ガールズ&パンツァー ~捨てられた男の娘~ 作:ニキ・ラウダ
セナ率いる、一年生チームはこれから相棒になるM3リーに乗り込む。
一年生チームの阪口桂利奈は、戦車の動かし方がわからず困っていた。
「えっとどうすれば・・・」
セナは、困っている桂利奈に、優しく教える。
「まずエンジンを始動させましょう。 右にあるボタンの中にIGNITIONと表示があるボタンを押します。」
「これかな?」
桂利奈がボタンを押すと、エンジンが動き出し、セナはエンジンの異常が無いか軽く点検をし、桂利奈に引き続き戦車の動かし方を教える。
「エンジン異常なし・・・次はブレーキを掛けながらクラッチを踏む」
「出来ました!」
「そしたら右にあるレバーを動かします。」
「うぅぅぅん!!硬い!」
桂利奈が、シフトレバーを動かそうとするが、びくともしない為、セナは桂利奈の手に自分の手を重ね、一緒にレバーを動かす。
「っ!///」
セナが手を重ねた瞬間、桂利奈の顔が真っ赤になったが、セナは気にせず教育を続ける。
「ではブレーキを離しクラッチを徐々に繋げながらアクセルを吹かしましょう」
桂利奈がクラッチペダルを徐々に戻し、アクセルをゆっくり踏むと、戦車がゆっくりと動き始めた。
「動いた!」
「ではこのままスタート地点へと向かいましょう。」
セナは桂利奈に操縦のいろはを色々と、教えていく。
すると大野あやが、セナに話しかけた。
「あのーセナさん」
「はい?」
「この試合勝てるんでしょうか?」
大野あやは、不安そうな顔している。セナは、この試合に、勝利する事の難しさを、一年生達に説明を始めた。
「みほさんが相手ですから簡単にはいかないでしょう。私の戦闘スタイルもチーム戦向けじゃありませんし」
セナは、自信が無さそうに自身の戦い方が今回不利になる可能性を話したが、車長の澤 梓は、セナの戦い方に興味津々なようで、セナにあるお願いをする事にした。
「セナさんの、戦い方見てみたい。」
「かなり地味ですよ?」
「具体的には?」
「じっくり隠れて獲物を待つ・・・言ってしまえばハイエナさん作戦という感じでしょうか?最後は恐らくみほさんチームとぶつかるでしょうからその時に見せて差し上げます」
セナは、少し微笑みながら、一年生達に自身の戦い方の説明を行った。
そして、梓はある疑問をセナに聞いてみる事にした。
「どうして最後西住先輩達に当たるとわかるんですか?」
その質問に対し、セナは真剣な顔で、説明をする。
「恐らく・・・みほさん達に勝つ為に、会長チームとバレー部チーム 歴女チームが手を組みます。相手は、西住流ですから、初心者チーム単独で戦いを挑むのは、裸で戦場に突っ込むようなものです。多分手を組む3チームは撃破されるでしょう・・・スタート地点に着きましたね?停車しましょう。」
スタート地点に着いたM3リーは停車する。
セナは魔法瓶を取り出し7つのティーカップに紅茶を入れ飲みながら試合開始を待つ。セナは6つのカップを一年生達に渡す。
「皆さんも紅茶を飲んでリラックスしましょう♪」
「はっ・・・はい?いただきます。」
一年生達は、戸惑いながらも、カップを受けとった。
「授業中に紅茶なんて飲んでもいいんですか?」
真面目そうな梓は授業中に、紅茶を飲むのに抵抗があるようだ。
「試合中に、飲み物を飲むチームもあったりしますから、問題ありません。緊張をほぐしてあげるのも、車長の役目です。」
セナは少し首を傾けながら、微笑んだ。
すると、蝶野の試合開始の、コールが聞こえてきた。
「みんな!スタート地点に着いたわね?ルールは簡単!戦車を撃破するだけ!戦車道は礼から始まり礼に終わる!みんな!礼!」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
いよいよ、練習試合が始まる。
セナは、スタート直後戦車の横のハッチから、身を乗りだし周囲を確認する。
「スタートするのはしばらく待ちましょう」
セナの発言が、意外だったのか、車長の梓が不安そうな声をあげた。
「えっ!?敵が来るかも・・・」
「敵は、私達から離れてⅣ号に向かっており、バレー部チームと歴女チームがⅣ号と交戦中です。Ⅳ号は、最初生徒会チームを潰す予定だったみたいですが、予定が狂ったようです。」
セナが、何も見えない状況で、他チームの状況を説明した事に皆驚いていた。特に桂利奈は、目を点にしながら驚いていた。
「なんでわかるんですか!?」
「耳には自信がありますから、では、威嚇射撃をしてみます・・・私が砲撃のお手本を見せますので、皆さん静かにしてて下さいね?」
セナはまず3号突撃砲の位置を確認するため耳を澄ませる。
(敵の位置は、エンジン音と地面の振動と音の反響を考えても射程圏にいる。敵の位置と戦車の向きをを完全把握・・・風は追い風・・・地理を考えたら十分届く・・・角度を合わせて・・・発射!)
ドンッと凄い音を出し発射され、一年生はキャャャアと耳を抑えながら、悲鳴をあげている。
すると蝶野のコールが鳴った。
「有効!Cチーム行動不能!」
Ⅳ号車内では、見えない敵からの的確な射撃に軽くパニックになっていた。
どうしても、敵の正体を確認したいみほは、周囲を見回していた。
「敵の姿が見えない・・・一体どこから・・・」
もしやと、優花里がみほにある質問をした。
「西住殿!砲撃は上から来ましたか?」
「うん、上から来たよ」
優花里は考えた末、ある結論に辿り着く。
「セナ殿・・・」
「えっ!?セナさん!?」
みほは、セナが撃ったのではないかという、優花里の推測に驚いた顔をしていた。優花里は、続けてセナの過去の実績を話した。
「セナ殿から、あまり他言はしないようにと言われていましたが、セナ殿は中学生時代は戦車道をしており、一部の隊長格の人達から、走るコンピューターと呼ばれてました。その由来は、一ミリも外さない砲撃、ミリ単位で戦車を操れることからそう呼ばれていました。」
その説明を聞いた沙織は、大声を上げながら、驚いた。
「ヤバすぎじゃん!」
「お姉ちゃんが負けた相手・・・」
「もう1つ、恐れられている事があります。敵の姿が見えなくても、敵の位置を把握できるんです。」
みほは、セナが過去に耳が良いと言っていた事を思いだし、ハッとした顔をした。
「確か戦車を探しているとき、耳が良いって・・・まさか!」
「はい、セナ殿は遠くからでも地面の振動や音の大きさ、反響の仕方で敵の正確な位置と戦車の向きを把握できます。」
「じゃあ位置がわからないじゃん!?」
みほ達は、敵が見えない恐怖に襲われたが、みほは、
不思議とセナと真剣勝負がしてみたいと思った。
「戦おう!」
「みぽりん本気!?」
「うん・・・セナさんと本気で戦ってみたい。」
「では頑張りましょう!」
「その方がセナ殿も喜ばれます!ではパンツァー!フォー!」
高台から、セナの戦いぶりを、見ていた蝶野はセナに感心していた。
「あの距離から敵も見えないのに、さすがよセナさん、西住流も勿体ないことをしたわね、あんな素晴らしい才能を持った子供を捨てるなんてね。」
M3リー車内では、先程の遠距離砲撃が当たった為、騒然としていた。
「威嚇射撃のつもりでしたが、気が変わりましたので撃破しました。」
先程の砲撃を見た、一年生達は唖然としており、砲手である、あやは手を振りながら無理だと、セナに訴える。
「あんな芸当無理無理!」
「これが私の戦い方の1つです。地味でしょう?」
セナは、少し苦笑いをしながら、一年生達に言ったが、桂利奈は、セナに尊敬の眼差しを向けていた。
「そんなことないです!凄いです!」
「ありがとうございます。」
セナがニッコリと微笑むと、桂利奈は顔を真っ赤にしながら、うつ向いた。
「あうっ///」
「もしかして桂利奈・・・セナさんに惚れちゃった?」
それを見た、梓が桂利奈をからかう。
「ちっ!違う!///」
「では今度は皆さんにやってもらいます。私は少し休憩するのでわからないことがあれば聞いてください」
「「「「はいっ!」」」」
セナは端に座り休憩を取る。耳を澄ますと、かなりの集中力を持っていかれるので、この技は何回も使えない。
セナは5分程仮眠を取ることにした。セナが目を覚ますと、車内が大パニックになっていた。どうやら、Ⅳ号に戦いを挑もうとしたが、怖くなって逃げ出そうとしているようだ。
「西住流マジヤバいって!逃げよう!」
車長である、梓が逃げる事を提案し、桂利奈が逃げようとアクセルを踏むが、履帯がぬかるみにハマって、動けない。それを見たセナは、桂利奈と運転を変わる事にした。
「桂利奈さん、よく頑張りました。運転を変わりましょう?」
「セナさん!お願いします!」
セナは運転を変わると、まずぬかるみから脱出する為に、戦車を左右に傾けながらアクセルを踏んだ。すると、戦車はゆっくりとぬかるみを抜け始めた。ぬかるみを抜け木と木の間を抜けていく。
ちなみに横の隙間は 0.5mmほどしかない、桂利奈はセナの技術を素直に凄いと思った。
Ⅳ号車内では、M3の動きが変わった事に騒然としていた。みほは、M3の運転手の操縦技術に驚いていた。
「M3の動きが変わった!」
「なんか木と木の間をすり抜けてるよ!?」
途中でⅣ号の操縦手となった、冷泉麻子も少し目を見開いて、操縦技術に驚いている。
「戦車の車幅を考えても横の隙間は0.5mmしかない・・・」
「狙おうにもM3リーの動きが複雑過ぎて照準があわせられません!」
優花里の報告に、みほは少し苦い顔をした。
M3リー車内でも、セナがⅣ号の操縦手が変わった事を見抜いていた。
「Ⅳ号の操縦手が変わった・・・かなり賢い方のようですね・・・」
その言葉を聞いた、梓はセナに指示を求めた。
「作戦はどうしましょう?」
「主砲!副砲!装填!発射準備!」
セナは、迷わず主砲と副砲の砲撃準備を指示した。セナの指示に、主砲の砲手である、山郷あゆみはびっくりした。
「どうするんですか!?」
「そのまま真っ直ぐ狙いを定めて私が合図したら副砲、主砲の順で撃って下さい!」
「わかりました!」
2人の装填手が、装填完了をセナに報告する。
「装填完了~」
「こっちもー!」
砲手2人も準備が出来た事をセナに報告する。
「準備できました!いつでもOKです!」
「私も準備完了です!」
準備完了の報告を聞いた、セナはエンジンを全開にするとⅣ号へ向かい、Ⅳ号も応戦するために前進しM3リーに向かい合う形となり、2台とも射程圏へと入った。
そして両チームの砲撃指示が飛ぶ。
「「撃てっ!」」
Ⅳ号は止まったまま、砲弾を放ち、M3リーはアクセル全開で、走りながら撃った。
M3が撃った一発目の副砲は、Ⅳ号の放った弾にぶつかり相殺され、セナは主砲を撃つ際に数cmほど車体の向きを変えた。
その光景を見た優花里は、セナの華麗な戦車捌きに見惚れた。
「これが走るコンピューター・・・二木セナ。」
そして、Ⅳ号に弾が被弾すると同時に、M3リーのエンジンもエンジンブローを起こし、2台同時に白旗を挙げると、蝶野のコールが鳴った。
「Aチーム!Dチーム!両者行動不能!両者!引き分け!」
模擬戦が終わり、蝶野が今日の試合の感想を述べる。
「みんな初めてにしては良い動きをしてたわ!特にAチーム、Dチーム良かったわ!こんなハラハラした戦いは初めてよ!みんなこの調子で鍛練に励むように!以上!」
蝶野が感想を言い終わると、桃が号令をした。
「気を付け!礼!」
「「「ありがとうございました!」」」
その後セナは、みほ達に一緒に温泉に行こうと誘われたが、自分は性別を偽っている為、セナはその誘いを丁寧に断った。
温泉に浸かっているみほ達は、セナの戦いに感動していた。特に優花里は走るコンピューターの腕前を直で見れた事に、テンションが上がっていた。
「凄かったですね!セナ殿の動き!」
セナの動きが凄かったという、優花里の感想に、沙織と華は首を傾げた。
「動き・・・ですか?」
「セナちゃんも凄かったけど1年生達も凄かったね!」
「いや・・・ちが」
みほが沙織の発言を訂正しようとした時、麻子が割って訂正をした。
「あれは全てあの操縦手のおかげだ」
麻子の発言に、沙織は首を傾げる。
「どういうこと?」
みほは、沙織にセナが行った事を説明した。
「武部さん・・・砲塔の角度調整や発射タイミングも全部セナさんが1人でやってたの」
「でもセナちゃんは、操縦してたでしょ!?どうやって・・・それに砲塔は動いてなかったよ?」
「発射角度は、戦車をわざと急発進させ遠心力で戦車ごと砲塔を上に向かせ、左右の向きはハンドルだけで調整していた・・・」
麻子はジャグジーが気持ち良いのか、目を瞑りながら、沙織に説明をした。それを聞いた華も驚きを隠せない。
「えぇ!?そんなこと可能なんですか!?」
「普通は無理、セナさんだからこそ成せた技だよ。」
みほは、苦笑いを浮かべながら、華に言った。
「それだけじゃありませんっ!普通戦車は止まって砲塔の照準を合わせますっ!それをセナ殿は走りながら戦車の操縦だけで照準を合わせ!さらに砲弾の発射タイミングすらも少しのズレもなく合わせてましたっ!セナ殿は発射角度!発射タイミング!それを走りながら頭の中で計算していたんですよっ!まさか走るコンピューターの技を敵目線で拝めたなんてっ!」
優花里はかなり興奮気味にセナについて解説するが、沙織には、1つ気になる事があった。
「でもどうしてそんな凄いのに中学の時は有名にならなかったんだろ・・・」
「それは沙織が答えを出している・・・」
「えっ!?私!?」
麻子が返した返答に沙織は驚いた。それはそうだ、麻子は沙織自身が答えを言ったというのだから。
麻子は沙織に、説明をする。
「沙織が最初に言った・・・『1年生も凄かったね』と・・・つまり、沙織はその操縦手が行っていたことを1年がやったと錯覚していた・・・戦車道を長く経験している者は、戦車の微々たる動きに気付けるが、初心者や経験が浅い奴は沙織の様に全く気付けない・・・」
麻子の冷静な分析力と、操縦技術を見たみほは、麻子に戦車道を勧める事にした。
「ねぇ冷泉さん・・・冷泉さんも戦車道始めない?」
「そうだな・・・遅刻のし過ぎで単位が不味いしな・・・やるか・・・あの操縦手のロリ娘も気になる・・・」
「えっ!?あの麻子がすんなり入ることを了承するなんて・・・」
沙織は麻子が戦車道にすんなり入ったことに驚いているようだ・・・
次の日、IV号チームの五人は、他チームの、変わり果てた戦車の外観を見て驚愕した。ピンクに金とそして金赤色・・・そして一台にはバレー部復活の文字があった。
「むむっ・・・私達も色を塗り替えれば良かったー!!」
「38tが!三突が!なんか別の物にぃぃぃ!あんまりですよねっ!?」
「フフフッ」
改造された戦車を見たみほは、ふふっと笑った。
「西住殿?」
「戦車をこんな風にしちゃったのは驚いたけど・・・戦車がこんなに楽しいと思ったのは初めて。」
そして麻子はとある事に気付いた。
「あのロリは何処へ行ったんだ?」
「「「「あっ」」」」
皆は、セナが居ない事に気付いていなかった。
一方生徒会は、何やらコソコソしている。
「いいねぇ・・・この勢いでヤッちゃおっか」
生徒会長の杏はニヤニヤしてなにか企んでいるようだ。
「はっ!電話して参ります。」
桃は杏の考えに気付き、直ぐに電話をしに向かった。
「えぇっ!?何するんですかぁ!?
生徒会室では、ある場所に電話をしていた。
《大洗戦車道復活されたのですね?おめでとうございます。練習試合?えぇ喜んでお引き受け致しますわ・・・
引き受けたからには全力で行かせていただきますので》
そしてセナはというと、自動車部に用事があり、自動車部に行っていた。
自動車部の1人である、ツチヤに空いているスペースを貸してくれとお願いをしている。
「工場の空いているスペースを貸してほしい?」
「はい、実は・・・」
「あれ~?セナだ~」
セナが声をした方向を見ると、懐かしい顔があった。昔セナが自動車レースをしていた時、チームメイトだったナカジマだった。
「あっ!?ナカジマさん!?まさかこんな所でまたお会い出来るなんて!」
「久しぶり~元気だった~?」
2人が固い握手を交わし終わった後、ツチヤはナカジマにセナとの関係を聞いた。
「知り合い?」
「うん。昔チーム・ロータスでチームメイトだったんだよ~」
「ナカジマの元チームメイトなら安心だね!いいよっ!使って!」
「セナ~また何かする気だね~セナが行動起こすときは決まって何かする時だから」
ナカジマは少しにやけながら、セナの方を見た。セナは、すぐにとある会社に連絡をする。
《もしもし二木セナです。すぐに例の戦車の新品のエンジンとフレーム 足回りの部品の発送をお願いします。お金は口座に振り込んでおきますので・・・はい・・・ではまた良い取引を》
戦車の新品の部品を寄越せと言ったセナに、ナカジマとツチヤの2人は驚いた。
「「はぁ!?全部新品の部品!?」」
「後はお楽しみにっ」
セナは、2人にウィンクして、自動車部を後にした。
セナが車庫へ到着した時、みほ達が何かを捜索していた。
「もぉー!何処へ行ったのよー!」
「やはり見た目が小さいので誘拐されたのでは・・・」
「そんな・・・セナ殿」
「セナさん何処へ行ったんだろう・・・」
皆がセナを探していると、本人が帰ってきた。
「あの・・・どうかなさったんですか?」
いきなり話しかけられたみほが、後ろを振り向くと、そこにはキョトンと顔をしたセナがいた。みほはセナを見ると、安心のあまりセナに泣きながら抱きついた。
「!?・・・ふぇぇぇん!良かった!良かったよぉぉ・・・」
「・・・心配を掛けてすみませんでした・・・みほさん・・・」
泣いているみほを見たセナは、みほの頭を優しく撫でた。みほの泣き声を聞いた沙織もやってきた。
「居たぁぁぁあ!もう!無断遅刻なんて!麻子じゃないんだからっ!」
「沙織・・・うるさい」
セナは麻子を見ると昨日リアカーに乗せた少女だとわかった。
「あっ!昨日の!」
「やはり昨日私を拾ってくれた人か」
「知り合い?」
「あぁちょっとな・・・」
すると、優花里も華も慌てた様子でやって来た。
「セナ殿!ご無事でしたか!」
「セナさん!探しましたよ!」
すると、セナを見かけた杏が、こちらへやって来た。
「セナちゃんかぁ~用事は終わったー?」
「はい。無事終わりました。」
杏が、セナが来ていなかった事情を知っていた事にみんなは驚いた。
「え?会長知ってたんですか?」
みほは目に涙を浮かべながら、杏を見た。
「うん。朝私に連絡があったからねー。」
「知ってたんならなんで教えてくれなかったんですかー!?」
「まぁまぁ、過ぎた事は気にしない気にしない。で・・・どう?セナちゃん!この戦車達」
杏は変わり果てた戦車を指差し、セナに感想を求めた。
「まぁ・・・とても個性的な戦車ですね」
セナは満面の笑みでそう答えた。
「うん!うん!セナちゃんならそう言ってくれると思ってたよー!よし!揃った所で練習始めよー!」
セナは、指導のため1年生が乗るM3リーへと乗り込む。
セナは、本来であればⅣ号に乗る筈だったのだが、操縦手は麻子がすることになり、セナの枠は無くなってしまったのだ。セナは、桃の怒号が聴こえたが無視して1年生に丁寧に射撃の仕方、操縦の仕方、車長の役目などを的確に指導した。
「あまり前へ出るな!遮蔽物を使って!身を隠せ!」
セナは、桃の指導方法にため息がでた。
「あのような怒号は意味がない・・・体力の無駄です・・・言ってる事は正しいですが・・・それは車体色が正常の場合の隠れ方です・・・あのような指導の仕方ならお家に帰ってお布団で寝た方がいいです・・・」
セナが、桃の指導を見ていると、桂利奈とあゆみがセナを呼ぶ。
「セナさーん!この道なんですけどー!」
「スコープのメモリの見方がー!」
「はい!は~い!すぐ行きます!」
この日、セナは大忙しだった。
そして、練習後に重大発表があった。
「今日の練習ご苦労だった。突然ではあるが今どの日曜日練習試合を行うことになった!相手は聖グロリアーナ女学院だ!」
この発表に皆騒然としていた。
それはそうだ、いきなり練習試合をすると言われた挙げ句、対戦相手が強豪校の1つ聖グロリアーナ女学院だというのだから当然だろう。
(聖グロリアーナ・・・懐かしい響きですね・・・ペコちゃんとダージリン様・・・お元気でしょうか・・・あの小屋に監禁されて衰弱していた時あのお二方が私を探しだし助けてくださった・・・そして戦車道をしていた時の最高に信頼できたチームメイト・・・)
セナは、昔いじめで小屋に監禁されていた事があり、助けて貰った2人にかなりの信頼を寄せていた。
そして対聖グロリアーナ戦に向け、作戦会議が開かれた。
「まず一台が囮になり!敵をキルゾーンに誘い込む!そして高低差を利用し!皆で敵を叩く!どうだ!」
セナとみほ以外が賛成意見のようだが、みほが何かを言う前にセナが挙手した。
「なんだ?」
セナは少し怒り気味で、桃に異議を唱えた。
「やめましょう!危険過ぎる!」
「隊長は私だ!隊長の私に逆らうのか?」
セナが逆らった事が気に入らないのか桃は、セナを睨み付けた。
「こんな言葉を知っていますか?"私は何事も最悪の事態を想定して行動する"」
「知らんっ!そんな言葉!」
「この作戦は、最悪の事態を想定しておりません・・・さらに言わせて頂ければ、この様な単純な作戦が一昨年の全国準優勝校に通用すると本気でお思いですか?しかも私達は、戦車道を始めたばかりの方々の集まり、そうスムーズに作戦が進むとは思えませんし・・・今の私達が敵に真っ向から勝負を挑んでも、逆に真っ向から返り討ちにされてしまうだけです。私なら・」
セナが作戦の問題点を指摘していると、痺れを切らした桃がセナを怒鳴った。
「えぇい!うるさいっ!貴様はレギュラーにはしない!補欠だ!戦車道をしてたかなんだか知らないが、西住と比べれば貴様の動きなど平凡だ!そんな奴が1人居なくなった所で我がチームの戦力は変わらんっ!」
その発言を聞いたみほは怒りが込み上げてきた。セナは作戦の問題点を指摘しただけなのに、出て行けと言うのはあまりにも横暴すぎる。
みほは、たまらず抗議をする。
「そんなっ!横暴すぎますっ!」
「うるさいっ!二木!早く出ていけ!今すぐだ!」
そのやりとりを見た杏はさすがにやりすぎだと思った為、桃に注意をした。
「桃ちゃん!さすがにやり過ぎ!」
「会長!ですが!」
雰囲気が悪くなったのに責任を感じたセナは出ていく事にした。
「わかりました。出て行きます・・・」
セナが会議室から出ていこうとした時セナが何かを思い出したように喋りだした。
「あぁ!それともう1つ!」
「まだ何かあるのかっ!」
「さっきの作戦に対して真面目に答えましょう。Fack you!!コメントは以上です。」
そう言った後、少し微笑んでセナは出ていった。セナは笑っていたものの、みほにはセナが少し泣いている様に見えた。
セナが桃に反論した理由は2つあった。1つは作戦が無茶苦茶だった事、そしてもう1つは姉であるみほがこうなる事を防ぐ為だった・・・みほが先に発言していればみほが出ていけと言われショックのあまりまた戦車道を嫌いになっていた可能性があった為だ。
やっとの思いで姉が見つけた居場所・・・そこから立ち退かせるのはあまりにも残酷過ぎる・・・その様な想いがあったからこそ少し乱暴な発言になってしまった。
セナ自信自分の心がこれ以上傷つかないほどボロボロな事に気付いていない・・・。セナが知らない内に、セナの心は助けて!と悲鳴を上げていた。
その後の作戦会議でみほが異を唱えみほの案が採用され、みほが隊長となり桃が副隊長となった。
そして迎えた日曜日、朝が苦手な麻子を沙織が起こしに行き・・・戦車の砲撃で麻子の目を覚まさせ戦車で会場へと出発した。
聖グロリアーナでは、少し騒ぎになっており、オレンジペコと呼ばれる女の子が、隊長のダージリンの元へ走って駆け寄ってきた。
「ダッ!ダージリン様ー!たっ!大変ですー!!」
「ペコ・・・そんなに取り乱してどうしたの?」
「大洗側の出場選手のリストなんですが!」
「それが、どうしたの?」
ダージリンがリストに、目を通した時、懐かしい名前がそこにあった。二木セナ・・・と
「セナ・・・そう・・・まだ戦車道を続けていたの・・・」
「確かにそれも驚きですが!名前の横を見て下さいっ!」
「横?」
ダージリンがセナの名前の横を見ると、補欠と書かれていた。それを見た瞬間、ダージリンは怒りが込み上げてきた。それはそうだろう、昔チームメイトで、セナの腕はダージリンも認めているのだから。
「なんですって?補欠・・・?あの娘が補欠?あの娘の実力ならどのポジションも出来る筈・・・全く・・・愚かですわね。」
周りにいたグロリアーナの生徒達はダージリンの雰囲気が変わった事に気付き気まずそうにしている。
「ペコ・・・今すぐ大洗の元へ行きますわよ」
「はい・・・ダージリン様・・・参りましょう・・・」
2人は、凄まじい怒りのオーラを放ち、セナの元へと向かった。
大洗側では、元気のない表情のセナを見て、みほと優花里を心配していた。
「セナさん・・・」
「セナ殿・・・」
セナは、愛想笑いを浮かべる。実はセナは会場に来てからあまりしゃべっていない。
セナがただならぬオーラを感じ、前をよく見ると、遠くからセナが一番見覚えのある2人が歩いてきた。
「ペコちゃん・・・ダージリン様・・・?何故?」
ダージリンとオレンジペコは、セナとの再会を喜びたかったがまずやることがあった為、杏達が居る方へ向かった。
「あれ?どっしたのー?」
「私はダージリンと言いますわ・・・あなたは?」
「大洗の生徒会長 角田杏だよー。」
「少しお願いがありまして・・・」
「なに?」
「そこにいる・・・補欠の二木セナさんを我が聖グロリアーナ女学院に返して頂けないかと思いましてね。」
ダージリンの発言に皆驚愕した。セナが聖グロリアーナ出身だなんて知らなかったからだ。
「えぇ!?返すって?」
「セナさんって元々聖グロリアーナの人だったの!?」
「そんな!」
特にみほは何で!?と言うような顔をしていた。
「我が聖グロリアーナ女学院は二木セナさんの補欠に対し不服を申し立てます。」
「ちょっと返すのは無理かなー」
「私は構いません」
その桃の発言を聞いたグロリアーナの2人は、誰がセナを補欠にしたのか見当がついた。
「成る程・・・大体事情は読めましたわ。」
オレンジペコは怒り剥き出しで無言のままだ
「会長さん?少しよろしいですか?」
「何ー?」
ダージリンと杏はコソコソ話をしている。ダージリンには、何か狙いがあるようだ。2人がコソコソ話しているのを見たセナは、何か良からぬ事が起こるのではないかと不安が募ってきた。セナの不安な表情を見たオレンジペコは、セナに安心するように言った。
「大丈夫です。私達はあなたを助けるためにここに来ました。ダージリン様も"キャンディ"あなたを悲しませるような事は考えていない筈です。」
キャンディとは、聖グロリアーナに居たときの名前である。そして、2人の会話が終わったらしい。
「では彼女を今回限りこちら側に引き入れさせていただきます。よろしいですわね?」
「そういう事ならOKー」
聖グロリアーナ側にセナが付くと知った、みほと優花里は愕然とした。
「そんなー!またセナ殿が敵ですかー!」
「またセナさんが相手・・・」
「ではまた後ほど・・・行きますわよ。オレンジペコ・・・キャンディ」
「はい。」
そしてセナも、ダージリンとオレンジペコの後に続く。
セナがみほの横を通ろうとした時、みほに呼び止められた。みほは、不安だった。このままセナが戻って来ないのではないかと。
「セナさん!」
みほの不安な表情を見たセナは、みほを安心させるように、クスッと笑いながら言葉を掛けた。
「大丈夫・・・また戻ってきますから。試合で、戦うのをとても楽しみにしてます。」
みほはその言葉を聞いて明るくなる。自分のところを離れる訳では無いという事を知れたから。そして、セナは去り際にみほにウィンクして行った。
ウィンクされたみほは、少し顔を赤らめた。
リキッドォォォオ!スネェェェク!