四聖姉妹の奮闘記   作:愛川蓮

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自己紹介と勇者達の編成が決まります。(物語の進行で変わる事もある)


二度目の自己紹介、仲間分け

「……………………(顔真っ赤)」

「時々信じられないような事をするよね、文香って」

「う、うるせぇ! あたしは、あたし、は…………」

 そう言って言葉を詰まらせると、文香は微妙に岩谷さんから距離を取りました。

 

「文香、どうし…………」

「ごめん。理由は今は言えないけど…………あたし、尚兄の側にはもういれないから」

「え? それってどういう…………」

「尚文、ストップ。お前の妹さんが言いたくないんだからそれを無理矢理聞き出すような真似はやめようぜ?」

「兄さん、ややこしい事になるだけだと思うので兄妹間の問題に口を出すのはやめませんか? というか、文香に相談という名のアプローチをかけたいだけですよね?」

「バレたか…………」

「…………北村君、文香に手を出したら承知しないよ?」

 い、岩谷さんからおっかない気配が…………

 

「え、えっと…………そ、そうだ! お互いの兄弟姉妹を知らないだろうし、もう一度自己紹介をしようよ! 自分達が来た状況も含めてさ!」

 嫌な雰囲気を察したのか、理奈さんが慌てたようにそう言いました。

 

「…………それもそうだな」

「確かに、互いの事は知っとくべきですよね」

「んじゃ、まず俺と香からだな。俺は北村元康、年は21歳で槍の勇者として召喚されたんだ。あ、死因は…………俺ってさ、モテるんだよね…………」

「…………二股でもして刺されたか?」

「二股どころか故郷の人達も含めれば何股になることやら…………あ、兄さんはバイセクシャルですよ?」

 茶化すように言った天木さんの発言に補足を入れると、兄さんを除いた男性陣が全員尻を隠して兄さんから距離を取りました。

 

「…………露骨だなぁ。ま、香の言う通りだからしょうがないけど。いやぁ、女の子って怖いねぇ」

「地雷みたいな女を引っ掛けるからですよ」

「香の言う通りだな」

「それだよなぁ…………」

 私の言葉に凛さんと文香さんがすごい蔑んだ目で兄さんを見ながらそう言いました。

 

「じゃ、次は私ですね。私は北村香です。年は18歳で投擲具の勇者をしています。死因は…………兄さんを殺した地雷女の一人に殺されました」

「…………悪い、香!」

「気にしてませんよ、寧ろ兄さんが私の花嫁姿を見てくれなかったのが心残りです」

「…………こっちでは見れるように努力するよ」

「器が大きいのか、単に馴れてるだけなのか…………どっちなんだろ?」

 私が自己紹介をすると、兄さんが私に向かって土下座しました。ま、昔の事でグチグチと文句を言うのは性に合わないから気にしてないんですけどね。

 

「次は俺だな。俺は天木錬、年は16歳で剣の勇者として召喚された。死因は当時世間で騒がれていた通り魔に幼馴染みと一緒に襲われてそれを取り押さえたのはいいんだが…………」

 天木さんが脇腹を擦りながら言い淀みました。…………あそこを刃物か何かで刺されたんでしょうか? 

 

「私としてはアイツを、『詩乃(しの)』を見捨ててでも生きてほしかったんだけどな…………」

「それは無しだろ。大体、姉さんも遭遇したらおんなじことをしてただろ」

「否定できない自分がいる…………」

 そう言われてorzの体勢になる凛さん。…………正義感強そうですもんね、二人とも。

 

「ごほん、見苦しいところを見せたな。私は天木凛。年は18歳で小手の勇者として召喚された。死因は車に轢かれそうな子供を助けようとして…………ポイ捨てされた空き缶を踏んで逃げ遅れて車に轢かれたことだ」

「姉さんって、本当に運が絶妙なところで悪いよな…………高校受験の時も受験票を忘れて第一志望の高校に入れなかったし…………」

「そ、それとこれとは関係ないだろう! つ、次だ! 次の奴、頼む!」

「あ、ごまかした」

「うるさい!」

 顔を真っ赤にしながら凛さんは理奈さんの茶化しに対しに怒鳴るとそのまま黙り混みました。

 …………小手って武器なんでしょうか? あ、殴りかかるとか? 

 

「次は僕ですね。僕の名前は川澄樹。年は17歳で弓の勇者として召喚されました。死因は…………」

「私が話すよ。樹の死因はいきなり突っ込んできたトラックから私を庇って死んだんだ。ただ…………不審な点が、凄く…………痛!?」

「姉さん!?」

「理奈、どうした!?」

 理奈さんが川澄さんの死因を言っていると、急に頭を抑えて踞りました。ど、どうしたんでしょうか。

 

「…………だ、大丈夫! ちょっと頭痛がしただけだから」

「いや、それ大丈夫じゃないと思うんですけど!?」

「ううん、もう治まったから」

「本当ですか?」

「うん。アタシ(・・・)は大丈夫だから、自己紹介をするネ。アタシは川澄理奈。年は19歳で斧の勇者として召喚されたンダ。死因は…………なんでか記憶に霞がかかったみたいに思い出せないんだよネ…………」

「ふむ…………限定的な記憶喪失か?」

 …………? 理奈さんの言葉のイントネーションが所々おかしいような…………? なんか無理をして文香さんみたいな喋り方を抑えているような声のような気が…………

 

「次は俺だね。俺の名前は岩谷尚文。年は20歳で盾の勇者として召喚されたんだ。俺の場合は図書館で『四聖武器書』って言う本を読んでいたらいつの間にかって感じかな?」

「ふむ…………随分毛色が違うんですね」

「ある意味羨ましいな」

「確かに…………」

 岩谷さんの紹介で全員が羨ましそうな顔をします。まあ、気持ちはわかりますけどね。私達全員が元の世界では死んだわけですし。

 

「あたしの名前は岩谷文香。年は16歳で爪の勇者として召喚された。ま、尚兄と同じように『四聖勇者と四星の祈り』っていう本を読もうとしたら召喚されてた」

「ふーん…………」

「岩谷さんと同じ理由か…………」

「全員、状況が違いますね…………」

 嫌な状況の違いが多数ですけどね。

 

 ──────────────

 

「相変わらずゲームみてぇな機能だよな、これ」

 自己紹介を終えた後、兄さん達が武器に備えられた武器の選択機能及び説明機能である『ウェポンブック』を読み込んでいると、文香さんがそう言いました。

 

「っていうかゲームじゃね? 俺は知ってるぞ、こんな感じのゲーム」

「『エメラルドオンライン』ですよね? でも…………」

「は? なんだそりゃ?」

 私が兄さんにこの世界が現実であると言おうとすると、錬さん(姉や妹が名前呼びなのに、男性陣がこれでは何か嫌だっていう理由で兄さんが名前で呼ぶように言ったのを皮切りに全員が名前呼びに成りました)が疑問を言いました。

 

「俺が知ってるのは『VRMMO』の『ブレイブスターオンライン』だけど…………」

「僕が知ってるのは『コンシューマー』の『ディメンジョンウェーブ』ですね」

「「「…………は?」」」

 あれ? 何か雲行きが怪しいような…………? 

 

「ちょっと待てよ、なんだよそのゲーム!? つかVRってまだMMOまで行けるようなレベルじゃないぞ!?」

「そうですよ、まだ小説とかの領域ですよ!?」

「はぁ!? そっちはまだクリックやコントローラーを使ってるってのか!? そもそも二人が言ったゲームなんて…………「ストップ」ぐぇ!?」

 3人がヒートアップしそうになったところで文香さんが錬さんの襟首をひいて押さえ込みました。

 

「取り敢えず情報を整理しようぜ? まずは首相の名前だ、せーの」

 私達は文香さんの言葉に応じて名前を言います。

 

「「湯田正人」」←私と兄さん

「「谷和原剛太郎」」←凛さんと錬さん

「「小高縁一」」←理奈さんと樹さん

「「安部孝夫」」←文香さんと尚文さん

 …………あり? 

 

「…………あいませんでしたね」

「つ、次は有名な企業とかはどうですか!? 私は『九楼(くろう)財閥』を提案しますけど…………」

「ああ、『撫子(なでしこ)』ちゃんのところだろ? まだ交流あるんだな」

「ええ、今のところは手紙だとかメールですけど…………何れみんなで会おうって計画は建ててるんですよ。…………どうですか?」

 …………本当に撫子ちゃん達に、会いたかったです。

 

「…………すまない、聞いたことないな。私はUEA………… 『ユートピアエンターテイメントソフトウェア』を提案する」

「姉さんって、本当に生粋の『シャングリラ・フロンティア』のファンだよな」

「あれはエンドコンテンツ兼キラーコンテンツだよ。きっと『ルスト』の『ネフホロ』、『シノン』…………詩乃の『GGO』と同じく死ぬ時に思い出す作品だな」

 そう、ですか…………

 

「ゲームの会社でしょうか? 僕は『神城(かみしろ)グループ』を提案します」

「あー、『早月(さつき)』ちゃんの所の?」

「い、良いじゃないですか! 告白して撃沈したとはいえ、初恋の人の会社なんですから!」

「ほほう…………」

 理奈さんの言葉に全員が樹さんを見てにやにやと笑っています。

 

「ぼ、墓穴を掘ってしまった…………な、尚文さん! お願いします!」

「はいはい…………じゃあ、俺は『集英社』かな?」

「あたしは『フォーチュンホールディングス』かなぁ…………」

「ああ、カラオケボックスとかのアミューズメント会社でしょ」

「ま、そう…………かな?」

 微妙に歯切れが悪いような…………

 

 ──────────────

 

 あれから十数分後、私達は色々な事を言いましたがどうしても合うのが見つかりませんでした。

 

 が…………

「へー、そんなことがあったんだ」

「はい、小学校6年生の頃は私にとっての一番の宝物です」

 

「す、凄いクソゲーの数々ですね…………」

「うむ。正直言ってそいつに引き摺られてクソゲーの沼に腰が半分ほど浸かってしまった…………」

 

「ほー、樹と早月ちゃんってデートとかしてたんだ」

「うん。仲も悪くなかったし、告白の確率は姉のフィルター込みで8割はいってたと思うんだけどね…………なんでふられたんだろ?」

 

「「…………ちょっと待てこら!」」

「うぉう!? 一体どうしたんですか!?」

 尚文さんに話ながらあの頃の事を思い返し…………あれ? 

 

「…………いつの間にか趣旨からずれてます!?」

「そうだよ、なんで話し合いから興味のある相手に話を聞いてんだよ!?」

「いくらなんでもずれすぎだろ!? かく言う俺と文香もさっきまでそうだったけどな!」

 錬さんもですか…………ですが、はっきりはしましたね。

 

平行世界(パラレルワールド)かぁ…………」

「ですね、此処まで噛み合わないとそうとしか思えません…………」

 うーん…………本や漫画でしか聞いたことがない展開が本当にあるとは…………

 

「はぁ、兄さん…………提案があるんですけど」

「どうした?」

「いえ…………さっきまで話していたメンバーで組みませんか?」

「「「「「「……………………………………は!?」」」」」」

 綺麗にハモりましたね…………

 

「唐突になんだよ。可か不可かで言えばありの方だけど」

「いえ、何となくです。でも、兄妹で組むと文香さんが尚文さんとの間でギクシャクしそうですし…………尚文さんと話してて楽しかったから…………ですかね?」

「…………あんがと」

 私が理由を言うと文香さんが顔を赤くしながらお礼を言いました。

 

「ふむ…………そういう理由なら歓迎だ。私も樹に不安な所があるからな」

「…………え? 僕の何が不安なんですか?」

「いや…………何となくだ(話しててわかったがこいつは正義を『盲信(・・)』するところがある。誰かが信じることと盲信をすることは違うと伝えないといけないなら…………理奈(あね)よりも他人(わたし)が伝えた方がまだ増しだ)」

「???」

 …………含みがありそうな言葉ですね。

 

「…………俺も歓迎する。正直、文香と話してると気楽に話せたからな」

「あたしもための錬とは気楽に話せるから良いよ」

 文香さんと錬さんからの了承の返事も来ました。

 

「私も…………ありかな? 恋が多そうな性格だけど、元康君って、以外と頼りがいがありそうだし」

「樹の視線が怖いから、手取り足取りは出来ないけどね」

「? なんで一緒に戦うのに樹の視線が怖いの?」

 兄さん…………すぐに肉体関係を持とうとしないでください…………

 

「…………そう、だね。文香が話してくれるまで、別行動をするのも手…………かな? 俺も賛成だよ」

 尚文さんからも了承を貰えましたし、決定ですね。

 

「そう言えば仲間ってどうするんでしょうか? 私、一緒に旅をする仲間がいるんですけど…………」

「私も自前の仲間がいるんだけど…………」

「む? 私もだ」

「「「「「…………仲間が出来るの早くない?」」」」」

 …………また、ハモりましたね。

 

 私達は苦笑いをしながらウィンディアや凛さん、理奈さんの仲間が待っているだろう部屋に向かって歩き出しました。

 因みに、兄さん達は王様が明日冒険者とかを集め仲間を募集するそうです。楽しみですね。




次回『支度金と盾の現実』

お楽しみに

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