西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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第十話 舎弟を愛でます!

撃破された大洗学園の戦車が運搬車両によって搬送されている傍ら、あんこうチームのメンバーやイタチさんチームのメンバーはⅣ号戦車の前で途中で撃破されたチームのメンバーから賞賛の言葉をかけられていた。

みほはおろおろしながらもチームの全員に頼りにされていることに安心し、素直に勝利を喜んでいる。

その傍らで大友は彼女が賞賛されている姿を見てどこか嬉しそうだった。

 

「西住先輩、大友先輩カッコよかったです!今度私たちにも詳しくおすすめの立ち回りを教えてください!」

 

「いや、澤さんや他のチームのみなさんのおかげです。皆さんが私の考えた作戦通りに動いてくれて嬉しく思います」

 

「西住ちゃんに大友ちゃん。二人ともナイスプレーだったよ!みんな、よくできているからこの調子で公式試合も頑張って優勝しちゃおうっ!」

 

『おーっ!』

 

こうしてまた一段と大洗学園戦車道チームの絆は深まったのである。チーム内のメンバーがお互いの健闘を称え合っていると、ダージリンがアッサムやオレンジペコ、ローズヒップを連れてメンバーのもとにやって来たのであった。

 

「貴女が隊長さんですわね。お名前は?」

 

「初めまして。西住みほです」

 

「もしかして西住流の?随分まほさんとは違うのね。でも、今日は楽しかったわ。今度は公式戦で会いましょうね」

 

「は、はい!」

 

ダージリン達がその場から立ち去ろうとした瞬間、慎司が改造を施した愛車のトヨタマークⅡGX81型で乗り付けて来て一同の前で停車してローズヒップの方に目をやる。

 

「よう!久しぶりだな……今はローズヒップって名前になったんだってな。せっかく明日まで寄港日なんだ。今から飛ばそうぜ」

 

「お久しぶりですわねっ!慎司君。早速ガンガン飛ばしますわよー!そのまま唸る加速音でアクセル全開ですわよ!」

 

彼女はテンションが高まった状態で彼のもとへ駆け寄っていき、一度慎司に抱きついた後そのまま車の助手席に乗り込んでいく。

 

「慎司、安全運転でな!青春ってのはいいなぁ」

 

「ええ。親父、行ってきます!」

 

慎司は大友と言葉を交わすとホイールスピンをして発進し、ローズヒップと共に何処かへ走り去っていくのであった。

その様子を見ていた姉の妙子は、自身をスルーしたうえ他の少女を連れてどこかへ行ったのが堪らなかったのだろう。少しだけ目に涙を浮かべつつ頬を膨らませて「シンちゃんのいけず!」と言っていた。

 

「さて、みほさん。ついでですし、こんな格言を知っているかしら?イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない」

 

「はい?」

 

ローズヒップにつられたのだろう。再びダージリンはみほと大友の前まで歩み寄って彼女に対してそう言う。言葉の意味をいまいち理解できなかったのか、みほは首を傾げる。

 

「では、これが答えよ」

 

「おっふ……」

 

ダージリンは今だといわんばかりにそう言いながら大友の右側に行き、同じようにして首を傾げていた彼の右頬にそのまま唇を重ねてキスしたのであった。

対する大友は赤面して倒れそうになり、慌てて典子とナカジマが彼の身体を支える。周りのメンバーはその光景を唖然とした表情で見つめていた。

 

「典子ちゃん、ナカジマさん大丈夫ですよ。ダ、ダージリンさん!みほ姉貴の前でそんなことしたら恥ずかしいだろ!」

 

「ふふっ。そうやって怒る姿もかわいいわね。だから今みたいに愛でたくなるのよ。みほさん、この子は貴女だけのものじゃないのよ。では、またお会いしましょう」

 

ダージリンは頬膨らませて動揺する大友に対してウインクをするとそう言いながらオレンジペコやアッサムと話をしながら学園艦の方へと戻っていくのであった。

その後ろ姿を大友は、どこか照れくさそうにしつつも敬意を交えた目で見つめていたのであった。

 

 

 

 

それから三時間が経過し、彼はみほや優花里、沙織、華と一旦別れて麻子と行動を共にしていた。彼女は他の四人には大友と一緒に家族に会いに行くと伝えたが。

それは表向きであり、彼と二人で過ごすことにしたのであった。

 

「家へ帰らなくて大丈夫なのか?まあ、良いけどよ」

 

「どうせ明日があるし、それに今日は五年ぶりに遊んでもらうぞ。誠也君」

 

小さめのカフェで二人はスイーツを楽しんでおり。今日の試合で一気に食欲が増えたのだろう。次々とお菓子を二人で頬張っている。

この店は土曜日の昼間であるにもかかわらず、客が大友と麻子の二人しか居らず。雰囲気的にもいい感じになりつつあった。

周りに人が居ないので会話も弾みやすく、出されたお菓子について語り合ったりしながらスプーンをお菓子の方へと伸ばしていく。

 

「気になっていたのだが、誠也君はどうして西住さんのことを姉貴って呼んでいるんだ?みほちゃんやみほさんで良いと思うのだが」

 

「俺って家族がいないし。それに、俺より強くて頭がキレるし人柄が良いからそこに惹かれて『姉貴』って呼ぶようになったんだ。みほさんって言ってたのは中学に入る直前までだな」

 

「そうなのか。じゃあ、誠也君のことをお兄ちゃんって呼んで良いか?」

 

「おいおい、それはちょっとなぁ。まあ俺も組の奴から親父とか兄貴って呼ばれているから好きにしていいぞ」

 

「ふふっ。やっぱり誠也君はそうやって西住さんみたいに戸惑うところがあるから本当の姉弟みたいだな」

 

「ははっ。そう言ってくれるとなんかあの人の舎弟として誇り的な何かを感じるな」

 

大友は麻子は本当の恋人のように言葉を交わしながら更にお菓子を頬張る。ほどなくして注文したものが全て食べ終わり、店を後にして水族館へ行ったり。その近くの浜辺を散歩したりしながら残りの一日を過ごしたのであった。

 

「さて、そろそろ帰ろうか。悪いが明日はみほ姉貴と約束事があるから早く帰って寝たいからな」

 

「そうだな。私も最近は朝と仲直りしているから帰ろうか。誠也君……」

 

学園艦の近くにあった浜辺の公園で麻子と夕焼けを眺めていた大友は明日の予定を思い出したのだろう。

彼女との遊びもお開きにして途中まで一緒に帰ろうとするのだが、麻子は両手を広げる。

 

「どうし……へ?」

 

「また一緒になれてよかった。西住さんには、悪いが誠也君をもう一回抱きしめていいか?」

 

「ははっ。全然いいよ」

 

「ありがとう。おかげで何かのもやもやがスッキリした」

 

抱きしめ終えた麻子は少し離れて照れくさそうにもじもじしながらそう言う。

対する彼は数時間前のように倒れそうにはならずに同じように照れくさそうに呟く。

 

「じゃあ。俺からもお返しだ。おぶってやるよ」

 

「いいのか。ありがとうっ!」

 

大友はそう言いながら麻子の前にしゃがむと、彼女は喜色に溢れた表情で彼の背中に乗る。その後、麻子をおぶって自宅まで送ったのであった。

 

 

 

 

翌日。大友はタンカスロンで使用しているT-15軽戦車でみほと大洗の町をドライブした後、町から離れた峠道に入り、ある場所へと向かっていた。

 

「みほ姉貴、わざわざ戦車じゃなくても車なら用意しましたよ」

 

「いいの!たまには誠也君と同じ戦車に乗りたいからそうしたの。やっぱり戦車から身を乗り出すと気持ちいい。小さい頃、お姉ちゃんとこうやってドライブしたんだ。近所の池まで戦車で走りに行ってそのまま釣りをしたり帰りしなにある駄菓子屋さんでアイスを買って食べたりしたんだ」

 

「へぇ、そうなんですか。俺も暇があったら近所の港で釣りをしていましたね」

 

T-15は軽快な音を立てて峠道を走り抜けていく。当然、履帯の音が激しいため。二人は試合の時ようにインカムで会話をしている。

しばらくして峠道を越えた頃、一つの寂れた看板がみほの目に入った。それは、自身が好きなキャラクターであるボコのテーマパークであるボコミュージアムの看板であった。

 

「みほ姉貴、気づいてくれましたか。今日は一緒にここに来たかったんですよね。ほら、みほ姉貴ってボコが好きじゃないすか」

 

「ありがとうっ!今日は楽しもうね!」

 

「ええ、楽しみましょう!」

 

そんな会話をしているうちにボコミュージアムへとたどり着いた。そこは、忘れ去られた町と言うべきだろうか。施設の外部に至っては、長い間手入れがされていなかったのかボコの看板は朽ち果てつつあったが、内部は比較的綺麗であり、まだ閉館したという訳ではなかった。

 

「すっごーい!!こんなところ初めて見た!」

 

「ははっ。俺も一年前に一回だけ来たのですが。相変わらずこの調子ですね」

 

大友は、童心に帰って素直に喜ぶみほを微笑ましく見つめながらT-15を駐車場に止め、一緒に戦車から降りる。

すると、一輌の薄水色に塗装され、大学選抜チームのエンブレムが車体に貼り付けられたFV603装甲車が目に留まる。

 

「……(来ちゃってたのか。会っても挨拶だけはしておくか)」

 

「どうしたの?早く行こうよ!」

 

「いえ、何でもありません。行きましょうか!」

 

彼は、何かを思い出したのだろう。装甲車をどこか気まずそうな顔で凝視しつつもみほに声を掛けられたため、足早に彼女と共にミュージアムの中へと入って行くのであった。

ミュージアムの中は様々なアトラクションが存在し、ボコの世界観に染まった三つのアトラクションを巡った後、二人は土産屋に立ち寄ったのである。

 

「ボコミュージアム限定グッズが多くて選びきれないな~」

 

「グッズの種類が豊富ですね」

 

二人はボコのぬいぐるみといったグッズを手に取って一つ一つを眺め回っている。こうしてかれこれ一時間が経とうとしているが、二人は飽きる気配はない。だが、そろそろボコの劇が始まろうとしていた。

 

「みほ姉貴、そろそろ劇が始まるので行きませんか?」

 

「そうだね!どんな劇なんだろう。ワクワクするな~」

 

二人は時間が来たことを思い出したのだろう。そのまま小走りで劇場の方へ向かって行くと、他に来客がいたのだろう。軍服のような服を身に纏った三人の女性と栗毛の少女が一番前で座っていた。

大友は何かを確信した表情で四人の隣にあった座席にみほと共に座り、劇を見始めるのであった。彼はみほが楽しそうにしていることを嬉しく思いつつ横の座席にいる四人のことが気になって仕方なかった。

そうこうしているうちに劇が終わりを告げ、劇場内が明るくなった瞬間。彼自身の頭の上と右腕と左手に妙に柔らかい感触が伝わるのであった。

 

「「「つっかまーえた♪♪♪」」」

 

「ど、どうも。アズミさん、メグミさん、ルミさん」

 

呆気に取られているみほの反応をそっちのけにアズミが谷間が覗き込んでいる胸を彼の頭に乗せて抱きつき。メグミが右腕をホールドして自身の胸に押し当て、ルミが尻を彼の手に押し付けて左腕をホールドしているが、すぐに彼のもとを離れる。

今の一発で頭がぼーっとしていた大友の膝の上に今度は栗毛の少女こと愛里寿がボコのぬいぐるみを抱えてちょこんと座って満面の笑みを彼に向ける。

 

「誠也君こんにちはっ!今日はそっちの人とデートなの?」

 

「こんにちは愛里寿ちゃん。えっとまぁ、その。お付き合いをしていないからその辺は微妙だな。ははっ」

 

愛里寿は大友の両手を持って目を輝かせながらそう言う。彼は、少しパニック気味になりながらも優しく彼女の疑問に答える。

ここで状況の理解が何となくできたのか、みほは大友に助け舟を出すつもりでリュックサックからボコのぬいぐるみを出して愛里寿に対して声を掛ける。

 

「はじめまして愛里寿ちゃん。私は西住みほって言うの。あなたもボコが好きなの?私も好きなんだ!」

 

「初めまして。わぁ……同じボコファンだ!!」

 

みほと愛里寿の二人は、自身が持っていたボコのぬいぐるみを見せ合いっこしながら言葉を交わしてすぐに意気投合する。

 

「では、隊長。私達は先に戻っていますので三人でお楽しみくださいね~」

 

アズミが愛里寿に対してそう言うと、二人を連れて劇場内から出ていくのであった。大友は自身の膝の上に乗っている彼女が姉貴であるみほと楽し気に会話している様子を見て微笑ましく思いながら愛里寿の頭を優しく撫でる。

 

「みほ姉貴、ボコ友が出来て良かったですね」

 

「うん!今日は来てよかった。愛里寿ちゃんもそう思うよね!」

 

「私もそう思う!誠也君。みほさんを連れて来てくれてありがとう!」

 

三人は同じように微笑み合いながら会話を進める。その途中で愛里寿とみほがお互いに目を合わせてウインクすると、そのまま同時に大友の頬に麗しい唇を重ねてキスするのであった。

 

「み、みほ姉貴?!あ、愛里寿ちゃん?!」

 

「うふっ。二日連続だね。ダージリンさんだけじゃなくて私にもさせてよね」

 

「これで誠也君にちゅーが出来たのは二回目だ♪」

 

「そうなんだ。愛里寿ちゃん!私と一緒だね」

 

「みほさん。もう一回してあげよ!」

 

「えっ。まっ……」

 

「「せーの。ちゅっ♡」」

 

「み、みほ姉貴今日は激しいですね……しかも愛里寿ちゃんまで」

 

大友の反応を楽しむかのように彼女達二人は再び彼に対して、左右から同時にキスする。これが彼にとってとどめの一撃になったのだろう。今にも失神しそうな調子で応える。

こうして、後に激闘を繰り広げる二人の生ける伝説ともいえる少女は邂逅したのであった。

 




今回はオリジナルストーリーを交えた閑話的なものになりましたが、次回も原作に沿いつつオリジナル展開を入れて行きます!
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