俺の親友が女の子になってしまった件 作:勝機を零した、掴み取れん
学校が休みの日の朝、急に士郎に呼び出されて家に向かったら彼は女の子になってしまった事件。
何がなんだかわからないがとりあえず士郎の部屋に入って色々考える事になった。
「……で、どうして女の子になっちまったんだ?」
「ぼ、僕にだってわかるはずないじゃないか! 朝起きて気づいたら……女の子に……」
そりゃそうか。昨日まで男だったやつがいきなりだもんな。
とはいえ……凄いな。見た目から明らかに違っていた。
元々高めだった声がもう少し高くなってはいる。髪の毛も男の時は首元くらいだったのが今は肩下くらいまで伸びてしまっている。けど、癖っぽいのは変わっていなかった。
あまりの出来事で着替えるというのも忘れてしまったのか、寝巻きの状態の彼……彼女だが、服がワンサイズ大きいのを着てしまったかのようにぶかぶかになっていたのでやはり身体の方も細くなってしまったのだろう。
あと、あれか。士郎が女の子になってしまったという決定的事実は。
「……恥ずかしいからそんなに見ないでよ……」
ずばり、胸であろう。
明らかにサイズが合わない寝巻きなのに胸の所だけ異常に突出しているのだ。むしろ胸でシャツが落ちないように支えてるレベル。
同学年の女子にもここまでのは見たことがない。
うーん……これでは今の士郎は女と言わざるを得まい。流石にあれがないかの確認をする訳にも行かないし……まあやはり女の子になってしまったのだろうと納得しよう。
「……士郎? どうしたの?」
そんな事を考えていたら士郎は自分の胸を両腕で隠して身体を横に向けていた。
「……優くんの視線がなんかいやらしかったから」
「あ……悪い。ちょっと流石に……な」
そういうと士郎は身体を正面に向け直す。顔はだいぶ赤いけど、俺だって顔が赤いわ。
「……優くんは、僕が、吹雪士郎だって信じてくれてる?」
「当たり前だろ。まあ、確かに女の子になってるけど面影があるのはわかるしな。それに……約束しただろ」
「そうだね……ありがとう」
それから沈黙が起きる。なんか気まずい。小さい頃から一緒にいたのに性別が変わっただけでこんなに会話が進まないものなのか。
「……とりあえず、これからどうする? 明日になったらもしかしたら男に戻ってるかもしれないって可能性はあるけど……もしそうじゃなかったらその状態で学校に行くのは……」
「……もし、戻らなかったら一応事情を先生に話して相談してみるしかないよね。流石に学校を休む訳にもいかないし……それに、サッカーを辞めたくない」
「そうか、俺も出来る限りサポートするよ」
「ありがとう。優くん」
「まずは新しい服を買った方がいいか? 今のじゃサイズ合わなくて動きづらそうだし、もしかしたら脱げるって可能性もありそうだ」
「……うん、そうだね。じゃあ、私服の方に着替えた方がいいよね」
士郎の言葉に頷いた俺は立ち上がり、部屋を後にしようとする。
「優くん? どうしたの?」
「どうしたって、今のお前は女の子だろ? 男に着替え見られるのは流石にあれだろ?」
「……あっ、そ、そうだね……ごめんね」
「別に士郎が謝る必要はないだろ」
俺が部屋を出てしばらくした後、着替えを終えた士郎が出てくる。やっぱり私服でもサイズ感がおかしい。
「お待たせ……」
「おう……それじゃあ行くか。でもどうする? 近くの服屋じゃ知り合いとかいそうだし、遠くだとそれはそれで……」
「……大丈夫だよ。優くんの好きな所に行こう」
「……じゃあ、少し遠くの所に行くか。久しぶりに電車に乗ってみたいし」
「うん、そうしよう!」
そう言って笑顔になる士郎。なんでだろう……凄く、可愛いと思ってしまう。
「あ、そうだ。これしないとね」
士郎は首元に巻いていた白のマフラーの一部を俺に巻いてくる。別に寒い時でもないのにいつもマフラーを着けているのには理由があった。それに関しては正直、考える度に心が傷んでくる。
「ふふ、僕が女の子になってもずっと一緒だよ」
気づけば俺の手を握っていた。女の子になっても、それだけだ。こいつ自身は何も変わっていない、それが当たり前なんだ。
「……女の子になったって焦ってた割には楽しそうだな」
「そんな事ないよ? でも、こうしてみると僕達ってこれからデートに行く人達みたいだね」
「やっぱり楽しんでるな……」
まあ、それでもいいや。士郎が、幸せであるならそれで構わないさ。
この、始まった有り得ない日常が俺にとってさらなる波乱を産むことになったとしてもな……。