西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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ご覧いただきありがとうございます。今回は短めですが。お楽しみいただければ。と思います。
引き続きお楽しみください!


第二十七話 舎弟と実家に行きます!

みほは大友と共に実家へ持って帰る土産選びを終えた後、彼と共にボコミュージアムに訪れ。

再び愛里寿と一緒に遊びながら最近あった出来事について話していた。

 

「みほさんと誠也君が通っている大洗学園が廃校になったなんて大変だね。それに口約束とはいえ約束を破るなんてひどい…」

 

「それに再度抗議するために私の学校の生徒会長さんが今日、文科省に行ってるの。進展があれば良いんだけど」

 

「みほ姉貴。角谷会長なら上手くやってくれます。会長曰く現に日本戦車道連盟の児玉理事長と蝶野大尉の協力を得ているそうです。それにもしかすると愛里寿ちゃんのお母さんもとい島田流家元に協力を呼びかけるかもしれません」

 

話の途中で愛里寿から学園が廃校になったことを心配され。みほは現在の状況を彼女に説明する。

大友はそれを補うように杏から個人的に話された内容をみほに話した。

 

「確かに。お母様なら協力に応じてくれるかも……だけどもし。大洗学園と私が現在隊長をさせて貰っている大学選抜チームと戦わなければならない時が来たら。みほさんと誠也君に……」

 

「愛里寿ちゃん大丈夫だよ。その時が来ても何かの縁だと思えば良いんだよ。誠也君もそう思うよね」

 

「俺もそう思います。何も愛里寿ちゃんが申し訳なく思うことなんてないよ。その時が来たらお互い正々堂々戦おう」

 

話の途中で愛里寿は、これから起こるであろう運命を悟ったのだろう。目線を下に向けて持っていたボコの縫いぐるみを力強く抱え直す。

それに気づいたみほと大友は二人で彼女を抱きしめて優しく彼女に語りかけていく。

 

「……ありがとう。二人とも優しいね。あっそうだ。みほさんに誠也君ってもしかしてお付き合いしてるの?」

 

「「っ?!」」

 

「だって私を抱きしめてくれた時からずっと手を繋いでいるもん。本当のお父さんとお母さんみたいで良いね。誠也君、みほさんを絶対幸せにしてあげてね。私は誠也君とみほさんの事が大好きだから二人には幸せになって欲しいの」

 

「愛里寿ちゃん……」

 

彼女は二人から抱きしめられた際に手を繋ぎ合っている事に気付いたのだろう。

感謝の言葉を口にすると同時に微笑みを浮かべながら図星を指した。対する二人は少しばかり驚くが。

愛里寿はそのまま大友に対して自身の想いを告白する。それを聞いた彼は彼女の名前を呟くと申し訳ない気持ちになった。

それでも愛里寿は、許す気でいたのだろう。そのまま語り続けた。

 

「誠也君。私のお婿さんのことやお兄ちゃんになる事を気にしていたりする?私は全然構わないよ。だって誠也君は私と出会う前からみほさんの舎弟さんだったんだよね?普通ならお付き合いするところを舎弟さんになって「みほ姉貴」って言っているもん。お母様と私がその事を知らずに話を進めたっていうところがあるからこそ誠也君はみほさんを幸せにして欲しいの」

 

「ありがとう。愛里寿ちゃんも優しいね。絶対にみほ姉貴を幸せにするよ。だって俺は愛里寿ちゃんにとても感謝しているし尊敬しているから。尊敬する人の想いは絶対貫くよ」

 

彼女の想いを全て理解した大友も自身の想いを愛里寿に告げるとそのまま彼女の頭を優しく撫でる。

 

「約束だよ誠也君。みほさんと誠也君の二人がずっと幸せでありますように……はいどうぞっ!」

 

「ボコのお守りだ。それに幸せを祈ってくれてありがとう愛里寿ちゃん!」

 

「ありがとう。ずっと大事にするよ」

 

愛里寿は二人の幸せを祈ると同時に幼気な笑みで微笑むと真っ白なボコのお守りを二人の手に添える。

みほと大友はもう一度感謝の言葉を口にすると、彼女を優しく抱きしめるのであった。

 

「そろそろ私達は用事の時間が来たから。今日はこの辺りにしない?」

 

「そうだね。みほさん、誠也君。また会える日まで待っているよ」

 

「今日はありがとう愛里寿ちゃん。また今度会えたらね」

 

楽しい時間はすぐに過ぎると言うべきだろう。気付けば二人が仲間のもとに戻る時間となったため。

愛里寿に別れを告げるとそのまま大友の車に乗ってボコミュージアムを後にしてそのままみほの実家へと向かうのであった。

愛里寿は二人が乗る黒色のセダン車が見えなくなるまでずっと手を振り続けたのであった。

 

 

 

大洗学園の生徒会長たる角谷杏は日本戦車道連盟の理事長を務める児玉七郎や教官を務める蝶野亜美を伴って文部科学省の学園艦教育局局長たる神宮征四郎(辻廉太)のもとを訪れていた。

辻は杏の他に戦車道界の大物ともいえる児玉七郎と蝶野亜美が来ていたことに少し戸惑っていたが、普段の冷静さを取り戻して対応し始めた。

 

「廃校の件は決定しているんです」

 

「ですが。我が校が優勝すれば廃校は免れるという約束したはずです」

 

「口約束は約束ではないでしょう」

 

「辻く…いや、辻局長。あなたの立場なら廃校を回避する善処が出来たはずです」

 

「私もその通りだと思います。それに民法九十一条にも口約束は有効だと記されています」

 

「角谷さん、蝶野大尉。私としても可能な限り善処したんです。ご理解ください。それに児玉理事長、私一人の一存では心苦しい場合もあるんです。こちらもご理解ください(どいつもこいつも面倒ばかりだ。私の提案を受け入れれば良いものを……)」

 

「分かりました。では、また機会があれば伺わせていただきます」

 

辻は冷徹な態度で各々の疑問に応じては内心で毒づきながら三人に対してデタラメを口にする。

彼にとって運が良く。その真意に気づかれる事がないままこの日の訪問は終わりを迎えたのであった。

 

「もうすぐだ。もうすぐで私の愛する妻と愛する我が子を奪った連中の大元を排除する段取りができるぞ。そうだ。この私こそ日本戦車道の頂点に相応しいに決まっている……ククク」

 

間も無くして三人が局長室を後にすると、机の上の書類棚の横に置いていた小さな写真立てを手に取り。憎悪や悲しみ、寂しさに満ちたドス黒い笑みを浮かべながら独り言を呟くのであった。

 

 

 

生徒会広報、河嶋桃は副会長の小山柚子やその弟で広報補佐役を務める小山秀人と共に生活に困る生徒達の対応に追われていた。

大友組や勇彰會といった戦車道男子達が出張って問題を迅速に解決してくれているものの。他の寮が老朽化しつつある影響や思わぬ形で様々な道具が必要になったりといった問題が起き続けていた。

 

「河嶋先輩!他校の不良戦車道女子と風紀委員の三人がトラブルになりそうだったところを戦車に乗ったまた別の学校の男の子と黒木組長に助けられて今、ここに帰ってきているそうです」

 

「それは本当か!柚子ちゃんに秀人、すまないが後は頼んだぞ。ちょっとそど子達のもとに行ってくる!」

 

桃が一人の女子生徒からそど子達カモさんチームが危険な目に遭ったということを耳にした途端、二人にその場を任せて真っ先に仮の生徒会室から飛び出していった。

校庭から飛び出してすぐのところでカモさんチームのルノーB1bisに続いて一輌のコメット巡航戦車が校庭内に入ってくる。

 

「河嶋さん…」

 

「「「ごめんなさいっ!!!」」」

 

「お前達。心配したんだぞっ!絡んできた相手がどうしようもないやつだったらどうするんだ!」

 

三人の反省した態度が理解できたのだろう。この時の彼女は珍しく怒るよりも先にそど子やゴモヨ、パゾ美の心配をする。

その次にコメット巡航戦車のキューポラから身を乗り出して三人の様子を見守る少女のような容姿をした黒髪の少年を見つめる。

 

「そうだ。君、三人を助けてくれてありがとう!」

 

「礼には及びません。すごい……もしかしてヘッツァーの装填手と砲手を務めている河嶋桃さんですか?」

 

「き、君。どうして私の名前を?!」

 

「おっといけない。これは失礼しました。俺、戦車道が好きで大会も観に行ってました。だから貴女の名前を知っていたんです。今からゆっくりお話をしたかったのですが。これから用事があるので失礼します。また園さんや後藤さん、金春さん、河嶋さんに会えたら良いと思っていますからその時は沢山大会の事を話してくださいね!」

 

「それはありが…って。君、待ってくれ!君の名前も教えてくれないか?!」

 

何処か大友に似てるようで全く彼とは違う感じのこの少年は謙虚な態度を取りつつ彼女達四人を尊敬するような事を言った後に、優しく微笑みながら四人に向けて頭を下げると同時にキューポラの蓋を閉めて戦車を元来た方向に旋回させてその場を後にする。

桃はとにかく三人を助けてくれたことや彼女自身を含めた他のメンバーを知ってくれていた事が嬉しくてしょうがなかったため。

少年の名前を聞こうとしたときにはもう戦車の走行音によって掻き消されたのであった。

 

 

 

ボコミュージアムを後にし、北九州市の国道沿いにあるビジネスホテルで一泊することになった大友とみほの二人は早めに一緒のベッドに入って軽く抱き合うような感じで眠りについていた。

何かの縁だろうか。この日の晩、みほが見た夢の内容は一年前。転落した小梅を救出したことで大会に負け、母であるしほがその事を問い詰める際に自身の寮の部屋に入ってきたところを一緒にいた大友と言い合いになったというものであった。

 

『何を言いに来たつもりですか…西住先生』

 

『大友君。これは西住流を背負うものにはあってはならない問題なのよ』

 

『人一人の命が危うくなってまで背負わなければならないものなんですか?』

 

『……』

 

『そんなもんがあるわけ無えだろう!!』

 

みほを叱責しに来たであろうしほの厳しい雰囲気にも屈さず。あたかも龍に飛び掛からんとする猛虎のようにしほを怒鳴りつける。

この時みほは一度きりであろう舎弟が見せた他人に対する怒りの姿を目の当たりにする。

 

『みほ。貴女は西住流の未来を担う一員なのよ。それを忘れないように』

 

『代行。あなた、自分の娘に向かってよくそんな冷たい態度を取れるな。大体戦車道は人殺しや戦争賛美の競技なんかじゃない。お互いを尊重し合いながら行う競技だろうがっ!!あんたならそれを一番理解しているはずだ!!』

 

『……あなたやみほも何れその本質が分かる日が来るわ。不毛な言い争いはこれで終わりよ』

 

『本質ってな……』

 

『誠也君!もう……いいの。私が……っ……っ』

 

『みほ姉貴……俺は何があっても貴女のそばに付き添い。絶対にお守りします!それにいつか姉貴が最後の一線を越えなきゃならない時が来たら……その時は俺も一緒に飛び越えます!!』

 

『ありがとう……っ……っ』

 

しほが部屋を去ると大友は泣き崩れるみほをそのまま強く抱きしめ直すのだった。

みほはそんな夢の世界からは直ぐに目が覚め。デジタル時計の時間を見ると明け方も近かった。

そのまま何となく抱き合いながら眠っている大友の幼気な寝顔を見つめ直して安心すると同時に愛でたくなる気持ちになったみほは、右手の人差し指で彼の左頬を優しく突く。

対する彼は擽ったく感じたのか幼気な声を漏らす。

 

「ふふっ。誠也君ったらほんとにかわいい。マシュマロみたいな頬っぺたをしてるから今度はあれしか無いよね……どんな時も私を守ってくれてありがとう。大好きだし愛しているよ。かっこかわいい私の舎弟の誠也君……大好き。ちゅっ♡」

 

「……んっ……愛してます。みほ姉貴……」

 

みほがもう一度優しく抱きしめ直して大友の右頬にキスすると効果が現れたと言うべきだろうか。

彼は寝言で彼女に対する好意の言葉を口にする。この寝言を聞いたみほは額ににもう一度キスしたところで眠りにつくのであった。

 




ありがとうございました。辻さんの過去はオリジナルですが。ちょっとずつ掘り下げていきます
。あと、今回登場したコメット巡航戦車に乗る謎の男の娘の正体も次回以降明かしていきます。
次回は第二十八話を投稿する予定です。
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