ガールズ&パンツァー ~捨てられた男の娘~   作:ニキ・ラウダ

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寒い・・・寒いです。頑張っていきましょう!


第23話 迫り来る恐怖

現在、大洗は丘の頂上を拠点に黒森峰を攻めているのだが、ヤークトティーガーを前に砲弾が通らず苦戦しており不利な状況に・・・さらには黒森峰の車両に全方位を囲まれ、絶体絶命の状態の為、みほは撤退する事を選択する。セナ率いるレオポンチームは、みほ達が逃げれるように、黒森峰の隊列に突っ込んで敵を混乱させる"おちょくり作戦"を実施し、退路を作っている最中である。セナは、ヤークトティーガーを撃破した直後にハッチから顔を出した。神経を研ぎ澄ませ全周囲の状況を把握する。セナは、最も車両の数が少ない場所を探し、そこへ向かう事にした。セナはツチヤに指示を出す。

 

「ツチヤさん!丘の裏の方は車両が少ないので、そちらへ向かってください!そこで退路を切り開きます!」

 

ツチヤはセナに笑顔を見せた。

 

「オーケー!しっかり掴まっててねー!」

 

ツチヤは、スロットル全開で丘の裏へと突撃していった。

そして、みほはどうやってこの状況を打破し逃げるか考えていた。ポルシェティーガーがおちょくり作戦で敵を混乱させようとしているが、中々退路が見えない。するとウサギさんチームから無線が飛んで来た。

 

『こちらウサギさんチーム!おちょくり作戦を実施していた筈のポルシェティーガーが突如消えました!』

 

その連絡を聞いたみほは、ハッチから顔を出して周囲を確認する。確かに前方にポルシェティーガーの姿は確認出来ない・・・みほがレオポンチームに確認を取ろうとした時、セナから無線が飛んできた。

 

『こちらレオポンチーム!後方の敵の車両数が少ない為、煙幕を撒いて敵車両に体当たりし、煙幕の中心あたりに退路を作ります!』

 

セナの無線と同時に後方から煙幕が上がり、ガンガンとポルシェティーガーが体当たりしている音が聞こえた。それを見たみほは、全車両に後方から逃げるように指示を出す。全車両撤退しようとした時、カメさんチームの38tが撃破された為、みほは怪我が無いか確認を取る。

 

『怪我は!?』

 

杏は笑いながら返事をした。

 

『大丈夫。大丈夫~』

 

そして全車両煙幕の中を潜り抜け撤退した。黒森峰の副隊長エリカは大洗に良いようにやられご立腹である。

 

「なんで!知らない間に戦車がやられてたの!?それに知らない間に丘の裏に行ってたし!ヤークトティーガーは撃破されるし!あの不良品戦車!もう訳わからない!」

 

エリカは、酷く取り乱し興奮状態になっていたが、まほはエリカに冷静になるように言った。

 

「あまり取り乱すな・・・興奮した状態で戦うと走るコンピューターの術中にハマるぞ?お前が取り乱すのも恐らくヤツの狙いな筈だ。とにかく・・・大洗を追う。」

 

観客席では、オレンジペコが大洗が危機的状況を出した事でホッと手を撫で下ろしていた。

 

「なんとか切り抜けましたね・・・でもセナは何故、退路を切り開く為に敵戦車を撃破せず煙幕を撒いたのでしょう?」

 

オレンジペコの疑問にダージリンが真剣な顔で答えた。

 

「恐らく・・・弾を温存するためですわ・・・後に出てくる黒森峰の秘密兵器に備えて。」

 

オレンジペコは何かわかったようでハッとした表情を浮かべた。

 

「そうでした・・・まだ黒森峰には!」

 

大洗の隊列の最後尾のポルシェティーガーの中ではセナが神経を酷使した時の副作用である吐き気に襲われ、ハッチから顔を出している。事情を知っているナカジマはセナの背中を心配そうに擦っていた。

 

「流石にやり過ぎだよ・・・常に神経集中させてる状態じゃもたないよ?」

 

セナはナカジマを見ると、ニッコリと笑った。

 

「えへっ♪」

 

セナの笑顔を見たナカジマはムッとした表情でセナの両頬を引っ張った。

 

「私がそんなお色気攻撃に騙されるとでも~?」

「痛い!痛いですぅ!」

「絶対に無理しないでね!」

 

ナカジマが強くそう言うと、セナは少し目に涙を浮かべながら頷いた。

大洗は、川岸にたどり着き、一旦停止した。川をどう渡るか、みほとリーダー間で話し合いが行われており、みほは上流に一番重いポルシェティーガーを置き、川の流れを緩くして、渡る事を提案する。みほの考えを予測していたセナは、会議には参加せず周囲を警戒している・・・近くに黒森峰が迫ってきているからだ。そして横に並び川を渡り終えようとしている時、ウサギさんチームのM3リーがエンストし、立ち往生してしまった。操縦手の桂利奈は何度もセルを回すが、かかる気配が一向に無い。M3リー車内から悲痛な叫びがセナに聞こえてきた。

 

「どうしよ!?エンジンが止まっちゃった!!」

 

桂利奈は、今にも泣きそうな表情で何度もセルを回している。その状況を見たセナは、直ぐにロープを手に外に飛び出した。直ぐ後ろに黒森峰が迫ってきており、砲撃もしてきていたからだ・・・セナは、一番端からロープを持ち、横に並んでいる戦車を足場にジャンプして行った。セナがM3リーに着地した頃、連絡を受けたみほがⅣ号の外に出て来ると、セナが知らぬ間にM3リーの上に立っている事に驚愕する。

 

「セナさんいつの間に!?」

 

セナは大きな声でみほに叫んだ。

 

「スターターモーター故障!押しがけでエンジンを掛けるのでM3リーを引っ張って下さい!」

「わかった!」

 

そう言うとセナは、ロープに小さな材木を巻き付け、勢い良くⅣ号の上に居るみほの胸元に投げた。みほがそれを掴むと、急いで車両を陸に上げM3リーを引っ張る。

その光景を見ていたエリカは、みほとセナに対して愚痴を溢す。

 

「全く・・・相変わらず甘いわね・・・」

 

エリカは状況を見る為、戦車から顔を出し双眼鏡を覗くと・・・そこにはM3リーの上で小動物の様に周りをキョロキョロしながらトテトテと歩くセナの姿が見えた。その姿は、少し危なっかしく、滑って川に落ちてしまいそうだった・・・その姿は何だか可愛らしい・・・。双眼鏡をしばらく覗いていると、隊員達の声が聞こえてきた。

 

「副隊長!副隊長!!」

「っ!?なっ!何よ!」

 

エリカは我を忘れ、双眼鏡を覗く事に夢中になっていたようだ。

 

「指示を!」

 

エリカは、頬を少し赤らめた状態で咳払いすると、指示を出した。

 

「大洗を攻撃しながら追いなさい!」

 

その頃Ⅳ号の車内ではセナの話題が上がっていた。沙織は、セナの隠密性に頭を悩ませていた。

 

「セナちゃんのおかげで、ウチは順調に黒森峰の戦車の数を減らせてるけど・・・突然消えて、急に現れるから心臓に悪い・・・」

 

沙織がそう言うと、優花里も口を開いた。

 

「セナ殿と西住殿は臨機応変に対応出来るから凄いですよね!」

 

それに対してみほは、少し笑いながら首を横に振った。

 

「ううん・・・セナさんの方が私より臨機応変に対応出来てるよ。」

 

みほの表情は少し悲しげだった。セナが凄すぎて劣等感を感じているのかもしれない。それを見た麻子が表情を変えずに口を開いた。

 

「いいえ・・・私より、臨機応変に対応出来ているのは、みほさんです。みほさんはその場で直ぐに案が出て来ますが・・・私は事前に沢山の予測や作戦を立てて、それにただ当てはめているだけ・・・もしみほさん相手に本気で戦ったら・・・予想外な作戦を立てられて、私が調子を崩して負ける可能性の方が大きいでしょう・・・。」

 

その言葉を聞いた華は、誰の言葉か予測が付いた。

 

「セナさんの言葉ですか?」

 

華の疑問に、麻子は頷いた。

 

「あぁ・・・この前セナと2人で出かけた時に聞いた・・・あっ」

 

麻子の発言にⅣ号の車内が静まり返った。沙織は麻子の背中を足で軽く蹴りながら言った。

 

「麻子!?セナちゃんを独り占めなんてズルいっ!」

 

優花里も華も同様に麻子に抗議をしている。

 

「冷泉殿!抜け駆けはズルいですよっ!」

「そうです!私だってまだ2人きりになった事が無いんですよ!?」

 

みほも小声でブツブツと呟いていた。

 

「今度、セナさんの部屋に夜這いしてみようかな・・・」

 

自分の失言に怠そうな顔をする麻子と、不満を吐露する4人だったが、後方から聞こえた砲撃音で目が冷めた。

ポルシェティーガーが、丁度橋に差し掛かった所で、セナがハッチから顔を出し、後方の黒森峰との距離を確認すると、ツチヤに指示を出した。

 

「フルパワーで履帯を空転させて橋を崩してください。」

 

ツチヤは笑いながら親指を立てた。

 

「ここが腕の見せ所!セナの手で!生まれ変わったポルシェティーガーの力を見るが良い!」

 

ポルシェティーガーが勢いよく履帯を空転させ、橋を渡ると橋が積み木の様にバラバラと崩れ落ちた。セナの改良でモーターに手を加えられ、少し軽量化されたポルシェティーガーは、物凄い加速で前方にいた戦車を追い抜いて行った。その光景を見た優花里は驚いた・・・

 

「いやいやっ!あれ!どう考えても本来のポルシェティーガーの性能遥かに超えてますよっ!?」

 

その後、ポルシェティーガーを筆頭に、大洗の隊列は山道ワインディングロードを抜け、住宅街へとやって来た。しかし・・・そこに待ち受けていたのは大きな鼠だった・・・




明日、何があるかわからないから生きるのが楽しいんだよ・・・坊や
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