西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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ご覧いただきありがとうございます!今回も捏造設定がもりもりの他、小梅ちゃんの過去が完全オリジナルです。
引き続きお楽しみください!


第二十一話 下克上達成、黒森峰戦です! 前編

大洗学園戦車道チーム一行は様々な強豪校との試合を勝ち進み、ついに決勝戦の地へとたどり着いた。試合前に行われる定期点検を終え、試合が始まるまで間。

大友とみほは、相手戦車のスペックが記されたクリップボードを片手に作戦を打ち合わせていた。今までは同数で試合に出ていたものの。今回は相手の方が四輌ほど多い二十輌対十六輌での勝負になる。

それでもなお、この二人が練った秘策によって最後まで奇想天外な戦いが繰り広げられようとしていた。

 

「さて、ついに来ちゃいましたね。手の抜かりがないこの編成……まさに鉄壁ですね。みほ姉貴」

 

「堅固な装甲を持つドイツ戦車を中心にした編成に比べてこっちは汎用性が高い戦車が多かったりするから。持久戦に持ち込めば何とかできるかも」

 

「それだけじゃありませんよ。みほ姉貴による奇想天外な作戦がありますからね」

 

「ふふっ。じゃあ、誠也君というかっこかわいい副隊長さんが本番でその作戦に応用を加えてくれるということも忘れているよ!」

 

「いや、そんな。でも俺は貴女の舎弟として役に立てて嬉しく思います。今日は限界突破する勢いで頑張りましょう!」

 

「ふふっ。ごきげんよう。みほさん、完敗致しましたわ。でも清々しく感じますわ」

 

みほと大友が励まし合いながら両手を繋いでいると、聞き覚えのある声が二人の耳に入る。

その方向に目を向けると、どこか納得したような表情でダージリンがみほにそう語りかける。

 

「ふぇっ?!ダージリンさんにオレンジペコさん……」

 

「こんにちは。いつの間に立っていたんですか?」

 

「誠也君とみほさんが手を繋いだ時からよ」

 

「みほさんに誠也さん。別に隠さなくて良いと思いますよ。男女の友情ほど尊いものはありませんから。あら、言い忘れていました。決勝進出おめでとうございます」

 

「「ご丁寧にありがとうございます」」

 

「貴女方はあれから毎試合、予想を覆す戦い方をして来た。今度はどんな戦い方をするのか楽しみにしているわ。それにそこのかっこかわいい舎弟さんにも期待しているわ」

 

「ありがとうございます。一生懸命頑張らせていただきます」

 

「ええ。ダージリンさんや皆さんの期待に応えれるよう頑張ります!」

 

「みほ、誠也!またエキサイティングでクレイジーな戦いを期待しているからねっ!ファイト、グッドラック!」

 

「「ありがとうございますっ!!」」

 

ダージリンとオレンジペコが観客席へ戻ろうとしたとき、ケイがアリサとナオミを連れてジープで乗り付けて来た。

二人の前で停車すると、ケイが勢いよく車から飛び降りるなりそう言いながら爽やかな表情で右手の親指を立てる。

これだけを言いに来たのだろう。大友とみほに手を振りながら再び車でその場を去っていくのであった。

続けるようにしてカチューシャとノンナが二人のもとへやって来た。

 

「ミホーシャ、セイヤスキー。このカチューシャ様とノンナも見に来たわよ。黒森峰なんかバグラチオン並みにボコボコにしちゃってね!」

 

「は、はい。頑張ります!」

 

「はい。任せてください!」

 

「до свидания Пусть на вечные времена будете счастливые(さようなら。二人が末永く幸せでありますように)」

 

「さようなら。ノンナさん」

 

その次にアンチョビが弟の拓実や佐谷の三人を伴って二人の前までやって来た。彼女はまだ寝ぼけていたのだろう。乗って来た車から降りると同じ調子でそのままみほに軽く抱きつく。

 

「むにゃあ……みほ。今日は頑張るんだぞ」

 

「ア、アンチョビさん。大丈夫ですか?」

 

「あっすみません。姉ちゃん。みほさんが心配しているぞ」

 

「大友ちゃん。ちょっとこっち来てくれや」

 

「はい、何ですか?」

 

みほと拓実が彼女の心配をしている傍ら。佐谷は大友の肩を抱き寄せると同時にそのまま三人から離れていった。それから彼の耳元で周りに聞こえないように小さく語りかけた。

 

「なぁ、自分。あの子には姉貴と言うよりも一人の女として惚れてるんやろ?」

 

「……ええ。昨日の夜にその考えになりました。正直俺はみほ姉貴を愛しています」

 

「そうか。それでええ。口でも素直に言うてるし、今お前が握ったその拳もそう言うてる。でも男が一旦拳を握ったらその筋を通さなあかん。だからずっと傍におるべきなんやで大友ちゃん。最後になるけど今日の試合頑張れや」

 

大友は彼の唐突な一言にすぐ答えが出なかったものの。自身のみほに対する想いを佐谷に対して素直に告げると、彼は納得した表情で頷きながら大友に励ましの言葉を掛ける。

 

「ありがとうございます。必ずみほ姉貴を幸せにしてみます」

 

「お前のその覚悟と今日の試合見届けさせてもらうで。ほな。チヨ姐さんそろそろ目覚ましてくれや」

 

「ふぁぁ……誠也君arrivederci.今日は頑張れ~」

 

「はい。頑張らせてもらいます!」

 

佐谷は彼なりの覚悟に感心したのだろう。満足な笑みを浮かべつつそう言いながらまだ寝ぼけているアンチョビを連れてその場を後にした。

 

「二人とも不思議ね。戦った相手みんなと仲良くなったりするんだから」

 

「それは、皆さんが素敵な人達だからです」

 

「俺もみほ姉貴と同じです。ここまで来てみんなと出会えて良かった」

 

「あなた達にイギリスのことわざを二つ送るわ。四本足の馬でさえ躓く……強さも勝利も永遠じゃないわ。それに愛は、育てなくてはならない花のようなものだ。これからの貴方達はそうあるべきなのよ」

 

「はい。覚えておきます!」

 

「愛が育てるべき花か……」

 

ダージリンは二人に対してイギリスのことわざを送った。彼女が二人に対して送ったことわざは今の二人の関係の進展性を予見したかのようなものだった。

こうした盟友たちとのやり取りを経た後に二人は試合に臨むのであった。

 

 

 

 

黒森峰女学園は、第二次世界大戦期の戦車技術の進歩を彩ってきたといっても過言ではない重厚な装甲と精度の高い攻撃性を重視したドイツ戦車を使用していることもあってか人数の多さも大洗学園と比べてかなり多かった。

それだけではない。黒森峰女学園戦車道チームのメンバーの半数は西住流の門下生であることから。西住流の『撃てば必中、守りは固く、進む姿は乱れ無し』の信条を基にした戦術を得意とする。

だが、それに対してみほと大友は下克上を挑むのであった。

 

「両チーム。隊長及び副隊長は前へ」

 

蝶野の指示と共に大洗側からみほと大友が前に出る。黒森峰側からは隊長のまほとエリカが前に出た。まほは冷静沈着な表情を崩さずにいたが。

エリカに至ってはみほと大友の前に立った瞬間。複雑そうな表情を浮かべた後に不敵な笑みを交えつつどこか納得した表情でこう語りかけた。

 

「久しぶりね。二人とも……まぁ、あんた達ならここまで来ると思っていたわ。良かったわねみほ。あなたには誠也という名の最強の武器があったのだから。まぁ、勝利を手にするのはあたし達なんだから覚悟なさい……」

 

「逸見さん。それなら俺達にだってみほ姉貴やみんなと共に強豪校に対する下克上という目標があるんだ。そう簡単に勝利は握らせねえよ」

 

「さすがね。前も言ったけど私はあんたとこの子を超えるために戦車道を今日まで続けて来たの。だから私もそれだけは譲れないわ……」

 

大友とエリカは互いに違った思いであれど勝利という名の共通した目標があったのだ。この二人はそれを静かに語り合う。

 

「勝利に対する思いは二人とも同じね。本日の審判長、蝶野亜美です。よろしくお願いします。両校挨拶っ!!」

 

「………(みほ、全力で来い)」

 

「(お姉ちゃん全力で行かせてもらうわ)……よろしくお願いします」

 

『『よろしくお願いします』』

 

「では、試合開始地点に移動。お互いの健闘を祈るわ」

 

まほとみほは、口に出さないものの心の中で通じ合っているかのようだった。みほが蝶野の指示を受けてそれぞれの試合開始地点へ向かおうとすると、再びエリカがみほと大友を呼び止める。

 

「みほ、誠也。もう後戻りはできないわね。今更だけど……あんた達とはもう一度一緒にやりたかった。だけど……今日限りあんた達とはもう仲間なんかじゃない。最後に言わせてもらうわ。私はみほ、誠也。あんた達というはねっ返りを西住流という王道のもとで叩き潰させてもらうわっ!!」

 

「だったら能書きは垂れねえで実際にやり合おうじゃねえか。逸見さん。俺はよ今のあんたの一言で久々に熱が入っちまったんでな」

 

「………精々頑張りなさい」

 

エリカは歯に衣着せぬ言葉で二人に対してそう言いつつも表には出さない本当の感情が溢れそうで溢れないでいた。

大友はそれに気付いたのだろう。若干戸惑ったもののこの挑発的ともとれる一言に対して敢えて乗る。彼女も彼の真意に気づいたのか、静かにそう言うとどこか寂しそうに二人のもとを去って行った。

 

「………(ごめんねエリカさん。一人で抱え込ませるようなことになっちゃって)」

 

「みほ姉貴」

 

「せ、誠也君っ?!」

 

そんなエリカの後姿を見たみほは、転校決定直後以来の罪悪感を思い出したのだろう。彼女は少し俯いてしまうのだが。

大友がみほに声を掛けたと同時に彼女の手を引いてそのまま優しく抱きしめた後にみほの両手を握る。彼女は人目の多い場所で唐突にそうした彼の行動に驚く。

 

「みほ姉貴、昨日の晩に俺と一緒に約束したこと覚えてます?その約束の通り今日の試合を通して必ずあの子を元に戻すと同時に下克上を達成しましょう。ただ勝つだけじゃない。守りたいものを守りつつ新しい道を切り拓くというみほ姉貴の戦車道という目標を共に成し遂げましょう!」

 

「誠也君……ありがとう。そうだね。一緒に頑張ろう!」

 

「待ってください!二人とも」

 

「あっ小梅ちゃんに他の皆も……元気そうで良かった!」

 

その場を去ろうとした二人を黒森峰女学園のみほ派の一人である赤星小梅が呼び止めた。

彼女は二人を視界に入れた瞬間に嬉しさが圧倒的に勝ったのだろう。つぶらな瞳から涙が少しばかり出ていた。

小梅の後をついてきた三名ほどの女子生徒達もかなり嬉しそうな表情でみほを見つめている。対するみほも素直に再会の嬉しさに入り浸っていた。

 

「みほさん……あの時はありがとう。あの後、みほさんが居なくなってずっと気になっていたんです。私達が迷惑をかけちゃったから。でも、あなたが戦車道を辞めなくてよかった!」

 

「小梅ちゃん。私は辞めないよ。守りたいものがそこにあるから」

 

「良かった……本当に良かった」

 

小梅は、一年前の大会中に起きた事故でみほに助けられたことに対する感謝の言葉を伝えると同時に彼女が戦車道に復帰したことを喜んでいた。

みほも元の可憐な花のような笑顔を取り戻した彼女を見て改めて安心と喜びに浸るのである。

 

「誠也君も”あの事件”の時はみほさんや私達を守ってくれてありがとう。一つ聞きたいことがあるんだけど。あの頃精神的な原因で一時的に目が見えなくなっていた私の傍に居てくれた男の子の名前を知らないかな?関西弁でとても優しい声をした子だったんだけど……」

 

「そう言ってくれると嬉しいよ。悪いな小梅ちゃん。その男から名前だけは言わないでくれと頼まれているんだ。でもヒントを言うとすれば『他人に絶対迷惑をかけることなく誰よりも自由に生きる』を座右の銘にした男だったよ。その内巡り会えるといいな」

 

「そうなんだ……でも。いつか巡り会えたらいいな」

 

「俺もそう思うよ」

 

小梅が言う”あの事件”とは、第六十二回戦車道大会決勝戦における転落事故の後の黒森峰女学園戦車道チーム内で起きた内乱の事である。

責任を取るようにして副隊長を辞めたみほの後継者を巡るだけでなく隊長の乗っ取りを画策した事件だ。

『堂島一派』というチーム内の派閥の長だった『堂島宗子』が自身の腹心の部下の一人である『渋澤啓都』を副隊長に添え、既に隊長であったまほを引きずり降ろして自身が隊長の座に就こうとしたのだった。

彼女らのやり方は尋常では無く。小梅をはじめとするみほ派の人間たちを標的に次々と精神的に追い詰めたりして地位を確立させようとしたのだが。

因果応報と言うべきだろう。堂島は、みほ派救援の大義名分を持った大友やある少年たちによって阻まれたうえチーム内での権威が失墜しただけでなく。今年に入ってから主力である一軍に名を連ねることなく鬱屈とした学園生活を送ることになったのであった。

 

「みんなありがとう。今日はお互い頑張ろうね!」

 

「はい!みほさん。誠也君。今日はお互いの全力をぶつけ合いましょう!」

 

「ああ。受けて立つぜ小梅ちゃん!」

 

「みぽりん、誠也君!」

 

「さぁ、二人とも。そろそろ行きましょう!」

 

「沙織ちゃん、華さん。今行くよ!みほ姉貴。行きましょう。俺達が居るべき場所へ」

 

「そうだね。行こうか」

 

みほと大友は、小梅と握手を交わした後。沙織と華の呼びかけに応じてチームメンバーが待つ場所……今の二人にとって居なくてはならない場所へ二人で手を繋いで向かって行くのであった。

 

 

 

 

試合が開始された後に二つに分けられたチームがみほの指示を受けて行動を開始していた。

一つは大洗学園戦車道チームの合計十六輌ある内、杏達カメさんチームのヘッツァーに率いられたキツネさんチームやマーモットさんチーム、ワニさんチームの三輌(この四輌をカメさん選抜隊とする)が別行動を取っていた。

もう一つが残りの十二輌がまとまった総本隊であり。副隊長の大友による指揮で隊長車とフラッグ車の両方を務めるあんこうチームを守りつつ陣地を構築する予定である大きな丘へと向かっていたのだ。

 

「いやぁ~黒森峰は森の中からショートカットして西住ちゃん達を袋叩きにしようとしたみたいだけどあの子達に全部躱されたみたいだよ。それにそろそろあの子達が来るかもね」

 

「せやけど。相変わらず敵さんは火力と分厚い装甲に物言わしてうちらのこと潰そうとしてるみたいですわ。俺らは取りあえずこうして茂みに隠れて相手の最後尾に嫌がらせするっていう役割がありますからね」

 

「それから撃った後は逃げたふりをして油断しきった敵にもう一回嫌がらせをするという算段ですが。その後は角谷会長の指揮下になりますので。会長をサポートしますから任せてください」

 

「戦車道男子のカワイ子ちゃんにそう言ってもらえるとなんか照れちゃうな。おっとそう言っている間に西住ちゃんと君たちの親分さんたちが来たよ!」

 

杏は黒木や安倍の二人と会話しつつ三輌の戦車で茂みの中に隠れていた。なお、カメさんチームが以前改修したLT-38をさらに高火力なヘッツァーへと改修したのはこの日の為と後々の大洗学園の戦車道チームの支えにする為であった。

その決断が今、正しいということがこれから証明されようとしていた。手始めにみほ達の後を追っていた十八輌の中で最後尾を走行していた三輌対してカメさんチームやキツネさんチーム、マーモットさんチームの三輌が砲撃を浴びせて履帯を切断する。

それに続けて杏達の挑発に乗った他の二輌のパンターの内一輌はキツネさんチームとマーモットさんチームに履帯を切断されたうえにカメさんチームによって撃破された。

 

「会長、敵さんはめちゃくちゃ怒ってますわ。この辺にして出直しませんか?」

 

「黒木の叔父貴の言う通りです。この際ですからクロ公の偵察を狩るのも良いと思います」

 

「そうだねぇ。という訳で一旦撤収!!」

 

仕返しとばかりに榴弾を茂みの方に撃ち込んでくる一輌のヤークトパンターを尻目に三輌は次の行動へと移るべくその場を走り去って行くのだった。

 

「あのおチビさん達、後で覚えていなさいよ!」

 

「エミちゃん落ち着いて。取り敢えず丘の敵を撃破しないと。冷静に」

 

小梅は茂みの方に隠れていた三輌に対して怒鳴り散らしている級友、小島エミを落ち着かせようと優しく声を掛けている。

履帯を切断または撃破されなかった残りの十三輌は、丘に榴弾を撃ち込んだことによって発生した土煙に隠れるようにして丘の頂上へと向かっていた。

フラッグ車のティーガーⅠに搭乗するまほが煙が晴れた後に視認したのは、大友が率いるイタチさんチームのE-25をはじめとする計八輌の戦車(E-25・Strv m/42・ポルシェティーガー・三式中戦車チヌ改・KV-122・MK.Ⅳ・B1bis・シュコダT-40)だった。

 

「敵はそこそこ火力が高い戦車にここの防衛を任せて先程の煙に乗じてフラッグ車をはじめとする四輌が逃げたみたいだ。防御を固めつつ前進せよ。それに敵のシュコダT-40は、88mm砲ではなく。75mm自動装填砲のようだ。注意が必要な存在であることを留意せよ。ヤークトティーガーは前へ」

 

まほは、他のメンバーに指示を出しつつ周囲の警戒を強めるのであった。無論、彼女は先程取り逃がした三輌の戦車に対して周りより警戒を強めるのだった。

設計ベースとなったティーガーⅡの堅固な装甲を併せ持つヤークトティーガーが盾がわりにと言わんばかりに威圧しながら姿を現した。

これは大洗学園、黒森峰女学園の双方が所有する戦車の中で一番か二番目くらいに攻撃力が高い戦車だ。

 

「よし、撃破することが可能な戦車は今のうちに撃破するぞ。総員に通達、『もっとゆっくりしてけや作戦』です!」

 

『了解っ!!』

 

大友は、みほが今まで付けて来た作戦名を模倣した作戦の開始を無線で合図する。

他の戦車に搭乗するメンバーは彼の指示を受けたと同時に隊列を組んで前進してきている戦車の履帯に狙いを定めてそのまま視認している戦車の履帯を切断する。

またはそのまま撃破する。ヤークトティーガーの搭乗員達は装甲に物を言わせてそのまま突っ込もうとしたのだろう。

履帯を切断されるか撃破されている仲間の存在に気付いた時には、ヤークトティーガーの両方の履帯は全て切断されていしまい。

両方の履帯が切断された場所はかなりの勾配であった為に車体はゆっくりと坂道を下るという形になり。

徐々に側面を晒していく。間もなくして右側面を晒しきったヤークトティーガーは対面していた大洗学園側の計八輌から一斉射撃を受けた後にそのまま横転し、戦闘不能になってしまったのだ。

 

「みんなよくやった!そのまま防御を固めるぞっ!!」

 

『すみません!私達ウサギさんチームはエンジントラブルによって走行不能の可能性があります。他の四輌はフラッグ車を守りつつ先に行ってください!!』

 

大友が次の指示を出そうとした瞬間、無線機から梓の涙声が聞こえて来た。さっきまでノリノリだった八輌の戦車の搭乗員達は異常事態と即座に理解した。

 

『いいえ。仲間を置いていくなんて出来ません。あきらめないで。最後まで希望を持ってください!四輌ではウサギさんチームの皆さんを引っ張って行くのは難しそうです。誰か援護に来れそうな方は居ませんか?』

 

「なぁ。桔平、行ってやれ。俺がみほ姉貴のそばに居るみたいにお前が梓ちゃん達のもとへ行ってやれ」

 

「ですが。俺が抜けたら……」

 

「へへっ。心配すんな。お前の一輌が抜けてもお銀姐さんやナカジマさん、猫田さん、勇武、英雄、園先輩そして俺が上手くやるからよ。下手に今迷ってるうちにクロ公に撃破されたらどうすんだよ。それにお前は大友組の若頭だ。俺が居なくても長男のお前がしっかりやって行かなきゃ意味ねえだろ。だから行ってやれ。さぁ、早く!」

 

「親分……この恩は一生忘れません!梓ちゃん、今行くから辛抱してくれっ!!」

 

『ありがとう……水野君っ!』

 

水野は、梓に対して好意を持っていることもあってか。その梓達ウサギさんチームの危機という場面と防衛線維持の二択を迫られていた。

だが、幼少期からタンカスロンそしてこの戦車道に至るまで共に過ごしてきた大友のあっさりとした言葉によって彼は自分がすべき選択を選び。梓のもとへと走り出すのであった。

 

「………(俺が乗っているこいつなら梓ちゃん達のM3Leeを引っ張ってやれんこともない。だが、もう少し力があればどうにか)」

 

「水野君。なんも一人で抱えることはないで。俺らもあの子らのもとへ向かおうとしてたところや。一緒に行こうや」

 

「水野のカシラ。カシラ一人で向かわせるわけには行かないぜ。大友連合会若頭補佐の安倍雄飛も忘れないでくれよ」

 

「黒木の叔父貴に雄飛まで……恩に着るぜ二人ともっ!!」

 

梓達が立ち往生している川まであと少しというところで黒木のキツネさんチームと安倍のマーモットさんチームが彼に合流してきた。

水野は、二人に感謝の言葉を掛けた後も最高速度でT-40を走らせている内に川の真ん中で停止している五輌に合流したのであった。

 

「遅くなってすまん。さぁ、俺の戦車とM3を連結しようか」

 

「ありがとう……本当にありがとう……っ!!」

 

水野と彼が率いるヤマネコさんの面々がウサギさんチームやみほと協力しながら連結するためのワイヤーを固定し始めるのと同時に不穏な影が現れた。

 

「みほさん……あの時よりはマシだ。恨まないでくださ……なんだこいつっ?!」

 

「お前、感動の場面を台無しにすんなや!それとついにやって来たわに!戦車道の公式試合に!!(なんか勢い余って余計な一言付け足してしもうたわこれ……)」

 

川のほとりの茂みで一輌のⅢ号戦車がⅣ号戦車に照準を合わせよとしていた。このⅢ号戦車の車長もみほのかつての友だったのだろう。

車長は申し訳なさそうにそう言いながら攻撃の指示を出そうとするが、川の流れに乗ってやって来たワニの偽装用風船を装備した特三式内火艇が現れるなりⅢ号戦車をほぼゼロ距離で撃破してそのまま近くの林の中に姿を消したのだった。

なお、この特三式内火艇に搭乗するのは勇彰會舎弟頭補佐の長瀬充をはじめとするワニさんチームの一行だった。

 

「さぁ、行くぜ。ウサギさんチームのみんなっ!健太、アクセルペダルを最高まで踏め!」

 

「了解!気合い入れていきます!!」

 

ヤマネコさんチームのT-40をはじめとする計七輌の戦車がウサギさんチームのM3Leeに助力を加えるためにけん引していると、元の力強いエンジン音が響き渡った後に再び健気に走り出したのであった。

それからまたしばらく走っている内に一本の古びた石製の橋の前で大友達とも合流した。

 

「みほ姉貴、ワニさんチームを除いて全員揃いましたね。こちらの被害はゼロ。それに敵の状況は残存数十六輌と同数に持ち込むことが出来ました。現在、フラッグ車と他三輌の戦車を除くほとんどの履帯を切断したか撃破したため。当分敵さんは我々に追いつけない感じになります」

 

「そうなんだ。みんなご苦労様っ!!この調子で最後まで気を引き締めて頑張りましょう!」

 

『おーっ!!』

 

決勝戦という土壇場である中でも、和気藹々とした空気が流れている大洗学園戦車道チームだった。

この時、ちょっとした気休めに敵側の偵察からも見つかりにくい場所に隠れて戦車の外に出ていた大洗学園戦車道チームの一行のうち。ウサギさんチームのリーダーかつ車長である梓は、堪えきれなかった涙を流して水野に抱きついていた。

 

「水野君…………私、怖かった。怖かったよ……うぅ」

 

「梓ちゃんやウサギさんチームの皆が無事で良かった。戦いはこれからだ。でも、今度はお互いを守り合いながら一緒に戦おう」

 

「うぅ……二人とも尊いよ」

 

対する彼は参ったとばかりに彼女の頭を撫でながらそう言っている。その光景を見ていた沙織はもらい泣きしてしまったのだろう。

彼女もまたそう言いながらハンカチを片手に涙を流している。

だが、しかし。緊迫した空気の中で流れているこの癒しの空気をもとの緊迫した空気が戻ろうとしていた。

 

『こちらワニさんチーム、みほさん。聞こえますか?』

 

「はい、聞こえます。どうかしましたか?」

 

『それがですね。けったいな奴が市街地の中にある団地の中をうろついてたんですわ……大戦末期にドイツ国防軍が試作した超重戦車・マウスです。こないバケモンと正面からかち合ったら一溜りもありませんわ』

 

「そ、そんな?!マウスなんて戦車が乗りそうなくらい大きい戦車だよみぽりん!」

 

「確かに乗りそう……あっ。そうだ!ありがとう沙織さん」

 

西住流の鉄の掟の全てを体現しているといっても過言ではない超重戦車マウス。だが、沙織の何気ない一言によってみほの頭脳に電撃が走ったのである。

 

「みほ姉貴、やることは俺達戦車道男子に任せてくださいっ!」

 

「………ええ。誠也君がそう言うなら」

 

こうして再び現れた脅威、超重戦車マウスというバケモノを討ち取るべく。

大友をはじめとする戦車道男子達は戦車道乙女たちに指一本触れさせてたまるかといわんばかりに奮起するのであった。

 

 

 




ありがとうございました!原作より早くヤークトティーガーのログアウトでした。次回は中編か後編に当たる第二十二話を投稿する予定です。
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