す。コウはポンプアクションのショットガンを装備し、スラッグ弾ではなくフラグ弾を装填する。
その時であるアッザムから何かが砂漠に向かって射出されたがコウはタイミング悪く見逃してしまった。
「なんだ、今のは・・・・凰、オルコット、敵さん何かしたみたいだ、注意しろ」
「何かって、何よ?ま、了解」
「了解しましたわ」
なーんか、嫌な予感がするなーとコウは心の中で呟いていた、こういうときは基本的にろくなことがおきない、いやおきたことしかない、コウの人生経験上。
本当にろくなことがない、ろくなことがおきない、ある日地上から宇宙に上がる前の話だ、補給部隊を叩いていたときになんか嫌な予感がしたと思ったらビックトレーにミニトレーを数隻含むMSと戦車、戦闘機を混合した二個師団に襲われたことがあった。
どうやら、補給部隊は囮だったらしいが敵のMSや武装を無理矢理奪いながら逃げることができたのは記憶に新しい、何せ第一次ネオ・ジオン戦争後第二次ネオ・ジオン戦争直前の話だからだ。
アレは嫌な戦場五本指に入る。
ちなみに一番嫌だったのは百式に乗ったシャアを核爆発から助けたときだった、見捨てればよかったと後悔した。
(杞憂ならいいんだが)
そうこう考えているとアッザムから攻撃が飛んできて、鈴から離れる。そして鈴も攻撃を受け、コウからもセシリアからも離れていく、セシリアも同じように離されていく。もちろん、コウもだ。
そして、コウは気付いた。
(あ、これ、ヤバイ)
もう気付いたときには襲い、突如砂中から現れた複数の触手に鈴とセシリアは絡め取られるーーーそれはコウが知るアッザムリーダーと形状が似ていた。
「な、なによ、こいつ!?」
「こ、これは、って、どこ触ってますの!?」
「ちぃぃ!」
コウにも一機来たが簡単に触手を避けるとアッザムリーダーは砂中に潜り込む、コウはアッザムリーダーが再び姿を現わすのを待って現れたアッザムリーダーにフラグ弾を叩き込む。着弾したフラグ弾は一つ一つが爆発し、アッザムリーダーを完膚なきまで破壊する。
「こんの、離しな、さいよ!」
「ひゃぁ、ちょ、やめ」
アッザムリーダーの触手に捕まった二人はアッザムリーダーから逃げようとするが絡みついたアッザムリーダーは二人を離そうとはしない。
(いかん、アッザムリーダーは!)
次の瞬間、アッザムリーダーから強力な電流が流れた。
「「きゃぁぁぁぁぁぁ!」」
「っ!?」
アッザムリーダー、それはガンダムなどの連邦軍の兵器を鹵獲するために作られた強力な電流を流し、敵兵器の電気系統を破壊し、パイロットを気絶させる兵器であるが本来は敵兵器の頭上からワイヤーを展開し囲んでから電流を流すのだが、鈴とセシリアの二人を襲ったアッザムリーダーは二人に絡みつき、直接電流を流し込んだ。
コウはナイフを取り出し、セシリアの背後に張り付いたアッザムリーダーに突き刺し無理矢理引き剥がす。
「大丈夫か!?」
「か、神楽坂さ、ん?」
「次はーーー」
「だっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「はい?」
鈴は絡みついたアッザムリーダーを力任せで引き千切った。そして鈴は「っ、しゃぁぁぁ!」と手をあげ、心の底から喉の奥から叫んだ。
無理矢理、アッザムリーダーの触手を引き千切った鈴にコウは若干引いてしまった。だが引いているばかりではいけない。
「二人共、大丈夫か?」
「少しは動けますわ」
「エネルギーやばい」
「・・・・さて、どうしょう?」
コウは最悪な状況に絶句した。