ボーカロイドキャラになった結果 作:ペンは剣より強し 睡眠は何よりも強し
人は外見で判断してはいけない、とはよく言った言葉で全くもってその通りだと思う。
いくら見た目が良くても、性能が伴っていない商品を買おうとは誰も思わないだろう。
つまりはそういうことだ。
しかし、やはり外見と言う要素が判断基準となっているのは間違いないわけで。
いくら性能がよくても見た目が悪い商品を買おうと思わない人達が少なからずいるのは事実であり。
かくいう俺もその一人
俗に言う面食いというやつである。
と言うのも、美形でもない所謂フツ面一般男子の俺が美人に惚れられる、何て話は夢のまた夢。フィクションでしかなく、フツ面以下の女子にも恋愛対象として見られないのが現実。
どうせ自身が恋愛できないなら中身なんて全く気にする必要がなく、そんな理由から俺は美術館に通う客の気分で女を判断して
と、まぁここまでの言い回しで分かってきたかもしれないが、それはあくまで先刻までの話だ。
先程から止まらない頭痛に顔をしかめながら、俺は改めて現実を直視した。
頭上は見慣れた天井、地面も見慣れたカーペットが敷かれている。
間違えようがない、俺の家だ。
そこまではいつもと変わらない、だが。
右には緑とも青とも取れる色合いの髪をツインテールにした人間場馴れした容姿を持った少女が。
左には桃色の髪を腰まで下ろした、こちらもまた人間場馴れした容姿を持った美女が。
目の前には、ベージュがかかった灰色の長髪を束ねたこれもまた(以下略
そして。
俺はゆっくりと背後を振り返った。
視界に映るは大きな白いリボンが特徴的な金髪ショートの美少女が、引き吊った笑みを口元に浮かべてこちらを見ていた。
自分の口元がドンドン引き吊っていくのが分かる。同時に目の前の少女の口元もドンドン引き吊っていく。
当然だ。目の前の少女は、鏡に映る俺、そのものなのだから。
何度も言うが、俺は一般男子である。
認めたくないが、恋愛とは縁がない星に生まれてきた男子なのである。
故に、本来なら冴えない顔の男が映る筈の鏡に,美少女が映るはずがない……のだが。
ますます頭痛が酷くなってきた俺は、鏡を見るのを止めて少女達に向き直る。
青緑のツインテール美少女も、桃色の美女も灰色の美少女も皆、困惑を隠せない表情をしていた。
きっと俺も同じような表情をしているのだろう、と思う。
何故なら、彼女らも俺と同じ境遇。
つい先程まで一般男子だったのだから。
それが突然部屋が光ったと思ったらこうなっていたのだから笑えない。
まさに奇想天外な出来事だが、こうなった原因に、実は心当たりが無いわけではない。
言うならば、バチが当たったのだろう。
神社をカラオケがわりにして全力でボカロを歌ったバチが。
非現実な考えだが、事実、俺達は最後に歌った歌のキャラになっている。
『消失』を歌った観月は初音ミクに。
『ナイトフィーバー』を歌った裕太は巡音ルカに。
『アスノヨゾラ』を歌った真次は IAに。
そして『ロストワン』を歌った俺は鏡音リンに。
俺を含め、画面の奥からそのまま飛び出してきたかのような容貌をしているが、中身は皆男である。見惚れることは今後一切ないだろう。
しかし、それは俺が当事者で中身を知っているから言えた話であり、以前までの俺だったら……そう考えると寒気が止まらない。
こいつらに見惚れるとか……本気で勘弁……。
各々混乱が収まらない中、そんな検討違いのことを考える俺はやはり皆と同じく混乱しているのだろう。
しかし、これだけははっきりと脳に刻み付けておかなければ。
人は見た目ではないと。