西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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ご覧いただきありがとうございます!二万UAを突破しました。改めて感謝申し上げます。今回から日常回が主なパートになります。
引き続きお楽しみください!


第二十六話 戦車道乙女と戦車道男子の日常です!

大洗学園の学園艦から退艦した戦車道履修者の面々は自分達が割り当てられた待機場所兼寮で寝泊まりすることとになり。待機場所の近くに実家がある大友組の一部のメンバーはその実家から通学することとなった。

なお、勇彰會の殆どの面々は寮の近くに江城連合会の本部があるため。そこで寝泊まりすることになったようだ。さて、この寮に残った戦車道男子達は大友連合会の会長。大友や彼の兄弟分である村川、山本、我妻と子分の水野、木村、安倍、秀人や慎司といった弟コンビ。勇彰會からは総裁の平形や舎弟頭の黒木の二人がこの待機場所で寝泊まりすることになった。

一時的な待機場とはいえ、食料や医療品が全校生徒に行き届きにくい状況となっているため。それら送り届けるための手伝いとして大友達戦車道男子が出張っていた。

そんな中、あんこうチームのみほや華、沙織、優花里、麻子は出張っている彼らの夕食を作りながら赤く燃える夕日を眺めていた。

 

「誠也君達、結構長いなぁ……昨日も帰って来てすぐに寝ちゃってたよね。ちゃんとご飯とか食べているのかな?」

 

「そうですね。武君が言うにはちゃんとご飯は食べているそうです。今日で他の授業を履修する人たちや私達の生活必需品が必要数揃うから当分心配は無いと言ってましたわ」

 

「こうやって私達女の子に楽をさせて自分達は他のみんなのために働くってホント良い子達だよね~。みんな好きになっちゃうかも」

 

「それに加えて食料や生活必需品が順番的に他の授業を履修している生徒の皆さんに優先されている中、予定よりも速く届けたりなるべく多く持って帰って来てくれていますよね」

 

「戦車道男子の子達には助けられてばかりだ。だが、ちゃんと睡眠が取れているかも気になるな」

 

「それなら昨日も私達が作っておいたおかずとかご飯を食べた後にすぐ寝ているよ。それで今日みたいに朝早くから戦車に乗って他のみんなに必要なものを届ける手伝いをしているみたい。でも、華さんが言うようにそれも今日までみたいだから今日はみんなと一緒にご飯を食べることが出来たらいいね」

 

みほがそう言った瞬間、校庭の方から戦車の履帯音が聞こえてくる。同じ寮で寝泊まりしている大友達が手伝いを終えて帰って来たのであった。

五人がそれを理解すると、一旦手を止めて校庭へと向かっていく。他のチームのメンバーも彼らの帰りを待っていたのだろう。気付けば同じように校庭に集まっていた。

 

「お疲れ様。みんな本当に助かったよ。疲れてるかも知れないから今からゆっくりしてね」

 

「出迎えありがとうございます皆さん。みほ姉貴、ただいま戻りました」

 

「おかえりなさい誠也君。今からこっちに来て晩ご飯にしない?まだ作っている最中だけど」

 

「あっ作ってくれているんですか。ありがとうございます。じゃあ今から一緒に作りましょう」

 

杏や他のメンバー達に出迎えられた大友が彼女達に頭を下げた次にみほを見つけると優しく微笑みながら彼女の前まで行く。

みほも同じように労いながら左手を持って張り巡らされたテントの近くにある二人用のミニテーブルを指差す。

大友は久しぶりに彼女の出来立ての料理を食べれることが嬉しいのだろう。幼気な笑みを浮かべて賛同する。

 

「という訳で今日は解散っ!みんなお疲れ!」

 

『お疲れ様ですっ!!』

 

大友が後ろにいた仲間達に解散を告げると彼らは膝に手を付けて頭を下げて気が合うメンバーのもとへ向かうまたは彼らに好意を持っているであろう他のチームメンバーが彼らのもとへ駆け寄る。

 

「水野君、よかったら私達ウサギさんチームと武部先輩の七人で晩ご飯にしない?あと、黒木先輩もよかったら……って優季や桂利奈、紗希、あや、あゆみの他に会長に囲まれている。武部先輩どうしましょう?」

 

「ふふっ。じゃあ、ここは澤さんと水野君の二人きりということで。黒木君やみんなは私がまとめるということで。二人で楽しんでね」

 

黒木が杏や残りのウサギさんチームのメンバーに取り囲まれて手を引っ張られたり積極的に誘われている傍ら。

沙織も彼女達に混ざろうとしたのだろう。彼女は梓と水野の手を持つと二人の手を繋ぎ合わせる。

 

「えっちょっと。さおりん先輩急すぎませんか?!梓ちゃん俺の手を持ってどこ行くの?」

 

「武部先輩の言う通りたまには私達二人きりでどうかな?」

 

「えっとまあ。そうだな。良かったらなんか手伝うよ」

 

梓は沙織がしたことに乗り気だったのか、周りのメンバーにバレないように照れくささが勝って戸惑う水野の手を引いてその場から離れる。

彼も素直になって彼女の後ろをついて行くのだった。

 

「はーい。みんなお父さんは疲れているかも知れないから一旦離れてください」

 

『はーい』

 

「……」

 

「沙織ちゃん。俺がお父さんってどういうこと?!あっでも。勇彰會内黒木組組長やから違和感ないな」

 

沙織の呼びかけに紗希以外のメンバーが離れると同時に黒木が沙織にツッコミを入れるが。

彼も戦車道チームの傘下組織の親分という身分のため。それほど気にならなかった。

 

「黒木ちゃんって本当に丸山ちゃんに懐かれてるよね。ねえ。丸山ちゃん。私にそこ代わってくれない?高級干し芋あげるからさ」

 

「……結構です。先輩のそばがいいです」

 

「紗希ちゃんったら大胆ね。じゃあ私は先輩の右腕」

 

「じゃあ私はあやちゃんとお腹を半分こ!」

 

「あたしは先輩の左腕かな?会長と武部先輩はどうします?」

 

「そうだね。私が右手で武部ちゃんは左手よろしく〜という訳で厨房へパンツァー ・フォー……なんてね」

 

「結局この状態に戻るんかいな……まぁ、ええけど」

 

紗希が黒木の背中にしがみ付き続けている様子を見た杏が彼女を持ち込んでいた干し芋で釣ろうとするが。紗希はそれを断る。

優季が紗希につられたように再び黒木の右腕を軽く抱きしめ始めると桂利奈やあや、あゆみそして杏や沙織が便乗して再び彼を取り囲んで寮の中へと入って行くのだった。

対する黒木は仕方ないな。という感じの表情でそのまま彼女たちと共に歩み始めた。

 

「黒木の兄弟……大変そうやな」

 

「ははぁ。そうですね。英雄兄い。黒木の叔父貴が連れて行かれたし。俺たちはどうしようかな」

 

「そうだな。平形本部長や弟コンビを誘ってコ◯スにでも行くか?と言いたかったけど俺たちにも迎えが来たみたいだな。よお忍ちゃん」

 

「木村君、良かったら慎司君や平形先輩と一緒に来ない?ってさっきまでそこに居た慎司君や秀人君が居ない」

 

平形や安倍、木村が寮の中に連れ込まれる黒木を眺めながら五式軽戦車・ケホにもたれかかっていると、アヒルさんチームの忍や典子、あけびの他にカバさんチームリーダーのカエサルもやって来た。

 

「そう言えば慎司がレオポンさんチームの皆さんがどうとか言ってたよなあ。本部長も行ってしまったのか?あれ。妙子ちゃんは」

 

「本当だ。あの子ったら慎司君となんらかの糸で繋がっているのかしら?多分あの子の元へ向かってそうだわ」

「糸……確かにありえそうだな」

 

弟コンビ達が気になった忍と木村がそう言いながらなんとなく林の方を見つめるのだった。

この時、慎司と秀人は小走りでレオポンさんチームの元へ向かっていた。弟コンビの内、慎司はチームのリーダーであるナカジマに憧れを抱いており。

彼は周囲にいる女性の中で姉の妙子を除いて戦車の整備などで彼女とよく一緒になることが多く。

また、第六十三回戦車道大会の間は一緒にポルシェティーガーを整備していたことや共通の自動車という趣味があったことから意気投合し、放課後も遅くまで二人で一緒に学校に居たということもあったからだ。

 

「慎司、俺は陰から見守っておくからこっからは一人で行ってこい。がんばれ」

 

「お、おう。行ってくるよ兄貴」

 

秀人は慎司を軽く励ますと、木陰に身を潜めるのであった。慎司は軽くうなずくとそのままポルシェティーガーの上に座って夕陽を眺めているレオポンさんチームのもとへと向かう。

 

「皆さんお疲れ様です。良かったらその……俺も混ぜてくれませんか?」

 

「いいよ。慎司君、私とホシノの間においで」

 

『ゆっくりしていてね!』

 

慎司は四人に優しくそう言われると照れ臭くなりそうな気を押し殺しながらナカジマとホシノの間に座るのだが。この二人は彼が座った途端、密着寸前まで距離を詰める。

 

「き、今日は夕日が綺麗ですね。皆さんはいつもここで晩ご飯にしているのですか?」

 

「そうだよ。今日は近くのコンビニまで行ってお弁当とかお菓子、ジュースを買って来ちゃった。慎司君も同じようなものを買ってきた感じ?」

 

「はい。皆さんのお話を聞いてみたくて俺も似たようなものを買って来ました」

 

慎司が帰ってくる途中でコンビニで買ってきた食べ物などを袋から取り出すと同時にナカジマの口が開いた。

 

「そっか。何から話そうかな……慎司君は好きな子とか出来たことないの?」

 

「それってどう言う意味ですか?」

 

「ははっ。恋愛的な意味でだよ」

 

「っ?!実は俺……まだ一回も無いんです。この前のローズヒップって子も友達以上恋人未満って感じの仲です。それに今まで趣味に生きてきた戦車バカなんで」

 

ナカジマの問い掛けに対して慎司は目をキョロキョロさせると少し顔を赤くさせながら答える。

彼の表情が可愛らしく感じたホシノは彼の頭に自身の頬を密着させると耳元で語りかけた。

 

「へえ。そうなんだ。私からじゃあもう一つ聞くけど……今ここにいる自動車部四人が君の事をそう言う意味で好きだとしたら誰を選ぶ?」

 

「そ、そ、それは……俺はレオポンさんチームもとい自動車部の皆さんの操縦テクニックや整備技術に憧れを感じてるので選べません。というかそうなってしまったら先ず。妙子姉やさおりん先輩、大友の親父に相談しますっ!……あ」

 

『慎司君ったらかわいい♪』

 

「ひゃっ?!おふっ……」

 

慎司は悪戯な笑みを浮かべたホシノの問い掛けに対して赤面しながら自分なりの考えと思いを口走ってしまい。ふと我に帰ると蚊の鳴くような声を漏らす。

そんな彼の反応がさらに愛らしく感じたのだろう。四人はそのまま慎司を抱きしめる。

 

「うぅ……っ…っ…シンちゃん。もうお姉ちゃんのそばにいてくれなくなっちゃうのかな?」

 

「それは絶対無いと思うよ妙子ちゃん。家族だし嫌いになったわけじゃないから大丈夫だよ」

 

「でも。私が秀人君の事を好きだとしてお付き合いを始めたとしたら柚子先輩から奪っちゃう感じになっちゃうかもしれないじゃん」

 

「いや、あくまでも血の繋がる姉弟で恋人同士じゃないから問題ないし。柚子姉ならさすがに理解してくれると思うよ」

 

慎司がナカジマ達に愛でられている様子を近くの茂みに隠れながら見ていた妙子は、涙を浮かべながら何処か寂しい気持ちになっていた。

秀人は落ち着いた感じの喋り方で彼女を慰めようとしている。

 

「じゃあ、秀人君をシンちゃんだと思ってぎゅってして良いかな?大丈夫、キスしたりしないから。それにブラコンを卒業するきっかけになるかも」

 

「何でそういう発想になるのっ?!……誰かに見られていないから良いけど(このやり取りを柚子姉なら快諾してくれそうかな?)」

 

「じゃあ……シいや、秀人君。いつもありがとう。好き〜っ!」

 

「どういたしま……おふっ(柚子姉より強い上同じくらい柔らかい)」

 

彼は彼女の力になりたかったのか、そのまま抱きとめる姿勢に入ると妙子から力強く抱きしめられる。

妙子と秀人では身長が10cm少々彼女の方が大きいため、恵まれたサイズの胸が彼の顔面を直撃し。それに加えて力強く抱きしめられたこともあって埋められる形になり。

彼は自身の姉のものと同じ心地の虜になってしまう。

 

「ちょっと強くしすぎたかな?でも…何か楽になった気がするからありがとうね!それに変われた気もするっ!」

 

「力になれてよかったよ。じゃあ、戻って柚子姉と一緒に何か食べよ」

 

「いいの?じゃあ、ご一緒させて貰うね」

 

「立ち止まってどうしたの。具合でも悪いの?」

 

「ごめんなんでもないよ……(秀人君、私は……君の事が大好きかも♡)」

 

「よかった。今日の晩ご飯は何にしようかな〜」

 

妙子は元の元気さを取り戻し、秀人は彼女の様子を見て安心するとそのまま夕食に誘う。

妙子は喜んで秀人と一緒に寮まで向かうのだが、途中で立ち止まる。心配した彼が彼女に声を掛けると平気な様子を見せたため。

夕食のことを考えながら再び歩み始めたのだが、妙子が秀人に対する"好き"のギアをlikeからloveにシフトしたことなど彼は気付かないのだった。

 

「他のみんなも行ってしまったな。安倍君、良かったら私たちとも一緒にならないか?」

 

「あっいいですよ。いつも仲良くしてくれてる先輩の頼みを断るわけないじゃないですか」

 

「ありがとう。アンツィオ高校のひなちゃんが君の事を知りたいって連絡して来たんだ。よかったら明後日辺りあの子に会ってみて欲しいのだが」

 

「そうなんですか。たしか鈴木先輩の幼なじみのカルパッチョさんは副隊長さんでしたよね。俺なんかでよかったら全然構いませんけど」

 

「ひなちゃんもきっと喜んでくれるだろうな。すまない、前置きが長くなったな。そうだ、夏なのにこの辺りは寒いから一緒にマフラーをしないか?いや、した方がいい」

 

「ふ、二人マフラーですか?まぁ、いいですけど(まさかねぇ…いや、気のせいだろうな)」

 

安倍は戦車から離れて歩きながらカエサルと話していると、立ち止まった彼女からいわゆる二人マフラーというものをされ。内心で少し迷った後に承諾する。

 

「よし行こうか。ところで安倍君って好きな子はいないの?」

 

「居ないですねぇ。大友の親分や水野のカシラみたいに戦車バカなんで逆に女性が多い戦車道やタンカスロンを続けていても出来ませんでしたね」

 

「それは勿体ない。戦車道は女性が多いから出会える機会をもっと大事にしないとダメじゃないか。私もいるがそれはまた今度話すとしよう」

 

「いらっしゃるんですか。ははぁ。そうですね。それに気を配るようにしてみます(俺はありえないとして親分や村川の叔父貴辺りかな?)」

 

「それで良し。君にいい出会いがあることを願うよ(なんて鈍感な子なんだ……やっぱりひなちゃんに協力を頼んでよかった。君が大好きに決まってるじゃないか雄飛君)」

 

慎司や秀人に続いて鈍感な安倍は、カエサルからの行為や何らかの意味を含めた会話に気づくことなく。

そのまま他のカバさんチームメンバーのもとへ向かっていくのだった。対する彼女は彼の鈍感さに驚きを隠せないでいたが。そんな様子を内心で愛らしく感じるのだった。

 

 

 

夜が更けて時間も午後十時頃になり。他のメンバーが就寝したであろう時間帯にみほと大友は、二人で寮の近くにある展望台に訪れて星空を眺めていた。

さて、この展望台に訪れた二人は明後日の出来事について話し合っていたのであった。

 

「例の高大一貫校への転学手続きの為に親の判子がいるとは聞いていました。今回は代行いや、家元のもとへ向かわなければならないのですか」

 

「そうなの。お母さんがね今更都合が良すぎると感じるかもしれないけど、来なさいって言ってたの。それに私とよかったら誠也君とも話してみたいと言ってたわ」

 

「そうなんですか。だったら俺も行きますよ。大事なみほ姉貴を一人で向かわせるなんて出来ません。是非、俺も西住先生と腹を割って話してみたいと思っていたんです。あの方だってみほ姉貴が貴女自身の戦車道でも強いという事が十分理解できたと思います。大丈夫です。何があっても絶対にみほ姉貴を守ります」

 

「誠也君……いつもどんな時でも側にいてくれてありがとう。熊本に帰ったらお姉ちゃんも喜んでくれるわ」

 

「いえ、こちらこそ。俺もまほさんの事は気にしていたんです。なんだかんだ言って大会が終わったあの時から長く話した気がしませんから。何を話しましょうか」

 

大友はみほをどんなことからでも守るという熱意を思い出したのか。そのまま隣に座っていた彼女を優しく抱きしめる。

みほも嬉しくなったのだろう。同じようにして抱き返したりして話していると聞き覚えがある少年の声が二人の耳に入る。

 

「誠也君、この声ってまさか…」

 

「うちの桔平に間違いありません。バレないように近づいてみますか」

 

二人は立ち上がって手を繋ぐとそのまま水野がいるであろう場所へ静かに向かうと、そこには彼の頬を両手で包んだ梓の姿があった。

 

 

 

一年生ウサギさんチームのリーダーである澤梓は、大友組若頭の水野桔平に出会って話し始めてから好意を抱いていた。

彼も彼女の好意に若干気づいており。思わせぶりは一切せずに大事な仲間として接してきた。しかし、そんな水野も気付けば梓のことを好きだと自覚するようになった出来事があった。

決勝戦において渡河中だったウサギさんチームのメンバーを自分の意思で助けた他、フェルディナント駆逐戦車から梓を守る為に刺し違えたりしたからだった。

お互いに好意の認識があったものの。言い出せずにいたが、この日となって遂に梓から打ち明けたのであった。

 

「水野君、夜の戦車ドライブありがとう!すごく楽しかったし明日もタンカスロンとかみんなの昔話を聞かせてね」

 

「うん。明日も戦車で何処か行こうか。今日みたいにそのまま国道を走って夜の大洗港を眺めたりだとかマイナーだけど良い夜景スポットに行こうか」

 

二人は水野の愛車であるI号戦車C型(タンカスロン仕様)の上に座って他愛もない会話を続けていた。

すると、梓は水野と身体を密着させた後に恍惚とした表情で肩にもたれかかる。

 

「どうしたの眠たいの梓ちゃん。もう帰って明日にする?」

 

「ふふっ。水野君も本当は同じくせに……私は水野君の事が大好きなの。ちゅっ♡」

 

「……え?」

 

彼は彼女の表情に気付かなかったのか。彼女が眠たいと勘違いしてしまい。心配するのだが、梓は静か微笑むとそのまま水野の右頬に小さい唇を重ねてキスする。

彼はようやく彼女のした事を理解し、思わず驚いてしまう。驚いたのには梓にされたことだけでなく。自身の想いを彼女に読まれてしまったからだった。

 

「やっぱり女の子ってすごいなぁ。俺も大好きだよ梓ちゃん」

 

「水野君もそう言ってくれると思った。ねえ。私達これからも大好きなままで居ようね」

 

「ああ。俺も親分がみほさんを愛してるみたいになれてよかったよ。あの二人に負けなくらい仲良くしようね。梓ちゃん」

 

水野も素直な気持ちになって梓に自身の想いを伝えた後にそのまま抱きしめ合う。十秒近く経った後に彼女が彼の頬を両手で包んだ。

 

「水野君は誰にも渡さない。だから私としてくれないかな?」

 

「ああ。いいよ……愛してるよ梓ちゃん」

 

「私も愛してる」

 

彼が両手で彼女の身体を支えると同時に梓はそのまま自身の唇を同じように小さな彼の唇にそっと重ねたのだった。

 

「さて、邪魔をするとまずいので帰りましょうかみほ姉貴」

 

「そうだね。私達と同じ子がこれからも出来る気がするなぁ……」

 

「はい。あいつにも梓ちゃんという大事な子が出来て良かったと俺は思います」

 

この様子を見ていた大友とみほは二人に気付かれないようにそっと離れると静かに水野と梓の幸せを祈るのであった。

 

 




ありがとうございました。次回は第二十七話を投稿する予定です!
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