四聖姉妹の奮闘記   作:愛川蓮

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フィーロ達の疾走です


激闘~村防衛レース~

「ぜぇ、ぜぇ…………あ~、疲れた」

 アタシは岩谷兄と北村妹を救出した後、ハヌマーンの保有者である『猿白(ましら)永久(とわ)』と『エンジェルハイロゥ』の保有者である『星光悠那(ゆうな)』の能力を併用して逃げてきた。

 

『おい、(われ)の紹介がないぞ』

「うるせえぞ、中二病(理華)

『ルビで我の名前を説明するな! 読者に失礼だろう!』

「誰だよ読者って…………」

 アタシに妙なことを言いながら怒ったのは『重音(かさね)理華(りか)』。『バロール』の保有者であり、現役の中二病でもある。

 

「あ、瑠奈。帰ってきたで御座るか」

「『血花(ちばな)』、誰が聞いてるのかわからねえからな…………普段はその口調で話すなよ」

「む。それは心得ている」

 そう言って古風な口調で話すのは『染宮(そめみや)血花』。『ブラム=ストーカー』の保有者であり、今のアタシ達の体を構成しているのは血花の血液で構成された『従者(じゅうしゃ)』だ。

 

「それでは斧に意識を戻すで御座るよ」

「オーケー、終わったら従者を解除しろよ」

「それは言われんでもするで御座るよ」

 アタシ達は意識を集中して斧の中に戻る。

 アタシが眼を覚ますと、そこには13脚の椅子が周りを囲んだ円卓とそこに座る意識の無い理奈を中心とした顔も性格も違う理奈と『融合(・・)』したアタシも含む12人の『レネゲイドビーイング』達だ。

 尚、血花の席は現在は空いている。

 

「ふむ……どうやら無事に戻ってきたようだね」

 そう言ったのはアタシ達の頭脳担当である『野々宮(ののみや)千恵(ちえ)』。『ノイマン』の保有者でもある。

 

「…………当たり前、3人も出てて負けたらそれこそ恥」

「永久。エフェクトを使ってないとはいえ、アタシも含めると4人だぞ」

 本来(・・)は3つのシンドロームを組み合わせた『トライブリード』は器用貧乏なのだが……アタシ達は特殊な融合を果たした為かブリードの影響で制限をかけられるエフェクトも何の制限もなくぶん回せるんだ。

 

「ところでさ~あの王女様、なーんか悠那達の秘密に気がつき始めてるみたいだよ?」

「…………どういうことだ?」

 そう言ったのは永久の姉の『猿白刹那(せつな)』。キュマイラの保有者だ。

 

「ん~感覚の鋭い悠那と永久だからかな、あの王女様が『もしかして樹の世界って、ダブルクロスも混じってたの…………? 理奈って、もしかしてキャンペーンシナリオ限定のDロイス持ち?』って言ってたんだ。言ってる事はあんまりわかんなかったんだけど、何かを知ってるのは確かだよ」

「ふむ…………現時点では何も言えないが、いざという時には『薬湯(くすゆ)』に一服盛らせるのもありだな」

「うぃーっす」

 気だるげにそう言ったのは、『黒袖(くろそで)薬湯』。『ソラリス』の保有者だ。

 因みにレネゲイドビーイングなのに人間みたいな名前なのは、人間として暮らしていた奴等がマッドサイエンティスト(くそ野郎)のカスみたいな目標で集められたからだ。

 

「ま、今は何もしないでおこう。みんな、そろそろ理奈に体を返すぞ」

 アタシ達は円卓から放れると、理奈の幸せそうな寝顔をみながら斧の中に帰って行った。

 

 ────────────────────

 

「…………むにゃ」

 私はゆっくりと目を覚まして…………

 

「尚文ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! 香に看病してもらうなんて…………羨ましいぞこの野郎!」←槍を押し込もうとしている。

「妙な嫉妬を燃やすんじゃねぇ!」←槍を白羽取りしている。

「元康! ストップ、ストップ!」←兄さんを必死に止めようとしている。

「……………………はい?」

 そこには槍を構えた兄さんが一応は重傷者である尚文さんを突き殺そうとしている場面でした。

 

 

「「ピヨヨ!」」

 ドゲシ!←フィーロとサクラのダブルキックが兄さんに炸裂した音。

 

「ぶがぺ!?」

「え~と……何がどうしてこうなったんですか?」

 兄さんがフィーロとサクラのキックでひっくり返ったのを見ながら私は尚文さんに何故こうなったのかを聞きました。

 

「ああ、俺が怪我をした後でお前が傷の手当てや看病をしてくれただろ? 元康が村人からそれを聞いてすっ飛んできて…………」

「で、さっきの状況になったわけ」

「兄さん…………」

 シスコンも度が過ぎるでしょうに…………

 

「って、フィーロとサクラ…………また大きくなっていませんか!?」

 昨日までは頭に乗せられる大きさだったのに今は私達が乗れる大きさになっていますよ!? 

 

「あー…………これ、フィロリアルの王様……二人とも雌だからフィロリアルクイーンになり始めているみたいね」

「…………詳しいな」

「フィオとリコ……私が一緒にいるフィロリアルもクイーンとキングだしね。それから此方に来て1ヶ月は凄く詳しい人の所にいたから」

 なるほど…………

 

「そういえば……兄さんに理奈さん、どうしてここに?」

「ああ。マルティさんがリユート村の被害状況を確認するために私達に護衛を頼まれてね、それで此処に来たの。…………来て早々に元康が村人から尚文が怪我をして香が看病をしているって話を聞いてすっ飛んでいったんだけどね」

「…………護衛の仕事をほっぽりだしちゃダメでしょう」

「…………面目ねぇ」

 兄さんがバツの悪そうな顔になりながらそう呟きました。

 

「もう……それじゃあ、さっさと下に降りましょう」

「へいへい……」

 私達が宿屋の下に降りると……

 

「あ、勇者様方! 助けてください!」

「どうしたんですか?」

 慌てた様子の村人が私達に話しかけてきました。

 

「きょ、教会の人達がやって来て…………」

「…………話をうかがいましょう」

 もの凄く嫌な予感がしますが、行きましょう。

 

 ────────────────────

 

「ラフタリア、リファナ! 状況は!?」

「あ、理奈さん! その、とんでもない状況になっていまして…………」

「どういう状況なんですか?」

 その後、ラフタリアさんとリファナさんの話によると…………

 兄さんが宿屋に突撃後に溜め息を吐きながらもマルティ王女が被害状況を確認→その被害の額が予想以上に大きかった→その復興予算の捻出に頭を悩ませていたら地雷女率いる教会の人間が到着→3年で金100枚(返せなかったら教会の直轄地になるという契約)という太っ腹な復興予算を出してくれた→しかし、文面を良く見ると3『年』ではなく3『日』という絶対に不可能な返済期間だった→マルティ王女が抗議をするも、既に契約が成立した後だったのでリユート村が絶体絶命になる→が、フォーブレイにて外交中の女王が直々にマルティ王女を村の領主に任命→それに地雷女がいちゃもんをつけて今は拮抗しているそうです。

 

「なんともまぁ、姑息な手段を使いますねぇ…………」

「本当にそうだな」

 私が呆れ気味にそう言うと、尚文さんも大きく頷きながらそう言いました。

 

「盾の悪魔…………そうだわ! マルティ……1つ、この村を賭けて勝負をしない?」

「勝負? 何を?」

「この村を私の連れてきた騎竜にのる騎士達と、盾の悪魔と投擲具の偽勇者と元康様と斧の勇者様の乗る魔物で競争させるのよ。ルールは村を一周で、4人の内の誰かがゴールすれば良いとするのよ」

「…………こちらが勝負を受けるメリットは?」

「そうね……此方が勝てば村は私の物よ! そっちが勝てば……返済はチャラ、金貨は好きに使えば良いわ。それから…………盾の悪魔の妹の危機について教えてあげようかしら?」

「「!?」」

 文香の危機…………ですって!? 

 

「それはどういうことだ!?」

「文香になんの危機が!?」

「勝負に勝ったら教えてあげるわ」

 この女は…………! 

 

「良いでしょう…………負けて吠え面をかかないでくださいね!」

「上等だ! かかってこい!」

 私達は高らかに勝負を引き受けました。

 

『…………ふむ、私の出番か』

 

 ────────────────────

 

 ここからは私『野々宮千恵』の視点でお送りさせて頂こう。

 

 私達は現在、村の入り口付近に引かれたスタートライン兼ゴールラインに集まっていた。

 

 因みに私は最近仲間になったフィロリアルの『ユキ』、北村兄はなんやかんやあって私が譲り受け、北村兄に預けた卵から産まれたフィロリアルの『フレオン』に北村妹はサクラ、岩谷兄はフィーロに乗っている。

 

 ん? 教王の娘が何やら指示をしているが………………

「永久」

『…………色々と妨害をしようとしているみたい』

 私は『モルフェウス』の保有者である『造谷(つくりや)(つむぐ)』の作った通信機で通信する。

 …………奴等にスポーツマンシップの文字はないらしいな。

 

「それでは、位置について…………」

『…………最初に4人のスタート地点に土が盛られてるから気をつけて』

「3人とも、スタートするときは小さく飛んで」

「「「?」」」

 私が注意をすると、3人は首を傾げ…………

 

「始め!」

 私はユキを小さく飛ばせて盛り土を回避するも、3人は見事に足を取られて転んでしまう。

 

「ち…………注意が足りなかったか」

 私は正々堂々の四文字がない姑息な罠に呆れながらもスタートダッシュを決めた4人を追いかける。

 

「お前らの神は姑息な手段で勝つのを教義にしているのか? だとしたらとんでもない小者の神だな!」

「貴様…………! 斧の眷属器の勇者だからとて…………」

「は! だったらあんな小細工をせずに正々堂々と勝てば良いものを……ああ、あんなビッチに仕えているから無理か! あははははは!」

「言わせておけば!」

 私は罵詈雑言をぶちまけることで手近な騎士を思いっきり怒らせ、剣を抜かせる。

 …………隙あり! 

 

「悪いが正当防衛だ!」

「ぐばぁ!?」

 私は騎竜から騎士を叩き落とし、騎士の仲間を妨害しつつリタイアさせる。

 

『どっちが姑息なんだか……』

「先にやったのはあっちだ!」

 私は『エグザイル』の保有者である『骨無(ほねなし)(やわら)』の呆れたような口調に突っ込みを入れながら…………

 

「サクラ! 卑怯な連中には絶対に負けたくないですよね!」

「気張れ、フィーロ!」

「フレオン、あんな連中に負けるわけにはいかねぇぜ!」

 って、早いな!? 

 

 態勢を立て直した3人の乗るフィロリアル達が騎士達をごぼう抜きにする。

 

『次はスピードダウンとスピードアップをかけるみたいだけど…………』

「皆が対処してくれたんだな?」

『もっちろーん☆』

『如何にも!』

 通信から聴こえてくる仲間達の言葉に笑みを浮かべる。

 

「さあ、一気に差をつけるぞ!」

「「おう!」」

「(…………理奈さんって、実は多重人格?)」

 私がそう言うと、男性陣は勢い良く、北村妹は息吹かしみながらも速度をあげる。

 

『…………もう、形振り構わずみたいだな。次は落とし穴らしい』

 おいおい…………随分と直接的だな。

 

『…………ただ』

「んな!? 落とし穴!?」

「形振り構わずか!」

「不味い、間に合わ…………!?」

『もう掘られてる』

 って、速くないか!? 幾らなんでも…………って、言ってる場合じゃ…………

 私達が焦っていると、フィロリアル達は最高速度のまま…………跳躍した。

 

「嘘だろ!?」

「す、凄い跳躍力です!」

「フレオン、凄いな!」

「3人とも、ゴールは目の前だ! 一気に駆け抜けるぞ!」

 私達はその勢いのままにゴールを駆け抜ける。

 

 なお、後ろでは落とし穴に騎士達が無様に落ちていた。

 

「ゴール! …………勝利は勇者様達の手にあったみたいね、フレイア?」

「い、イカサマよ! あんなデブ鳥どもに…………」

「「「「ピヨヨヨヨ!」」」」

 ゲシ!←フィーロが蹴り上げた音

 ガス!←サクラが横に蹴り飛ばした音

 ベキ! メキメキ……ズシン!←吹っ飛んできた所にユキとフレオンがダブルキックで木に折れるレベルで蹴り込んだ音

 

 ……………………うわぁ。

 

「…………ついガッツポーズしてしまいましたけど、地雷女に急いで文香の危機…………を?」

 香が慌てて駆け寄ろうとして、空を見上げる。

 すると空から…………リオンと小さいドラゴン、そして巨大な体躯ドラゴンが舞い降りてきた。

 

「ちょ、なんで此処にお父さんが!?」

「ガエリオン!? なんで此処に…………って、文香!?」

 そのドラゴンから岩谷妹が降りてきたのを見て、慌てて私達は駆け寄る。

 

「文香、何があった!」

「何がどうで、どうしたら此処にガエリオンに乗って来るんですか!? それから錬さんはどうしたんですか!?」

「ああ、ちょっと命を狙われたからお礼参りに行く途中。んで、錬とか仲間は巻き込まない為にガエリオンがいた村でこっそりと別れた」

 そうか…………って、大問題じゃないか!? 

 

 




次回『ぐだぐだ行進曲、そして…………』

お楽しみに!
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