ガールズ&パンツァー ~捨てられた男の娘~   作:ニキ・ラウダ

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聖グロリアーナの隊長ダージリンにより一時的に古巣グロリアーナ側に入れられたセナ。

セナを一時的に入れたダージリンの思惑とは!?


第4話 走るコンピューター完全復活への第一歩

試合前、テレビ中継が全国に配信され、大洗の住民達は大盛り上がりだった。

「おぉ!始まったぞー!!」

 

大洗側では、試合前に作戦の最終確認が行われており、優花里のテンションはかなり上がっていた。

 

「いよいよ始まりましたねぇー!」

 

みほはそれに対して頷く。

 

「それでどうしたら良かったんでしたっけ~?」

 

1年生の1人がルールと始まってからの動きを尋ねると、みほは全員に真剣な顔で、ルールと次にする事の説明を行う。

 

「さきほど説明した通り、今回は殲滅戦ルールが適用されますので、どちらかが全滅したら負けになります。まず我々Aチームが偵察に向かいますので、他のチームは100mほど進んだ所で待機していてください。」

 

みほがそう告げると、全員元気良く返事をした。

 

「わかりましたっ!」

 

一方セナが加わった聖グロリアーナ側では、ダージリンとオレンジペコとセナが戦車から身を乗り出し周囲を観察していた。

ダージリンは紅茶を飲みながら余裕の笑みだ。そして、観察が終わると、3人とも戦車の中に入りダージリンが前進の合図を出した。

 

「全車前進・・・」

 

するとチャーチルを先頭にマチルダ4両が綺麗な隊列を組み前進を始め、大洗側では、みほと優花里が崖の上から、聖グロリアーナの動きを観察していた。みほが望遠鏡で敵戦車の数と動きを優花里に報告する。

 

「マチルダⅡ4両 チャーチル1両前進中」

「さすが綺麗な隊列を組んでますねー」

 

優花里の感想に対し、みほは頷く。

 

「あれだけ速度を合わせて隊列を乱さないなんて凄い」

「こちらの徹甲弾だと正面装甲は抜けません。」

 

優花里がみほに不安そうな顔を見せる。

 

「そこは戦術と腕かな?」

 

みほは、少し笑いながら、優花里に正面装甲を突破するコツを教える。

しばらく観察していると、チャーチルから見覚えのある顔がピョコッと出てきた。みほと優花里は、「あっ!?」っと驚くと、互いに顔を見合せる。そう、試合前に聖グロリアーナに引き抜かれたセナの顔が出ており、セナはみほと優花里が居るのを確認すると、満面の笑みで、大きく手を振った。

それを見た優花里は、セナの敵の察知能力に再び驚いた。

 

「あの距離から、我々を見つけるとは・・・流石セナ殿・・・侮れませんね。」

 

優香里の発言に対し、みほも真剣な顔で、「うん」と頷き、2人は自分の戦車に戻ることにした。

 

「麻子さん起きて。エンジン音が響かないよう注意しつつ旋回して下さい。」

 

みほは、麻子を揺すって起こすと、麻子はまだ眠そうな顔で起き上がり、戦車をゆっくりと旋回させる。すると麻子が、生徒会がセナを聖グロリアーナ側に渡した事に対しての愚痴を溢していた。

 

「まったく・・・厄介な奴を敵に回してくれたな・・・」

 

沙織は、麻子がセナを脅威にか感じているのに驚いた。

 

「麻子にそこまで言わせるセナちゃんも凄いね」

「当たり前だ・・・私とあまり変わらない頭脳の持ち主で、増してや戦車道はプロ級で、加えて遠くからでも敵の位置を探れる・・・こんな奴を厄介じゃないと言えるもんか。」

「「「「えぇー!?」」」」

 

麻子のセナに対する評価に一同は驚愕し、麻子はうるさそうに耳を塞ぐ。

 

「うるさい・・・」

「ちょっと麻子!それどういう事!?」

 

沙織は驚いた顔をしながら、麻子を見た。

 

「詳しい話は試合の後でするが、練習試合の時に見せた判断力と計算能力がとんでもなかったから、少し学年の成績を調べた・・・そしたら私と同じ学年一位の成績だった。」

「これぞ完璧人間・・・」

 

沙織は、唖然としながら感想を述べたが、麻子は首を振りながら、沙織の発言を否定した。

 

「本人が聞いたらこう言うだろう・・・《私は完璧なんかじゃありません。沢山の欠陥を抱えた不良品です。》とな」

 

麻子がそう言うと、みほは麻子の発言に対し、苦笑いをしながら相槌を打った。

 

「確かに言いそう・・・」

 

みほ達が、セナの話をしていると、岩場の影から、チャーチルを先頭に聖グロリアーナの戦車5両が接近しているのが見えた。みほは、敵の位置を確認すると直ぐに攻撃準備の指示を出した。

 

「敵前方より接近中!砲撃用意!」

 

砲撃用意の指示が来ると、装填手である優花里が装填を行い、完了の合図を送る。

 

「装填完了!」

 

装填完了の合図を確認した華が、チャーチルに狙いを定めようとするが、戦車の車幅が把握できておらず、標準を合わせるのに戸惑っていた。

それを見たみほは、車幅とメモリを指示し、砲撃の合図を送った。

 

「撃てっ!」

 

みほが合図を送ると、砲弾は勢い良く飛び出し、チャーチル目掛けて発射され、チャーチルの近くで爆発したのを確認すると、急いでUターンして逃げる。

 

チャーチルの車内では物凄い振動と、爆撃音が響きオレンジペコとダージリンが冷静に敵が攻撃してきた事を察知した。

 

「仕掛けてきましたわね」

「こちらもお相手しましょうか・・・」

 

攻撃されたのを確認したダージリンは、逃げるⅣ号に攻撃を開始することにした。

 

「全車両・・・前方Ⅳ号に砲撃開始。」

 

ダージリンが紅茶を飲みながら、砲撃指示を出していると、チャーチルの通信手であるセナが、ダージリンの袖をちょこちょこと引っ張る。

 

「あら?何かしら?」

 

ダージリンが少し微笑みながら尋ねるとセナは真面目な顔でダージリンにあるお願いをした。

 

「ダージリン様・・・敵の位置と、風向きを把握したいので、私を戦車のハッチの外に出させてください!」

 

ダージリンは、セナのハッチの外に出してくれ、という願いに、少し考える素振りを見せ、少し心配そうな顔でセナを見つめる。

 

「いいわ・・・ハッチの外に出る許可をします。」

 

ダージリンから渋々許可が下りると、セナはチャーチルのハッチからから身を乗り出した。

 

一方Ⅳ号では、チャーチルとマチルダの砲撃を避けながら、皆が待つ岩場へと向かっていた。当初、桃が提案した高低差を利用して敵を叩く作戦を行うようだ。

みほは、ハッチから身を乗り出したまま麻子に指示を送っている。

 

「なるべくジグザグに走行してください!こっちは

装甲が薄いからまともに喰らったら終わりです!」

「了解」

 

Ⅳ号はジグザグに走行しながらグロリアーナからの砲撃を避け続けた。

 

チャーチル車内では、Ⅳ号の予想以上の動きの良さにダージリンは少し驚いていた。

 

「思ったよりやるわね・・・速度を上げて追うわよ!どんな走りをしようとも一滴たりとも紅茶を溢したりしないわ・・・」

 

ダージリンの闘志に火が着き、聖グロリアーナ側の砲撃が激しくなった。

一方セナはハッチの上でしゃがみつつ、持ち前の耳の良さで、周囲状況を探っていた。

 

「うーん・・・やはりみほお姉様はさすがですね・・・もうチームをまとめあげましたか・・・」

 

セナはみほのリーダーシップと、冷静な判断に少し舌を巻いていた。

 

「今日は風が強い・・・地形・・・岩質・・・完全把握・・・チャーチルとマチルダの戦車の状態も良好・・・前方に4両待機・・・まさか、本当に桃さんの無茶な作戦を実行するんでしょうか?」

 

セナは、みほが無茶な作戦を了承した事に驚きつつも、微笑みながら前方のⅣ号を見つめた。

 

Ⅳ号では、被弾しそうになり、みほが若干屈む。

 

「ふぅ・・・」

 

みほがホッとしていると、みほに弾が当たるのを心配して沙織がみほに注意した。

 

「みぽりん危ないって!」

「大丈夫。戦車の車内はカーボンでコーティングされてるから大丈夫だよ。」

 

みほは、戦車の車内はカーボンで覆われている為、安全だと言うが、沙織が心配していたのはそこでは無かった。

 

「そうじゃなくて!そんなに身を乗り出してみぽりんに何かあったら・・・もっと中に入って!」

「心配してくれてあり・・・」

 

みほが沙織にお礼を言おうとした時、チャーチルのハッチ上にしゃがんでいるセナを見て驚愕した。みほの表情を見た沙織はみほにどうしたのかと尋ねる。

 

「みぽりんどうしたの?」

 

みほは、チャーチルの方を指差し、不安そうな表情で叫んだ。

 

「私より、セナさんの方が危ないよっ!!」

 

沙織も、みほが指差すチャーチルのハッチの上にしゃがんでいるセナを見て驚愕する。

 

「えぇーっ!ヤバいって!セナちゃんも中に入って!!」

 

みほと沙織の不安そうな叫びを聞いたセナは、大丈夫と言うように、ニッコリ笑顔で2人に手を振ったのだが・・・

 

「「違う!!笑顔は、可愛いけど・・・危ないから中に入ってー!」」

 

2人の叫びがセナに伝わったようで、セナはチャーチルの中に入った途端、誰かに頭をペシッと叩かれた。

 

「痛いっ」

 

セナが上を見上げると、怒った顔のオレンジペコが居た。

 

「毎回危険な事をして!大洗の人にまで心配かけてどうするんですか!」

 

「ごめんなさい・・・」

 

セナが、両手で頭を押さえながらオレンジペコに謝った、

 

「で・・・何かわかったのかしら?」

 

ダージリンが、セナに成果を聞くとセナは真面目な顔で、前方の状況を伝える。

 

「はい・・・前方に4両敵戦車が待機中・・・恐らくⅣ号を囮にして我々を誘き寄せ、一気に叩く作戦のようです。この先は高低差がある場所なので高いところから一斉に我々を狙うつもりなのでしょう。ただ、この作戦は駄目元でやっている可能性が高いです。」

 

セナの発言にダージリンは少し神妙な顔になり、セナに質問をした。

 

「その作戦は駄目元だと、どうして思いますの?」

 

セナは表情を変えずにダージリンに説明をする。

 

「先程言った作戦は、当初の作戦会議で元隊長が、立てられたものです。その作戦には、私と今Ⅳ号に乗っている、隊長である西住みほさんも反対していました。あの西住流の方です。この作戦で我々に勝てるとは思っていない筈です。」

「つまり・・・別に作戦があると?」

「その可能性は十分にあります。しかし、それを確かめる為には敵陣に突っ込む必要がありますが。」

 

セナは少し胸を張りえっへんというような表情をした。

セナの予測にオレンジペコも驚いた。

 

「さすがですね・・・作戦を知っていたとはいえ・・・ちょっと外に出るだけでそんな事まで・・・」

 

すると、砲撃手であるアッサムと呼ばれる金髪の少女がセナが戦力外になった事を話題に出した。

 

「しかしキャンディも災難でしたね・・・まさか戦力外通告を受けているとは思いませんでした。」

 

アッサムの言葉にセナは、手を横に広げやれやれというようなジェスチャーをする。

 

「私もビックリです。作戦の欠点を指摘しただけで補欠だー!出ていけー!なんて言われるとは思いませんでしたよ・・・」

 

ダージリンは、大洗側へと近付いてきたのを確認すると、砲撃開始の合図を送る。

 

「撃てっ!」

 

グロリアーナ側から大洗側に砲撃を開始すると、一年生チームのM3リーはあまりの恐怖に逃げ出し、爆発により、38tは履帯が外れる。

これは、まずいと思ったのか、Ⅳ号を先頭に三突と八九式がⅣ号に着いていく形で、市街地の方へと向かった。

 

「逃げ出したの!?追うわよ!」

 

逃げる姿を見て焦ったのか、ダージリンがすぐに追うように指示を出したが、セナがそれを制止し、罠の可能性があることを警告する。

 

「待ってください!これは罠です。この先は市街地!死角が多いところに誘き寄せて、隠れて狙い撃ちするつもりでしょう・・・ここは1つ私に作戦を提案させて頂けますか?」

 

セナがとんでもない事を言い出した。なんと作戦を提案させてくれというのだ。その発言に対しダージリンとオレンジペコとアッサムの3人は「昔から変わらないわね」と少し笑いながらセナを見つめた。

そしてダージリンは、作戦の提案を許可すると共に、とんでもないことを言い出した。

 

「許可しますわ。そして一時的に"指揮権"も貴方に与えます。」

 

なんとダージリンは、セナに指揮権を一時的に譲渡するというのだ。そしてチャーチルとマチルダは、市街地へと到着した。ダージリンが周囲を見渡す。

 

「消えた?」

 

ダージリンの発言に、セナは首を振った。

 

「恐らく、死角に隠れたのでしょう・・・アッサムさん!砲撃変わって貰えますか?皆さん!耳を澄ませて、外に意識を集中させるので!倒れた後をお願いします!」

 

セナの言葉にダージリンとオレンジペコ、アッサムの3人は微笑みながら、「わかりました」と口を揃えて言った。

セナはアッサムと砲撃手を変わると、集中力を高めエンジン音を頼りに2km位先に居る敵戦車の位置を探った。すると2両の敵戦車を発見した。

 

「駐車場に一台八九式・・・こちらは放っておいても大丈夫でしょう。火力不足でこちら側のマチルダすら、撃ち抜けないでしょうから、路地裏に三突・・・三突からいきましょうか・・・風向き 、風量は把握。Ⅳ号の位置は確認出来ず。」

 

セナは、Ⅳ号の位置はわからなかったが、ダージリンにマチルダを1両、立体駐車場に潜んで待ち伏せているであろう98式の元へ向かわせるように指示した後、セナは風向きが追い風になったのを確認し、狙いを定め空に向けて砲撃を開始した。すると砲弾は、綺麗な弧を描き三突に吸い込まれるようにして三突に命中し、八九式はマチルダの装甲を貫けず、撃破された。

セナの人間離れした業を見た、オレンジペコとアッサムは唖然とする。

 

「さっ・・・さすがです・・・」

「相変わらず無茶苦茶な能力ですね・・・」

 

1両撃破したのを確認したダージリンは紅茶を呑みながら、少し笑った。

 

「これで2両撃破・・・」

 

セナは、先程居た場所から、履帯を修理して追ってきてい38tの存在を確認すると、ダージリンにマチルダを1両山岳方面に向かわせるように指示を出す。

 

「あと履帯が外れた38tも修理して追ってきます。一台のマチルダをそちらに向かわせてください。」

「わかったわ。Bチーム最初に交戦した場所へ向かいなさい。そこから1両戦車がこちらに向かっています。」

 

Bチームは、ダージリンから指示を受けると、先程の山岳地帯へと向かった。セナは、Ⅳ号の位置を確かめようとハッチから顔出し、周囲を見渡している。

 

「後はⅣ号がどこに居るかです・・・」

 

ダージリンは、セナがこちら側に来てくれた事を心強く思っていた。

 

「キャンディが居なかったらこの戦い・・・苦戦してたかもしれないわね」

 

セナは、ダージリンの発言から聖グロリアーナは大洗を見下していたのだと理解した。無理もない、いきなり復活したチームが強いなんて誰が思うだろうか?しかし、戦いでこの考えは命取りだと思ったセナは、ダージリンにある助言をすることにした。

 

「みほさんは西住流ですから・・・あなどってはいけません。ダージリン様こんな格言を知っていますか?『人は見かけで判断するな』」

 

セナは、ダージリンの真似をするように、紅茶を飲みながら格言を言った。その言葉を聞いたダージリンは、はっ!とした。ダージリンは、新しいチームと派手な戦車のカラーリングを見て、大したことが無い敵だと決めつけていた。それがいかに危ない事かという事を、セナが教えてくれた。その事にダージリンは、セナに感謝した。

 

「まさに今敵にいる西住流を指しているわね、覚えておくわ・・・」

 

チャーチルとマチルダ3両は慎重に市街地を走り、辺りを警戒していた。すると、オレンジペコが狭い路地に逃げ込むⅣ号を発見した。

 

「Ⅳ号が逃げてます!」

 

オレンジペコが叫ぶと、ダージリンがセナに指示をだす。

 

「キャンディ・・・操縦を変わって追いかけなさい。」

 

 

ダージリンが涼しい顔で紅茶を飲みながらセナに指示を出し、セナは操縦を変わると、逃げるⅣ号をスロットル全開で追いかけた。

 

一方Ⅳ号では、みほが後方を見ながら渋い顔をしていた。何故なら、後ろからチャーチルが壁ギリギリを攻めながら猛スピードで追ってきていた。しかも綺麗な動きで一切の無駄が無い。

 

「完全に私達の動きを読まれてる・・・」

 

みほは、これまで戦ってきた敵よりもセナに頭を悩ませていた。それはそうだこれまでセナに尽く先読みされ、残りの戦車をⅣ号だけにされたからだ。

 

「どうする?」

 

麻子は無表情でみほに指示を仰ぐ。

 

「とにかく振り切って下さい!」

 

みほは、麻子に振りきるように指示を出す。そして優花里は、セナの業に驚くと共に、セナが敵になったことを後悔していた。

 

「完璧過ぎます・・・やはりセナ殿は味方だと頼もしいですが、敵に回ると脅威ですね・・・」

 

 

すると追跡していたマチルダ1両が、セナのペースに付いて行けず店に突っ込んだ。店が壊れる光景をテレビで見ていた店主は、頭を抱えながら叫んだ。

 

「俺の店がぁぁあ!よし!これで新築できる!」

 

しかし、店主は店に突っ込んでくれた事に喜んだ。何故なら、戦車道で壊れた建築物は協会側が負担する事になっているからだ。その喜びようを見た、別の店の店主はうらやましそうに、その店主を眺めた。

 

「俺の店にも突っ込んでくれないかなぁ」

 

そして、とある場所でテレビ中継を見ている女性がいた。髪は黒っぽい茶色でスーツを着ている。

その女性は、聖グロリアーナのチャーチルに乗るセナに驚いていた。

 

「なんて選手なの・・・遠距離から砲撃を命中させ・・・更にはあんな市街地を最高速で壁ギリギリを・・・しかも動きき一切無駄が無い。」

 

女性がテレビを眺めていると、1人の男性が声を掛けてきた。

 

「気になりますか?」

 

女性が男性の方を見ると、その男性に見覚えがあった。

 

「あなたは・・・ラウダ航空の社長の・・・二木ラウダさん。」

 

話しかけてきた男性は、日本大手の航空会社ラウダ航空の社長でセナの父親である二木ラウダだった。ラウダは女性に少微笑みながら名前を尋ねた。

 

「はい。あなたは西住流の当主の西住しほさんですか?」

 

ラウダの問いに女性は無表情で答えた。

 

「そうです・・・」

 

テレビを見ていた女性は、西住流の当主である西住しほだった。ラウダは、セナに興味を持っている西住流の当主を見て、これは運命だと感じた。何故ならセナはしほの実の息子だからだ。しかし、しほ本人はセナが二木家に引き取られた事を知らない。

ラウダは、しほにセナについて聞いてみる事にした。

 

「あのチャーチルに乗っている選手が気になりますか?」

「はい・・・とても。」

 

しほは、画面をじっと眺めながら無表情で返答をした。

この先、セナとしほは必ず会う運命だと感じたラウダは、少し微笑みながらしほに対して、こう言った。

 

「それは後々わかりますよ。」

「えっ?」

 

しほは驚いた顔をしながらラウダを見つめた。

 

Ⅳ号は、セナの猛追をなかなか振りきれずに悩んでいた。みほは、少しも狂いもなく、一定間隔を保っているチャーチルを少し不気味に感じていた。

 

「後ろのチャーチルが、一定間隔を保ったままピッタリくっついている・・・」

 

みほが言った言葉に優花里は、操縦しているのが誰かわかった。

 

「その走り方!やはりセナ殿で間違いありませんっ!」

 

逃げようと奥に進んでいたが、この先は、行き止まりだった為、Ⅳ号を急旋回させた。

みほは、やられたと思った。早く気付くべきだった・・・近寄らずに一定間隔の距離をセナが保っていた意味に・・・セナはこの先は行き止まりだから、急いで追い付く必要は無いと判断したのだ。みほは、セナの恐ろしさを直で感じ冷や汗を掻いていた。

するとⅣ号の前にチャーチルとマチルダが正面に現れ、チャーチルからダージリンが顔を見せ、爽やかな顔をして格言をみほに言った。

 

「こんな格言を知ってる?イギリス人は恋愛と戦争においては手段を選ばない・・・」

 

Ⅳ号にチャーチルとマチルダこ砲塔が向けられみほ達は絶対絶命かと思われたが、そこへ履帯が壊れ、修理していた筈の38tが援護にやって来た。

 

チャーチル車内では、マチルダが撃破された事について、話をしていた。

 

「マチルダが一台撃破されたようですわ」

「詰めが甘かったわね?キャンディ・・・」

 

オレンジペコは平然とした顔で、ダージリンは少し驚いた顔で、セナに言ったが、セナは目を閉じ紅茶を飲みながら満面の笑みでこう返答をした。

 

「マチルダが撃破される可能性も考えてたので、特に問題はありません。それに38tが砲撃をしたとしても、今の砲撃手の技量のままでは、当たる可能性はかなり低いです。」

 

ダージリンは少し笑みを浮かべると、砲塔を38tに向けるように全車両に指示を出した。

桃の「発射!」という掛け声と同時に、38tからチャーチルへ向け砲撃されるが、弾は外れ38tはチャーチルとマチルダから、集中放火を浴び白旗が上がった。

 

その直後Ⅳ号がみほの指示の元動き出した。

 

「前進!一撃打って離脱して下さい!まず左折!」

 

Ⅳ号は前進すると、砲弾をマチルダに当て撃破した後、猛スピードでこの場から離れる。

逃がしてなるものかと、ダージリンは回り込むように指示を出したが、セナがそれを制止し、この先は死角だらけで逆に返り撃ちに合う可能性がある事をダージリンに説明する。

 

「では・・・どうするべきかしら?」

 

ダージリンは真面目な顔でセナを見つめると、セナは、いたずらっ子の様な笑みを浮かべながら、ダージリンに作戦を説明すると、ダージリンは大笑いし作戦を採用した。

 

Ⅳ号は駐車場の壁で待機していた。

 

「おかしい・・・回り込んで来ると思ったのに」

 

みほは、チャーチルとマチルダ2両が自分達の後をすぐ追ってくると考え、死角となる駐車場の壁の裏に隠れ狙い撃とうとしていたのだが、いつまで経っても現れない。

みほが不審に思っていると、優花里が焦った様な顔で、みほに報告を入れる。

 

「西住殿!おっ!大通りからマチルダ2両接近中!」

 

みほは自分達の後を追って来ず、逆に大通りから回って来たことに動揺した。そして、みほは敵にチャーチルが居ないのに気が付いた。

 

「っ!チャーチルが居ない!?チャーチルは何処に?」

 

みほは、すぐにでもチャーチルの居場所を確認したかったが、マチルダ2両がすぐ近くに迫って来ていた為、チャーチルを探すよりも、逃げることを優先した。すぐさま麻子に、直ぐ横にある壁を使い、砲撃を防ぎながら蛇行してバックするように指示を出す。みほは、少し動揺した為か、セナの存在を完全に忘れていた。

 

一方チャーチルは少し隣の大通りに面した裏路地に身を隠していた。

セナの提案した作戦とは、逃げた先の駐車場の側壁に身を隠し、後に追ってくる自分達を待ち伏せしているであろうⅣ号の考えを逆手に取るというもの。

具体的には、マチルダ2両を大通りからⅣ号がバックで逃げざるを得ない方向から向かわせ、Ⅳ号が旋回した時に出きるスキを狙って、チャーチルを裏路地から気付かれないように発進させ、後ろから砲撃し撃破する。

この作戦の最後は、セナのイタズラ心が混じっていて、この面白い作戦にダージリンは笑ったのだ。

 

そして、Ⅳ号が方向転換をして、逃げようとしたその時だった。物凄い衝撃と爆発がⅣ号に走った。Ⅳ号に砲撃が当たったのだ。みほが後ろを見ると、どこから出てきたのかチャーチルがいた。

 

観客席では、いきなりⅣ号が撃破された為どよめきが起こっていた。そして、観客席からセミロングで、黒っぽい茶髪の少女がチャーチルに乗っているセナを見つめていた。

 

「大洗女子学園チーム!全車走行不能!よって聖グロリアーナ女学院の勝利!」

 

会場に、アナウンスの声が響く。

 

試合終了後、聖グロリアーナのダージリン、 オレンジペコ、アッサムがセナを連れてみほ達の元へやってきた。

オレンジペコとセナは、笑顔で手を繋いでいる。

ダージリンがみほに対して口を開いた。

 

「あなたが隊長さんですわね?」

「はい・・・西住みほです。」

「セナを返しに来ましたわ」

 

ダージリンとオレンジペコとアッサムは名残惜しそうな顔をしながら、セナをみほ達へ引き渡す。

 

「ただいま!みほさん!」

 

セナの表情は明るく、憑き物が取れたように晴れやかで可愛い笑顔だった。

その後、セナを除く大洗チームは罰ゲームである、あんこう音頭を踊った。その後、みんなで御飯を食べに行く事にしたのだが、麻子はおばあちゃんの所へ行くというので、麻子を除く5人でご飯を食べに行くことなった。その道中、人力車を引いている男性と目が合い、その男性がこちらにやってきた。華はその男性を見ると、驚いた顔をした。

 

「新三郎!?」

 

5人は、寄って来た男性が華の知り合いだと知ってビックリしたが、華はみんなに人力車を牽いている男性を紹介した。

 

「家に奉公に来ている新三郎」

 

「お嬢!お元気そうで!いつもお嬢がお世話になってます!」

 

新三郎という男性は、五十鈴家に奉公に来ている人らしい、髪は角刈りで江戸時代の着物の様な物を身に付けており、男前という言葉が似合う外見だった。すると人力車から、紫の着物を着た女性が降りて来た。

 

「華さん?」

「お母様!」

「元気そうで良かったわ。こちらの方々は?」

 

降りてきた女性は華の母親らしく、ニッコリとセナ達を見つめ、華が母親に友達の紹介をした。

 

「こちら同じクラスの武部さんと西住さんと二木さん」

 

3人が挨拶を済ませると、優花里も自己紹介をする。

 

「私はクラスが違いますが戦車道の」

 

優花里が、戦車道という言葉を発した途端、華の母親の表情が強張った。

 

「戦車道?華さん・・・どういうこと?もしや!」

 

セナ達は、この時察した。華は母親に戦車道をしている事を言ってなかったのだと。華のお母さんは、慌てた様子華の手の匂いを嗅ぐ。

 

「鉄と油の匂い・・・まさかあなた戦車道を!?」

「はい」

 

華は真剣な表情で母親を見つめる。

 

「花を活ける繊細な手で戦車に触るなんて!」

 

華の母は目から生気が無くなり、その場に崩れるように倒れた。そしてセナ達は華を心配し、華の家へとやって来た。

優花里は、華に母親の前で戦車道と言ってしまった事を謝った。

 

「すみません・・・わたしが口を滑らせたせいで・・・」

「いえ・・・私がお母様にちゃんと話してなかったのがいけないんです。」

 

部屋が静寂に包まれる中、新三郎が襖を開け華の母親が目を覚ました事を報告に来た。

 

「お嬢・・・奥様が目を覚まされました。お話があるそうです。」

 

新三郎がそう言うと、華は申し訳なさそうな顔で下を向いた。

 

「私はもう戻らないと・・・」

「お嬢っ」

 

新三郎が何か言おうとしたときセナがそれを遮った。セナは真剣な目で華の目を見た。

 

「華さん・・・私はお母様ときちんとお話をされるべきだと思います。」

「セナ・・・さん?」

 

華は驚いた、セナが今まで見たこと無いような目をしていた、まるで自分の目の奥を見つめているようだった。セナは少し悲しそうな顔をしながら華に言った。

 

「華さんのお母様に自分の本心を伝えるべきです。それでも駄目だったら、縁を切るという選択肢でも良いと思います。一番いけない事は、お互いの本心を話さずそのまま事を進める事です・・・そうなってしまえば、お互いの心に傷を負ったままになってしまいます。もし何かあれば私も力になりますので、思いっきりご自分の本心をお母様にお話されて下さい。」

 

セナ自身、訳もわからず西住家に捨てられた為、華の置かれている状況に思うところがあるようだ。

そして、新三郎はセナの名前を聞いてずっと気になっていた事があった。名字の二木という名前だ、ここ周辺に住んでいる二木という家は1つしか知らない。そう・・・二木ラウダの家だ。新三郎はセナの正体がわかってしまった。セナは、ラウダ航空の社長二木ラウダの娘だと・・・

華の母の部屋では、華の母親が布団から身体を起こし、その正面に華が座って話をしていた。

 

「申し訳ありません。」

 

華は母親に謝った。母親は、心配そうな表情で華を見つめた。

 

「どうしたの?華道が嫌になったの?」

「そういう訳じゃありません。」

「何か不満なの!?」

「違うんです!」

「だったらどうして!」

 

お互い起こったように自分の想いをぶつけ合った。華は華道に不満がある訳でも無いようだ。華は自分の想いを母親に告白した。

 

「私・・・生けても!生けても!何か足りないような気がするのです。」

 

華は、思うような生け花の作品が出来ず、悩んでいた様だ。その言葉に対して、母親は首を振った。

 

「そんな事ないわ!あなたの花は可憐で清楚!五十鈴流その物よ!」

「それでも私は力強い花を生けたいんです!」

 

華は母親に、可憐で清楚な花を生けたいのではなく、力強い花を生けたいと心中を吐露した。華の発言に母親は娘を変えてしまった戦車道を恨んだ。

 

「素直で優しいあなたは何処へ行ってしまったの!?これも戦車道のせいなの?戦車なんて野蛮で不恰好なだけじゃない!戦車なんて!鉄屑になってしまえばいいんだわ!」

 

戦車を馬鹿にした発言に、そのやりとりを見ていた優花里は怒った。

 

「戦車を鉄屑とは、聞き捨てなりません!」

「秋山さん落ち着いて!」

 

みほと沙織は今にも飛び出しそうな優花里を押さえる。

 

「ごめんなさい・・・お母様・・・私戦車道はやめません。」

 

華は母親に戦車道は辞めないと伝えると、母親は外方を向いた。

 

「だったらもう家の敷居は跨がないでちょうだい」

 

すると、今までのやりとりを聞いていたセナの堪忍袋の緒がとうとう切れてしまった。家の流派に従わないで、戦車道をするから家から追い出す、こんな馬鹿げた理由があって良い筈がない。

 

 

セナは、みほ達に見られないようにそっと部屋に入るが、新三郎に見られていた。

 

「!?ご令嬢・・・」

 

セナは新三郎に、シーっというジェスチャーをし部屋へと入る。その光景を見ていた3人は、驚いた。

 

「セナ殿!?」

「セナさん!」

「セナちゃん!?」

 

そして、華と華の母親もいきなり入ってきたセナに驚いた様な表情を見せた。

 

「セナさん!?」

「誰です!あなたは!」

 

いきなり入ってきたセナに、華の母親は怒った。新三郎が慌てた様子でセナの事を説明しようとする。

 

「奥様!こっ!この方はラウ」

 

新三郎がラウダ航空の娘と言おうとした時、セナが目を閉じて首を横に振った。

 

「新三郎さん・・・言わなくてもよろしいです・・・」

「はい」

 

セナの力強い口調に新三郎は黙った。

セナは華の横に正座すると、無礼が無いように、丁寧に挨拶を始めた。

 

「私、五十鈴 華さんのクラスメイトをさせて頂いております・・・二木セナと申します。」

 

華の母は、あまりにも丁寧な挨拶とセナの可愛らしい姿に少し、機嫌が良くなった。

 

「何か用かしら?」

 

セナは真面目な表情で華の母親を見つめた。

 

「先程の発言の意図についてお聞きしたいのですが・・・」

「先程の発言?」

 

華の母親は、わからないというような表情をしていた。

 

「戦車道をするのであれば、家の敷居は跨がせないという発言についてです・・・」

 

セナの発言を聞いた華の母親は、セナを思いっきり睨み付け、脅しを掛けた。

 

「家の関係者でも無いのに首を突っ込まないでちょうだい・・・それでも首を突っ込むのであればあなたの家はどうなるかしら?」

 

それを、聞いた華と新三郎は、慌てて止めに入る。

 

「お母様!やめてください!」

「おっ!奥様!お止めください!」

 

セナは、脅しなど無意味だと言わんばかりに、一切表情を変えずに華の母親の方を見た。

 

「構いません・・・では・・・母親というものは家に逆らった・・・というだけで"簡単に娘を捨てれる"のですか?」

「なっ!?」

 

華の母はこの質問が意外だったようだ。何故ならセナは戦車道を何故やらせないのか?と聞いてくると思ったからだった。普通はそう思うのだが、セナが怒っている部分は、そこではなかった。セナは少し睨み付け、華の母親に怒鳴り付けるように質問をした。

 

「もう1度問います・・・流派の家系は・・・流派の家系は!自分の流派に逆らっただけで!こんなにも簡単に子供を捨てるんですかっ!」

 

セナが怒っていたのは、戦車道をやらせるやらせないという部分では無い。家の流派のやり方に従わないから、家を追い出すという部分に怒っていたのだ。それはそうだろう、セナ自身も男で戦車道が出来ないからという馬鹿げた理由で捨てられたのだから。

それを聞いた華の母親は、自分のしていることを娘を捨てたと言われ、思わず激怒した。

 

「あなたごときに何がわかるというの!」

 

室内に乾いた平手の音が響き、それを見た新三郎は顔が真っ青になった。

航空とは日本で1位の航空会社。ラウダ航空の社長の耳に入れば、五十鈴家など簡単に潰されるだろう。セナも落ち着きを取り戻し、華の母親に謝罪した。

 

「申し訳ございません・・・感情的になりすぎました。」

「ごめんなさい・・・こんなつもりは・・・」

 

華の母親もセナを本気で叩くつもりはなかったようだ。

それはセナも理解していた。華の母親と2人きりで話したい事があった為、華の母親に話を持ち掛けてみる事にした。

 

「わかってます・・・華さんのお母様・・・2人だけでお話をしませんか?」

 

華の母親は少し考える素振りを見せると、了承した。

 

「わかりました・・・華さん・・・新三郎・・・席を外して」

 

華と新三郎は2人を心配しつつも外へ出た。

セナと華の母親は、向き合う形で座り、最初に華の母親が口を開いた。

 

「ごめんなさいね?痛かったでしょう?」

 

華の母親は、平手打ちした事を謝罪した後、優しい顔で叩いた場所を撫で、セナは華の母親にさっきの発言を改めて謝罪した。

 

「先程は、生意気な事を言ってしまって、ごめんなさい。」

 

華の母親は、疑問に思った事があったので、セナに尋ねる事にした。

 

「どうして、家に逆らったから娘を家から追い出す。という言葉に何故あそこまで怒ったのですか?」

 

セナを慰めるような顔で、華の母親は質問をした。それに対してセナは悲しそうな顔で、自分の過去を話した。自分はとある家元に産まれ、流派にそぐわないというだけで捨てられた事や、それが華と重なって怒りが押さえきれなくなった事を・・・当然男であることは伏せる。

それを聞いた華の母親は、少し悲しそうな顔をし自分の本心を話始めた。

 

「本当は娘には、自分の生きたいように生きて欲しいと思っています。ですが・・・五十鈴家という看板を背負っている以上中々思うようにはさせてあげれないのです。」

 

セナは、華の母親にある提案をする事にした。

 

「華さんのお母様・・・1つ提案があります。」

「提案?」

 

華の母親は、キョトンとした顔をし、セナは提案の内容を話した。内容は、華が五十鈴流が納得出来るような花を生ける事が出来たら、家に戻る。というものだった。それを聞いた華の母親は、少し考える素振りを見せ承諾した。華の母親と別れたセナが部屋を出ると華が心配そうな顔をして待っていた。

 

「セナさん!大丈夫でしたか!?」

 

「はい!華さん?」

「なんでしょう?」

 

華は、心配そうにセナを見つめた。

 

「お母様がもし五十鈴流が納得がいく力強い花を生ける事が出来たなら・・・家へ戻って来なさいとおっしゃってましたよ?」

 

セナは微笑みながら、華に先程の話し合いの結果を報告し、華はその報告が嬉しくて涙を流しながら、セナに微笑みながらお礼を言った。

 

「セナさん・・・ありがとうございます。」

 

そして、もうすぐ学園艦の出港時間が近付いており、5人は、新三郎に送って貰う事になり、港に着くと、麻子が待っていた。

 

「遅い」

「もう!夜は元気なんだからっ!」

 

沙織は朝はぐったりして、夜は無茶苦茶元気な麻子にツッコミを入れ、船の上に登ると、1年生達がセナとみほに謝罪しようと2人の到着を待っていた。

 

「西住隊長!戦車を置いて逃げたりしてすみませんでした!セナさんもせっかく教えてくれたのにすみませんでした!私達も次はがんばります!」

 

一年生達が謝罪をした後、生徒会の3人が手に何かを持って歩いてきた。

杏は笑いながら、セナとみほを交互に見た。

 

「これからは、作戦は西住ちゃんとセナちゃんに任せるよ。」

「えっ!」

 

杏の発言に桃は驚いた反応をした。そして杏が2つのバスケットを指さした。

 

「それとこれ。1個は西住ちゃんでもう1個はセナちゃんに」

 

 

小山が2つの贈り物を持っており、2人に渡す。みほがバスケットの中身を見ると紅茶の茶葉とティーカップのセットが入っており、そこに一枚の手紙が添えられていた。

手紙には、試合が楽かったので、みほともう一回戦いたい事、紅茶はセナに淹れてもらいなさいという事、そして妙な事が書かれていた・・・今日の試合で、体力をかなり消耗しているため、セナの体調が不安なので、セナから目を離さないで欲しい。と書かれていた。

みほのバスケットの中身を見た優花里は、興奮気味に聖グロリアーナが紅茶を送ってくる意味の説明を始めた。

 

「凄いです!聖グロリアーナは好敵手と認めた相手にしか紅茶は送らないとされていますから!」

 

そして、セナの方にはダージリン アッサム オレンジペコ キャンディ ローズヒップ の紅茶の茶葉と共に手紙が入っていた。手紙には、セナをグロリアーナに率いれた意味が書かれていた。内容は、セナを戦力外にした、無知な副隊長にセナの力を見せつける為だったと書かれていた。その内容を見たセナは涙が溢れてきた、今は違う学校なのに自分の為に動いてくれたダージリン達に感謝の気持ちしかなかった。するとセナの視界が揺らぎ始める、セナは涙のせいかと思ったが、身体が怠く、熱っぽい・・・セナは試合の時に神経を集中させた代償だと理解した。しかし、近くにみほ達が居るので、ここで倒れる訳にはいかない。重い身体を引きずりながら、1人でフラフラと家へ帰り始めた。

そしてみほが、フラフラと路地へ歩いているセナを発見した。

 

「セナさんっ!?」

 

かなり慌てた様子でみほが走ってきた。

 

「セナさん!身体!かなり辛いんでしょう!?」

「どうしてそれを・・・」

 

セナは疑問に思った。遠くの音を聞くために神経を集中させると、その代償で体調が悪くなる事は、ダージリン達以外知らない筈だからだ。

 

「ダージリンさんが手紙に書いてたの!今日試合で無理してるから目を離しちゃだめって!」

 

セナは、試合中ダージリンに倒れた後をお願いした事を思い出した。ダージリンはセナが何時間後に体調が悪くなるか知っていた為、ある程度の時間を予測し、みほに自分の代わりにセナの体調を気にかけるように手紙に書いたのだった。

セナがフラフラなのに気付いた、優花里、沙織、華、麻子の4人も慌てて駆け寄ってきた。

 

「セナ殿!大丈夫ですか!」

「セナちゃん!?凄い熱!」

「セナさん!しっかりしてください!」

「とりあえず、家で寝かせた方が良い・・・」

「セナさんしっかりしてっ!」

 

セナはみほ達の顔を見ながら、ゆっくりとみほに身を預けた。




長編 長編 文章力ないのにー!ビックバンアタック!
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