西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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今回もオリキャラ♂が三人登場します。
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第十六話 二つの学校でドタバタです!

大友が島田流本家を後にしたほぼ同時刻。大洗学園とアンツィオ高校とそれぞれの学園艦が次の試合会場付近の同じ港に寄港したため、今回は条件付きで偵察の"許可"を得た大友連合会のメンバーと優花里は三輌の軽戦車でアンツィオ高校の学園艦に訪れていた。

 

「まさか7TP戦車に乗れるなんて……これ以上ない幸せです!」

 

「秋山さんはこれの双砲塔型が好きだったんですよね?でも、気に入ってもらえて良かったです」

 

「好きな戦車に乗れる……それも車長としてなんて!」

 

「今日は大暴れですよ!秋山先輩、姐さんみたいにやっちゃってください!」

 

7TP軽戦車の車内で本部長の秀人や幹部の『塚原丈治(つかはらじょうじ)』の二人と言葉を交わしつつ、アンツィオ高校のイタリア風な町を眺めている。

 

「秋山さんは今日初めてタンカスロンをやるんですよね?俺たちが上手くサポートするんでご安心ください!」

 

「さて、そろそろ決闘場所ですけども……あっ居た。おーい佐谷の兄さん!」

 

三輌の戦車が学校の校門前に到着すると、一輌のC.V.38軽戦車の上に佐谷がヘルメットを脱いで座っており。もう一人一緒に居たおっとりとした感じの少年『西田良夫(にしだよしお)』と共にたこ焼きを頬張っていた。

佐谷は声を掛けて来た塚原に気づくと、三輌に対してフレンドリーに手を振り返す。

 

「よう。結構早く来てくれたな。暇やったから丁度良かったわ。おっ!姉ちゃんがサンダースに水野ちゃんと二人で乗り込んで、姉ちゃんは浜崎と一緒に学園艦観光したんやってな。楽しかったか?」

 

「は、初めまして!私は秋山優花里と言います。あなたは『アンツィオの狂犬』……佐谷吾朗殿ですね!」

 

「おぉ!俺の事よう知ってるやん!今日はよろしく頼むで秋山ちゃん!!じゃあ、早速戦車鬼ごっこ開始や。行くでぇ!」

 

彼が戦車から身体を乗り出して目を輝かせている優花里に対してフレンドリーに声を掛けると、彼女も嬉しそうに応える。

さて、良い感じの雰囲気になって来たところで。佐谷のテンションがさらに上がり、西田と共に戦車に乗り込むと七人に対して鬼ごっこと称した決闘の開始を告げ、そのまま学校の中へ走り去っていった。

 

「佐谷殿、学校の中へ行っちゃいましたけど。大丈夫なんですかね?」

 

「ええ、大丈夫ですよ。俺らも行きましょう。細かいルールに縛られずに勝負を行う……それがタンカスロンです!秋山先輩、アレを頼みます!」

 

「アレ……そうだね。パンツァーフォー!!」

 

優花里の中でパンツァーハイのスイッチが入ったと言うべきだろうか。佐谷と同じようにハイテンションになり、彼女の高ぶりつつあるテンションに合わせて7TP軽戦車やⅠ号戦車C型、Strv m/38の三輌が一気に走り出す。

タンカスロンは、観客席などは特に決まっておらず。観客の自己責任で間近な観戦が可能なのだ。

それ故か、アンツィオ高校の生徒達が校舎から黄色い声を上げて観戦している。

 

「それにしても佐谷殿、どこに行ったんですかね?全く見当たりません」

 

「あの人の事だ。予想外の所から現れて相手を翻弄するのが得意だから油断できません」

 

優花里と慎司が辺りを警戒しつつ言葉を交わしながら周囲を階段や橋、地下通路などといった場所から現れないかそれらの建築物に対して気を配る。

佐谷を探しているうちに階段がある広場へとたどり着いた。学校内を探し回って一番最後に行きついた場所がここだったので、七人は特に気を引き締める。

すると、階段の方から履帯の音が聞こえてきたたため。優花里がその方向に目をやると、何一つ武装が施されていない演習用の模擬戦車が人が歩くのと同じ速度で階段を下って来ているのが目に入った。

 

「な、何だ。模擬戦車かぁ」

 

優花里が安堵の言葉を口にした途端、後方で停止していたStrv m/38にゆっくりめな機銃掃射が浴びせられ、そのまま戦闘不能になる。

 

「ショータイムの始まりや!!行くでぇ!!」

 

彼女と慎司が回避運動を始めてから後ろを向いた瞬間、先程まで三輌が通って来た道からC.V.38が現れてトリッキーな動きを見せながら残った二輌を翻弄し始める。

そんな動きを見せつつある戦車から佐谷は身体を乗り出しながらかなり高いテンションでそう叫ぶ。

 

「さすが名の通りの狂犬ぶりだ。このままではやられてしまいます。みんな逃げましょう!」

 

「そうですね。逃げるぞ。正義」

 

「おう。捕まってろ慎司!」

 

優花里が指示を出すと、二輌の戦車が元のスペックより早い速度で走り出した。佐谷はそれを見逃すわけが無く。彼の戦車もその後を追いかけ始める。

このC.V.38は対戦車戦闘も想定しているため。派生元であるC.V.33より高火力な上、この戦車が装備するブレダM35・20mm機関砲は残った7TPとⅠ号戦車の背面装甲を貫くことが可能である。

彼女はそれを踏まえてもう一度、先程の広場で練習試合の時のように決着をつけようと学校内を一周していたのだが。相変わらず追いかけて来るC.V.38から距離を離せずにいた。

やはり、向こうはアンツィオ高校の地理を完璧に把握しており。裏路地といった場所を利用してショートカットしながら距離を詰めて来る。

 

「このままじゃ埒が明かない。秋山先輩は先に逃げてください!」

 

「兄さん覚悟ーっ!!」

 

慎司が乗るⅠ号戦車がサイドターンをしてC.V.38に機銃掃射を行うが。全て躱されたのち、側面に数発撃ち込まれて撃破されてしまった。

 

「おっとその手には乗らんで。あとは秋山ちゃんだけや。気合入れて行くで!良夫ぉ!」

 

「は、はい!ノリと勢いで行きますよ親父ぃ!」

 

二輌の戦車を撃破した佐谷と操縦手の西田は優花里の7TPを再起不能にすべく。一気に速度を上げて広場に進入すると、7TPが鎮座していた。

二人が操るC.V.38が好機とばかりに7TPの方へ走り出すが、7TPも同じように走り出した。C.V.38が先程のようにサイドターンを決めて後方へ回り込もうとした瞬間、7TPが後退を始める。

 

「そう来たか。でも、やらせへんで!」

 

一度背面を晒したものの、西田の咄嗟の判断により。即座に車体の正面を後退した7TPの方へ向けると同時に佐谷が発射トリガーを引き、7TPからも砲撃が放たれる。

この一瞬で勝負が決まったのだろう。C.V.38の車体側面には大きなかすり傷が出来ており、対する7TPの砲塔上部から白旗が飛び出していた。

 

「楽しかったわ~。おおきに大友連合会の皆。それに、秋山ちゃん!!」

 

「さ、佐谷殿っ?!」

 

C.V.38から降りて来た佐谷は撃破された7TPから降りてもたれかかっていた優花里のもとへ行き、満面の笑みを浮かべながらそう言って彼女の頭を撫でている。彼の行動に優花里は照れようが隠せていなかった。

 

「俺が勝ってもうたけど。上手いこと戦車を動かせることが出来てたで!もしかして、大洗で車長さんでもやってるんか?」

 

「いえ、私は車長ではなく。隊長車で装填手をやっています。それにしても、タイマー設定をした無人の模擬戦車を使った囮作戦も面白かったです!」

 

「戦車道はスポーツやし、楽しさっていうのがあらんとおもんないからな。まぁ、秋山ちゃんならどんな役割でも向いてそうな気がするわ。せや、本題を忘れてたわ。今から学校内見学兼戦車偵察の始まりやで!チヨ姐さん、もう出て来てええで!」

 

佐谷は優花里の健闘を称えつつ自身の戦車道に対する考えを彼女に語った次に本題である偵察のことを口にしたと思いきや階段の方に向かって誰かの名前を呼ぶと、階段の上からP43.ter重戦車が現れ。

そのまま戦車で階段を下り始めて二輌の戦車の前で停止すると、車長席から緑髪の縦巻きロールで軍服のようなものを身に纏い、凛とした目を持った少女……アンチョビが降りて来る。

彼女を視界に入れた大友連合会の六人や西田が「お疲れ様です」の一言と共に膝に手をついて頭を下げる。

 

「吾朗、この子達とまたやってたのか。お前の歓迎方法はいつもタンカスロンばっかりだな。こんな可愛い子達にはアレが一番だろう?」

 

「……チヨ姐さん。アレですか?ウチの衆はノリと勢いで耐えてたけど、この子らにはヤバないすか」

 

「ふっふ。誠也君達もそうだが、吾朗の佐谷組といいウチの弟といい。可愛い男の子を見ると愛でたくなるんだ。さぁ、お前たち!!一年に一回あるかないかの宴だぁ!!」

 

『んあ?宴?』

 

「それでは、小山本部長。これにて俺は失礼します……」

 

「こちらこそお手伝いありがとうございます西田若頭。あれ?もう行っちまうのか……」

 

佐谷とアンチョビの会話内容よりも乗って来た戦車の修理に集中していた大友組の六人とその手伝いをしていた西田は、最後の”宴”の一言しか耳にしておらず。

何のことを言ってるのか分からなかった六人は特に気にせず修理を終わらせるが、その意味を知っているであろう西田が逃げるようにして校舎の方へと歩いていくのであった。

その直後。言葉の意味が分かってしまったのだ。アンチョビが戦車で降りて来た階段と左側の路地から合わせて二十人近くの少女たちが黄色い声を上げて現れたのだった。

 

「おぉ!戦車乗りの男子……しかもこりゃ可愛いショタっ子達っすね!アンチョビ姐さん!」

 

「あら。みんなかわいい♪ドゥーチェ、佐谷先輩。癒しの時間の提供をありがとうございます♪みなさーん行きますよー」

 

「お、おう。怖がらせへん程度にな。それと大友連合会の皆、悪く思わんといてくれや。男やったらちょっとは無理して耐えなあかんこともあるからな。ほな、秋山ちゃん行こか」

 

「は、はいであります!(ごめんね小山くん)」

 

「……(先に帰れたら伝言よろしくお願いします秋山さん)」

 

佐谷は申し訳なさそうに大友組の六人に対してそう言うと、優花里をC.V.38の砲手席に乗せて戦車倉庫へと向かって行くのであった。彼女は去り際に、秀人といざという時のためのアイコンタクトを交わした。

 

「さぁ、皆!彼らにノリと勢いの楽しさを知ってもらおうか!」

 

『了解です。ドゥーチェ!!』

 

こうして秀人や塚原、慎司、伊達、上田、岡崎の六人は特に抵抗することなくペパロニやカルパッチョといった戦車道乙女たちの”癒しの時間”の必要不可欠な要員としてどこかへとお持ち帰りされてしまうのであった。

 

「はぁ……誠也君。元気にしているかなぁ。次に会ったときはゆっくりお話がしたいな……」

 

そんな喧騒の中でアンチョビは一人、大洗学園の学園艦がある方を見つめながらそう言ってため息をつくのであった。

因みに大友と彼女の接点は一年前にアンツィオ高校で行われた戦車道での交流や彼のスカウト辞退を巡って起きた戦いで彼を狙う戦車道乙女達のストッパー役に入ったことだ。

そんな経緯もあってか大友とアンチョビは協力関係にあった。しかし、彼の人が良すぎる性格に惹かれたのか。彼女もまた機会を狙っていた。

 

 

 

その頃、大洗学園に珍しく訪問者が訪れていた。その訪問者をざっくり紹介するのであれば、安斎千代美……アンツィオ高校戦車道チーム隊長アンチョビの弟である『安斎拓実(あんざいたくみ)』がC.V.33で大洗学園に訪れていた。

彼もまた同じアンツィオ高校に在学している佐谷吾朗と同じく江城連合会の直系組長の一人であり、高校入学前の一年前までは佐谷組傘下安斎組組長だったが、これまでのタンカスロンでの活躍の功績から直系の組へと昇格したのであった。

拓実がなぜ戦車で大洗学園の学園艦に訪れているのかというと、優花里達と同じように許可を得たうえでの偵察だったからだ。

間もなくして、大洗学園の校門前に到着してそのまま訪問前に案内された通り戦車道履修者用の倉庫に向かうと、大友組の水野や木村、安倍が首を長くして待っている様子で手を振っていた。三人の前で止まって戦車から降りると、そのまま再会の喜びに入り浸る。

 

「久しぶりだな水野の兄弟!大友の兄貴と一緒の戦車で砲手やっているんだってな。調子はどうだ?」

 

「ああ、絶好調だよ。そうだ。直系昇格改めておめでとう!」

 

「ありがとう。まぁ、まだ幹部になったばかりだから佐谷の兄貴をはじめとする先輩幹部から色々教えて貰っている」

 

「兄弟いや、安斎の兄貴。構成員はどれくらいなんだ」

 

「おいおい。いつもの通りで良いよ。独立してから少し経つけど、百五十人くらいだな。タンカスロンで使う戦車を考えてもこれくらいの人数だけで十分だと思うな」

 

「兄貴、出世街道まっしぐらだな。そんまま十代目会長の椅子に座っちゃえよ!」

 

「ははっ。安倍の兄弟、それは俺より相応しい人が居るんでな。できればその人に座ってもらいたいね。何ならずっと九代目でいて欲しいくらいだね。そうだ。そろそろ戦車……見せてくれないか?」

 

「そうだったな。そこの扉を開けたら戦車が並んでいるぞ」

 

「ああ分かった。遠慮なく開けさせてもら……」

 

この四人はライバル校同士であるということを忘れて互いの調子を語り合ったり。自身の業界の話にのめり込んでいる。

しかし、ずっとこの話をしている訳にもいかないので拓実も本題に移り、倉庫の扉に手を掛けようとするが。先に倉庫内の方から開く。

水野達三人は誰も居ないはずの倉庫内の方から開くとは思っておらず。四人で思わず動揺していると、みほをはじめとする戦車道履修者の乙女達が談笑しながら姿を現した。

 

「あっ」

 

『…………』

 

「こんにちは!黒の特攻服に戦車それに左襟に付いているバッジ……もしかして江城連合会の戦車乗りさんですか?」

 

「に、西住みほさん?!あ、あのそうです!俺はアンツィオ高校に通っている安斎拓実です。あと、江城連合会では直系組長をやってます」

 

拓実が蚊の羽音のような声でそう言ったと同時に彼女達と一斉に目が合う。みほのフレンドリーな問いかけに少しおどおどとしながら軽く自己紹介する彼であった。

彼のそんな調子と姉と瓜二つな容姿は、彼女達に受けたのだろう。拓実は一瞬で戦車道履修者達に取り囲まれてしまう。

 

「ちょっとあなた。特攻服なんか着てるけど、戦車で暴走行為なんかしてないわよね?一応念のため免許証の確認と車内検査をするわよ」

 

「「がっつきすぎだよそど子」」

 

「は、はい。免許証です……ってもう戦車の中に」

 

「うほっ。あんた結構可愛いじゃん。ウチのバーどん底に来ない?」

 

「ノンアルのアイスフロート飲む?あと色々サービスするけど」

 

「スレンダー系と」

 

「筋肉質……」

 

「「どっちが好み??」」

 

「フリント、ムラカミ。好みを聞く前にこんなイルカのような子にはこれくらいあげるもんさ。どう?楽しいだろ?」

 

「お、お、お姫様抱っこぉ?!もう十六歳なのにぃ!」

 

『よっ!お銀姐さん!』

 

特攻服を身に纏っているためか、そど子とサメさんチームの五人に絡まれている。特にお銀に気に入られてしまったのだろう。

拓実は、そのままお銀に持ち上げられて横抱きされてしまう。その光景を見た桂利奈やあゆみ、あやが囃し立てている。

ここでちょっとした助け舟とばかりにカエサルが彼に話しかけた。

 

「君、アンツィオから来たということは。ひなちゃんは元気にしているか?」

 

「ひなちゃん?……あぁ!カルパッチョ副隊長ですか?元気ですよ。もしかして、貴子さんですか?副隊長からお話は聞いています!」

 

「そうなのか。それは良かった。ところで、どうして大洗学園に来たんだ?」

 

「えっと。それは、戦車が見たくて来たからです。どんな戦車かどうか見てみたいんで」

 

「うちにも遂に来てしまったか。西住隊長、どうします?」

 

「そうですね。せっかく来てもらったので見てもらいましょう。こういうことはお互い様です。安斎君、歓迎します。戦車倉庫に行きましょう!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

こうして拓実はちょっとしたゴタゴタがあったものの、みほが歓迎したことで彼は大洗学園側の戦車を見ることが出来たのであった。

こういったやり取りから大洗学園とアンツィオ高校の双方が互いに得をするという結果になったのだ。

 

 

 

 

夕刻。戦車倉庫前では、わずか数時間で大洗学園側の戦車道履修者達と仲良くなった拓実は戦車道以外で波長が合うと感じたのだろうか。ずっと楽し気に会話を続けていた。

すると、倉庫の前に島田流本家から戻って来た大友がやって来た。

 

「よお、拓実君。来ていたんだな」

 

「お久しぶりです。大友の兄貴。元気そうで何よりです」

 

「ああ。お姉さんの千代美さんは元気にしているか?」

 

「はい、千代美お姉ちゃんは元気にしています。そうだ、柏間のカシラから島田流の本家に赴いていたことは聞いています。改めてご苦労様です」

 

彼が大友とも互いの調子を語り合っていると今度は三輌の軽戦車が倉庫前で停車し、そこから秀人をはじめとする大友連合会の幹部や優花里、見送りに来たペパロニが降りて来る。

それに気づいたみほが倉庫から出て来るなり。大友や優花里、組員達に労いの言葉を掛ける。

 

「誠也君おかえりなさい。三日間お疲れ様!あと、偵察に行ってくれてた優花里さん達もありがとう。そして、お疲れ様!」

 

「みほ姉貴、三日ぶりですね。向こうで色々勉強してきました。姉貴の戦車道に役立てそうなのも幾つかあったので、また後でお話いたします」

 

みほが倉庫の外に出たのをきっかけに、他のチームメンバーも倉庫の中から出て来る。だが、他のチームメンバーが出て来たタイミングでペパロニは慎司に声を掛けた。

 

「そうだ。慎司君、今日は楽しかったぞ。色々ありがとうな。お礼してやるよ。ほら」

 

「こちらこそペパロニ姐さんと一緒に居て楽しかったです!ところでお礼ってなんす……か……うおっ?!」

 

大胆にもペパロニは、大勢の人間が見ている前で慎司の右頬にキスしたのであった。彼は彼女の行動に動揺しかけたものの、どこか嬉しそうにしていた。

しかし、そんなペパロニと慎司のやり取りに納得できない人物が一名いた……姉の妙子である。

 

「シンちゃん?お姉ちゃんのキスは拒否しても他の人のは受け入れるんだ。私にもさせなさい!」

 

「ま、待てよ。他の皆が見ている前で自分の姉とできるか!家でやれ家で!」

 

「ここじゃなきゃ嫌!さぁ、受け止めて!」

 

「だから。家なら良いって言ってるじゃん!って待て。胸を顔の前に近づけるな!何をす……おっふ」

 

ちょっとした言い合いと追いかけっこの末、慎司は妙子に捕まって十秒近く彼女の胸に押し当てられるようにして抱きしめられた後、左右の頬にキスを受けた。

 

「お疲れ様ですペパロニ姐さん。そろそろ我々も引き揚げましょうか。みほさんや大友の兄貴、他の皆さんもありがとうございました。また後日よろしくお願いします!」

 

「arrivederc慎司君、お姉ちゃんと仲良くするんだぞ!」

 

「ひゃ、ひやい……」

 

そして拓実とペパロニは大洗学園の生徒達に別れを告げると、そのままC.V.33に乗ってアンツィオ高校へ戻って行くのだった。

 

 




ありがとうございました!本作のアンツィオ高校の戦車は原作より強化という形になります。また、これはオリジナル設定ですが。アンチョビさんがP43terに搭乗で弟の安斎拓実がP40に搭乗ということにします。
次回の第十七話もオリジナル設定の追加やオリジナル展開にしていきたいと思います。
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