西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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また、今回はオリキャラ♂が二人登場します。
引き続きお楽しみください!


第十一話 舎弟と誓います!

大友はみほと愛里寿との甘い戯れから一週間後。彼とみほはいよいよ始まろうとしていた第六十三回戦車道大会の抽選会場に訪れていたのだが、この時彼は完全に油断しており。

会場の入り口に入った瞬間、格好の獲物を見つけた肉食獣の如く知り合いの少女達が彼を一瞬にして包囲したのであった。

性欲だけが逆転した世界なだけあってか、視線がいろんな意味ですごく。乙女ゲーの世界に登場する美男達のように六人の少女達がぐいぐいと大友に詰め寄って来る。

 

「「西隊長!お見事な突撃ぶりであります!」」

 

「お、大友殿。お久しぶりです!遂に戦車道に見参でありますか!西絹代、貴方と拳で語るならぬ戦車の砲で語り合いましょう!そして、その後は……」

 

「まぁ。当たったらよろしく頼むよ絹代ちゃん。てか、その後ってなんだよ」

 

手始めとばかりに、知波単学園戦車道チーム隊長の西絹代がゼロ距離寸前まで詰め寄って彼に対してアプローチを行う。

その傍らで彼女の側近である細見や玉田が囃し立てる。大友は友人である絹代との再会を素直に喜ぶが、彼女が言った意味深な一言に少し疑問を抱く。

 

「エスカレーター組よ。これが男子との対面方法だ。やぁ大友君。昨年の健闘は素晴らしいものだったよ。この後一緒に食事とカラオケでもどうだい?」

 

「ふんっ。外部生はそう言いながらもチャラい女と同じようにナンパしているだけじゃないか。全く品がないな。これは失礼いたしました。ボンジュールムッシュ誠也。こんな黒ヤギなど放っておいてわたくし押田とマリー様と共にお茶会をしながら今後の戦車道の展望について語り合いましょう!」

 

「何だと?!結局エスカレーター組も時代錯誤な言い回しでそう言いながらお茶会と称したナンパをしているじゃないか!同じ穴の狢だな!ストレートに言う我々の方が相応しいに決まっているだろう?!」

 

「やるのか?この子を賭けて前の抗争の続きだ!」

 

「安藤さんに押田さん。まぁ落ち着てくれよ。確かいがみ合いは……」」

 

「「……」」

 

「誠也君。内乱鎮圧お見事よ。はい、あーん♪」

 

「はむっ?!それはどうも相変わらずスイーツが好きだなマリーちゃん」

 

知波単メンバーに続いてBC自由学園の安藤と押田が大友の左右につき、彼を遊びなどに誘おうとするが。彼を取りあうようにして口論を始める。

大友は待っていましたとばかりに二人に対していたずらな笑みを浮かべながらそう言って図星を突く。それに対して二人は照れくさそうに頬を染めて黙り込む。

すると、マリーが満足気に彼の前まで歩み寄り。持っていたモンブランケーキをスプーンですくい、そのまま大友の口に入れる。彼の反応を見て彼女は更に満足気にクスクスと笑う。

再会した友人たちとそんなやり取りを終え、大友は抽選会場内へは行かずにみほと一旦別れて近くの公園へと向かった。

 

 

 

 

公園へ向かうと二人の少年が居た。一人は、黒い眼帯を左目に付けてアンツィオ高校のパンツァージャケットを身に纏い、戦車兵用のヘルメット被った同校三年生の『佐谷吾朗(さたにごろう)』であり。

もう一人はプラウダ高校のパンツァージャケットを着用した二年生『獅堂義孝(しどうよしたか)』だった。彼ら二人は、歩いて来た大友に気づいたのだろう。同時に彼に対して手を上げる。

間もなくして二人の目の前に着くと、二人が座っていたベンチに腰掛ける。

 

「お久しぶりです。佐谷の兄さん。それに、義孝も元気そうでよかったぞ」

 

「何や大友ちゃん。歳が一つしか離れてへんのに堅苦しい挨拶はせんで良いで。まぁ、普段あの子についてるその癖なんやろうな」

 

「ああ、久しぶりだな。大友さん。ようやくこちら側に来てくれて嬉しく思う」

 

三人の少年は、一先ず旧友との再会を喜ぶのである。それからすぐに佐谷が二人に対して話の話題を切り出す。

 

「戦車道の男女混合化が成されて早五年になるなぁ。二人はうまく行っとるんかい?」

 

「ええ、俺はカチューシャさんとノンナさん。それに他のみんなに良くしてもらっている。まぁ、最近はちょっとアプローチ的なのが激しくなって来たのですが」

 

「そら獅堂ちゃん。お前は絵に描いたようなハンサムな顔と性格をしてるからやで。まぁ、本流の戦車道に来てから女の子が前よりグイグイ寄って来てるからその内いかれるんとちゃうか?」

 

「ははっ。もうそれ寸前まで来ていますよ」

 

佐谷が獅堂に対して軽い冗談を交えてそう聞くと、彼は少しだけ笑いながら何かを思い出したかのようにそう語る。

 

「佐谷の兄さん。俺も上手くいっている。姉貴もあの出来事から完全に立ち直って一緒に楽しくしてるし、遠慮なく自分の実力が発揮できている」

 

「せやったら良かったわ。そうかあの子は完全に立ち直ったんか……それに加えて遠慮なく実力の発揮か。その内ライオンどころかどでかい龍が起きてまうわな」

 

次に大友の調子を聞いた彼は、何かに気づいたのだろう。みほをそう例えながら大友に対してそう言う。彼も佐谷が言ったことに共感しながら軽くうなずく。

 

「だけど、佐谷の兄さん。大友さん。今年もウチが勝たせてもらうぜ。俺は大友さんがみほさんを大事にしているのと同じくらいカチューシャさんとノンナさんを大事に思っている。二年前、戦車道強豪校からのスカウトに悩んでいた俺の相談に乗ってくれて。去年入学した時には俺に良い立場を与えてくれたからな」

 

「それやったら俺らアンツィオかて同じや。今年はベストスリーやなくて頂点を目指すで。うちの姐さんと一緒にノリと勢いが一番やってことを日本中の戦車道連中に教えるんや!」

 

「二人とも相変わらず血の気が多いな。じゃあ俺らはあんたら二人に対する下克上だっ!」

 

獅堂の言葉を皮切りに、佐谷と大友も自身の決意表明をその場で行う。それから三人の少年はお互いに見つめ合うと笑顔で拳を合わせてその場を去っていくのであった。

 

 

 

 

大友はその後、みほ達あんこうチームと共に戦車喫茶ルクレールに足を運んで軽食を楽しんでいた。初戦の相手であるサンダース大付属高校に関する話で六人は盛り上がっていた。

 

「西住殿、十対十でこちらと同数だとはいえ、こちらの戦車の装甲をほとんど貫いてしまう戦車ばかりです。なので、この前のこそこそ作戦のように用意周到な戦術を考えないと」

 

「そうだね。せめて相手の使用車輌が分かればいいんだけどな。優花里さん何かいい案はない?」

 

「相手の動きを逆手に取る戦術はどうですか?この前の聖グロ戦だって相手の統率力に付け込みましたし……」

 

「うん!それいいね!当日の動きと前日までに過去の戦術を参考に作戦を立てればいいんだけどなぁ」

 

「そこにいるのは副隊長ですか?」

 

彼女は作戦のヒントを得ようと優花里に意見を求めた。彼女は自身の中にある知識を張り巡らせたところ戦術を逆手に取るという結論に達した。

みほはすぐにアイディアを出してくれた優花里に感謝すると鞄からメモ用紙を取ろうとするのだが、聞き覚えのある声が彼女の耳に入る。

 

「いや、元だったわね。みほ」

 

「エリカさんにお姉ちゃん……」

 

「みほ……続けていたのか」

 

六人が視線を向けた先には、黒森峰女学園の制服を身に纏った二人の少女が立っていた。みほに対して声を掛けた少女、逸見エリカはそう言い直すとどこか複雑な表情でそう言う。

彼女の後ろにいたみほの姉のまほは彼女の名前を小さく呟いた後、表情には出さないが安心したような声でそう言う。ここで優花里が立ち上がろうとするが、大友が静かに制止する。

エリカは大友が彼女を制止したのを確認するとみほに対して次のように言った。

 

「今年は黒森峰が王位に戻るべく、恥辱を味合わせたプラウダに雪辱を果たすんだから。そして、私は西住流の名に恥じないように突き進むわ」

 

「逸見さんあんた……どうしちまったんだ」

 

「誠也、あんたも居たのね。この子の舎弟なんだったらこの子を引き続き支えてあげなさい。けど、私はあんたやこの子を超えて見せるんだから首を洗って待ってなさい」

 

彼女は、何かに取りつかれたかのように凍てつくようなトーンで二人に対して宣戦布告ともとれる一言を発する。表情は先程とは異なり、縄張り争いを行う獣のように闘争心が剥きだしたものとなっていた。

 

「エリカ。もういいだろう帰ろう」

 

「はい、隊長。それと最後に言っておくわ。一回戦のサンダースは例年とはひと味違うわよ。文字通りクレイジーになっているんだから」

 

まほの後ろについて歩いていたエリカは一度立ち止まると、六人に対して忠告じみた言葉を投げかけるとそのままどこかへ去っていくのであった。

 

「あの子ドラマで見るような復讐鬼みたい」

 

「その通りですわ。私達に対して宣戦布告じみたこと言ってましたし」

 

「皆さん。あの逸見エリカさんという方は去年……」

 

「優花里ちゃん。今は辞めておこう。それより話を戻そうか」

 

「そうだ西住さん。このケーキ美味しかったから食べてみてほしい」

 

「ありがとう。麻子さん」

 

沙織がそう言い始めたため、華が共感するようにそう言う。優花里が事の顛末について語ろうとするが、これも大友に制止されてしまう。

我に返った三人がみほの方に目を向けると、彼女はどこか寂しそうな表情をして俯いていたのであった。この空気を打ち破るかのように、麻子がいつの間にか注文していたケーキをみほの前に差し出しながらそう言う。

しばらくすると、みほは元の調子を取り戻したので再び六人でケーキを頬張り始めた。

 

 

 

学園艦と本土の港を結ぶ帰りの連絡船の外では、みほと優花里、大友の三人が潮風に当たっていた。優花里は全国大会に出れるだけでも嬉しかったのだろう。ずっと機嫌が良かった。

 

「全国大会に出れて私は大変うれしく思います。たとえ負けたとしてもそれまでにベストを尽くしましょう」

 

「それじゃあ困るんだよね~」

 

「この前、西住の指揮のおかげで練習試合といえど強豪に勝てたんだ。負けては困る。だから絶対に勝とう」

 

「もし、負けちゃったら……」

 

「「しーっ!!」」

 

「まぁ、とにかく。大洗の戦車道は西住ちゃんと大友ちゃんにかかっているんだからよろしくね。もし負けたら今度こそあんこう踊りかそれより恐ろしいことやってもらおうかな~」

 

すると、風に当たっていた三人のもとに杏や桃、柚子がやって来た。そう言う彼女達三人からかなり勝利に拘っている様子が見て伺える。

不安な顔になっていた柚子が何かを言おうとするが、桃と杏が慌てて口止する。状況を理解していた大友は少し手と身体を小刻みに震わせる。

それだけを言いに来たのだろう。杏と柚子がみほ達に手を振ってその場から立ち去って行った。

 

「大丈夫ですよ!頑張りましょう!」

 

「初戦だけど相手は物量が豊富なサンダース。どんな戦車を使うんだろう……」

 

「西住殿、大友殿。ちょっと外しますね」

 

優花里に励まされたみほは、顎に手を当てて考え事に耽り始めたのである。彼女が真剣に考え事を始めたのを見た優花里は、何かを思いついたかのように船内に戻って行くのであった。

 

「優花里さんどうしたんだろう?それに誠也君、さっき手と身体が震えていたよ。何かあったの?」

 

「いえ、何でもありません。それよりもみほ姉貴。俺はこの大会を機会に貴女と一緒に下克上を成し遂げたい……俺は何があっても貴女に付き従い。みほ姉貴を支える最高の舎弟になると改めて誓います」

 

「もう一番になっているよ。さっきだってエリカさんを説得しようとしてたし、どんな人にだって向き合っていく良い子なんだもん。だからね誠也君、一緒にエリカさんを元の優しい人に戻そうよ」

 

「ええ、必ずあの子を元通りにしましょう」

 

彼はまた彼女がもつ優しさに惹かれて改めて舎弟として誓い直す。そして、みほと大友は赤く燃える夕焼けを背景に手を握り合い、豹変した友を救う決意を共に誓うのであった。

 




ありがとうございました!
エリカさんが原作とは違ったキャラになっちゃっているかもしれません。
次回も原作とは異なった展開を入れて行きたいと思います!
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