四聖姉妹の奮闘記   作:愛川蓮

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卵ガチャの話です


剣と爪の第2章~復活の探索者~
論功式~たまごガチャ~


 朝の10時頃、私達は謁見の間に通されました。

 

「たく……なんで翌日に援助金を渡すんだよ……」

「まあまあ……」

 尚文さんがそう毒づきますが、私はそれを苦笑いをしながら宥めます。

 

「では今回の波までに対する報奨金と援助金を渡すとしよう」

 …………報償金、ですか? そういえば、理奈さんとかから王女様や王様から依頼を受けていたって言ってましたね。

 

 そして重そうな金貨袋を持った王様の側近達がやって来ます。

 

「ではそれぞれの勇者達に」

 私達の視線が金袋の方に向います。

 確か、月々の援助金は最低でも銀貨500枚は確定しているはずです。

 支度金だけの合計銀貨1000枚……では本気で今後の生活などに困ります。

 

「(ぼそ)良かったですね」

「(ぼそ)ああ」

 私達は小声で頷き合いながら金袋を受け取ります。

 さて、このお金で何を買いましょうか……投擲具の強化法である『オーバーカスタム』は矢鱈と金を使いますし、薬や料理に使う機材の新調も良いですね…………いやいや、キールやウィンディアの装備の新調も考えなければ……

 金袋の中のお金は……銀貨で1500枚でしょうか? 

 

「(ぼそ)尚文さん、幾らでしたか?」

「(ぼそ)銀貨で1500枚だ。そっちは?」

「(ぼそ)此方も同じです」

 合計で3000枚……まあまあの金額ですね。

 

「モトヤス殿とリナ殿には活躍と依頼達成による期待にあわせて銀貨3500枚ずつ」

 んな!? 合計で7000枚ですか!? 

 私と尚文さんの視線が兄さん達に手渡された重そうな金袋に注がれます。

 

「次にレン殿とフミカ殿、やはり波に対する活躍と我が依頼を達成してくれた報酬をプラスして銀貨3500枚ずつ」

 錬さんと文香もですか!? 

 私が目を見張ると、物凄く不満そうな顔で金袋を受け取る文香と兄さんと同じ金額で満足そうな錬さんがいました。

 あ、文香が小声で「け、尚兄と香には端金しか渡さねえくせに……」と言っています。

 

「そしてイツキ殿とリン殿……貴殿達の活躍は国に響いている。よくあの困難な仕事を達成してくれた。銀貨3500枚ずつだ」

 樹さんと凛さんにも同じ枚数が渡され、樹さんは「まあ妥当でしょうね」という顔で凛さんは私達に「すまない」と言いたそうな顔で金袋を受け取ります。

 

「盾の勇者とカオル殿には波の戦いにおいてリユート村の防衛に活躍した功績をプラスして銀貨1500枚ずつとする」

 …………王様の渋々といった反応や、王女様の疲れたような表情や何故かいる教王からの苦々しそうな反応から本来は支援金だけだったようですね。

 

「……ご恩情、感謝致します」

「…………おい!」

 私が恭しく頭を下げると、尚文さんが私の反応にキレそうだったので私は「それでは仲間を待たせているので失礼します」と言って謁見の間から出ました。

 

 ────────────────────

 

「なんであんな屑に頭を下げた!」

 王城から出ると、尚文さんが怒りに任せて私に怒鳴りました。

 

「落ち着いてください。訳を言いますから」

「……俺が納得出来る答えだろうな?」

 私の言葉に尚文さんが訝しげに睨みます。

 

「理由としては彼処で文句を言ったら援助金もこれ幸いとばかりに打ちきりにされそうな雰囲気だったからなんですよね。それをされるくらいなら頭でもなんでも下げて最低限の支援は続けてもらいましょうよ……後で溜飲を下げる為にも、彼処は耐えるべき場面でした」

「…………そうかよ」

 私が理由を述べると、尚文さんは不満そうな顔つきでしたが渋々と言った感じで納得したようでした。

 

「取り合えず、戦力強化の為に親父さんの所にでも……「もし、盾の勇者様に投擲具の勇者様」うひゃらっほい!?」

「「ぶふ!?」」

「…………すっげぇ声を出したな」

 ううう……とんだ大恥を掻いてしまいました…………誰ですか、急に話しかけてきたのは! 

 

「お久々でございます」

「げ……奴隷商さん……」

「ああ、あんたか。こんな表で何をやってるんだ?」

「今は表の方の商売をしていまして」

「『表の方(・・・)』?」

 私が奴隷商さんの言葉に疑問を感じて聞くと、奴隷商さんは勿体ぶったような身ぶりでこう言いました。

 

「『魔物商』ですよ」

「この世界じゃ魔物使いもいるのか?」

「物わかりが良いようで何よりでございます。勇者様はご存知ないですかな?」

「あったことはないが…………」

「確か、凛さんと理奈さんの仲間のフィロリアルがそうだって話を聞きましたけど……」

「…………ああ、あのチョコボみたいな魔物達か」

 凛さんのルージュは気品の溢れるお嬢様気質の性格で、理奈さんのフィオはクールな性格、リコは荒んだ尚文さんを気遣うように髪に毛繕いをする気配り上手な子なんですよね。

 …………ところでチョコボってなんですか? 

 

「で、あの卵は?」

「魔物は卵からじゃないと人には懐きませんからねぇ。こうして卵を取引してるのですよ」

「そうなのか」

「既に育てられた魔物の方の檻は見ますか?」

 うわぁ、商魂逞しい…………

 

「いや、今回は別にいい」

「それに育ちきったのは高いでしょうしね」

 私達がそう告げると、奴隷商さんは「残念ですねぇ」と肩を竦めながらそう言いました。

 

「で、あの卵のある木箱の上に立てかけてある看板は何だ?」

 え~と…………『一回:銀貨100枚』で商品の名前は『魔物の卵くじ』、ですか。

 

「銀貨100枚で一回挑戦、魔物の卵くじだそうです」

「100枚とは高いな」

 今の私達の資金は銀貨3101枚。一、二回程度なら問題ないでしょうが、それでも慎重になるべきですね。

 

「高価な魔物ですゆえ」

「一応参考に聞くが、フィロリアルだっけ? それはお前の所じゃ平均幾らだ?」

「……成体で200枚からですかね。羽毛や品種などで左右されます。ハイ」

「結構高いんですね」

「成体という事はヒナはもっと安いのか。更に卵の値段だけで、育成費は除外だとすると……得なのか?」

「いえいえ、あそこにあるのは他の卵も一緒でございます」

「なるほど……くじと言っていたからな」

 中には最高級な卵もあるということでしょうか? 

 

「で、あの中には当たりが無いって所か」

「なんと! 私達がそんな非道な商売をしていると勇者様達は御思いで!?」

「人身売買をやっておいて良く平然とそれを言えますね……」

「私、商売にはプライドを持っております。虚言でお客様を騙すのは好きでありますが、売るものを詐称するのは嫌でございます」

「騙すのは好きだけど、詐称は嫌いって……」

「とんでもない商人ですね……」

 私達が呆れながらそう言うと、奴隷商さんは続けてこう言いました。

 

「大当たりは騎竜でございます」

「ああ、リオンの仲間ですか」

 私がそう言うと奴隷商さんは意外に思ったのか「おや、既に竜のお仲間がおいでで?」と言いました。

 

「お売り頂くなら金貨20枚で買い取りますが……」

「殺すわよ」

「ウィンディア!」

 そんなことを言った奴隷商さんにウィンディアが怒りと殺意を込めた目で剣を突き付けるのを慌てて止めました。

 

「おおっと、冗談、冗談ですよ。…………で、如何ですかな?」

「……因みに確率は? 大当たりが出るやつで良い」

「卵は250個ございます。その中で1個ございます」

 確率は250分の1…………ですか。

 

「見た目や重さで分からないよう強い魔法を掛けております。ハズレを引く可能性を先に了承してもらってからの購入です」

「良い商売をしてますね……」

「ええ、当たった方にはちゃんと名前を教えてもらい。宣伝にも参加していただいております」

「ふむ、確率がな……」

「十個お買い上げになると、必ず当たりの入っている、こちらの箱から一つ選べます。ハイ」

「さすがに騎竜とやらは入っていないのだろう?」

「ハイ。ですが、銀貨300枚相当の物は必ず当たります」

「あ、そうなんです…………って、それってコンプガチャ商法じゃないですか!?」

「そういやそうだ!?」

「「???」」

 あっぶな、危うく罠に嵌められる所でしたよ! 

 

 …………でも、同時に面白そうな感じではあるんですよね。

「……私達四人でやります?」

「ふむ、なら俺達四人分を一個ずつ売って貰おうかな」

「ありがとうございます!」

「やった!」

「…………良いの?」

 キールは純粋に喜びますが、ウィンディアは心配そうに覗き込みます。

 

「最悪ウサピルでも育てた後で売ればトントンです」

「あ、そうなんだ……」

 アニマルセラピーだのの効果はありますが……お金が無くなったときに売れば生活費の足しにもなりますしね。

 

「それにしても……ふむ」

 奴隷商さんはキールを値踏みするかの様な視線で見ます。

 

「……なんだよ」

「もっと私共のような方かと思っていたのですが期待はずれでしたな」

「…………その口を閉じないとぶち殺しますよ?」

 私はナイフを持って奴隷商さんに詰め寄ると、奴隷商さんは慌てたように「失敬! 失言でしたな」と言いました。

 

「それじゃあ、卵ガチャをしてこの胸糞の悪い人から遠ざかりましょう」

「賛成!」

 私がそう言うと、ウィンディアも怒り混じりの言葉でそう言いました。

 

「あ、ああ……」

「姉ちゃん、スッゲー怖い……」

 私の雰囲気に恐れをなしたのか、尚文さんとキールが半歩ほど後ろに下がっていました。

 

「…………じゃあ、私はこれで」

「あたしはこれ」

「俺はこれだな」

「俺はこれ!」

 私達はそれぞれ適当に選んだ卵を手に取ります。

 

「では、その卵の記されている印に血を落としてくださいませ」

 言われるまま、卵に塗られている紋様に血を塗りたくるとカッと赤く輝き、私の視界に魔物使役のアイコンが現れます。

 …………奴隷と同じく禁止事項を設定できるようですね。

 

 指示を無視したら軽い痛みが入るようにしましょう。……心は痛みますけど、躾の意味も込めてですね。

 私が設定を終えると、奴隷商さんはニヤリと笑いながら孵化器らしき道具を開きます。

 私達はその卵を孵化器に入れました。

 

「もしも孵化しなかったら違約金とかを請求しに来るからな」

「ハズレを掴まされたとしてもタダでは転ばない勇者様に脱帽です!」

「当たり前、です!」

 私がそう言うと、奴隷商さんの興奮が最高潮になりました。

 …………もしかしてこの人って、潜在的に被虐体質(マゾヒズム)なんじゃないでしょうか? 

 

「口約束でも、本当に来るからな。白を切ったら乱暴な俺の奴隷が暴れだすぞ」

「がおー!」

「…………キール、迫力あんまり無いからやめなさい」

「え~!?」

 元気っ子なキールがそれをやると確かに迫力無いんですよね…………

 

「何時頃孵るんだこれ?」

 尚文さんが銀貨400枚を奴隷商さんに渡してから尋ねました。

 

「孵化器に書いております」

「ふーん……香」

「え~と…………明日位に孵化しますね」

「早いな」

「早めに孵化しそうなのをガチャ用に置いてるんじゃないんですか?」

 …………何が出てくるのか、ちょっと楽しみですね。

 

「勇者様のご来場、何時でもお待ちしております」

「出来ることなら、永遠に来たくありませんね」

「香に同じく」

 私達はそう言いながら奴隷商さんのテントから孵化器を持って出ました。

 

「…………何時までも香に頼る訳にもいかないから、ウィンディア、この世界の文字について教えてくれないか?」

「別に良いわよ? ついでに香にもより難しいの教えてあげる」

「ありがとうございます」

 




次回『産まれる者達~フィーロ、サクラ、ノワール、ブラン~』

お楽しみに!
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