ひぐらしのなく頃に 逆戻り編   作:ClariSと苺の樹

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 アンジェラ「キョウヤ、とても似合っていますよ。」


 マルクト「わぁ! キョウちゃんかわいいですね! 管理人に貰ったのですか?」


 イェソド「ふむ……。耐久力と防御力に優れているいい(コスチューム)だな。管理人もいいものを贈る。」


 ホド「すごく似合っています! ……そうだ! 今度一緒に“コスプレ”というものをしてみませんか? 大丈夫です。絶対にキョウさんなら似合いますよ!」


 ネツァク「うおっ……、なんだお前、実は女だったのか?」


 ティファレト「キョウヤ! 上層にあまり行くなって前から何回も言って……! ……何よその服、そんなの着て楽しんでるわけ? バッカみたい! さっさと仕事に行きなさい。……その服結構似合っているわよ。」


 ゲブラー「ん、どうし……。……全くキョウヤにはこんな服よりもライダースーツのようなしっかりとした服の方が似合うというのに。なんだ、その服か? ……まあ悪くはないな。」


 ケセド「ふあ……。……おおキョウヤよく来たね。その華麗に決めた服を各部署に見せびらかしているのか? ……全然違う? まあまあ、そういうことにしておくよ。 ……それと君はもう少し男らしくしなきゃね。何時までも子供のままじゃいけないよ。」


 ビナー「………………いいと思う。」


 ホクマー「ふむ……。もっと他にいい装備はなかったのですかな。これではキョウヤ、貴方は女子と間違えられてしまいます。そうなれば職員に舐められ、ここで一、二の実力を誇る貴方の名前にも傷が付きます。もっと自分を大切にしてください。」


 ——“愛と憎しみの名のもとに(In the name of love and hate)”一式を装備した響也に対する各セフィラの反応より


第3話

 久しぶりの中学校生活初日はあっという間に終わってしまった。

 

 体育の時間は教師が特に授業について口を出すことがなく、生徒の自主性に任せたとてものびのびとしたものだった体育だけでなく、ほかの授業も一般的な学校とは違う形式で進んでいった。

 

 こういうのも悪くはない。

 

「「「さようならー!」」」

 

 さて、授業が終わると私には特にすることはなく、この町の地理情報を把握しようかと思っていたが、どうやら圭一達は部活動を行っているらしく、それに着いて行くことにした。因みに特に名前は決まっておらず、彼らは単に『部活』と呼んでいる。シンプルな名称であるがゆえに私はどのような部活なのか、と年相応にわくわくした。

 

「あれ、響也君、私たちの部活に入りたいの?」

 

 動き出したレナに私の意志を告げると彼女は少し驚いたような顔をしていた。そこに横から圭一がニヤニヤ顔で腕を組みながら私にこう言った。

 

「本気なのか……? 俺らの部活は生半可な気持ちで入部していいようなもんじゃないぞ。毎日が己の命を懸けた熱い試合。勝者には栄光を、そして敗者には恐ろしい罰が待っている。……それでも入りたいと思うのか?」

 

 なんと。

 

 驚くべきことに彼らが行っているのはただの部活などではなく、私がかつて働いていたロボトミー社(あの地獄)と似たような境地のものだというのだ。たかが田舎の小さな学校の部活と思っていたがどうやら私は彼らの事を侮っていたようだ。

 

「みー、そんなに身構えなくてもだいじょうぶなのです。圭一も誇張しすぎなのですよ」

 

「そうそう、私たちは放課後になるとこの五人で集まってカードゲームやボードゲーム、テーブルゲームなど多種多様なゲームで競い合っているんだよ。圭ちゃんも初めはよそよそしかったけど今じゃ立派な部活メンバーさ。こんなに大きくなっておじさんとっても嬉しいよー」

 

「はっ、そう言っていられるのも今の内だぜ、魅音! 今日という今日は皆に勝って貴様にメイド服を着させてやるのだ!」

 

 どうやら命をかけた闘いというのは圭一の言葉の綾だったらしい。流石にあんな荒んだ世界とこんなにも平和な村が同じであるはずがない。あれは悪い意味で特別な世界だったと今になって理解できた。

 

「というかその年で『働いていた』なんて冗談が過ぎません事? そんなに見栄を張りたいのならもう少しましな嘘をつくことですね!」

 

 ん、こんなところにちょうどよいひじおきがー。

 

「きゃあああ!? ちょっ、ちょっと頭をひじでぐりぐりするのをやめてくださいまし! 髪が崩れてしまいますわ!」

 

「響也、ごめんなさいなのです。沙都子は背丈の近い異性に戸惑っていて、少し素直になれないだけなのですよ」

 

「り、梨花! あることないこと言うのはやめてくださいまし!」

 

「にぱー☆」

 

 成程、素直になれないお年頃なのか。ならば今回はこのことについては不問としよう。だが次はないからな。

 

 そう言って私は沙都子の頭から手をどかしたのだが、沙都子は何か言いたげだった。とても意志が強い子である。

 

「そんなんじゃありませんのに……」

 

「ははは! 今日一日で随分と仲良くなったようだね。よおし、私がここで響ちゃんが入部することを許可してあげよう!」

 

 嬉しい事に魅音が私の入部を認めてくれた。そのことに圭一たちは異論は無いようで——沙都子だけは私の事を恨めしい目で見ていたが——それを確認した魅音がうん、とうなずいていた。なんだか部員としてだけでなく、彼女らの一員としても認められたようで私は少しだけ胸が熱くなった。

 

 

 

 

「それじゃあ今日は……“ジジ抜き”でもやろうかな」

 

「なっ……。成程、それは面白そうだな!」

 

「おーっほっほ! 圭一さんは今回も負けないように頑張ってくださいね?」

 

「沙都子の方こそ、いつまでも上にいると思っていたら大間違いだからな!」

 

 今日のゲームはジジ抜き。ジョーカーを抜いた五十二枚の中から一枚見ないように除外し、その状態でババ抜きの様にカードのペアを作っていくというものだ。そう言って魅音は引き出しから年季の入ったトランプを取り出して全員に配っていった。

 

「響也はこういうゲームは強かったりするのか?」

 

 魅音が六人にカードを配っている最中に圭一にこんなことを聞かれた。

 

 実を言うと、私はこの手のゲームはルールは知っているものの、あまりやったことがないのだ。理由としては高校中退して入社したこともあるが、小学校や中学校では友だとと呼べる人がいなかったのだ。どこか他人と一線を引いていたんだろう。相手に踏み込み過ぎず、相手に極度に踏み込まれないよう慎重に生きてきたと記憶している。

 

 そんなことをぼかして彼に告げると彼の私を見る目が少しだけ変わった気がした。

 

「確か響也は東京から来たんだっけ……。……そうだよな。理由もなくこんな田舎の村に東京の人が来ないもんな。悪い、いやなこと聞いちまって」

 

 そう言って彼は私に謝罪してきた。

 

 ……非常に面倒くさい誤解をされた気がする。

 

 そんなことをしている内にどうやらトランプを配り終えたみたいだ。

 

 さて、私のカードはというと……。ハートとスぺードの9のペアしか揃わず七枚という少し悪い状況からのスタートとなった。梨花ちゃんが沙都子のカードを引き始めてゲームは始まった。

 

 皆は着実に自分の手札を減らしていっている。カードを引くのに迷いが見えない。よほど彼女らはこのゲームに自信を持っているのだろう。

 

 

 

 

 ゲームも佳境に差し掛かってきた。

 

 既に一枚しか持っていないのは魅音と梨花ちゃん。沙都子とレナは二枚持っていて、圭一は三枚。そしては私は五枚も持っていた。

 

 やったことはあまりないとは言ったものの子の様子ではそれ以前の問題である。何かコツでもあるのだろうか。

 

 そして梨花ちゃんが私の手札を引こうとしたとき、テーブルをはさんで向かいの魅音が悪い顔で私のカードを見ながらこう言った。

 

「ふっふっふ。響ちゃんのカードを右から当ててあげようか」

 

 ……何? 

 

「響ちゃんの手札は右からA(エース)、6、7、Q(クイーン)K(キング)だね。当たってる?」

 

 ……その通り。彼女の言う通り私の手札はその五枚である。

 

 そんな事を私は言われたが驚きはあまりなかった。彼らがカードを引く時八割九割の確率でペアができていたからだ。明らかにゲームがきれいに進み過ぎていて少し違和感を覚えていたのだ。

 

 彼女の表情から分かる自信から今の言葉が勘の類のものではない事が分かる。ではなぜ私の手札を見ずに当てる事が出来たのか。

 

『——そう言って魅音は引き出しから年季の入ったトランプを取り出して全員に配っていった』

 

 ……そのタネとは恐らくこの年季の入ったカードについている傷を目印としているのだろう。それに気づいた私は咄嗟にカードの裏面を手で隠した。しかしながらその行動をするには遅かった。

 

「隠さなくても貴方のカードはすべて分かりますわ。ゲームが始まった時からすでにあなたは詰み(チェックメイト)でしてよ!」

 

「因みにジジはスペードのK(キング)だよ。右から三番目のカードだね」

 

 沙都子とレナから声が入った。年季が入っているということはそれほどまでに彼女たちがこのジジ抜きをやりこんだのだろう。相手の手が分かる、裏を返せば自分の手も相手に知られるという事だ。そんな中彼女たちは勝ちを目指して日々競い合っているのだと思うと、ただ遊んで終わりのような甘い部活などではない事が感じられた。

 

「きっとこれがハートの6です……。はいっ、上がりなのです!」

 

 にぱー☆っとした満面の笑みで上がった梨花ちゃんに続いて魅音、沙都子、レナと上がっていき……。

 

「よし! これで俺の勝ちだ!」

 

 圭一が私のダイヤのA(エース)を引き当てて上がった。結局私は最下位となった。

 

「案の定響ちゃんが最下位だったね。それじゃ敗者には……これを着てもらいましょうか!」

 

 そう言って魅音がどこからともなく取り出したのは黒と白のシンプルなメイド服だった。フリルまでついていて完全に女性用である。

 

 これを着るのか。私が。

 

「そうでございましてよ。さあ早くその可愛らしい服に着替えて『ご主人さまー』と私に奉仕するのですわ!」

 

 

 

 

 

 

 ……ふむ。

 

 

 どうやら私は彼女たちにとっていいエサのようであった。

 

 

 

 

 こうして記念すべき雛見沢村での初めての部活は私の負けという形で終えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 まあ女装するのに何のためらいもなく着替えることが出来るほどに私は“愛と憎しみの名のもとに(In the name of love and hate)”で鍛えられているのだが。

 

「ってちょっとここで着替えないでないでくださいまし!」

 

「はうー! お持ち帰りー!」

 

「……レナ、鼻血出てるぞ」




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