四聖姉妹の奮闘記   作:愛川蓮

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フィーロ達の生誕+αです。


産まれる者~フィーロ、サクラ、ノワール、ブラン~

 卵ガチャをしてから私達は魔法屋で店主さんから魔法の適正をみてくれた上に初級の魔法書を貰い、薬屋では前に貰ったレシピ本よりも高い薬を作れるレシピ本を貰い、リユート村に行けば村人から感謝されてキメラの素材をわけて貰ったり…………と、以前に比べたら格段と周囲の人達からの扱いが良くなっていました。

 

 因みに魔法の適正は…………

 私→水と炎

 尚文さん→回復と援護

 キール→光と風

 ウィンディア→闇と土

 …………尚文さんって、幾らなんでも攻撃に縁が無さすぎじゃないですか? 

 

 因みに魔法の適正まで攻撃に縁が無かった事に尚文さんはorzの姿勢になり「どんだけ攻撃力に縁がねえんだよ!?」と叫びました。

 …………本当に悲惨、ですね。

 

 この後で尚文さんはウィンディアから文字を教わりながら頭を抱え、私は文法に頭を抱えました。

 そんなこんなで1日たって……

 

「香! 香! 香!」

 私は慌てて入ってきたウィンディアに叩き起こされました。

 

「むにゃ……どうしたんですか…………?」

「卵が孵る!」

「…………あ!? それは大変ですね!」

 私は慌てて起きると、孵卵器に入った卵を見ます。

 

 卵が割れて…………

「ピイ!」「あいた!?」

「ギャオ!」「よいしょっと」

 卵の殻を乗せた桜色の毛並みのフィロリアルと黒い鱗の竜が勢い良く出てきてフィロリアルは私にぶつかり、竜はウィンディアが優しく抱き止めました。

 

「フィロリアルと騎竜……大当たりも大当たりですね」

 育って銀貨200枚のフィロリアルと金貨20枚の騎竜……完全に収支はプラスですね。

 

「ピイィィ……」

「キュアァァァ…………!」

 あれ? なんか2匹から険悪な雰囲気が…………

 

「ギュア!」

「ピィ!」

「はい、ストップ!」

「ピ!?」

「キュア!?」「あいだぁ!?」

 竜とフィロリアルが互いに突撃して…………フィロリアルがウィンディアに抱き上げられた事で竜が私の鼻に噛み付きました。

 

「ごめん、ドラゴンとフィロリアルが種族レベルで仲が悪いって事を忘れてたわ」

「忘れないでくださいよ! 『ノワール』が鼻に噛みついて痛いです!」

「え、もう名前を付けたの!?」

 私が鼻を抑えながらそう言うと、ウィンディアは名前をつけたことに驚いていました。

 

「いや、まあ名前をつけないと不便ですし……」

「…………それもそうね。ノワールが竜の名前だとして……この子の名前はなんなの?」

「その子の名前は『サクラ』ですよ。名前の由来はノワールは鱗の色が黒いからで、サクラは羽毛の色が桜色だからですね」

 黒と桜……あの人達、元気ですかねぇ…………

 

 私は此処にはいないそれぞれの色がパーソナルカラーである人達とその仲間の人達を思い出しながら、抱き上げたノワールを撫でるのでした。

 

 ────────────────────

 

「尚文さ~ん。卵から産まれ…………ありゃ」

「痛い痛い痛い! 俺の尻尾は食べ物じゃねえよ!?」

「だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 落ち着け、お前ら!」

 そこには部屋中をドタバタと走り回る白い毛並みの狼の様な魔物を捕まえようとしている尚文さんと尻尾をつついているサクラの羽の色をちょうど反対にしたような羽毛の色のフィロリアルを引きはなそうと奮闘しているキールがいました。

 

「香、サクラは任せたわ」

「あ、はい」

 ウィンディアはそう言ってサクラを私の頭の上に乗せると、狼をあっさりと捕まえ、フィロリアルは体をこちょこちょと擽って、フィロリアルが「ピヨヨ!」と笑った隙をついて引き剥がしました。

 

「ぜぇ、ぜぇ…………すまん。助かった」

「別に、どうって事ないわよ」

 う~ん……狼は元気っ子で、フィロリアルの方はやんちゃだからキールの尻尾を玩具か何かだと勘違いしたんでしょうか? 

 

「えっと、結果はフィロリアルが2、竜が1、名前のわからない魔物が1…………収支的には大幅にプラスでしょうか?」

「名前がわからないという意味ではマイナスだがな」

 そう言って尚文さんはすりすりとよっているサクラとフィロリアル……尚文さんの命名の『フィーロ』を撫でます。

 

「…………尚文さんって、動物に好かれやすいんですか?」

「まあ、そうだな。元々動物は好きだから、世話してたら何時の間にか好かれてたな」

「……ちょっと羨ましいです」

「ん? 何か言ったか?」

「あれ? いえ、何も」

 何か変なことを口走った様な気がしますが…………気のせいですよね。

 

 ────────────────────

 

「あ、盾の勇者様、投擲具の勇者様。おはようございます」

「おはよう」

「おはようございます」

「ヴォウ!」

「「ピイ!」」

「ギャウ!」

 私達が宿から出ると村人に挨拶をされたので挨拶を返しました。その村人の目はウィンディアが腕に抱えているノワール、頭の上に乗っているフィーロとサクラ、キールの足元にいる『ブラン』に向きました。

 

「おや、その魔物達は?」

「魔物商から卵を買いまして……」

「ああ、なるほど」

「ただ、中身が何か分からないって触れ込みのくじ引きだった。この魔物が何か知らないか?」

「フィロリアルと竜はわかったんですけど、この子はわからなくて……」

 私がそう言うと、村人はブランをマジマジと見つめます。

 

「そいつは……『ハウンドウルフ』の雄ですね」

「どういう魔物なんですか?」

「基本的には群れで生活する魔物なんですが、人間が飼い慣らしたのは優秀な猟犬になったり牧羊犬の代わりになったりするんですよ。魔物使いが飼うのは基本的に魔物ですから普通の牧羊犬だと歯が立たないんですよね」

 あ~…………確かに、普通の牧羊犬だと蹴散らされるか最悪の場合は魔物に噛み殺されるのがオチですね。

 

「ありがとうございます。参考になりました」

「そう言えばフィロリアルは何を食べるんだ? 竜と狼の方は肉を食わせたら良いというのはわかるんだが……」

「基本的に雑食ですから何でも食うんですけど……最初は煮豆とかの柔らかいものを食べさせた方が良いですよ」

 私達はそうアドバイスしてくれた村人にお礼を言いながら狩りをしに行きました。

 

 

 ────────────────────

 

 …………で

「明らかにおかしいですよね?」

「ああ」

 武器や防具を新調したお陰で倒しやすくなって…………いるのは良いんですけど、フィーロとサクラの成長速度が明らかにおかしいです。

 因みにレベルは…………

 私→28

 尚文さん→23

 キール→29

 ウィンディア→29

 リオン→20

 サクラ→12

 フィーロ→12

 ブラン→10

 ノワール→9です。

 ブランとノワールのレベルがフィーロ達より低いのはドラゴンは普通の魔物よりもレベルアップに多くの経験値を必要とする事、ブランがフィーロ達が倒しやすいようにアシストしたのが要因です。

 で、フィーロとサクラですけど…………さっきまでヒヨコみたいだったのに、今は両手で持っても重いほどの大きさに育っていました。

 羽根も抜け落ちてフィーロはピンクから桃色に、サクラは白から純白に変化していました。

 いや、ブランとノワールの成長も早いんですけど…………フィーロとサクラが異常すぎます。

 

「ん~……多分、香達が勇者なのが原因なのかも。詳しい人ならより詳細な事がわかるんだけどね……」

「あー…………やっぱりそこにたどり着きますよね…………」

 私は今もメキメキと骨や肉が軋む音がするフィーロ達に目線を向けて…………!? 

 

「(殺気!?)尚文さん、構えて! エアストスロー!」

 私が殺気のした方向に向けてナイフを投げると、黒い…………いえ、黒過ぎる(・・・・)蛇のような魔物を貫きました。

 

「やったか!?」

「いえ、まだです!」

 私が注意すると、魔物が更に7匹程飛び出してきました。

 

「なんだこいつらは!? エアストシールド!」

 飛び掛かってきた1匹をエアストシールドで防いで…………!? エアストシールドに罅が!? 

 

「こいつ…………! 今の俺の防御力を超えているのか!?」

「尚文さん、避けられるのは避けてください! 避けれられない攻撃だけを防いでください! ウィンディアとキールも回避優先で攻撃は出来る時だけで! リオンは空から魔法で援護を、他の魔物達は攻撃を受けないようにヒット&アウェイを心がけてください!」

「わかった!」

「わかったぜ姉ちゃん!」

「わかったわ!」

『はーい!』

「「ピヨヨ!」」

「キュオン!」

「バウ!」

 そう言って私達は蛇の群れと戦闘を開始しました…………

 

 ────────────────────

 

「『シールドプリズン』!」

「『ファスト・ウィンドアロー』!」

「コンボ! 『疾風投刃(しっぷうとうじん)』!」

 あれから1時間後。各個撃破に成功した私達は最後の蛇を仕留めて漸く一息吐きました。

 

「や、やっと全滅しました……」

「つ、疲れた…………」

 私達がそんなことを言いながら蛇を武器の中に吸収します。

 すると…………

『ファンタズム・スネークナイフ』が解放されました。

 

 ……………………ファンタズム(幻想)? 

 

 私が疑問に思っていると…………

「ぼさっとするんじゃねえ!」

「うわひゃ!?」

 私は尚文さんに抱き締められながら、倒れました。

 

「な、何をして…………なんですかあれ!?」

 そこには蛇同様に真っ黒なドラゴンがそこにいました。

 

「知るか、急に現れたんだよ…………ぐぅ!?」

「な、尚文さん!?」

 私が慌てて尚文さんを見ると、尚文さんの背中にはくっきりと裂傷が残っていました。

 

「わ、私を庇って…………す、すぐに倒して治療しないと!」

「バカ…………俺を置いて逃げろ! 俺達で勝てる相手じゃない! お前が死んだら、元康が…………悲しむだろ!」

「尚文さんが死んでも文香が悲しみます!」

 私は尚文さんを背中に庇いながらドラゴンに…………

 

「…………吠えろ、我が斧。煌めけ☆ 『シャインブレード』! ふはははは! 我が『魔眼(まがん)』が巻き起こす『重力(グラビティ)』に潰れよ! お前ら、うっせぇ! 行くぜ、三種混合!」

 立ち向かおうとして、一人で芝居をしているかの様な声が聞こえてきたかと思うと…………

 

「背中借りるぜ!」

「ぎゃふん!?」

「くらえ、『烈風光重斧(れっぷうこうじゅうふ)』!」

 背中を踏まれたので慌てて起き上がると…………まるでバターか何かを切り裂くかの様にドラゴンを真っ二つにする斧を持ったフードの人物がいました。

 

「いや、誰ですかあんた!?」

「ただの通りすがりだ…………『星光(ほしびかり)』! はいはい…………『光芒の疾走(こうぼうのしっそう)』☆」

「うわ!?」

 フードの人の口調が変わったかと思うと、いきなりフードの人が光って何時の間にかいなくなっていました。

 

「…………今のは、一体……って、尚文さん!」

 私は考えるのは後にして慌てて尚文さんに傷薬を飲ませると、そのままリオンの背中に乗せてリユート村に向かって飛翔させました…………

 

「(それにしても……さっき、抱き締められ…………!)」

 ううう…………顔が熱くなりそうなので、さっきのはカットですカット! 

 

 ────────────────────

 

「くそ! なんなんだ、あいつは!」

「まぁまぁ……コージ様、盾達はまるで相手にならないんです。次を狙えば…………」

 香達が飛び去った後、彼らを狙っていた人間達は香達を助けたフードの人物に憤っていたがすぐに次の襲撃計画を練ろうとして…………

 

「いや、お前達に次はない」

 彼らにとっての『終焉()』が訪れた。

 

「な…………誰だ、てめぇは!?」

「俺は……貴様を殺す者だ」

 その人物……左手首にリボンを巻き付けた目付きの鋭い青年は柄しか無い刀から血の刀身を形成する。

 

「俺を殺すだぁ……? 寝言を言うんじゃねぇ! 戦力差を考えてから言え!」

 そう言って男は手を地面に置くと、地面から香達を襲った蛇が合体したような黒いヤマタノオロチと黒ドラゴン、そして黒い巨人が現れた。

 

「ははは! どうだ、これが俺の……」

「俺も…………」

 男は勝ちを確信して…………

 

「『マザーズ・ロマリオ』!」

「『破邪剣征(はじゃけんせい)桜花放神(おうかほうじん)』!」

「『破神秘奥(はしんひおう)』!」

「ちか、ら…………?」

「一人で来たとは、言ってはいない」

 ヤマタノオロチが十一連続の突きで絶命し、ドラゴンが両断され、巨人が消滅した事でその笑みが消滅した。

 

「ひぃ!? そ、そいつは煮ても焼いても良いですから、殺さないでください!」

「わ、私達はそいつに脅されて一緒にいただけなんです!」

「な!? お前ら…………」

 彼に靡いていた少女達はあっさりと彼を裏切ろうとして…………

 

「悪いけど……僕は『裏切り』を許せないんだ」「あがぺ!?」

「尻馬に乗ろうとして、死にそうになったら命乞い……醜いったらありゃしないわね」「!? アギャアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 一人は後ろから現れた少年に首を握り潰され、もう一人は影から現れた牙に噛み殺された。

 

「!? ひ、ひぃぃぃぃぃ…………た、助けてくれ! 金はやる!」

「金はいらん」

「お、女か!? 女はあの二人以外にも……「女もいらん」じゃ、じゃあ何なら…………」

「お前の……命だ」

「い、嫌だ……」

 そして男は血の刃で首を断ち切られ、その後現れた魂を消滅させられたことでこの世から完全に消滅した…………




次回『激闘~村防衛レース~』

お楽しみに

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