ひぐらしのなく頃に 逆戻り編   作:ClariSと苺の樹

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タイトルの『遡り編』を『逆戻り(さかもどり)編』に変更致しました。


第2話

 どうやらここは死後の世界では無いらしい。

 

 その事に気がついたのは私がこの世界にやって来て、父と母と車に乗り込んで新居に着いて、その次の日のことだった。

 

 前世……というのも可笑しいのかもしれないが、以前から私は背丈が人並みほど高くはなかった。というか低かった。

 

 私の唯一のコンプレックスだったのだが、朝起きてみると以前より視線が低い。まさかなと思い家に置いてあった大きな鏡で全体像を見てみた。

 

 確かに鏡には私が映っていた。しかし私の眼はごまかされなった。

 

 私は前世の時よりも自身の伸長が縮んでいることに気が付いたのだ。

 

 

 そう、気がついてしまったのだ……。

 

 

 この時の私の心境を理解してもらいたい。施設内の職員の死体に“笑う死体の山(The Mountain of Smiling Bodies)”が突っ込んできた時以上の絶望が私の身に襲いかかったのだった。

 

 その旨を台所で朝食を作っていた母に聞いたところ、

 

『響ちゃんの身長はちゃんと伸びていますよ。だから安心してご飯沢山食べてね!』

 

 と満面の笑みで答えてくれた。今日も母は元気一杯のようだ。

 

 どうやら私の身長は生まれてから縮むようなことは無かったらしい。ということは前々から私の身長がこの高さであった、ということになる。

 

 どういう事なのかと1人物思いに耽っていると一つ大事なことを思い出した。

 

 そう私がこの世界に来ることとなった原因。“逆行時計”についてである。

 

 あの時計の機能としては、時間を巻き戻す。そして最終的に使用した職員も消し去ってしまう、というものだ。

 

 そう()()()()()()()()。この描写について実際には間違いであったのかもしれないという点についてである。

 

 何故なら消し去るとは残された側の解釈であって、使用者からはどうなのか確認することが出来ないのだ。確認しようにも当の本人は既にこの世界から消え去っているのだから。

 

 だが実際には消え去らずに()()()()()()のならどうだろうか。

 

 “逆行時計”の機能が及ぶ範囲はとても広い。ならそのエネルギーに一番近い場所にいる人も逆行してしまうのではないのか。ありえない話でもないと私は思う。

 

 しかしながらこの世界にも疑問はある。私の両親が健在ということだ。

 

 新しい自分の部屋を確認したところ、私はどうやら14歳、中学二年生だということが分かった。元の世界だと、この年齢の時はとっくの昔に両親は他界し、叔母さんの家で生活していた。

 

 だが、この世界では両親は生きている。昨日の内に事件のあったであろう日のことを尋ねてみると、恙無く2人のドライブを楽しんでいたらしい。

 

 これらのことからこの世界は死後の世界などではなく、時間が遡り、尚且つ、あったかもしれないもしかしたらの世界だということだ。つまり元いた時間軸Aの世界で“逆行時計”を使用し、時間軸Xの過去に戻ったのである。

 

 この現象は私の運が良かったからなのだろうか。もしかすると本当に消滅していただたろうに。私は会うことのなかった両親とこうして巡り会うことが出来たのだから。

 

 さて、そんな私だがどうやら中学二年生まで年齢が遡っているようだ。心無しか体も軽い気がしてくる。と言っても前世の私もティーンエイジャーなのだが。

 

 両親は今世でも都会暮らしのようだ。叔母さんによると2人とも都会育ちらしい。だからなのか、両親は仕事の転勤をきっかけに田舎に引っ越すことにしたそうだ。

 

 古き良き街並み、懐かしみを感じる家々。そんな雛見沢に私達家族は引っ越してきた。

 

 

 

 昭和58年5月、2度目となる学校生活は雛見沢分校という場所らしい。小中一貫の小さな学校だ。人口約2000人の小規模な村だから致し方ない。

 

 校舎に入るとどこか古臭い匂いが鼻を通った。だが不思議と嫌な気分ではない。あんな死と隣り合わせの世界よりも平和でほのぼのとした場所の方が私には合っているのかもしれない。

 

 それにしてもやはり学校というものは何時になっても緊張するものだ。教壇の前に立って生徒の方を見る。ほとんどの生徒が私よりも年齢が低いのだろう。皆何かに期待しているようなキラキラとした目で私を見つめていた。

 

 まあそんな視線で見つめられても私には期待に応えられるような自己紹介欄は出来ないがな。

 

 

 

 

「よう! 俺の名前は前原圭一っていうんだ。あんたの名前は……石原響也か。これからよろしくな!」

 

 そう気さくに話しかけてきたのは前原圭一。人当たりのよさそうな好印象を持てる青年だ。

 

「はうー! 私の名前は竜宮レナ、気軽にレナって呼んでね! それにしても随分とちっちゃいね。はうぅ! お持ち帰りー!」

 

 そう言って私を『持ち帰り』しようとするこの子は竜宮レナというらしい。『持ち帰り』されるのは基本的にかわいらしい子供たちらしく、私もその類に含まれていると思うと少しだけ悲しさがこみあげてくる。それにしてもレナは女子にしては体つきがしっかりとしている。もしかしたら単純なスピードなら私を凌駕する可能性もある。

 

「こらこら、圭ちゃんもレナもそんなに詰め寄らない詰め寄らない。おじさんたちだって響也君と喋りたいんだからね」

 

 私に真っ先に話しかけてきた二人を後ろから諫めているのは園崎魅音。この地域のお偉いさんの娘らしい。周りの子と比べると大人びていることからこのクラス……というよりもこの学校のリーダー的存在だという事が分かる。

 

「おーっほっほ! 響也さんは見た感じ随分と抜けているようですが、そんなんで毎日やってくる私のトラップ地獄を耐えれるかしら?」

 

「にぱー☆沙都子、新しくやってきた仲間に意地悪したら駄目ですよー」

 

 そして彼女たちの近くにいる小さい子たちは北条沙都子と古出梨花。沙都子はトラップの達人らしく裏山は既にダンジョンの様に魔改造去れているとのこと(圭一談)。梨花ちゃんは魅音さんと同じくここいらで権力を持っている嬢ちゃんなのだ。可愛らしい見た目と挙動だがその裏では家柄が深く結びついているのかもしれない。

 

 ……実は沙都子に『抜けている』と言われたことを少しだけ気にしている。そんなに気が抜けてしまっていたのか。これでも幾度の死地を潜り抜けてきたのだが。

 

 さて、これから外で体育の授業をするらしい。一応家にあった体操服を持ってきておいたが、それが功を奏したようだ。

 

 ひとまず私はお手洗いに行きたかったので、いまだに質問を続けている子供たちに一言謝りを告げて席を立った。

 

「トイレ……? ああ、それなら廊下を出て少し進んだところの右手にあるぞ。……ん?」

 

 どうかしたのか圭一、私の尻を見つめて。まさかお前はソッチの気が……。

 

「断じて違う! 俺は今までも、そしてこれからも女が好きだ! ってそうじゃなくて、なんかお尻に付いてね」

 

 ……? 

 

「……これ画鋲じゃねえか! おい沙都子。お前危ないからこういう悪戯はやめろって前から何回も言ってるだろ!」

 

 なんと。

 

「あらあら圭一さん、私がやったという証拠がどこにありまして?」

 

「まあまあ圭一君も落ち着いて。圭一君だって入学の時はこれを受けて緊張がほぐれたんでしょ?」

 

「確かに……」

 

 成程。沙都子はただの悪戯っ子だと思っていたが、ちゃんと気遣いができるしっかりした子だったのだな。偉い偉い。

 

「ふん! 私を侮らないでくださいまし! って頭を撫でるなー!」

 

「それにしてもお尻に画鋲が刺さったのに顔色一つ変えないなんて、響也はすごいのですー」

 

「いやいや、もしかしたらただの鈍感さんかもしれないよー?」

 

 ……魅音にまでそういわれると認めるしかないのかもしれない。

 

「ん、そろそろ体育にいかなくちゃ。もう授業が始まっちゃうよ」

 

「そうだな。魅音今日は何をやるんだ?」

 

「そうだねぇ……。今日は響ちゃんの初めての授業だし、鬼ごっこで行こう!」

 

 そう行って着替えに動く彼らたちの事を見ているとこんな生活も悪くないって思うようになった。前世とは真逆の騒がしさが不思議と心地よく感じる。

 

 彼らにとって私はもうすでに『仲間』なのだろう。それはこの狭い雛見沢村で育ったからこその絆のなのだ。

 

 彼らよりも長く生きてはいるがまだまだ学ぶことは多そうである。そう思いながら彼らに遅れないように素早く立ち上がった。




格好よく締めていますが、響也君はこれからトイレに行きます。(´・ω・`)

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