「ああ、痛い…………痛いなぁ…………」
あたし『
「なんで、こうなったのかなぁ…………?」
あたしはこうなる切っ掛けになった出来事を思い出しながら呟いた…………
……………………………………………………
「尚兄…………遅いなぁ………」
あの日、あたしは長兄である尚兄こと『
「たく…………あのオタクは本当に世話が焼けるんだから…………」
あたしはブツクサ言いながら尚兄を探し始める。
尚兄はオタクである。それも頭の先までオタク文化に染まった生粋の。
そのせいで親父達からは半ば見放される形で甘やかしという名の放任を受けていた。
まあ、そのお陰で料理はそんじゃそこらの『自称』料理人なんて歯が立たないレベルのものを作れるんだけどな…………正直、あたしが不良に堕ちても周りに『正義の不良』なんて言われんのも尚兄に『
「そーいや、矢鱈と尚兄に絡んでいじめようとした連中がいたな」
全員揃ってあたしがぶちのめしたけど…………あいつら全員が『
「尚兄~~何処だよ~~」
あたしが尚兄が座っていた辺りに来ると、尚兄の名前を呼びながら歩く。
「ん? なんだこりゃ…………?」
ふと、机を見るとそこには読みかけの本が置いてあった。
「タイトルは…………『四聖勇者と四星の祈り』?」
作者は、竪藍阿寅…………どっちも聞いたことねえな。
「…………ま、トイレかもしんないからこれでも読んで待っとくか」
あたしは椅子に座ると、最初から本を捲り始める。
章ごとのタイトルは…………『槍と斧の章~本当の愛~』、『弓と籠手の章~真の正義~』、『盾と投擲具~信頼と絆~』、『剣と爪の章~孤独の果て~』、ねぇ。
「さーて、地雷臭さが漂うわけだが…………気になる本編は…………あん?」
なん、だ…………? 急に…………眠、く…………ぐぅ。
……………………………………………………
「は!?」
あたしは地面特有の冷たさに気付くと、慌ててがばりと起き上がる。
そこには…………
「なんで…………? あたし、さっきまで図書館にいたよな!?」
なんで…………見渡す限り草しか生えていない草原にいるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
そこら中にあたしの絶叫が轟いた…………
「ぜぇ、ぜぇ…………の、喉が痛い…………」
あたしは絶叫した影響で少し痛む喉を擦りながら歩き始めていた。
「ここ、何処なんだよ…………」
あたしがブツクサ言いながら歩いていると…………
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
悲鳴と共に爪を腕に着けた獣人の血塗れのおっさんが飛んできた。
「…………は?」
「ぐ…………ば、馬鹿な…………! 『爪』の眷属器の勇者である俺が、人間、ごときに…………何故…………!?」
あたしが呆然としていると、おっさんは息も絶え絶えに逃げようとして…………
「は! そんなの…………この俺が最強の主人公だからに決まってるだろうが! 『コンプレッションボックス』!」
「しま…………ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「え…………? あ、ああ…………あ…………?」
あたしの見ている前でおっさんが何処からともなく出現した巨大な箱に閉じ込められたかと思うと、そのまま縮んだ箱に圧縮されるように潰された。
箱の隙間から流れるのは血、血だよ、な…………あれ?
「ん…………? ち、人が見てたのか…………まぁ、良いか! 顔は可愛いから俺のハーレムにしちまえば…………」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
あたしは人を殺しておきながら訳のわからない事を言っている男から慌てて逃げ出す。
「あ、こら! 待ちやが…………な、なんであのモブが持ってた武器があの女に!? …………ハーレムにしちまえば俺が手に入れたのと同じか! とにかく待ちやがれ!」
『逃げろ、勇者様! 俺とあんたの…………って、基本的に人が冷遇されるこの国じゃダメじゃねえか俺の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
「はぁ…………はぁ…………な、なんなんだよ…………あいつ、此処は…………何処なんだよぉ!?」
あたしが倒けつ転びつあいつから逃げ回っていると…………
矢があたしの足に突き刺さった。
「…………え? う…………あ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 痛い…………痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
あたしが矢を引き抜こうと必死になっていると、更に大量の矢が降ってきてあたしの腕や足に刺さりまくる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「ルハバートの痛み、思い知ったか! 簒奪者め!」
あたしがのたうち周りながら矢が飛んできた方向を見ると、そこには弓やボウガンを構えた兵士を引き連れたライオン顔のおっさんが吠えていた。
「ち、違う…………あたしじゃ、ない…………! あのおっさんを殺したのはあたしじゃないんだ!」
「黙れ! 貴様が腕に着けているその武器が何よりの証拠! 大人しく我らに殺されろ!」
あたしが呻きながら腕を見ると、確かに殺されたおっさんが着けていた爪があたしの腕に着いていた。
「な、なんで…………!?」
「全隊…………構え! 射てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
『あ、危ねぇ!? ランダム転移!』
矢があたしに降り注ぐその瞬間…………あたしの意識は闇に堕ちた…………
……………………………………………………
「生きてたのが、不思議なくらいだよなぁ…………」
それからのあたしの毎日は地獄だった。
冤罪を被ったあたしは、兵士に賞金目当ての獣人、あたしを引っ立てて奴隷の立場から引き上げてもらおうとする人間、果ては魔物…………様々なやつがあたしを殺そうと押し寄せてきた。
あたしは必死に戦い、時には生きるために
でも、限界だった。
「正直…………眠い。身体も、痛い…………死にたい」
寝ようとすれば何時襲われるかわからない恐怖の中でまるで眠れず、眠っても殺した人間があたしの首を絞めて殺そうとする悪夢で悲鳴をあげながら飛び起きるという事を繰り返してきたし、何よりも身体中の傷が痛んでろくに動けなくなっていた。
「尚兄…………親父、お袋…………みんな…………ごめん、せめて…………一目でも……見たかった…………なぁ…………」
あたしはみんなの顔が走馬灯の様に映る事に嘆きながら、歩こうとして…………
「ようやく見つけたぜ!」
聞き覚えのある声に首をゆっくりと回すと、そこには複数の女を引き連れた手にデカイハンマーを持ったあの男が立っていた。
「もう大丈夫だ! この『タクヤ・アルサホルン・フォブレイ』様が来たからには…………「…………前が、」? 何だって?」
お前が、あたしをこんな目にあわせる切っ掛けになった、
「正義の味方面をして…………出てくんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
『グロウアップ! 憤怒の爪Ⅱはラース・ネイルⅩに変化しました』
「シネェェェェェェェェェェ! 『ヴァーンズィンクロー』ォォォォォォォォォォ!」
「タクヤ、危な…………ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「る、ルイーザぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? て、てめえ! いくら可愛いからって許さねえ…………」
『ドラゴンクローを解放しました』
『龍魂の爪を解放しました』
『龍髭の連接爪を解放しました』
『龍帝の翼爪を解放しました』
「…………ツヨソウナブキダナ、ソザイヲツレテキテ…………ア・リ・ガ・ト・ヨ!」
「て、てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 『ネイルノックハンマー』!」
ゴミガワメキナガラオソッテクルケド、アタシはソレヲヨケテモウイチド…………
「はい、そこまで」
「グペ!?」
あたしの意識はそこでいきなり途絶えた。
『…………ふん、あの
……………………………………………………
「て、てめぇ…………なにもんだ!」
「あーあ…………ここまで『憤怒』のカースを溜め込みやがって…………どうしてくれんだよ、シルトヴェルト」
俺『タクヤ・アルサホルン・フォブレイ』は『
「たく、取り敢えず『メルロマルク』に匿わせるとして…………そこからどうする「聴いてんのか! おい!」…………うるせえよ、
な…………あの野郎の、代役…………だと!? 『槌』の勇者にして将来全ての勇者の武器を揃えて最強の勇者になる俺を、代役だと!?
「ふざけんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! コンプレッション…………」
「…………自分の運命を知らねえとは憐れだな」
俺がスキルを射とうとすると、黒フードは哀れむような目で消えていった。
「…………くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
黒フードも女もぜってぇに許さねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
……………………………………………………
次の日、黒フードが放り込んだメルロマルク城のフィロリアルの厩舎でボロボロの状態の怯えきった文香が第2王女を人質に取って一騒動を巻き起こすことになり、黒フードが頭を抱えるはめになるのだが…………それは関係ないので置いておく。
ここに、
遅れてすいません…………
次回『四星結集~再会も添えて~』
お楽しみに