どうしてこうなった…。
確か桜がお爺様の言い付けに従ってサーヴァントを召喚した。
だけど魔術の才能を持っているだけで知識がほとんどない上に運動が苦手な桜じゃ聖杯戦争に生き残れない。
と、いうわけで僕は偽臣の書で桜が召喚したサーヴァントである
ライダーのマスター代理になったわけだけど僕との相性が最悪だった。
元々桜と相性がいいサーヴァントを無理矢理従わせているのだから無理はないけど…。
問題はその後だった。
「シンジ、競技用の自転車が欲しいです」
「はあ?競技用の自転車?なんでそんなもの…」
「いいですよね?(ニッコリ」
「は、はひぃっ!!(ビクゥッ」
ライダーはいきなり競技用の自転車が欲しいと言いだしてきた。
もちろんそんなものがあってもあまり意味が無い。
移動だけなら普通の自転車で十分だから。
だから断ろうとしたんだけどライダーは魔眼殺しの眼鏡に手をかけた状態で笑ってきた。
ここで断ったらその眼鏡を外して僕を見るつもりだ。
そうなったら僕の人生はジ・エンドだ。
だからキャスターが根城にしているらしい柳洞寺の偵察のついでにそういった自転車が売っている店を探し出して買ったのはよかったのだけど…。
「うん。いい自転車です(時速250km」
「ギャアアアアアアアッ!!!」
ライダーに乗せたのが失敗だった…。
ライダーの頭の中には道路交通法なんてあるはずがなく、新幹線と同じくらいのスピードを出し、
魔術の保護とかそういうのが出来ない僕の身体はボロボロになっていた。
そして僕は投げ出されて衛宮の屋敷の前でボロ雑巾に…。
「ん?あれは…」
「………(チーン」
「に、兄さーん!!!?」
「ボクノカラダハボドボドダァ…」
絶望した…ライダーの僕に対する態度に絶望した…ガク…。
第5話「敗北とシンの過去と…」
◆ Side 凛
冬木市 衛宮邸 客間 聖杯戦争二日目…
何か外が騒がしいと思って外に出てみるとシンがボロ雑巾になった誰かを客間に運び入れていた。
桜の叫び声から判断するにおそらくあのボロ雑巾は間桐慎二なのだろう。
今、シンが慎二に応急処置をしている。
まったく、シンもなんだかんだ言っても結構なお人好しね。
…まあ、シンの手伝いをしているから私も人のことが言えないのだけれど…。
はあ…。
シンが召喚されてからまだ三日も経っていないのに私は心の贅肉をつけさせられたみたいだ。
「まったく…。こんな状態でも五体満足どころ打ち身だけとはとんだ肉体の持ち主だな」
「私もこんな状態だったら気絶している自信があるわ…」
「でもどうして兄さんがこんな傷を…」
シンの言うとおり、こいつは衛宮君程とはいかないけどかなり打たれ強い。
もし私がこいつと同じ事故に遭っていたら気絶している自信がある。
でも、なぜこいつがこんな怪我を負っているのだろう?
こいつは魔術を除けばならばかなり優秀な能力を持っている。
そんなこいつがここまでの大怪我を負うなんて…。
大河先生ならこいつをボコボコにできるだろうけど意味も無しにそんなことをする人じゃない。
そうなると思いつくのはサーヴァントに襲撃されたという可能性だ。
「うぅ…」
「兄さん!!」
「その声は…桜か…?」
あ、目を覚ました。
…って、いうか桜。貴女、間桐の奴等に色々と酷いことをされたのになんでこいつを心配しているのよ。
…なんだろう。
私は初めてこいつに負けた気がする…。
しかも一番負けたくない分野で…。
あれ?目から涙が…。
く、悔しくなんか…うん、凄く悔しい…。
…とりあえずこいつから情報を色々と吐き出させる必要があるわね。
だから、ちょ~っと痛い目に合わせてもいいよね?
◆ Side 士郎
「慎二!もう大丈夫なのか?」
「…死ぬかと思った」
日が暮れたあたりに運び込まれた慎二が目を覚ました。
運び込まれた時の慎二を見ていたから心配だったがなんともないらしい。
だからセイバーもシンも本当に驚いていた。
二人の話を聞く限りでは最悪死に至ると見ていたらしい。
「慎二、なんであんな状態で俺の家の前に倒れていたんだ?」
「え?それは…その…ははは…」
慎二には聞かなければならないことがある。
なんでボロ雑巾になった状態で俺の家の前に倒れていたのか。
なんだかんだ言って慎二もかなり強いから慎二をボロ雑巾に出来る奴なんてこの街では藤ねぇ位しか思いつかない。
でも、藤ねぇはボコリはするけどそのまま放置する性格じゃないからありえない。
と、いうことは考えられるのはサーヴァントだ。
…少し深く踏み込んでみるか。
「なあ慎二。聖杯戦争って知っているか…?」
「聖杯戦争…そうなると衛宮もマスターなのかよ…」
「ああ。そうだ」
…どうやら俺の読みは当たった。
慎二も聖杯戦争のマスターだったということはマスター狙いのサーヴァントに襲撃されたのか…。
相手がサーヴァントだとしたら慎二のボロボロぶりにも納得ができる。
実際俺と遠坂もサーヴァントに襲撃されて死にかけた。
あれ?だとしたら慎二のサーヴァントはどこにいるんだ?
「令呪がない…ということは偽臣の書を使ったな?」
「…なにが言いたいんだよ?」
「いや、ご愁傷様と言いたいだけだ。君はライダーのマスターだな?その怪我もライダーが原因だろ?」
「な!?何故それを!?…あ」
あっさりと色々な情報が手に入った。
慎二はライダーのマスターであるということ。
本来ライダーを召喚した奴の代わりにライダーのマスターとして参加していること。
慎二の怪我の原因がライダーであるということ。
慎二とライダーとの仲があまり良くないこと。
…慎二が凄く哀れに見える。
「仮にもマスターの危機というのに駆け付けないということは本気で嫌われているらしいな」
「…そうだよチクショウ!僕の怪我もライダーの自転車に乗っていたせいだよ!」
「兄さん…(ホロリ…」
涙目で怪我の原因を白状した慎二を見て俺はセイバーのことが頭に思い浮かんだ。
俺もセイバーとの相性が悪かったら慎二の様になっていたのだろうか?
うん。ないな。
セイバーは気に入らないことがあったとしても手を上げるようなことは絶対しない。
セイバーはそういった娘だ。
俺って…恵まれているんだな…。
「………(ギリギリ」
「………(ズビシッ」
「あいたっ!?」
ん?なんで遠坂は恨めしげに慎二を見ているんだ?
もしかして桜が慎二を心配しているのがそんなにも羨ましいのか?
そう考えていたらシンが遠坂にデコピンをした。
凄く痛そうな音が出た。というかさっきの音はデコピンの音じゃない。
遠坂もメッチャ痛がってる。
心なしかセイバー達も顔色を青くしている。
ああ。セイバーもあのデコピンは痛いってわかっているんだな…。
「なにするのよ!?」
「自分の妹を奪われたような眼をするんじゃない」
「うぅ…だってぇ…」
「気持ちはわからんでもないが今は彼と同盟を結ぶことが優先だ」
「え?」
「は?」
「私は反対です!!」
「私もよ!!何考えているのよ!?」
「あのバーサーカーは弱体化しているとはいえ脅威なのにはかわらない。だから少しでも戦力を増やしておくべきだ」
「う…。それは確かに…」
ああ。やっぱシンも同じことを考えていたのか。
シンの話を聞いた限りではバーサーカーを相手にする時は戦力が多ければ多いほどいい。
ライダーがどんなサーヴァントだったとしても強力な宝具を持っているはずだ。
それに俺は慎二を殺したくない。
実はシンが言いださなかったら俺が言うつもりだった。
ん…?だが今更だがちょっと待ってほしい。
桜は一般人のはずなのになぜシンはサーヴァントのことや同盟の話をしたんだ?
聖杯戦争の参加者は一般人に対して聖杯戦争に関する情報の秘匿を行う義務があるという。
なのに桜の前で聖杯戦争にかかわる話をしているということはまるで桜が聖杯戦争の関係者だと言っているようなものだ。
まあ、慎二がマスターという時点で関係者ではあるのだろうが…。
「それにしても7騎のサーヴァントのうちセイバー、アーチャー、ライダーのマスターが同盟を結ぶなんてね…」
「凄い大所帯になりましたね…」
「ああ…」
それにしても慎二とも同盟を組むことになると慎二とライダーも俺の家に住むわけか…。
桜の言うとおり、ここも大所帯になったな…。
食材が足りればいいんだが…。
◆ Side アーチャー
冬木市 衛宮邸 縁側
「ふぅ…」
あのあとライダー陣営と同盟を結んだ後に入ってきた大河さんに事情を説明するのは大変だった。
なんとか士郎の機転のおかげでなんとかなったが精神的に疲れた…。
だが、これで聖杯戦争のサーヴァントがだいたいどこにいるかわかったな…
間桐慎二のサーヴァントがあの時マスター達を襲撃したサーヴァントだったということで
一時衝突の危機があったがなんとか場を収めることも出来た。
しかしキャスターが柳洞寺を占拠したのが厄介だ。
あそこは霊脈が集まる場所だ。
そんな場所に陣地の作成をされたとすれば俺達は非常に不利な戦いを強いられることになる。
今のところ表立った行動をしていないようだが時間が経つにつれて不利になっていく。
セイバーはそう言ってすぐにでも討伐に向かうべきだと言ったが俺達の出した答えはノーだ。
キャスターを真っ先に潰すのは聖杯戦争の常道と言ってもいい。
だがもちろんキャスターもそんなことは既に把握している。
だからしっかりと防衛の準備を済ませているだろう。
行くのがアインツベルンのバーサーカーならいざ知らず、俺達では手数が足りない。
何も考えずに突撃したら返り討ちになるのがオチだろう。
準備を済ませたキャスターとはそういうものだ。
さて、どうするか…。
「………(コソコソ」
あれは…セイバーか?
なにやらコソコソしているが…。
壁を一瞥したと思ったら一回の跳躍で壁を飛び越えた。
…まさか、あいつは一人でキャスターの陣地に攻め込むつもりか!?
敵の戦力がまったく分かっていないのに突撃するのはあまりにも無謀すぎるぞ!!
しかも周囲の状況から見て俺以外は気が付いていない!!
「あのバカッ!!」
「アーチャー。シロウが貴方を呼んでいますよ」
俺はそのままあの猪突猛進バカ娘を追おうとするがそこにライダーが俺の許へやってきた。
どうやら士郎が俺を呼んでいることを伝えに来たらしい。
なにも無かったらそのまま士郎の許へ行っていただろうが今はそんな場合じゃない。
「わるい!士郎とマスターには急用ができたと伝えておいてくれ!!」
「は?」
「あと、俺がいない間マスター達の護衛を頼む!!」
「は、はあ…」
同盟を結んでいるとはいえあまり他の陣営を頼るべきではないが俺はライダーに士郎への伝言とマスター達の護衛を頼むとセイバーと同じように壁を飛び越えてからセイバーの行き先…おそらくキャスターが陣を構える柳洞寺へ向かった。
胸騒ぎが止まらない…間にあってくれよ!!
◆ Side セイバー
冬木市 柳洞寺前
「ここがキャスターの拠点ですか…」
私は同盟相手のシンジからキャスターの居場所を聞いた時、私はすぐにでも討伐に向かうべきだと言いました。
ですが、私の意見はその場に居た全員に却下されました。
シロウ達は甘すぎる。
このままキャスターを野放しにすれば我々が苦境へ追い込まれるというのに…。
少なくとも私は第四次聖杯戦争の時に力を蓄えたキャスターの恐ろしさを嫌というほど知っている。
あの時は私があの剣を十全に使える状態だったからこそなんとか倒すことが出来ましたが今はあの剣を碌に使うことができません。
なのに誰もキャスターの討伐に賛成しなかった。
ならば私一人でも討伐に向かわなければ…。
身体が重い…。
ここに来るまでに遭遇した傀儡の兵を殲滅した疲れが残っている…。
バーサーカーやランサーが来たらひとたまりもないでしょう。
ですが早くキャスターを討伐しなければなりません。
全ては聖杯を手に入れてあの選定のやり直しをするために…。
「竜牙兵がやられたと思ったら。可愛いお嬢さんが来たわね」
そう思った矢先に私の前に立ちふさがる者が居ました。
この気配はサーヴァント…。
アサシンはハサンが召喚されることが確定しているから消去法的にこの女がキャスターなのだろう。
ならば一気に仕留める!!
「覚悟!」
「破戒すべき全ての符【ルールブレイカー】」
サクッ
「え…?」
距離を詰めて私が剣を振り下ろすよりも早くキャスターが手に持っている奇妙な短剣を刺されていた。
そして、同時に私とシロウとの魔力の繋がりが切れ、逆に目の前のキャスターとの魔力の繋がりができていた。
なにが…起こった…?
何かに縛られていく感覚がする。
もしかしてこのサーヴァントは…。
「これで貴女は私のサーヴァントになったわ」
「あ…(バタ」
「どうやらここへ来るまでにかなりの魔力を消耗していたようね」
意識が闇に飲まれていく…。
ああ…。
私はなんということをしてしまったのでしょう…。
キャスターの討伐することのみに囚われて肝心のキャスターの能力を把握していないなんて…。
これではシロウ達に合わせる顔がありません…。
ゴメンナサイ…シロウ…シン…。
私はもうここまで…
イメージBGM:機動戦士ガンダム00より Fight
ダァンッ!!
「くぅっ!?」
あれは…シン…?
なぜ…?
彼はシロウの屋敷にいるはずなのに…。
彼が放った銃弾がキャスターに直撃した瞬間、私とキャスターとの間に繋がっていた魔力の繋がりが途切れた。
「くっ…。やってくれたわね!!」
「わるいがセイバーを返してもらうぞ!」
ダァンッ!!ダァンッ!!ダァンッ!!
意識が鮮明になっていく…。
そして、私とシンに魔力の繋がりが出来ていた。
なぜ、サーヴァントであるはずの彼がこのような芸当ができるのだろうか…?
まあ、目の前のキャスターが一時的にとはいえシロウと私の魔力の繋がりを断ち切って私を掌握しようとしたのだから彼も同じような芸当をしたのでしょう。
「シン…私は…」
「一人で突撃していったことの説教は後だ。しっかり掴まっていろ」
「はい…」
シンはキャスターの呪縛から解放された私を抱きかかえた。
私は彼の姿がどことなく温かく、頼もしく思えた。
彼と一緒なら乗り越えられると思う程に…。
こんな感情…私の仲では既に存在しないと思っていたのに…。
「逃がすと…」
「壊れた幻想【ブロークンファンタズム】!!!」
ドゴォーンッ!!!!
「なっ!?」
「今のうちに撤退するぞ!!」
10分後…
冬木市 廃洋館付近
イメージBGM:Fate/stay nightより 騎士王の誇り
「ここまで来れば奴も追ってこられないだろう」
キャスターが魔術を使って私達を追撃しようとしていたようですが突然キャスターの足元で大爆発が起こり、私を抱えていたシンは爆風を利用してキャスターの拠点から離脱し、士郎の屋敷の近くまで逃げてきました。
キャスターの拠点からは黒煙が上がっていた。
ですからキャスターが私達を追撃することはできないでしょう…。
ですが…私の敗北です…。
もし、シンが来てくれなかったら私はキャスターの傀儡になっていた…。
結局私はただ一人で突出してシンに迷惑をかけただけです…。
ああ、だから私は彼に『王は人の心がわからない』と言われたのでしょう…。
なぜ、あの剣は私なんかを王に選んだのでしょうか…。
こんな私なんかよりももっと王に相応しい者がいたはずなのに…。
それに、彼もなぜ私を助けに来たのでしょうか…?
私の様な役立たずを助けるなんて…。
「シン…なぜ私を助けたのですか…?」
「対バーサーカー戦の切り札とも言えるセイバーを失いたくなかった」
なるほど…。
確かに私が持つあの剣ならばバーサーカーを打倒すことができるでしょう。
戦略的に私を失うのは対バーサーカー戦において大きな損失になる。
ですが理由はそれだけではない気がします。
彼が私を助けた本当の理由は別にある気がします。
だから、私はもう少し踏み込んで質問してみることにしました。
「でも、それは戦略的に判断しただけであって本音は違うのでしょう?」
「…失いたくなかったから」
「は?」
「例え俺が傷ついたとしても人が救えるのなら俺は傷ついても助けたい。
俺がセイバーを助けた理由はそんな自分勝手な俺のワガママだ」
シンが私を助けた理由を聞いた瞬間、私の頭の中に様々な風景が流れ込んできた…。
今よりももっと若いシンが誰かと一緒に走り回る姿…。
戦禍から逃れるために戦場を突っ切るシンの姿…。
見るも無残な亡骸へと変わった家族を目の前で見て慟哭を上げるシンの姿…。
遥か空の彼方にある庭園に存在する士官学校で訓練に明け暮れるシンの姿…。
巨大な機械の人形の担い手となったシンの姿…。
世界を滅亡の危機から救うために戦っているシンの姿…。
孤立無援の戦場で鬼神の如く敵を打ち倒し、仲間の活路を切り開いたシンの姿…。
ただ一人で何十人もの敵を一度に相手にするシンの姿…。
現地の民を救うために敵を打ち倒すシンの姿…。
上司にいらぬ叱責を受けて殴られるシンの姿…。
敵の支配から人々を解放するけど捕まえた敵の最期を見て複雑な表情を見せるシンの姿…。
目の前で自分を庇って死んだ仲間の名を叫ぶシンの姿…。
非道な実験の犠牲になった子供達を見て敵に対して激しい怒りを見せるシンの姿…。
自分が知り合った少女が敵の兵士であることを知って動揺するシンの姿…。
知らぬうちに自身の恩人を斬り殺してしまったシンの姿…。
少女を救うために少女を敵の許へ返すシンの姿…。
再び敵として現れた少女が自由という名の告死天使に討たれ、激しい動揺と後悔の表情を見せるシンの姿…。
激しい憎悪の炎で告死天使を討ったシンの姿…。
その告死天使を討ったことを咎められて上司に殴られるシンの姿…。
自身の相棒が再起不能となり、自身の相棒が解体されていくところを最後まで見届けるシンの姿…。
裏切った上司を自身の手で討つシンの姿…。
裏切り者とはいえ仲間を討った悲しみに涙を流すシンの姿…。
平和な時代を切り開くために鬼神のごとき強さで敵を薙ぎ払うシンの姿…。
世界を牛耳る者を追撃した時に現れた敵が告死天使と裏切り者の上司と知って動揺するシンの姿…。
自身の第二の故郷を守るために月で獅子奮迅の活躍を見せるシンの姿…。
世界の命運を決める最後の戦いで裏切り者の上司に敗れたシンの姿…。
それでも世界を平和にするために涙をのんで告死天使達と戦うことを決意するシンの姿…。
人々を守るために最後まで一緒に居てくれた少女を自身の手で討ったシンの姿…。
傷つき、怒りと悲しみと後悔の果てに唯一の家族も親友も守りたかった少女達も帰るべき場所も
自分自身を動かしてきた信念すらも奪われ、自身が所属していた組織を抜け、無気力に生きていた時に
ゼルレッチと名乗る老人の弟子にされたシンの姿…。
修行の果てに元の世界に帰り、告死天使達の魔の手からとある小さな集落を守るために世界と契約し、
自身の命と引き換えに告死天使達を討ち、その小さな集落を守り抜き、立ったままこの世を去ったシンの姿…。
契約として守護者になるけれどもシンの世界に住む神々の陰謀により、全てが手遅れの状態で何度も召喚され、
精神を削ぎ落とされるシンの姿…。
最初以外のシンの姿はどれも今のシンとはかけ離れた痛々しい姿でした…。
「シン…」
「王は人の心がわからない…か…」
「なぜ、その言葉を知っているのですか…?」
「おそらく君と同じで君が体験してきた人生が頭の中に流れ込んできたんだろう」
なぜ、シンは私が彼に言われた言葉を知っているのでしょうか…?
シンも私と同じように私の人生が頭の中に流れ込んできたのでしょうか?
そうでなければシンが彼の言葉を知っているわけがありません。
私の過去は誰にも話していないのですから…。
それにこの現象はマスターにしか起こらないはずでは…。
「今は簡易的にだけど俺がセイバーのマスターになっている。
俺達の過去が見えたのはそれが原因だろうな」
「サーヴァントがサーヴァントのマスターになる…。そんなことが可能なのですか?」
「それをしようとしたサーヴァントがさっきいただろう。俺の場合は自分のスキルを応用して
莫大な魔力を常に供給しているからこんな芸当ができているのだろうな」
今の私とシンは疑似的にサーヴァントとマスターの状態になっているのでしょう。
私とシンとの間に魔力の繋がりが出来ている…。
おそらく魔力の流れに混じって私とシンの記憶が私達の頭の中に入ったのでしょう。
シロウとリンも私達の過去を夢の中で見ているでしょうけれどこの記憶は私とシンの秘密にしたい…。
…この気持ちはいったい何なのでしょう?
今までの人生ではわからなかった感情…。
もしかしてこの感情が人の心のひとつなのでしょうか…。
「このような場所に男女二人だけで来るとは珍しいものだね」
「「っ!?」」
そんなことを考えていた時に私ともシンとも違う男の声が聞こえ、声がした方向へ振り向くと
そこには白い服に白い仮面を着けた男が私達の目の前になっていました。
ここには人の気配がなかったはず。
だとしたらサーヴァント!?
気配が感じなかったとするとアサシン!?
いや、この男はアサシンとは違う!!
“この男と戦うな”
“この男は世界を滅ぼしえる力を持ったバケモノだ”
“この男はこの世の全ての悪を体現した存在だ”
“自分が戦ったとしても手も足も出ない存在だ”
“戦っただけでその性質を悪に染め上げるバケモノだ”
私の身体の全ての細胞が私に警鐘を鳴らしている。
身体中から嫌な汗が流れる…。
「ほう、君は…。そうか、君がアーチャーとして召喚されたか」
「ああ、そうさ。この戦争を止めるために俺が召喚された」
「フフフ…彼らならともかく君ならば安心して後のことを託すことができそうだ」
「託す?」
「答えを知りたければ円蔵山の地下空洞まで来るがいい(スゥ…」
私が嫌な汗を掻く中、シンは目の前に居る仮面の男を見て確信に至った表情をしていました。
そして、目の前の男は答えを知りたければ円蔵山の地下に来いと言って私達の前から去りました。
彼が去った瞬間、私はようやく呼吸をすることができました。
私は今まで多くの敵と戦ってきましたが息ができなくなる程のプレッシャーを当てられたのは彼が初めてです…。
彼はいったい何者なのでしょう…?
ただ、アサシンでもランサーでも無いのは確かです。
「っ、この感じは…令呪ですね」
「ああ、おそらく俺達を呼ぶために使ったのだろう」
私自身では叶わない存在が去って安心していると身体が引き寄せられる感覚がしました。
この感覚は過去の聖杯戦争で体験しているからわかる。
忌々しい力…令呪だ。
シンの言うとおり私達を呼ぶためにシロウ達が令呪を使ったのでしょう。
身体がシロウの屋敷へ引き寄せられる…。
あの時は忌々しい力でしたが今は安心して身を委ねることができる。
そうして、私とシンはシロウの屋敷に転送されました。
冬木市 衛宮邸 玄関前
「シン!セイバー!!」
「二人とも!無事か!?」
「あ…シロ…ウ…(バタン」
ああ、どうやら私達は無事に帰ることができたようです…。
ですが緊張の糸が切れて意識が闇に沈んでいく…。
でも、キャスターに使役されかけた時とは違って安心して眠ることができる。
シロウ達が必死に私へ呼びかけていますけれど私は返事をすることすらできません。
ごめんなさい。シロウ…私は少し…眠ります…。
また、私が起きたらシンと一緒に美味しい食事を作ってくださいね…。
どうも明日香です。
今回はライダー陣営との同盟締結とセイバーの単騎突撃&返り討ち&シン救助と聖杯の機能を汚染した原因との遭遇と衛宮亭への帰還という話になりました。
はい。この時点ではNOUMINは召喚されていません。
今回のセイバーの襲撃でキャスターが自身の拠点が既に察知されていることを認識したため対サーヴァントの対策としてシン達が撤退してすぐに召喚されました。
ちなみに、この一件からセイバーはシンが気になり始めるようになります。
さて、次回はどのような展開になるのでしょうか?
それでは、失礼します。
シンがアルトリアを奪還した方法
1.ルールブレイカーと似たような特性を持つ特殊弾頭をキャスターの右腕に打ち込んで魔力のラインを強引に断ち切る。
↓
2.魔力のラインを無理矢理繋いで擬似的に自身のサーヴァントにする。
↓
3.第二魔法を最大限に応用して各並行世界から莫大な魔力を取り出して供給する。
シンとセイバーの前に現れた白衣のサーヴァントの正体は?
聖杯戦争の機能が汚染された原因。
シンの世界では知らないものは一人もいない最強にして最凶の反英雄です。