西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー 作:西住会会長クロッキー
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大洗学園の学園艦は次の試合会場である日本最北端の地に移動していた。日本最北端の地に向かっている事もあってか、目的地に近づくにつれて空は雲が多くなってきていた。
そんな中、大洗学園戦車道チームに新たな進展があった。
「次の対戦相手であるプラウダ高校のIS-2と互角に渡り合えるKV-122が戦力増強に加わるなんてすごいです。それに砲塔に描かれた熊のエンブレムということはクマさんチームですね!どんな人たちが搭乗するんでしょうか?」
「頼もしい助っ人が転校元の学校で放置されていたのをレストアして持ち込んだんだよ優花里ちゃん。おっと噂をすれば」
綺麗な状態で整備されたKV-122をはじめとする新しく大洗学園戦車道チームの一翼を担うことになった約六輌の戦車が戦車道履修者達の前に並んでおり。
その傍らで優花里と大友が戦車を眺めながら話をしていると、校門から三両の黒色の国産高級車が縦一列になって履修者達方へと向かってくる。
それに気付いた大友が何かを思い出したかのように静かに笑う。間もなくして三両の高級車がざわめく履修者達の前で停車すると、合わせて十五人のサングラスを掛けた少年たちが降りて来る。
「やぁやぁ。待っていたよ平形ちゃん。それに黒木ちゃん」
「改めましてお初にお目にかかります。角谷会長。九代目江城連合会総本部長兼
「同じく九代目江城連合会直系・勇彰會舎弟頭の『
フレンドリーに声を掛ける杏に対して平形と黒木は深く頭を下げる。それに合わせて彼らの組員達も手に膝をついて頭を下げる。
その中にいた三人の二年生と思われる少年は、そのまま大友連合会の幹部達の前まで行くと。彼らの前でサングラスを外して優しい微笑みを向ける。
水野をはじめとする組員達は、彼ら三人を視界に入れると同時に「ご苦労様です」の一言と共に手に膝を付けて頭を下げる。
「久しぶりだな皆。そして兄貴。少し遅くなっちまったが。皆んなもとに来ることが出来たよ」
「気にする事はねえよ。舎弟頭の武や舎弟頭補佐の諒介、清弘。ようやくまとまることが出来たな」
「そうだな。ようやく大友組が全員揃ったな」
「全くだ。よし、お前ら。今回の大会で戦車乗りの男子も戦車道乙女に負けず劣らずなところを見せるぞ!!」
『はいっ!!』
三人の少年……『村川武』や『山本諒介』、『我妻清弘』達が大友と再会の挨拶を交わした後に他の組員達にも声を掛けると、彼らは元気よく歓迎の言葉を口にした。
因みにこの三人が大友達と出会った経緯は。かつて通っていた中学校で所属していた男子戦車道部が廃部となったと同時に戦車を格安に買い取り。他の部員をまとめてタンカスロンチームを率いていたところ彼に出会い。
一戦を交えた後に大友の強さに惚れ込んだ三人は、彼と五分の兄弟分となったものの。他の幹部達と同じように「兄貴」と呼ぶようになったのだ。
ここで一部のチーム編成の改変と新設を以下の文章で簡潔にまとめていく。
E-25駆逐戦車(新・イタチさんチーム)
車長兼通信手・大友誠也
砲手・村川武
装填手・山本諒介
操縦手・我妻清弘
シュコダT40中戦車・75mm自動装填砲搭載型(ヤマネコさんチーム)
車長・水野桔平
砲手・塚原丈治
通信手・上田誠己
装填手・岡崎聡
操縦手・嶋健太
Strv m/42中戦車改良型(コヨーテさんチーム)
車長兼通信手・木村英雄
砲手・伊達正義
装填手・藤田進
操縦手・近藤慎司
五式軽戦車・ケホ(マーモットさんチーム)
車長兼装填手・安倍雄飛
砲手・小山秀人
通信手・本宮蓮司
操縦手・小野浩樹
T50-2軽戦車・S10-57mm機関砲搭載型(キツネさんチーム)
車長兼通信手・黒木彰
砲手・谷元俊平
装填手・津田信介
操縦手・瀬島康介
特三式内火艇・カチ(ワニさんチーム)
車長・長瀬充
通信手・松原健夫
砲手・渡部新
装填手・西村大介
操縦手・菅谷寛太
KV-122重戦車(クマさんチーム)
車長兼通信手・平形勇武
砲手・米原遼斗
装填手・藤間太一
操縦手・豊松悠人
以上六輌の戦車の搭乗員が新たに決まったのであった。
なお。上田や岡崎、伊達の三人が元々所属していたアリクイさんチームやカモさんチームに関しては、ねこにゃーとそど子をはじめとする三人のメンバーが必要な搭乗員の数を満たしていなくても。
最大人数分と同じ動きができるようになったため、新たに発見された戦車の搭乗員へと異動したのだった。
「そうだ。大友、私たちカメさんチームから秀人が抜けることになったが。代役は誰になるんだ?」
「河嶋先輩、それなら。遅れて来ると言っていたのですが……あ、来た来た。こっちだよ。王さん」
「すみません大友さん。記事を書くのについ夢中になってしまって。こんにちは皆さん。放送部の王大河です!皆さんの戦車道を間近に取材してみたいのと興味が湧いて参加させて貰うことになりました。よろしくお願いします!」
「おっ。放送部員に興味を引いて貰うとはうれしいね。王ちゃん、今度の試合でバリバリと取材しちゃってね」
「はい。よろこんで!」
大友が呼んだ最後の助っ人には、放送部の王大河がやって来た。彼女は彼やみほと同じく二年生でありながら高い文章力と編集力を活かして大洗学園や学園内の文化部を盛り上げているだけでなく。
戦車道連盟が運営するホームページのニュース編集にも関わっていたりする重要な人物だ。
そんな彼女の本業の事を考えてカメさんチームの通信手に決まったのである。
「そうだ。どうして勇彰會のみんなはこんな曇り空なのにサングラスなんか掛けてるの?本土ではそんなファッション流行ってるの?」
「え、えっとそれはその……いつもタンカスロンの試合をする時はこの格好でやるので。この方が落ち着くというかなんというか……せやろ?黒木の兄弟」
「角谷会長。兄貴の言う通りですわ。俺らはこの格好が性にあってるもんなんで……せやろ?お前ら」
『平形総裁と黒木の親父と同じく』
杏は何気ない一言を平形とその組員達に対して放つと、図星を突かれたとばかりに彼と黒木の顔が少し引きつる。
二人の呼び掛けに対して他の組員達も同じような調子で声を揃えて応える。
その調子の原因を解き明かすかのように、ゴモヨとパゾ美が「身だしなみ点検をやりますよ」と言いながら。硬直して額から少し汗を流す平形と黒木のサングラスを取り外す。
サングラスが外れて分かった二人の素顔は、高校二年生でありながら中学生と間違えられても仕方ないくらい幼い顔立ちであり。
どこか気まずそうにしている様子と表情が相まったせいか。一気に戦車道履修者の乙女達の視線がこの二人に注がれる。
「いやーんかわいい♪本当に二人とも本当に高校二年生なの?平形君と黒木君も身長が私とあまり変わんないけど、顔立ちがかわいいから全然ありかも」
「沙織さんの言う通りですね。二人揃ってサングラスを付けていた理由はこうなるのを分かっていたからですか?何も隠す必要がないのに。おませさんなところがかわいいですね」
「全く五十鈴さんの言う通りだ。どこかの誰かさんみたいでちょっと強がりなところがあるな」
「高校二年生にもなってかわいいとは……」
「ホンマに調子狂いそうですわ。兄貴……」
そして、以前にもあったやり取りが再び戦車倉庫の前で始まってしまった。沙織の一言を皮切りに、華と麻子も同じような感想を口にする。麻子はそう言いながら大友の顔をチラッと見る。
沙織のこの一言が二人には、かなり重い一撃だったのだろう。完全にヘコんでいた。
そんな二人に助け舟を出すかのように、離れて様子を伺っていた大友が携帯を取り出して一本の動画を沙織に見せる。
「二人ともこんな感じの顔だけど、やる時はやるんだよなぁ」
「えっ何々?やる時はやる……って。ええっ?!」
『おう。お前らぁ!!こんままケバブハイスクールをいわすぞ。ドッカンドッカン撃ち込めや!!』
『兄貴の命令や。動けるもんは俺に続けや!!』
彼が彼女に見せた動画に映っていたのは、今の二人のイメージとは一八十度異なったもので。タンカスロンの試合の時を映したものだろう。平形が38t軽戦車から身を乗り出しながら拡声器を使って十数輌の戦車に対して指示を出しており。
その数十メートル前では、黒木がAMC34軽戦車から同じように身を乗り出して木刀を片手に周りの戦車を引き連れて相手の戦車にとどめを刺そうとしている。
服装も今のように学校指定の制服ではなく。江城連合会の他の組員達と同じように特攻服を身に纏っていた。
「ギャップがすごいですね。このお二人はパンツァー・ハイといったところでしょうか。ってすみません」
「あんた秋山さんって言うんか?そんな気にせんでええよ。パンツァー ・ハイか。まぁ、俺らに丁度いい言葉やわ。ていうか大友の兄貴。去年俺と黒木の兄弟がケバブハイスクールとやり合った時の動画ですやんこれ」
「ああ。一応他の奴の戦い方を観て自分に使えそうな戦い方はないか見極める為にこうして保存してるんだよ。さすが江城連合会ナンバースリーの武闘派組織の総裁とその舎弟頭だな」
「大友の兄貴。おおきにやで。おかげさんで調子を取り戻すことが出来たわ」
「それは良かった。この辺りで立ち話は止めて早速練習を始めようぜ。みほ姉貴、今日もよろしくお願いします」
「そうだね。では、皆さん。今日は雪原での戦闘を想定して。迎撃や隠蔽を主眼においた訓練を始めましょう。本日もよろしくお願いします」
『よろしくお願いします!!』
こうして新しい仲間達とのやり取りを終えて今日も訓練が始まるのであった。大友と同じくタンカスロン界隈から戦車道の世界に足を踏み入れた平形と黒木達であったものの。
戦車乗りとしての経験が豊富だった彼ら二人をはじめとする勇彰會の面々は、すぐに他のチームメンバーと打ち解けることが出来たのだった。
また、新たに大友組の舎弟頭である村川や舎弟頭補佐の山本と我妻に関してはあんこうチームの華、優花里、麻子と同じ役割を持つ者同士ということもあってか。この日の内に他のチームメンバーはもちろん。特に彼女達三人と距離が縮まりつつあった。
西住流は、日本国の戦車道における最古の流派にして日本の戦車道には必要不可欠な存在だ。
さて、そんな流派の師範かつ病床に臥す現家元に代わって家元代行を務める西住しほは、自身の娘であるみほが戦車道を続けていた事に対する不満をまほに対して語りかけていた。
「まほ。あなたはみほが戦車道を続けていた事は知ってたの?」
「……はい」
「西住の名を背負いながら勝手なことばかりして……これ以上生き恥を晒すことは許さないわ。『撃てば必中、守りは固く。進む姿は乱れはなし。鉄の掟、鋼の心』……それが西住流。まほ」
「私はお母様と同じく。西住流そのものです……っ!でも、みほは」
「もういいわ。準決勝は私も見に行く……あの子に勘当を言い渡すためにね。それと、今もみほの傍にいる大友誠也君だったかしら?彼の強がりもいつまで続くことやら」
しほが静かな怒りの次に語ったのは、西住流の六つの信条であった。六つの信条を語った後にまほの名を静かに呼ぶと、彼女は内心で母の考えに疑念を抱きながらも賛同の言葉を口にする。
その直後しほはその場から立ち上がり。彼女自身がみほに対する怒りや不満が頂点に達している証拠ともいえる一言と大友に対して思っていることを言い放つと同時に部屋から去って行った。
この日の晩、大友はみほと共に対プラウダ戦の作戦を打ち合わせた後に彼女の家でくつろいでいた。学園艦が最北端に近づきつつあるためか。
もう五月の下旬といった時期であるにも関わらず。二人は部屋の窓から雪が積もりそうな勢いで降り注いでいる光景をずっと眺めていた。
「そろそろ夏なのにこの辺りは真冬並みに寒いね。去年、継続高校と練習試合をした場所が雪だらけだったのを思い出すなぁ」
「そうなんですか。今思えば、今日はもっと着込んでこれば良かったですよ。帰りに使う車もエンジンを十分温めた後に暖房を効かせまくらないと」
「その必要はないよ」
「あれ?何で部屋の照明を消すんですか……って。ええっ?!」
降り続ける雪を眺めながら大友が彼女の話を聞きながら自身の帰りのことを心配していると、突然みほは含み笑いをしつつそう言いながら机の上に置いてあった照明リモコンで部屋の明かりを消し。
一緒にベッドに座っていた彼を押し倒してそのまま抱きつく。それに対して大友は、いつも以上にスキンシップが激しい彼女の調子に動揺を隠せなかった。
「どうせ明日私たちは二時間目からスタートだし。今日は久しぶりに朝まで一緒に居てくれないかな?こういう寒い日は二人で身体を寄せ合って温め合うのが一番なんだよ」
「泊まって欲しいということですか?それなら車のトランクに毛布と枕を積んでるんで。取りに行ってもいいすか?」
「待って。一つ聞くけど。誠也君って私の舎弟だからお願い事を聞いてくれたりするかな?」
「お願い事ですか。何ですか?」
「お願い事はね……今日も二人で一緒のベッドに入って欲しいの!」
「まじすか?俺なんかで良かったらその……どうぞ」
「ふふっ。ありがとう。じゃあ、もう一つのお願い事を聞いてくれるかな?」
「はい。何ですか?」
一緒の布団に入って欲しいという頼みに大友は少し戸惑うものの、大事な彼女の為を想ってみほの頼みごとを承諾するが。
彼女はこれ以外にも頼み事があったのだろう。彼に再び頼み事をしようとするが。
「………すぅ」
「みほ姉貴……っあれ?寝てる」
寝ぼけるあまりこのようなスキンシップに及んだのだろう。以前のように大友を抱き枕にする形で眠りついてしまったのだった。
「……今までのみほ姉貴の気持ちに気付かなくてすみません。プラウダ戦いや、決勝が終わったらみほ姉貴に告白しよう。俺はみほ姉貴のことが大好きです」
ここで今まで鈍感だった自分が愚かに感じたのか。この晩、みほに対する感情を友達以上恋人未満から恋愛対象へと切り替えたのだった。
それでもウブでシャイな彼は抱きしめ返すことなく。そのまま眠りに就くのだった。
ご覧いただきありがとうございました!
次回は第十九話の投稿を予定しています。
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江城連合会直系・勇彰會
総裁・平形勇武
舎弟頭・黒木彰(黒木組組長)
舎弟頭補佐・長瀬充(長瀬会会長)
大洗学園に転校してきた他の組員達は、傘下の黒木組と長瀬会の組員達である。