四聖姉妹の奮闘記   作:愛川蓮

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最初の波、勃発です。


波~村防衛戦~

「う~ん……この溢れる山賊臭……」

「なんつーか、世紀末の雑魚敵が着てそうな鎧だよなこれ……」

「格好いいぜ、兄ちゃん! 姉ちゃん!」

「そうね、香も盾の勇者様も格好良いじゃない」

「二人とも良く似合ってるぜ、盗賊のコンビみたいで」

「俺は一応勇者なんだが……」

「私もなんですけど……」

 龍刻の砂時計に登録した翌日。私達は親父さんが頑張って1日で作ってくれた蛮族の鎧と蛮族の衣装を受け取ったのですが……

 

 一言で言うなら蛮族の衣装は『女山賊(それもエロゲーの)が身に付けそうな』扇情さと機動力を兼ね揃えたような衣装で蛮族の鎧は首周りにファーが付いた『世紀末を舞台にした作品に出てくる乱暴(ヒャッハー)な雑魚敵』が身に纏いそうな鎧でした。

 

「まあでも……やっぱり出来る限りの準備はすべきですよね」

「ああ、此処はアニメでもラノベでも漫画でもねぇ……『現実(リアル)』だ。やれることをやるまでだ」

「そう、ですね」

 …………波の時間まで、後5分……ですか。

 

「…………ウィンディア、リオン、緊張してませんか?」

「……ありがと。でも大丈夫、リオンやキールがいるしね」

『私も大丈夫なの!』

 うん、これなら大丈夫そうですね。

 

 次は……キールですね。

「キール……大丈夫ですか? 震えてますけど……」

「ん? ああ……なんか、俺の村で起こった最初の波を思い出しちゃってさ……」

「…………そうですか」

 私はキールの故郷で起こった波についての顛末……ラフタリアさんの両親等の村の大人達が波のボスに喰われ、死んでしまった事を言ったときのキールの表情を思い出し……キールを抱き締めます。

 

「大丈夫です。此処には私がいます、尚文さんがいます、ウィンディアとリオンがいます。私達の手の届くところでは誰も傷付けさせませんし、誰も死なせません。貴方の村のような悲劇は、繰り返させません。だから……元気をだしてください」

「…………あんがとな、姉ちゃん」

 私の言葉に安心したのか、キールは私から離れると頬を叩いて気合いを入れると「ようし、魔物でもなんでもかかって来やがれ!」と気炎をあげました。

 

「…………残り、30秒……来ますよ!」

「ああ!」

 そして、カウントが0になり…………

 

 ピキン! 

 世界中に響くかのような音が響き、私の見ている景色が一瞬で切り替わります。

 

「此処は……」

「『リユート村』の付近です、投擲具の勇者様!」

 私が場所を確認しようと見回していると、走りよってきたラフタリアさんがそう言いました。

 

「ここは農村部で、人がかなり住んでいます!」

「もう避難は済んで──」

 そこまで言って、尚文さんはハッとしたような表情になります。

 

「不味い、波が何時、何処で発生するのかわからないんじゃ避難のしようがない!」

「急いで村を救援しませんと!」

「なので、私やリファナちゃんみたいな七星勇者のパーティメンバーと小手の勇者様と爪の勇者様は村の防御に回ることになりました!」

「私達も行きましょう!」

「わかっている!」

 私達はリユート村に向かって、走り出しました。

 

 ────────────────────

 

「凛さん、フォウルさん、ラルクさん、テリスさん!」

「文香!」

「リファナちゃん!」

 俺達がリユート村に駆けつけると、そこには波から這い出した魔物達を吹き飛ばす凛達と文香達のパーティがいたので駆け寄る。

 

「状況はどうですか!?」

「此処に駐在していた騎士達や冒険者が中心になって持ちこたえてはいるが、多勢に無勢だ。せめて住民の避難を完了させないと攻勢には移れん!」

「わかった。香、お前はキール達と一緒に村人を避難させろ」

「わかりました、尚文さんは?」

「俺は敵を惹き付ける」

「わかりました、気を付けてください」

 そう言って香達は村人達を避難させる為に、俺はは魔物達に向かって走り出す。

 

 ガン!←イナゴみたいな魔物が俺に激突した音。

「ゆ、勇者様……」

「ああ、此処は俺が押さえるからお前らはさっさと後退して態勢を立て直せ!」

 俺がそう言うと、これ幸いとばかりに傷を負っていない奴まで逃げようとして……

 

「お前らは戦え! ナオフミの坊主にだけ戦わせようとするんじゃねえ!」

「尚文一人だけでは避難中の村人に被害が出る! 逃げずに戦うんだ!」

「逃げようとしたら……ぶっ飛ばす!」

 ラルクがその不届き者達のリーダーの襟首に鎌を引っ掻けて投げ飛ばすことで無理矢理戦線に復帰させ、凛が真面目な事を言ってそいつのパーティーメンバーを自分が先駆けになることで戦わせ、文香がそれでも逃げようとした奴の顔スレスレに攻撃をすることでそいつらを前線に向かわせる。

 

「たく……」

 俺はお人好しな連中に苦笑いをしながら逃げ遅れた村人の一人の盾になる。

 

「早く逃げろ!」

「あ、ありがとうございます!」

 俺がそう怒鳴ると、村人は礼を言いながら避難民を警護している香の元に向かう。

 

「凛、村人達が全員、魔法の範囲内から避難したわ!」

「わかりました! 全員、テリスさんの魔法が来るから退避しろ!」

 俺達は凛の言葉と共に後ろに下がり…………

 

「『あまねく宝石の力よ、私の求めに応じて顕現せよ』…………」

 リオンの背中に乗って空中にいたテリスの言葉に応じてテリスの髪が黄色に変わる。

 

「『私の名はテリス=アレキサンドライト。彼の者を討ち滅ぼす力となれ』! 行くわよ……『輝石(きせき)黄玉雷(おうぎょくらい)』!」

 テリスの詠唱が終わると共に俺が採掘したトパーズから凛が作成した『トパーズロッド』から無数の雷が放たれ、視界内の大半の魔物を殲滅した。

 

「いよっし! 一気に攻め込むぞ!」

 文香が意気揚々と大きく数を減らした魔物の群れに…………

 

「魔法隊……撃て!」

「!? 文香!」

 突撃しようとした時に響いた声に気付いた俺は文香を押し倒し、その身を盾にした。

 

 ち、痛くも痒くもないが……? この状況、何処かで…………

『あたしは、『ダラバ』も『カティマ』の奴も纏めてぶっ飛ばす! あの変な奴が言っていた『運命(原作展開)』なんざくそ食らえだ!』

『だからって、自分をダラバの盾にする!? 下手すると文香はカティマさんに刺されて死んでたんだよ!?』

『そん時はそん時だ!』

『まさかの行き当たりばったり!?』

 これ、は……何時の…………いや、それ以前に何の記憶…………

 

「尚文さん、大丈夫ですか!?」

 俺がいきなり沸き上がった記憶に混乱していると、香の声が俺を現実に引き戻した。

 

「ふん、盾の勇者か……頑丈な奴だ」

「てんめぇ……あたしもろとも尚兄を殺すつもりだったな……?」

「犯罪者の妹なんぞ、犯罪者もろとも倒して何が……「…………『ツヴァイト・アクアスラッシュ』!」「『天狼拳(てんろうけん)空徹(くうてつ)』!」「『猫神拳(ねこしんけん)旋風(つむじ)』!」ぐべぇ!?」

 騎士団の団長が文香の言葉を鼻で笑いながらふざけたことをほざこうとして……文香の仲間に総攻撃をくらい、ノックアウトされた。

 

「……騎士団は以降副長の指示に従って動きなさい! 『黒鉄(くろがね)騎士団』の内、第一大隊は私と共に村を守っている勇者様達の援護! 第二大隊は波のボスの打倒に向かった勇者様達を援護に向かいなさい!」

「騎士団の内、小隊は私の元に集まれ! 密集陣形を作り、盾の勇者様達を援護するんだ! 本隊は隊長を叩き起こして残りの勇者様達を援護せよ!」

 此方に鎧を着込んだ第一王女と同じ色の鎧を着込んだ騎士団と副長と思わしき人が率いる部隊が俺達の援護に入る。

 

「悪い!」

「マルティ……あんがとな」

「いえ、これは世界中にとって重要な戦いなのです……皆様への支援を惜しまないのは当然ではないですか」

「その心構えが王様にもあれば良いんですけどね……」

「(ほんとにな)」

 俺は香がため息混じりで言った言葉に心の中で答えながら、魔物に押されていた騎士をスキルで助けた。

 

 そして…………

「みてください、空が……」

 俺は香の言葉に顔を上げると、そこには真っ赤に染まっていた空が青空に戻る所だった。

 

「どうやら終わったようだな……」

「あー……疲れた……」

 凛は肩で息をしながらそう言い、文香は体を大の字に投げ出しそう呟く。

 

「やった……俺は、波に、皆の仇に…………勝ったんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「キール……おめでとう」

 キールは波を生き残ったのがよほど嬉しいのか、ウィンディアに涙を流しながら抱きつき、ウィンディアはそんなキールの頭を撫でながらそう言う。

 

「体が鉛の様に重いです……」

「疲れてんだよ。ほら」

「…………すいません」

 俺はくたくたに疲れて立っていられない香に肩を貸してやる。

 そのまま香は目を閉じると、俺の肩を枕にスースーと寝息をたてて寝始めた。

 

「やれやれ……俺も、寝るか……」

 俺は疲れが一気に来たのか、瞼が重くなるのを感じながら眠るために目を閉じた……

 

「尚文、てめぇ香に手を出す気か! 俺の目が黒い内には色んな試練が襲い掛かると思え!」

「落ち着け! 色々誤解だ!」

 この後、俺は誤解して狂戦士(バーサーカー)レベルの鬼の形相になった元康に小一時間ほど追い掛け回されるはめになった。

 

「樹、何故キョロキョロと周りを見渡しているんだ?」

「いえ、姉さんがいないので探しているんです」

「トイレとかじゃないか?」

「…………それもそうですね」

 

 ────────────────────

 

 同時刻、森の中……

 

「イ、嫌ダァァァァァァァァァァ! ヤット、僕ノハーレムガ完成シテタノニィィィィィィィィィィ!」

「うるせえよ……元の世界で生きていた頃から成長してないな、お前。お前にハーレムなんざ……勿体ねーつーの! ……そのままくたばれ!」

 そのまま理奈(?)は影でギチギチに縛られながらも喚き散らす醜悪な怪物に炎を纏った大斧を叩き付け真っ二つに両断した。

 

「ギャアァァァァァァァァァァ!? ノ、呪ッテヤルゥゥゥゥゥ!」

「おう、じゃあそのまま魂ごと消し飛べ」

「死、死ニタクナ…………」

 理奈(?)は斧を禍々しい物に変貌させると、それを怪物から出た靄の様な物に叩き付けると声はそのまま掻き消えた。

 

「あー……下らない奴に時間を使っちまった……」

 理奈(?)は溜め息を吐くと、戦いながら思っていた事を呟いた。

 

「……あのゴミ野郎に力を与えたのは、誰だ? 元から持ってた『催眠』の異能力に、『オルクス』の『領域』と『ソラリス』の『(やく)』の併用で自分を政府から派遣された『性指導員(・・・・)』なんてウソっぱちの役職を利用して恋人持ちの女子を食いまくろうとした挙げ句、『革命』を目指してた理奈に散々掌の上で踊らされて、最後はUGNと理奈に討伐されたのに……しかも、限界を越えて『キュマイラ』と『ハヌマーン』の能力手にいれてたし」

 理奈(?)は暫く考えていたが、彼女は頭をガリガリと掻くと開き直ったかの様な表情でこう呟いた。

 

「ま、誰が来ようが……アタシが、『川澄瑠奈(るな)』がぶち殺す。理奈の幸せを守るためにな」

 理奈(?)…………否、瑠奈は理奈の体を撫でると笑いながら彼女に変わるのだった……

 




次回『宴会~家族の楔~』

次回もお楽しみに!

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