「ほいほいっと」
あたしは戦闘不能にした冒険者の身体を次々と積み重ねて行く。え~と……5人合わせて100人位かな? かなりの数の屑どもを潰せたと見て良いな、うん。
「……ちょっと、やり過ぎたか?」
「何が『やり過ぎたか?』、だ。完全にやり過ぎだ。見ろ、衛兵達は完全に腰がひけてるぞ」
「え~……真帝国軍なんてどんなにぶっ飛ばしても攻め込んで来たぜ?」
「あれは狂信者が多かったからだと思うが……」
「うんうん」
「僕もそう思う」
あたしの言葉に全員が頷きながら話して……おっと、合図の『ファスト・ライト』か。
「合図が来た、ずらかるぜ! ガエリオン!」
『任された!』
あたしはガエリオンを呼ぶと、全員でその背に乗っかり空へと舞い上がる。
「ミリティナに伝えとけ! あたしは地獄からお前を殺すために舞い戻ったってな! あと、嘘は長くは続かないってなぁ!」
あたしはミリティナに対する殺し文句を言うと、尚兄達との合流場所に向かってガエリオンを飛翔させた。
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「っで、ミリティナの居場所は何処だよ?」
「落ち着け。先ず、ミリティナ……いや、糞ビッチの居場所はわかった。館の詳細はわからなかったが……」
「メルちゃんが『何故か』詳細な図面を持ってたのでこれを使います」
あたしはガエリオンが完全に街の外に出る寸前で魔法で姿を消して飛び降り、尚兄達との合流場所にやって来た。
…………メル、お前さ確かに「もしもの時は正体を明かして助ける」って言ってたけど……だからってなんで図面を持ってるんだよ?
「私がアールシュタッド伯のお屋敷を設計した設計士の友人から譲り受けたからだよ。その人はミリティナ様の癇癪のせいで殺されちゃったみたいで……その敵討ちの意味も込めて渡してくれたみたい」
「……ある意味あのバカのお陰か」
あたしはバカの気の短さに呆れながらもその短気さに助けられた部分をありがたく活用させてもらう。
「屋敷の図面からしてミリティナのいた場所は此処だ」
尚兄が図面で窓に面した見晴らしの良い場所を指差す。
「屋敷の正面は……絶対に冒険者が待ち伏せているでしょうから、通らずに裏口に回り込みましょう。そこからは各自が別れて行動してください」
「何故別れて行動する必要があるんだ?」
香の作戦に錬が疑問を述べると、香は「敵に捕捉された際に全員が敵に手間取らない様にするためです」と言うと「そうか」と頷きながら姿勢を正す。
「ミリティナを発見したらすぐに攻撃しようとはしないでください。ひょっとしたら魔法で隠れた敵がいるかも知れないので」
「あ~……確かにアイツならそんなこすっからい真似をしそうだな」
あたしが香の懸念にウンウンとうなずく。
「護衛を担当している冒険者は叩きのめして再起不能にする。で、ミリティナは……まあ、文香の自由にしろ」
「ただ、腕のたつ冒険者が護衛についてるでしょうから油断は大敵です」
あたし達は尚兄の言葉と香の注意に頷きながら行動を開始した。
一応屋敷の正面を観察ついでに見たんだけど……うん、冒険者がわんさかといるな。
「誰が馬鹿正直に突っ込むかよ……予定通り、迂回するぞ」
あたしが呆れながら迂回を宣言すると、全員が頷きながら動き始めた。
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「なんで裏門に鍵が無いんだよ……」
「それと警備員もな」
「いや、南京錠はあったんだが……ウィンディアの剣であっさり切れるほど脆くなってる物だった」
「警備員も普段は使わない門だから最小限の人員で、しかも夜の間にしかいないらしい」
「よーするに、文香の事を馬鹿にしてるって事だよね……」
あたし達はあっさりと裏門から侵入に成功すると、そのまま屋敷の中に…………
「ん? なんだ、あの氷の棘……」
「!? 文香!」
あたしは見つけたそれを見て、錬がいきなりあたしを押し倒した。
「れ、錬……いきなり何を……!?」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
あたしはいきなり押し倒された気恥ずかしさで顔を赤くしていると、近くから悲鳴が聞こえたから振り向くと……そこには剣を振り上げた状態で氷の薔薇が咲いた彫像の状態で凍り付いた冒険者……ひ!?
「な、なんで急激にミイラに…………!?」
「嘘、だろ……? 『
「あれ……? なんか、空気中の魔力が……」
「っ! 『
あたしが戦慄した状態とルプトナが呟いた状況に心当たりがあるのか、錬が混乱しながら呟く。
「今ので死んでおけばいいものを」
あたし達が声に振り向くと、そこには柄の部分に薔薇の花をあしらった薄青の剣を左手に黒い木で出来た剣を右手に持ち、他に5本の剣を浮遊させたナルシスト野郎がミリティナや他の冒険者を引き連れてそこにいた。
「ミリティナにナルシスト野郎……!」
「お前達が盾と剣、投擲具か。よくもまあノコノコとこんなところまで犯罪者と一緒に殺されに来たものだ」
「は! 誰が殺されてやるかよ、逆に此方がてめぇをぶっ殺してやらあ!」
あたしがナルシスト野郎の言葉に挑発で返すと、ミリティナがそれを嘲笑いながらこう言った。
「ふん、偽勇者が吠えるものですわね……私の好意を無下にし、辱しめたばかりかそもそもの目的が剣の勇者様に取り入り、盾と共謀して国を自分の思うがままにするためだったなんて……。マルド様に聞かなければ、私は間違えてしまうところでしたわ。……剣の勇者様は手遅れだったみたいですが」
「やっぱ、鎧野郎も一枚噛んでたか……」
あの野郎、次会ったらただじゃおかねぇ……!
「まあ、所詮は犯罪者。犯罪者は犯罪者同士消えて仕舞えばいいのですわ!」
「消えるのは、てめぇだ……へ?」
これ以上の問答は無用とばかりにあたしはミリティナに飛び掛かろうとして……あたしの横を錬が通りすぎて、ナルシスト野郎に斬りかかった。
「なんで……なんで、その2本をお前が持っている! それは、『ユージオ』とキリトの剣だ!」
「ふ……何を言っているのかわからないが、これは僕が女神様から授けられた剣のコレクションの内の2本に過ぎない。まあ、何処の馬の骨が持っているよりも、美しいこの僕が……」
「馬の骨はお前の方だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
錬は憤怒で顔を歪めながらナルシスト野郎に連続で斬りかかるが、ナルシスト野郎は涼しげな顔で受け流し続ける。
「くそ……『エアストバッシュ』!」
錬は受け流し続けるナルシスト野郎に余計に苛立ったのかスキルを使用して攻撃するが……
「ふ……『
「な、ぐあぁぁぁぁぁ!?」
ナルシスト野郎が技の名前を言うと、ナルシスト野郎の回りを浮かんでいた剣の一本が錬の周りを斬ると、錬と錬のスキルが無数の斬撃に切り刻まれた。
「錬!」
「こ、今度は、『ベルクーリ』、さん……の…………『
あたしが錬を抱き起こすと、錬はボロボロの状態で立ち上がる。
っち……とんだ死闘になりそうだな……!
あたしは錬にポーションをぶっかけると、冷や汗を流しながら戦闘を開始した……
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「錬!? あの馬鹿……!」
私達は錬さんが怒り心頭の状態で突進したのを見て慌てながら向かおうとして…………すぐに他の冒険者が私達の前を塞ぎます。
「しかし、あの亜人と女の子達……可愛くね?」
「盾と狼と犬を殺してGETだな!」
「じゃあ、誰が最初にあいつらを殺せるか勝負だな!」
そんな事を言いながら剣、槍、弓を手に持った男の冒険者達が好色な目を私達に向けながらそう言います。
「……腹立つなぁ」
「はい」
「と、言うか……手練れそうでもそんな感じなのね……」
「しかも、キールに至っては女の子扱いされてなかったし……」
「……だね」
「???」
私達が苛立ちながらそう言うと、キールは何が何だかわからなそうな顔で首を傾げました。
「亜人ちゃん達を寄越しな! 盾えぇ!」
そう言って兄さんと同じように槍を持った人が尚文さんに飛び掛かりますが、すぐに『キメラヴァイパーシールド』に迎撃されます。
「ち、毒か「隙あり!」ぐべば!?」
慌てて槍の冒険者は解毒薬を使おうとしますが、容赦なくルプトナさんに回し蹴りをくらってぶっ飛ばされました。
「猫魔法『
「『ツヴァイト・アクアアロー』、『ツヴァイト・アクアスラッシュ』!」
「ぐ……こ、この……!」
メルちゃんとクーフィリアさんは樹さんと同じように弓を持った冒険者に魔法を連射して攻撃に集中させないようにしています。
「くそ、だったら……」
「ここ!」
「くらえ!」
「げびあ!?」
弓の冒険者は苦戦している事を理解したのか、モーニングスターを取り出しますが……武器を持ち変えようとする瞬間にキールとウィンディアが同時に攻撃して吹き飛ばしました。
「隙あり!」
「隙はありません! エアストスロー! クロノブラスト!」
「あがば!?」
私は復帰した槍の冒険者を蹴り飛ばすと、もう一度ぶっ飛ばしました。
「ふっ、し、はっ!」
「ちぃ!」
一方、尚文さんは錬さんと同じように剣を持った冒険者の連続攻撃に苦労はしているようですが、どうにか捌けているようです。
「くそ、くらえ!」
「ぬん!」
焦ったのか剣を持った冒険者は大振りの一撃を与えようとしますが、アルシオさんは手に持った棍でそれを受け止めると、すぐに棍で滑らせるように剣を受け流し弾きました。
「な、てめぇ……」
「剣を握り込んで手放さないようにしないとは……鍛練がたりん! 『
「ぐばあ!?」
そのまま棍で関節を固めて回すように投げ飛ばし、地面に叩き付け棍を鳩尾に打ち込みました。
「さあ、雑魚は片付けました! 次はあの男です!」
「いや、まだだ!」
私達が文香さんの所に向かおうとすると、私達がぶっ飛ばした冒険者達のハーレムメンバーが道を塞ぎます。
「良くも『ギイン!』をぶっ飛ばしてくれたわね!」
「『ガイン!』様もですわ!」
「『ギギイン!』もよ!」
「『ガギィィン!』様の邪魔はさせませんわ!」
……あり? 錬さんと文香さんの戦闘音が邪魔で冒険者達の名前が聞き取れません。
「ふかああああつ!」
「ゾンビかお前は!」
またも突っ掛かってきた槍の冒険者の攻撃を尚文さんが受け止めると、ハーレムメンバーが突っ込んできて乱戦になります。
ああ、もう! 本当に邪魔ですね!
次回『剣と探索者の目覚め』
次回もお楽しみに!