西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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第十二話 サンダース偵察作戦です!

あんこうチーム装填手の秋山優花里と大友連合会若頭の水野桔平はサンダース大付属高校に潜り込んでいた。

こうするに至った経緯は、優花里が公式試合抽選会の帰路でのみほの真摯な態度に心を打たれたからだ。

また、若頭の水野が同行するに至った経緯に関しては学園艦に帰ってくる際に大友達の迎えに訪れていた彼が優花里のことを気にかけ、彼女がサンダースに乗り込むことを水野に話すと彼は協力を名乗り出た。

こういった経緯から二人で早朝にサンダース大付属高校へ乗り込んだのであった。

 

「それにしても女装は正解でしたね。これなら俺でもばれそうにない」

 

「私の髪形と水野君の髪形は似ているからちょっとした姉妹みたいだね」

 

「いやぁ、生まれて初めてこの髪型で良かったと思いましたよ。秋山さん、そろそろ校門ですよ」

 

優花里と水野はサンダース大付属高校の女性用制服を身に纏い、完全に生徒になりきっていたのである。

彼女が彼に対してそう言うほど女装に違和感が無く、姉妹で学校に通っているような感じであった。

優花里がビデオカメラを回しながら学校内の撮影を開始する。

廊下を歩く生徒に声を掛けたり、学校について紹介しながら戦車倉庫に入って行く。

 

「着きました。ここが戦車倉庫ですね。あそこにあるのはM4A1型、こっちにあるのはM4無印、それに僅か七十六輌しか生産されなかったA6があります!一回戦頑張ってください!」

 

「ははっ。俺より戦車に詳しいですね」

 

優花里がM4A6型の傍にいた三人の女子生徒に対してそう言うと、彼女達はフレンドリーに親指を立てる。左側にいた水野は、優花里の知識の豊富さに思わず感心する。

 

「おう。スマホで撮影しながら解説なんてお嬢さん達いや、一人は男か。あんたら戦車好きかい?」

 

「そう言うあんたは、今は戦車道チームとなった『江城連合会(こうじょうれんごうかい)』直系・浜崎一家総長の『浜崎崇(はまざきたかし)』の叔父貴ですか?お久しぶりです」

 

「ああ、久しぶりだな。お前は確か大友の兄貴のところでカシラをやってる水野だったな。何で女装なんかしてるんだ?堂々と男装すりゃあいいだろうが。まぁいい、ゆっくりしてけよ。お嬢さん怖がる必要はねぇよ。俺はあんたの所の大友会長とは知り合いだからよ」

 

「あ、ありがとうございます!浜崎殿は大友殿とお知り合いだったのですね」

 

試合のブリーフィングが行われる部屋へ移ろうとした瞬間、後ろから来たM18駆逐戦車(スーパーヘルキャット型)のハッチから身を乗り出して見下ろすようにしてリーゼント風ツーブロックで高身長の少年……浜崎が制服の校章の上に付けた金色の文字で『浜崎』と縦に書かれた丸いプラチナの徽章を撫でながら二人に声を掛ける。

醸し出している威圧感が優花里を怖がらせたのだろう。水野の後ろに隠れるが、浜崎は怖がらせたことを謝りながらフレンドリーに接する。

今度は、後ろから金髪ロングの女子生徒ケイとベリーショートの女子生徒ナオミが歩いてやって来たのであった。

 

「崇っ!誰とお話ししているの?」

 

「お疲れ様ですケイさん。それに、ナオミさん。客人を歓迎しているだけですよ。そうだ二人とも。大友の所でカシラやってる水野が来ていますよ」

 

「あっ……なんでバラしちゃうんですか……」

 

ケイに声を掛けられた浜崎は二人を労いながら水野の存在を彼女達にばらす。

水野は余裕がある表情から一気に蜂の巣をつついたように焦った表情になりながら彼にそう言うが、気になったナオミが水野の前まで行く。

 

「君が水野君か。時間は空いてる?」

 

「一応空いてます……」

 

「じゃあ、色々とタンカスロンについて教えてくれないか?」

 

「水野君、いってらっしゃい。私は待っているからね」

 

「えっ……と、先に帰ってくれても構わないですよ。秋山さん。もし、先に帰ったら親分によろしく言っといてください。で、では行きましょうか」

 

「ありがとう。いろいろ聞かせて」

 

水野は呆気に取られていた優花里に伝言を伝えると、そのまま満足な笑みを浮かべたナオミと二人きりになるのだった。

 

「そうだ。秋山さんだったか?俺が運転するからよ、観光でもしながら編成について教えてやる」

 

「浜崎殿、大丈夫なんですか?そんな事を喋ってしまって」

 

「全然大丈夫よ!崇、この子をお願いね!いってらっしゃい!」

 

「ありがとうございます!では、お願いします」

 

優花里は、浜崎からの思わぬ一言に驚くが。隊長のケイは気にする様子を見せるどころか。大らかな態度を示したのだった。

 

「お邪魔します……浜崎殿」

 

「ははっ。まぁ、同期なんだしかたくなるなよ。じゃあ行こうか」

 

浜崎は、彼女が車長席に座ったのを確認するとM18を発進させて学園艦の中を案内するのであった。

こうして意外にもあっさりとサンダース大付属高校側の情報を入手することが出来た優花里と水野の二人だった。

 

 

 

 

いつも通り戦闘訓練をしていたみほは、優花里と水野の二人の心配をしていた。

大友は事情を知っていたため、彼女には何も言わずに黙々と練習に励んでいる。

二人の存在を特に気にしていたのは、ウサギさんチームとカバさんチームの面々であった。

彼女達は練習試合の後から水野や優花里と行動を共にすることが多く。意見交換をしながら練習に勤しんでいた仲だったからだ。

 

「水野君と秋山先輩どうしたんだろう?」

 

「カシラと先輩は二人でさすらいの旅に出ちゃったのかも」

 

「何かロマンティックだよね。意外とみんなのためになんかしてたりしてるんだよきっと」

 

「グデーリアン何処へ行ったんだ?カエサルどこか分かるか?」

 

「西が吉と出た」

 

『当たりますように!』

 

カエサルが八卦を使った占いをしていたところ。棒が西の文字の方に倒れたため、梓や優季、あゆみ、エルヴィン達がそう言いながら八卦の道具を拝む。

早速効果が現れたと言うべきだろうか、上空からヘリコプターのローター音が鳴り響いたため。

エルヴィンが首にかけていた双眼鏡を手に取って音の鳴り響いた方を見ると、一機のUH-1ヒューイⅡ型が飛来しており。

そのまま練習が行われていた校庭に着陸する。

 

「皆さんただいま戻りました!」

 

「グデーリアン!水野若頭、サンダースへ偵察に行ってたのか。よく無事だったな」

 

エルヴィンは、副操縦士席から降りて来る優花里を出迎えると同時に彼女を労う。

優花里は嬉しそうにしながらエルヴィンに対して「ありがとうございます」と言いながら左手で頭を掻く。

 

「操縦席にいるのは……崇か。調子はどうだ?優花里ちゃんを送ってくれてありがとう。ところでうちの桔平はどうした?」

 

「よっ。兄貴じゃねぇか。絶好調だよ。あんたのところのカシラなら後ろだ。あーそれなら。今は……

 

「なんだよそれ。おーい桔平どうし……あっ」

 

彼と大友は他愛のない会話を交わしながら水野の存在を聞くが、そう聞かれた浜崎はどこか気まずそうにしながらも後部座席を指さす。

後部座席のドアを開けると、水野がナオミの膝の上に座らされており。どうすれば良いが分からない表情であった。

 

「お、親分……」

 

「Hi誠也。あんたのところの若頭はかわいいわね。また今度連れて来てよ」

 

「やあナオミさん。桔平の面倒を見てくれてありがとう。また今度伺わせてもらうよ」

 

ナオミとも何気ない会話を交わした後に水野を引き取ると、ヘリは静かに飛び立って行くのであった。

 

「その……皆さん。お揃いでどうしましたか?」

 

「あら〜水野君もモテモテだね。それに膝の上に座らされてて姿と女装姿がかわいい〜♪」

 

「………」

 

「ちょっと優季ちゃん。水野君がフリーズしちゃったよ!」

 

水野は同級生からの何気ない一言が深く刺さったのか。以前の秀人や慎司のように凹んでしまったのであった。

 

「誠也君。今の子は?」

 

「ええ、江城連合会若頭補佐の浜崎崇と副隊長のナオミさんです。一年前に縁を持ったもんで」

 

「そうなんだ。それにしても優花里さん、水野君。わざわざ偵察に行ってくれてありがとうね。おかげで戦術が練りやすくなったかも」

 

「西住殿……ありがとうございます!」

 

ヘリが飛び立った後にやって来たみほが、優花里と水野の変装姿を見て労いの言葉を掛ける。

みほを尊敬している優花里にとっては何かものをプレゼントされるより彼女の言葉が嬉しかったのだろうか、その場でスキップをしながら舞い上がる。

みほの言葉を聞いた水野は、流石に凹んだままでは申し訳なかったのだろうか。いつもの調子に戻るのだった。

こうして二人のおかげで対サンダース戦に有利な情報を得ることが出来たみほは、戦術を練ることに専念するのであった。

 

 

 

次の日。みほは練習が終わった際、沙織達あんこうチームのメンバーから労いの言葉を掛けられて先に帰ることにした彼女は帰宅途中に忘れ物があったことを思い出して教室の机の中に入れていた作戦ノートを取りに戻ると、倉庫の方から砲声が聞こえるのであった。

 

「もしかして、沙織さん達……」

 

彼女は居ても立っても居られなくなり、倉庫の前へと向かって行くのだった。

倉庫の前ではⅣ号が応用的な回避運動をはじめとする走行の練習を行っており、舎弟の大友が戦車から身を乗り出してインカムであんこうチームのメンバーに指示を送っていた。

外でストップウォッチを持って立っていた沙織が近づいて来たみほに気づいた。

 

「みぽりん?先に帰っていて良かったのに」

 

「みんな。まだ練習してたんだ。それに、誠也君に教えて貰ってたの?」

 

「そうなんです。みほさん聞いてください。誠也君は、教えるのが上手で以前より早く動けるようになったんです。ですよね?麻子さん」

 

「ああ、こう言うのもなんだが。現代戦車並みに動けるようになったかもしれん」

 

「冷泉殿の言う通り、Ⅳ号でありながら10式戦車やT-90のような動きを見せつつあります!私はまだまだ未熟ですが、精進いたします」

 

「優花里ちゃん。そう畏まらなくても、装填速度が段々と上がっていてるぜ。そのうち猫田さん達みたいに片手で弾を装填しはじめて、いつか自動装填装置みたいになるんじゃねぇか?」

 

華と麻子が嬉々と実力の上達をみほに話す傍ら、優花里が謙虚な態度を示すが。大友がフォローしたことにより、彼女の腕の上達も明らかになる。

彼女達四人は彼による指導の下で自主練習に励んでおり、隊長であるみほが操るⅣ号戦車の乗組員として足を引っ張らないように大友の協力のもと実力の成果を伸ばしつつあった。

 

「みぽりん!大会に勝とうね!」

 

「勝ってお姉さんたちを見直させましょう!」

 

「どこまでも走ってやるぞ」

 

「西住殿、私達にお任せください!」

 

「みほ姉貴、俺はいつでも貴女とその周りのみんなの味方です!」

 

「みんな……ありがとう」

 

この日を境にあんこうチームのメンバー以外にも自主練習に励むようになり、大会前日になる頃には練習試合の時よりその腕を伸ばしつつあった。こうして大洗学園による下克上はまた一歩前進するのであった。

 




ありがとうございました!今回は捏造設定がマシマシだったと思います。次回は第十三話を投稿する予定です!
評価やご感想、お気に入りへの投稿などお待ちしております!


最後になりますが、今回登場した『江城連合会』の設定について紹介します。↓

名前の由来は龍が如くシリーズに登場する『東城会』と『近江連合』から掛け合わせました。


組織名:九代目江城連合会(きゅうだいめこうじょうれんごうかい)
構成員:8690人
会長:??
若頭:??
幹部:浜崎崇及び、他数十名。
所属団体数:数百団体(最大規模で四次団体まで存在する)
概要:一九八〇年代後半に創立された関東最大の戦車道チーム兼タンカスロンチーム
設立当初から乙女の嗜みとも言われている戦車道であったものの、特に男子禁制、男子参加禁止という訳ではなかった。
しかしながら。戦車道における男性の地位は低く。偏見による女尊男卑的な選別の対象にもなりやすかった。こうした経緯もあり、出世もしにくいことから男性の興味は薄れており、戦車道の男性離脱は止まらなかった。
これに目を付けた小規模タンカスロンチームのリーダーだった初代江城連合会会長『江城正人』は戦車道から離脱または疲弊した男性のみならず。同じ経緯で戦車道を辞めた女性を集めて別のチーム創設して

世間から多大な好感を受けており。最盛期の四代目体制時には構成員2万人前後を誇ったが、二〇〇〇年代初頭に自動車やオートバイを使用した学園艦モーターグランプリという。男子の嗜み(女性も参加可能)が設立されたことにより。現在までそのブームが爆発的に起こり。
年々構成員は数を減らしたうえ、戦車道の男女再混合化が国際戦車道連盟で議決された影響を受けてさらに人数を減らした。八代目会長の跡目が審議されている際に戦車道強豪校や法人戦車道チームによるスカウトにつけ込まれ、ついには8690人に数を減らす。
それでも勢いは衰えず、タンカスロン強豪校と互角の戦力を保持している。
収入源は司法の許可を得たうえでの露店経営やイベント会場における物売り、戦車道採用校への出張整備そして警察組織や戦車道連盟と協議を重ねた上のフィールド警備活動(警備費用が必要)などである。
構成員は基本的に穏やかな人物や義理人情を重んじる人物が多かったりするのが特徴。また、タンカスロンや戦車道の試合ではパンツァージャケットの代わりに特攻服を着用する。
設立当初から四代目体制時までは戦車に乗る男性やどこの流派系組織に属さずにフリーで戦車に乗っていた女性達に危害を加えていた『不良戦車女子』との抗争を敢行し、両者を守っていたことから。
『全国中高生生徒会』から指定抗争組織として警戒されていたものの。四代目体制時に起きた。ある事件を契機にこれまでの活動が評価され。指定が解かれた。

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