西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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ご覧いただきありがとうございます!
今回もオリジナル展開を混ぜ込むことにしました。
引き続きお楽しみください!


第十四話 決断と新たな発見です!

一回戦突破から二日後、生徒会室でカメさんチームの四人が過去のアンツィオ高校戦車道チームに関する資料をまとめたりしながら戦術の特徴を絞り込んでいた。

小山姉弟はため息をつきながらパソコンで大会の様子を映した動画を見ていたのだが、M16/43サリアノから身体を乗り出した少年の姿に圧倒されていた。

 

「さすが江城連合会の現役若頭補佐ですね。佐谷の兄さんは相変わらずトリッキーな動きを見せる人だ」

 

「ねぇねぇ。ひで君この人のことを知っているの?それに戦車道チームの江城連合会って二十年くらい前までは指定抗争組織だったよね?悪そうな人じゃなさそうだけどとても手強そう」

 

「まぁ、佐谷の兄さんとは縁を持った人の一人だからね。あと、江城連合会は気合が入った戦車道組織だから特に用心しないと足元をすくわれる。この前の浜崎さんもそうだったが。いざとなれば自分の身も顧みずに突っ込んでいく人が基本多かったりするからな」

 

「秀人、今仕事仲間と言っていたが。この佐谷吾朗という男について何か知っているのか?」

 

「ええ、単刀直入に言うと二年前のアンツィオ高校を第六十一回戦車道大会準優勝に導いた功労者の一人といっても問題ないでしょう。失礼な言い方にはなるのですが。当時、資金面や経験面において乏しかったといっても過言ではないアンツィオ高校戦車道チームを短期間で錬成し、後の練習試合や去年の六十二回大会でも対戦校を苦戦させたのです。それに去年のアンツィオ高校の順位はベストスリーです。油断なりません」

 

「なるほど。文字通りの強豪校だな。我々の訓練の方もこれまで以上に本腰を入れないとな……」

 

姉の柚子の言葉に続いて桃が秀人に質問すると、彼は自身の過去やアンツィオ高校について覚えている限り二人に丁寧に説明する。

資金面や経験面に乏しいという言葉を聞いた桃は、額から少しばかり汗を流す。何せ今の大洗学園戦車道チームに共通していると感じたのだ。

 

「本腰ね。河嶋、小山姉に聞きたいんだけど。もう”アレ”について喋っちゃう?」

 

「か、会長?!それはまずいですよ!というか、うちのひで君の前でそんなこと!」

 

「そうですよ!これは私達三人で内緒にするって!」

 

彼女達二人のうち。桃の様子を見ていた杏があっさりとした表情で二人に対してそう言うと、彼女達は慌てふためくが。杏はどこか観念した表情で秀人を見つめる。

対する彼も申し訳なさそうな表情で三人を見つめ直すと素直に白状した。

 

「廃校の件ですよね。実は、三人が親分や俺達と言い合った日の放課後に聞いちゃったんですよね。というか、もうウチの親父やカシラをはじめとする幹部達はみんな知っています。会長、今度の練習の時に話しちゃってもいいんじゃないすか?聖グロやサンダース戦から他の皆さんの士気が高まったとはいえ、このままだと熱に浮かされた状態になってしまいます。せっかくこうして有望な仲間が多く集まったんだ。最後まで黙っておくより。ここで話してチームを一枚岩にしていかないと意味がありません」

 

「秀人、お前……そこまでこの学園のことを想ってくれていたのか。何か情けないところを見せてしまったな」

 

「いやぁ~秀人ちゃんには参ったよ。どういう風に話そうかな~」

 

桃と杏の二人は、秀人がこの秘密を外部に喋ってしまったということなど細かいことはどうでも良かった。

ただ、自分達と同じように大洗学園を守ろうとする意志が確認できたことが嬉しかったのであった。

 

「俺がここに入学する前の柚子姉の様子や行動で何か腹の中に包み隠していそうな感じがしたので。というか、ブラコンの度が過ぎていたよマジで」

 

「どういうことなんだ柚子ちゃん!」

 

「もうひで君、そんなこと言わないでよ!姉弟なんだからあれくらいいいでしょ!」

 

「まぁまぁ。姉弟でのイチャイチャ話はまた今後にして。秀人ちゃんの言う通り皆に言っちゃおうか。河嶋、小山姉も異論はないよね」

 

「「はいっ!」」

 

「人として一人の生徒の貴重な意見を聞かないと、千人近い人数を束ねる学校の歴代生徒会長の顔に泥を塗っちゃうからね。秀人ちゃん。貴重な意見ありがとうね。おかげでこのことをみんなに話す決断ができたよ」

 

「こちらこそ深く感謝いたします。これからもお三方の補佐としてよろしくお願い申し上げます」

 

こうしてその後、杏による一か八かの決断によって大洗学園戦車道メンバーは大洗学園の現状について知ることが訪れたのだった。

事実を聞いたメンバーの反応は、獰猛な獣によって崖に追い詰められた子羊のように萎縮しそうになったものの、戦車道履修者達に新たな志の火を灯すことになったのは言うまでもない。

 

「そ、そんな……戦車道の世界大会のためじゃなかったのですか?」

 

「それは事実だが。文科省の学園艦教育局よりお前たち一年生が入学する以前に通達され、廃校を免れたいのであれば戦車道大会へ参加し、優勝しろと言って来たのだ」

 

「だからね。みんな、泣いて他の学校に行くよりは希望を信じて抗って……もしかしたら優勝できるじゃん。澤ちゃん。それにウサギさんチームのみんなや他のみんなも泣き出しそうな顔してそんなネガティブな空気を作るの辞めてさ、前向きに考えようよ。今まで本当のことを言わずに腹の中に包み隠して悪かったね」

 

「いいえ、私。戦車道を選択して良かったと感じます。今までこんな経験したことがなかったのでむしろ今が楽しく感じています。それに、せっかく学校生活や戦車道の授業が楽しくなってきたところなのに廃校だなんて……そんなことさせません!みんな……せーのっ!」

 

『えいえいおーっ!!』

 

「勝って兜の緒を締めよとはまさにこのことだな。我が校の興廃この一線にあり。各員奮励努力せよ!」

 

『おーっ!』

 

「バレー部復活どころか廃校だなんて……戦車でも構わない。代々木体育館に行く気で頑張ろう!!」

 

『ファイトーオーッ!!』

 

「そうだ。こうやって皆やる気が上がっているんだから、西住ちゃんからも何かよろしく~」

 

「えっと……皆さん!隊長としては不束な私ですが。新しい戦車道を探し始めてから皆さんという新しい仲間に恵まれてとても幸せです。でも、皆さんと私となら廃校の危機は乗り越えることが出来ると思います!!みんなで絶対に優勝しましょう!!」

 

「さすがみほ姉貴です!皆でもう一度……せーのっ!」

 

『おーっ!!』

 

みほの一言が良い起爆剤にでもなったのだろう。この日を境に戦車道履修者メンバーの腕は少しづつであるものの、上達するのであった。

お互いに苦手な点と得意な点を話し合いながら訓練に励んだり、ある時はサンダース戦前のあんこうチームのメンバーのように大友や水野、木村、安倍といった大友連合会幹部達に教えてもらいながら放課後の自主訓練に励むのであった。

 

 

 

今度はアンツィオ高校に潜入する前の日の放課後、優花里と水野は密かに落ち合い。彼女の部屋で小さな話し合いをしていた。

彼はミリタリー色の豊かな優花里の部屋を楽し気に眺めながら会話を進めていた。

気が付けば戦車砲のトリガーまたは、操縦桿を握っていた水野と幼少期から戦車が友達だった優花里は反りが合うのか、ますます話が進む。

 

「それにしても秋山さんが戦車乗りのサラブレッドだったなんて驚きですよ!お父様は江城連合会の四代目会長。お母様は大洗の龍と呼ばれ、二十二年前最後のひと暴れとばかりに黒森峰に対して圧勝そして第四十三回戦車道大会の優勝……。ロマンの塊っすよ!」

 

「そんなことはないよ。二万人前後も率いてタンカスロンをしていたお父さんや西住殿のようにみんなに慕われていた隊長をしていたお母さんみたいに私は大したことはしていないから……」

 

「いやいや、秋山さんは俺やうちの親分と同じように西住の姉貴を尊敬し、その上身体を張る立派な軍師じゃないですか。それにうちの雄飛が秋山さんの装填の速さには敵わないなんて言ってましたからね。また今度、うちの組の戦車を使って車長でもやってみますか?親分に頼んどきますから」

 

「いいの?!ありがとう!」

 

水野に車長の打診をされた優花里は思わず嬉しくなって若かりし頃の父と母の写真が収められたアルバムを天井に向かって上げると、一枚の分厚い封筒がアルバムから落ちて来る。

気になった二人が一緒に封筒の表を向けると、『未来が託せるあなたへ』という題名で書かれていた。

これを見て居ても立っても居られなかった二人はキョロキョロと周囲を見渡してから封筒の中身を開封すると、そこから一枚の手紙と様々な印がつけられた三枚の地図と写真とメモが出て来た。

 

「水野君。これは……」

 

「ええ。恐らく我々が見つけきれなかった戦車がもう五輌も……」

 

「それより、多分お母さんが書いた手紙を読もうか」

 

優花里と水野が共に手にした手紙内容は、以下のようなものだった。

 

ー見つけたこれを見ているということは、私達の学校に戦車道が復活したということになるわね。文科省の目をかいくぐって隠せた子達の場所を場所を記したメモと地図があります。

私達に出来るのは申し訳ないのですがこれだけです。それでも私は未来が託せるあなたに読んでもらって良かった。一九九七年三月大洗女子学園戦車道チーム隊長、桐生好子ー

 

「ま、まだ残っていた戦車がもう五輌あるなんて……」

 

「ええ、明日にでもうちの組員に引き上げさせますので。それと今は、三日ばかり公欠をもらって島田流本家に今日から出向いている親分に連絡を入れますね」

 

因みに残り四輌の戦車については、ここで語ることにしよう。

57mm機関砲搭載T50-2M型軽戦車、75mm自動装填砲搭載T-40中戦車、Strv m/42中戦車、特三式内火艇・カチ車の四輌であった。

しかし、人員の確保や必要な戦車の整備または強化部品の発注したうえで戦車の改修など手回しをしなければならない。

因みに、現在。大洗学園が保有している戦車で改修に回されている戦車はⅣ号戦車、Ⅲ号突撃砲、LT-38軽戦車、三式中戦車の四輌である。

このタイミングで新しい戦車発見は、大洗学園側にとって勝利の女神の微笑みが向きつつあるといっても過言ではないだろう。

また今現在、島田流本家に赴いている大友は再び自身の戦車道テクニックに磨きをかけるために島田親子の下で学ぶことにしたのであった。

 

 




ありがとうございました。次回は第十五話を投稿する予定です。
今回も捏造設定が出ましたが、こちらも後のストーリーに絡める予定です。
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