四聖姉妹の奮闘記   作:愛川蓮

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前話の翌日のお話です。


支度金と盾の現実

 翌日。私達は全員(既に仲間になっているメンバーも含めて)が広間に集められていました。

 

 因みに四聖勇者の仲間になる人達は騎士や冒険者が合計十三(・・)人ほどいます。

 

 ……何故か最後に来た一人を見て文香が凍り付いている上に、王様と王女様が深く溜め息を吐いていますがどういうことなんでしょうか? 

 

「前日の件で勇者の同行者として共に進もうという者を募った。どうやら皆の者も、同行したい勇者が居るようじゃ」

 ……昨日の今日でなんで集められるたのか気になります。

 ……まあ、進んで兄さん達の仲間になろうという人達ですから腕は確かなんでしょうね……多分、ですけど。

 

「さあ、未来の英雄達よ。仕えたい勇者と共に旅立つのだ」

 あり? 勇者本人が選ぶんじゃないんですか? まあ、異世界から来た訳のわからん人間に選ばせるよりも国民の方に選ばせるのは当然ですよね。

 

 で、結果…………

 兄さん→四人

 錬さん→五人

 樹さん→三人

 尚文さん→0

 文香さん→一人

 

「いや、なんでだよ!? ちょっと王様!?」

「おいこらオッサン! こいつら絶対『三勇教(さんゆうきょう)』の信徒だろ!? どう考えても作為的な組み合わせだよな、これ!?」

「文香、落ち着いて!」

 文香さん……いくら此処で一ヶ月間も勇者していたといっても、王様に対して『オッサン』って……後、三勇教ってなんですか? 

 

「う、うぬ。さすがにワシもこのような事態が起こるとは思いもせんかった」

「人望がありませんな」

 

「すっげー棒読みな口調だなぁ、あんたらぁ……!」

「文香、ラース・クロー(それ)ダメだからね!」

 文香さんが慌てたような王様と冷静すぎる大臣さんの言葉に苛ついたような表情で禍々しい爪を構えますが、文香さんの仲間になった女の子が文香に抱きついて押し止めました。

 

 ぐだぐだになりかけたところで、ローブを着た男が王様に内緒話をしました。

 

「ふむ、そんな噂が広まっておるのか……」

「何かあったのですか?」

「どうせ、くっだんねぇ噂だろうよ……」

 王様の言葉に兄さんが反応し、文香が苛立つように言いました。

 

「ふむ、実はの……勇者殿の中で盾の勇者はこの世界の理に疎いという噂が城内で囁かれているのだそうだ」

「はぁ!?」

「伝承で、勇者とはこの世界の理を理解していると記されている。その条件を満たしていないのではないかとな」

「ち、本当にくっだんねぇ噂だったぜ……!」

 どうして昨日の今日でそんな噂が……? というか、誰ですかそんな噂を流したのは? 

 

「……昨日の雑談を盗み聞きされたんじゃないのか?」

 兄さんが私にそう言います。……可能性としてはありそうですね。

 

「つーか錬! お前5人も居るなら分けてくれよ」

 尚文さんがそう言うと、何か怯える羊みたいな目で錬さんに同行したい冒険者(男性も含みます)が錬さんの後ろに隠れました。

 錬さんもなんだかなぁとボリボリと頭を掻きながら彼らを見て。

 

「俺はつるむのが『苦手』なんだ。付いてこれない奴は置いていくぞ」

「錬、それは彼らに失礼だろう!」

 と、突き放す口調で話して凛さんに注意されましたが、彼らは動く気配がありません。

 

「元康、香ちゃんもどう思うよ! これって酷くないか!?」

「まあ……」

「と言うか最早軽い差別ですね、これ。あと、ちゃん付けは止めてください」

 なんか下に見られている感じがするんですよね。

 

「偏るとは……なんとも」

「流石に此処までとは予想出来なかったわ……」

 樹さんと理奈さんも困った顔をしつつ、慕ってくれる仲間を拒絶できないと態度で表してます。

 ちなみに兄さんの仲間はみんな女です。何処までも女性を引き寄せる体質ですね、本当に。

 

「均等に3人ずつ分けたほうが良いのでしょうけど……無理矢理では士気に関わりそうですね」

「そりゃそうだけどよ……」

 樹さんの最もな言葉に文香さん以外の全員が頷きます。

 

「だからって、俺は一人で旅立てってか!?」

「いや、香がいるだろ」

「寄生プレイみたいで嫌なんだよ!」

 尚文さんがそう言いました。確かに、尚文さんの盾って防御主体ですからね……

 

「あ、勇者様、私は盾の勇者様の下へ行っても良いでしょうか?」

 兄さんの仲間になろうとしていた女性の一人が手を挙げながらそう言いました。

 

「お? 良いのか?」

「はい」

 因みに女性は水色のショートの可愛い女性です。

 ただ……何故でしょうか? 私の中の危機管理のセンサーが物凄い警告音を鳴らしています。

 

「他にナオフミ殿の下に行っても良い者はおらんのか?」

 ……誰も手を挙げる気配がありませんね。

 王様は嘆くように溜息を吐きました。

 

「しょうがあるまい。ナオフミ殿はこれから自身で気に入った仲間をスカウトして人員を補充せよ、月々の援助金を配布するが代価として他の勇者よりも今回の援助金を増やすとしよう」

「は、はい!」

「ぐるるるるる……!」

「…………」カチャカチャ

 まあ、妥当な線でしょうね。…………文香さんが今にも全員に襲い掛かりそうな表情で唸ってますが、文香さんの側にいる冒険者が首に首輪を……って、ちょっと待ってください!? 

 

「何故に文香に首輪を!?」

「あたしは犬か何かか!?」

「だって、文香は今にも飛び掛かりそうだし……勇者達が仲間の人数で喧嘩なんて示しがつかないでしょ?」

「ぐぅ……!」

 文香さんが唸りながらもぐうの音も出ない表情で黙りました。

 

「それでは支度金である。勇者達よ、しっかりと受け取るのだ」

 私達の前に八つの金袋が配られます。……ジャラジャラと重そうですね、鈍器としても使えそうです。

 その中で少しだけ大き目の金袋が尚文さんに渡されます。

 

「ナオフミ殿には銀貨800枚、他の勇者殿には600枚用意した。これで装備を整え、旅立つが良い」

「「「「は!」」」」

「……了解」

 私達と仲間達はそれぞれ(一部は不満そうに)敬礼して、謁見を終えました。

 それから謁見の間を出ると、それぞれの自己紹介を始めます。

 

「盾の勇者様、投擲具の勇者様。私の名前は『フレンディーナ・フォイア』です。名前が少々言いにくいので気軽に『フレン』とお呼びください」

「よ、よろしく……」

「……よろしくお願いします」

 私はフレンさんの腰の低い態度に更に警戒心が上がるのを感じました。

 正直言って、彼女の雰囲気がこれまで兄さんとの交際を阻止してきた地雷女達みたいな感じなんですよね…………まあ、何か不審な態度をとればそれ相応のお返しをするまでです。

 

「……昨日も紹介されたと思うけど、ウィンディアよ。これからよろしく」

「……亜人、ですか」

「何よ、文句ある?」

「ウィンディア、いきなりの喧嘩腰はダメですよ!」

「……ふん!」

 私がウィンディアに注意をすると、ウィンディアは鼻を鳴らして私の側に寄ります。

 ……はあ、完全に拗ねてへそを曲げてますねこりゃ。

 

「……まあ、良いでしょう。勇者様方……先ずは装備を整えるために、私の知っている限りで一番良い店に行きましょう」

「わ、わかった」

「……わかりました」

 私はナップザックに入れていた『ガエリオンの鱗』を制服の内ポケットに入れると、二人の後を着いて歩きました。

 

 ──────────────

 

「ここがオススメの店ですよ」

「おお……」

「わぁ……!」

 そこには如何にもな感じの店があり、扉から覗き見ると剣や鎧など『これぞ武器屋!』と言わんばかりの物が置いてありました。

 

「まさか本当にゼルトブルでないところで『流星(りゅうせい)シリーズ』が手に入るなんて……」

「さて、と。『エルハルト』さんへの伝言は済んだから…………次は樹の希望通り狩りに行こう」

「じゃあ、僕の今のレベルに合った狩り場を知ってるので行きましょう」

「わかった」

 そんな会話をしながら凛さんと樹さんが店を出て歩いていきました。

 

 ……流星シリーズって、なんでしょうか? 

 

「いらっしゃい」

 改めて店に入ると店主さんに元気良く話しかけられました。筋骨隆々の、まさしく絵に描いた武器屋の店主って感じの人がカウンターに立っています。……まあ、これでぶよぶよの脂肪の塊みたいな店主だったらそれはそれで嫌なのでこの人が良いですね。

 まあ、ドラゴンがいるので実感はありましたが……本当に異世界に来たんですね。

 

「へー……これが武器屋かぁ……」

「お、お客さん達初めてだね。当店に入るたぁ目の付け所が違うね」

「ええ、まあ……彼女に紹介されて」

 私はフレンさんを指差すと、フレンさんは頭を下げます。

 

「ありがとうよお嬢ちゃん」

「いえ、この辺りでは貴方の店は有名ですから」

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。所でその変わった服装の彼氏達は何者だい?」

 ……そう言えば私達って異世界の服を着てましたね。

 

「最近の話から、貴方も分かるでしょう?」

「となるとアンタ達は勇者様か! へー!」

 まじまじと親父さんは私達を凝視します。

 

「あんまり頼りになりそうに無いな……」

 がく!? ……まあ、肉体的にひょろいですからしょうがないっちゃしょうがないんですけどね。

 

「はっきり言いますねぇ」

「良いものを装備しなきゃ舐められるぜ」

「でしょうね……」

 私は店主さんの言葉に溜め息を吐きます。ですが……裏表のない気持ちの良い人のようですね。

 

「見たところ……はずれ?」

 あ、尚文さんが凍り付きました。まあ、言っちゃ悪いですけどエメオンでの盾って最弱職筆頭でしたしね。

 

「盾の勇者である岩谷尚文と申します。今後も厄介になるかもしれないのでよろしくお願いしますね」

「同じく投擲具の勇者の北村香と言います。これからお世話になると思うのでよろしくお願いします」

 私達は今後の事を考えて自己紹介をします。

 

「ナオフミとカオルねえ。まあお得意様になってくれるなら良い話しだ。よろしく!」

 元気な店主さんですねぇ……

 

「それで店主さん、何か良い装備はないでしょうか?」

 フレンさんが店主さんに色目を使うように伺います。

 

「そうだなぁ……予算はどのくらいだ?」

「ウ~ン……」

 フレンさんが尚文さんを値踏みするように見ます。

 

「銀貨250枚の範囲でしょうか?」

 尚文さんの予算800枚で250枚……宿代や仲間を雇う代金も込みだとしたらその位でしょうか? 

 

「あ、私はウィンディア……この子用にナイフを2本ほど欲しいのですが…………あ、予算は銀貨150枚程です」

「お? それくらいとなると、この辺りか」

 店主さんはカウンターから乗り出して、店に飾られている武器を数本、持って来ました。

 

「あんちゃん達。得意な武器はあるかい?」

「いえ、今のところ無いんですよ」

「あたしも無い」

「となると初心者でも扱いやすい剣辺りがオススメだね。嬢ちゃんはここら辺かな?」

 そう言って店主さんは剣を数本と、ナイフを数本をカウンターに置きました。

 

「どれもブラッドクリーンコーティングが掛かってるからこの辺りがオススメかな」

「ブラッドクリーン?」

「血糊で切れ味が落ちないコーティングが掛かっているんです」

「へぇ……」

 便利なコーティングですね。

 

「左から鉄、魔法鉄、魔法鋼鉄、銀鉄と高価になっていくが性能はお墨付きだよ」

 これは使用している鉱石による硬度でしょうか? 

 鉄のカテゴリー武器のですね。

 

「まだまだ上の武器があるけど総予算銀貨250枚だとこの辺りだ」

「あ、そう言えば流星シリーズって武器の事を言ってた人がいたんですけど…………」

「ああ、そいつは『隕鉄シリーズ』の事だな」

 隕鉄……ああ、だから流星シリーズですか。

 

「流石にあれはゼルトブルから仕入れた試作品だからな、あの二人には師匠からの紹介だから持たせたがそれ以外となると俺が信用できなきゃダメだね」

「そりゃそうですよね」

 つまり樹さんは四分の一の幸運を手に入れたと……

 

 バチン! 

「イッ!?」

 音に気付いて振り向くと、そこには剣が尚文さんの手から弾かれる所でした。

 あー、これは……

 

「『勇者の武器以外持つなこのやろー(俺以外の武器に浮気すんなこのやろー)』って、感じでしょうか?」

「盾以外使うなってか!?」

「だったらそれ以外の部分を充実させれば良いんじゃないですか? この鎧なんて予算以内なのに要所要所に魔法鋼鉄を利用してるお陰で防御力は高いみたいですよ?」

 私は銀貨100枚なのに以外と防御力が高いプレートメイルを指し示します。

 

「た、確かに……でも動きにくいやつはなぁ」

「なら、最初は鎖帷子とかはどうですか? それからプレートメイル等を採用すれば良いのではないかと」

「……それもそうですね。ですが、それとウィンディアが選んだナイフ以外は買いませんよ」

「え、なんで……」

「節約です」

 これから何が起こるかわからない以上、節約してお金を残すのは鉄則です。

 

 ──────────────

 

 武器と防具を買った私達は食料や薬を多少買い込んだ後、門を出て草原に出ました。

 

『あ、お帰りなの!』

「リオン……私が王様に許可を貰ったからって、門のすぐ側で待ち構えないでください」

「ほ、本物のドラゴンだ……!」

 リオンが私に頬擦りをすると、尚文さんがリオンを見て目をキラキラさせます。まあ、ドラゴンは誰しもが憧れる生き物ですしね。

 

「あ、尚文さん。これ、渡しておきますね」

 私は尚文さんにリオンの鱗を手渡します。

 

「これは?」

「リオンの鱗です。結構強力な武器になりますよ?」

 尚文さんが首を傾げながらリオンの鱗を武器に吸収させると、目をぱちくりさせた後で『竜鱗シリーズ』らしき盾を出しました。

 

「本当に強力な物になったよ……」

「まあ、ドラゴンの鱗ですしね。さあ、行きましょうか」

 私はフレンさんの先導に従って歩いていると……

 

「勇者様方、居ました。あそこに居るのはオレンジバルーン……とても弱い魔物ですが好戦的です」

 おおう……ストレートなネーミングですね……

 

『がぁ!』

 

「勇者様方! 頑張ってください!」

「……はいはい」

 私は一歩引いて戦う私達を見ているフレンさんに溜め息を吐きますが、実力を見るという点では正しいんでしょう。……多分。

 

「『エアストスロー』!」

 私は『竜鱗の投剣(りゅうりんのとうけん)』に変化させると、投擲具の基本的なスキルで攻撃して……一撃で10匹も貫通しちゃいましたね。

 

「す、凄い……! でも、俺だって……やあ!」

 ボカ!←ショボいエフェクトと共に1ダメージの表記が浮かぶ。

 

「……え、うわ!?」

 ガリ!←0ダメージの表記が浮かぶ。

 

 ……わお、凄い防御力ですね。

 

「……あれ? もしかして俺って防御力全振り?」

「……タンク、頼みますね」

「気遣うような視線なのが俺を痛め付ける……!」

 その日、尚文さんは盾の現実を味わいました…………




次回『裏切り~最初の絆~』

お楽しみに
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