ガールズ&パンツァー ~捨てられた男の娘~ 作:ニキ・ラウダ
今日は、いよいよ待ちに待った、黒森峰との決勝戦である。セナはみほと一緒に試合前の挨拶を済ませた後、新しい相方であるポルシェティーガーへと乗り込み、セナは目を瞑り精神統一をした。やることは全てやった・・・後は全力を相手にぶつけるのみ・・・勝って必ずみほの居場所を守り、西住家に過去自分達がどれだけ愚かな事をし、今また同じ過ちを繰り返そうとしている事を勝って教え込む・・・。セナは目を開けるとゆっくりとスコープを覗いた。
大洗の戦車8両が発進すると、途中でセナが乗るポルシェティーガーが離脱した。何故ポルシェティーガーが離脱したのかというと、7両が作戦を決行する間、敵を揺動したり、援護射撃をする為だ。セナはハッチから身を乗り出すと、いつも行っているように神経を集中させ遠くの音を聞いた。後方からかなりの数の戦車が来ている・・・19両は居るだろう・・・この数がみほ達の元へ向かうとなると、みほは何個か練った作戦の内のモクモク作戦を行う筈だ。モクモク作戦とは、後ろ2両の車両から煙幕を出し、相手の視界を奪い逃げる作戦である。セナは状況を把握すると、チームメイトに指示を出した。
「ツチヤさん。後方から敵戦車19両が接近しています。茂みに身を隠し、エンジンを停止してください。」
ツチヤは少し笑うと返事をした。
「了解!」
ポルシェティーガーは茂みに身を隠すとエンジンを切り、セナは砲塔を構えた。大洗に迫る黒森峰の車両を減らす為だ。しばらくすると、2km先に黒森峰の車両が向かっているのが見えた。セナは前方にいる車両を確認する・・・前には中戦車が5両・・・撃破出来ると確信したセナは装填手のナカジマに指示を出した。
「ナカジマさん。5連続で砲弾を放ちますので、構えてください。」
「5連続!?・・・はぁ・・・わかったよ~相変わらず無茶するんだから」
その指示を聞いたナカジマは苦笑いをした。セナは続けて操縦手であるツチヤにも指示を出す。
「ツチヤさん。私が相手車両を5両撃破したら、すぐエンジンを始動して森の中へ逃げて下さい。」
ツチヤはニッコリと笑うと親指を突き立て返事をした。
「オッケー!」
セナは他の2人にも指示を出した。
「ホシノさんは双眼鏡で大洗の動向を確認。スズキさんは定期的にみほさんに連絡をいれてください。」
セナの指示にホシノとスズキは笑顔で返事をした。
「「了解!」」
セナは黒森峰の先頭車両が1.5km先に見えると砲撃を開始した。放った砲弾は5発とも5両の急所に吸い込まれるように飛んで行き、砲弾を放った直後ポルシェティーガーは敵に居場所を察知される事なく、素早く森の中へと入っていった。セナの技術にナカジマ ツチヤ ホシノ スズキの4人は驚いていた。特にナカジマはセナの正確な砲撃に感心している。
「セナは相変わらず容赦ないね~」
ナカジマは笑いながらセナを見た。セナは目を瞑り、人差し指を上に指して説明をした。
「当たり前です!相手は黒森峰で戦車の数はこちら側より倍以上居ますし、黒森峰には秘密兵器がありますから出し惜しみは出来ません!」
一方黒森峰は5両一気に減った事でパニックになっていた。
「すみません!撃破されました!敵の位置確認出来ません!」
その報告を聞いたまほは誰が砲撃したのか直ぐにわかった。自分の弟であり、自身がリベンジを誓っていた、走るコンピューター 二木セナである。しかし、まほの実力を持ってしても、セナがどの位置から砲撃したのか予測出来なかった。
「やはり、簡単に居場所は教えてくれないか。」
まほはそう言うと、唇を少し噛みしめた。
観客席でも軽く騒ぎになっていた・・・黒森峰の戦車がいきなり撃破されたからだ。ポルシェティーガーがテレビで確認出来ない位置から砲撃をした為、観客にはいきなり黒森峰の車両が撃破されているように見えていた。
セナが砲弾を放ったとわかっている、オレンジペコはピョンピョン飛び跳ねて喜んでいる。
「流石セナです!」
ダージリンも微笑みながら紅茶を飲んで戦いを見つめていた。
「セナ・・・中等部で私と出会った時、近距離で砲弾を当てれなかったあなたが、ここまで成長してくれた事を私はとても誇りに思いますわ。」
カチューシャとノンナも決勝戦に駆け付けていた。カチューシャはテレビ画面で大洗の車両が確認出来ないにも関わらず、黒森峰の車両がいきなり撃破されたのを見てセナが撃ったと確信したが、撃った位置が全くわからなかった。
「はぁ!?どこから撃ったの!?」
「恐らく画面に捕らえられない位置から撃ったか・・・森の中から撃ったのでしょう。」
セナの技を身を持って体験したノンナは、目視出来ない位置から砲弾を放ったと確信していた。そしてカチューシャは少し顔を赤らめながら笑った。
「流石!カチューシャが一目惚れした"男の娘"ね!」
ノンナがカチューシャを見ると、カチューシャは顔を真っ赤にして、そっぽを向いていた。
サンダースのケイ、アリサ、ナオミの3人も決勝戦を観に来ている。ケイもセナが砲撃したとわかっていた。
「なるほど・・・こうやって私達もやられちゃったわけね!」
ケイの言葉を聞いたアリサは立ち上がるとケイの方を向いた。
「やはり!誘拐してサンダースにいれましょう!」
それを聞いたナオミはアリサの頭を叩いた。
「だから!それは駄目だって言ってるだろう!」
そして・・・西住流の家元である西住しほも、いきなりの出来事に目を見開いて驚いていた。
「・・・一体どこから撃ったの?」
しほが驚いていると、セナの義理の父親である二木ラウダが横に並んだ。ラウダは横に並ぶと笑顔でしほを見た。
「素晴らしい選手でしょう?」
しほは、ラウダを見つめるとゆっくりと口を開いた。
「一体誰が・・・」
ラウダは真剣な顔で答えを言った。
「二木セナ・・・私の子供で、あなたが産んだ双子のもう一人・・・16年前西住流が男で戦車道が出来ないから要らないと言って捨てた"男の娘"ですよ・・・」
決勝戦でセナにスポットライトが当たり始めたー!