西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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第二十八話 もっと舎弟を愛でます!

翌日。大友とみほは実家の前に到着し、家の門が開くまで待っていた。実家とはいえ逃げるようにして大洗学園に転校して以来潜ったことが無かった門の前に車を止めて外で待っていると、二人を呼ぶ声がする。

 

「みほ。おかえり。それに誠也君もよく来てくれた」

 

「お姉ちゃん……ただいま」

 

「お久しぶりです。まほさん」

 

「ああ。誠也君、みほみたいに私服じゃなくて学校の制服なのか。暑くないか?」

 

「いえ。身近にある正装がこれだったので」

 

姉のまほの呼びかけに対してみほは素直に言葉を返す。大友は謙虚に頭を下げる。

まほは大友の服装が学校指定の制服であることが気になったのだろう。彼と何気ない会話を交わしていると重厚感がある鉄製の門が機械音を上げながら開いた。

 

「行こうかみほ。誠也君、後から客間まで来てくれないか?大丈夫、みほは私に任せてくれ」

 

「……ええ。お任せします。みほ姉貴、また後で」

 

「また後でね。誠也君」

 

まほは大友に気を使ってみほの手を優しく引くとそのまま玄関の方へ向かっていく。

彼はそのまま来客用の駐車場まで車を持って行き。施錠できたかどうか確認していると、一人の男性が穏やかな笑みを浮かべながら彼に声を掛ける。

 

「久しぶりじゃないか。大友君、元気にしていたか?」

 

「お久しぶりです。おやっさ……いえ、三代目」

 

「三代目か……懐かしい響きだね。前みたいにおやっさんと呼んでくれれば良いのに」

 

「俺も組を持つ戦車道男子の一人なので。業界用語的な意味と尊敬の意を込めて三代目と呼ばせていただきます」

 

大友はかつて江城連合会の三代目会長であり。現在はみほとまほの父親である常夫に対して尊敬の意を込めて頭を下げる。

対する常夫は、畏った態度で応じる大友にフレンドリーに接し続けると同時に懐かしさに入り浸る。

 

「大友君よく来てくれたね。それと今更だけど……みほのそばに寄り添ってくれてありがとう。あの時私はしほさんを抑えることに精一杯で何もしてやれなかった……だが、そんな時に君があの子のそばに寄り添ってくれて良かった」

 

「そんな。三代目が罪悪感を感じる必要はありません。正直、俺のような若輩者が言うのも何ですが。あの時は誰も悪くなかったんです。それに俺は愛するみほ姉貴の舎弟ですから。出来る限りそばに居てあげないと筋が通りませんから」

 

「ありがとう。やっぱり君はみほの舎弟いや、これからそばにずっと居るべき存在だ。時間を取らせてすまないね」

 

「三代目……みほ姉貴を必ずお守りしそばで支えます。では、失礼します」

 

常夫は何もする事が出来ずにしほを説得し続けることで精一杯だった自分を情けなく思い続けていたが。

大友が常夫を勇気付けようと自身の考えを語ると、彼は元気を取り戻したのか。大友に対して感謝の言葉を口するとその場を去っていくのであった。

それから彼もみほとまほの元へ行くために地面に置いていた学校用の鞄を手に持ってからそのまま中庭を通り。客間まで行くと二人としほが大友を待っていたかのように見つめる。

 

「……ご無沙汰してます。西住先生」

 

「よくいらっしゃいました。大友君、そのまま上がってちょうだい」

 

「失礼いたします」

 

大友はしほと挨拶を交わすとそのまま縁側から客間へと入り。みほとまほの間に座る。

彼が座った直後、しほの口がゆっくりと開いた。

 

「さて、揃ったわね。単刀直入に言わせてもらうわ……みほ、優勝おめでとう。貴女の想いがこもった戦車道は見ていて気持ち良かったわ。次に大友君。みほを支えてくれてありがとう。これからもこの子を支えてくれないかしら?」

 

「お母さん……ありがとう」

 

「ええ。どういたしまして。お任せください自分としてはこれからもみほ姉貴を支えていく所存であります」

 

みほと大友の二人はしほの思いもよらない一言に驚き、顔を合わせるが。今まで見せる事が少なかった彼女個人の本音が聞けた事に安心するのであった。

しほは二人が安心したのを確認すると続けるようにして語り始めた。

 

「廃校の話は聞いたわ。実はさっき蝶野大尉からその件について連絡があったの。だからその件で今から常夫さんと共に三日ほど家を留守にする予定よ。それに来年も貴女の戦車道がどこまで成長したかを見たいと思っているわ。あとこっちとしては西住流の真髄を見てもらう為というのもあるの。だから廃校にするなんて私としても惜しいと思うわ」

 

「ありがとうお母さん。来年も正々堂々受けて立たせてもらいます。誠也君もそう思うよね」

 

「ええ。みほ姉貴の戦車道という新しい花をそう簡単に枯らすわけには行きませんからね。来年もよろしくお願いします」

 

しほは『みほの戦車道』を認めつつもやはり、西住流の家元としてのプライドがあるのか。その存在をアピールする。

対するみほと大友は、しほのアピールに応じるように笑顔で言葉を返す。

直接会ったことでみほとしほの間にあった壁が崩れ去ったのだろう。これ以降のやり取りも穏やかなものが続いた。

そんなやり取りが続いているうちにヘリコプターが降下して来る音が聞こえて来ると同時に常夫も部屋にやって来る。

 

「さて、時間が来たようね。そうだわ。みほ、せっかく来たんだしゆっくりして行きなさい。ここは貴女が生まれ育った家なんだから……」

 

「そうだね。じゃあゆっくりさせて貰うわ。行ってらっしゃいお父さん、お母さん」

 

「ああ。行ってくるよ」

 

「行ってきます。みほ」

 

父と母の二人は娘達に手を振ると部屋を後にしたのであった。みほやまほ、大友の三人はその背中を静かに見届けた。

三人がしばらく部屋でくつろいでいるとヘリコプターが再び飛び立つ音が聞こえ、さらに五分経った後に聞こえなくなった。

 

「みほ姉貴。先生もといお母様と仲直りできてよかったですね。これでお互いを隔てていた壁が無くなったように見えます」

 

「そうだね。私は今、胸がすっと軽くなったような気がするの。少しだけでも家族みんなでお話できてよかったわ」

 

「ああ。みほの言う通りだ。ちょっと間だが、また団欒と出来た気がするな」

 

「すみません。みほ姉貴、まほさん。ちょっと横になってもいいですか?なんか安心したら眠たくなってしまったので」

 

「うん。いいよ。誠也君も沢山くつろいでね」

 

「ふふっ。ゆっくりするといいぞ誠也君」

 

「では、失礼します」

 

三人はどこか安心した調子で思ったことを口にし始める。そんな中、大友は急に眠たくなり。

使っている座布団を枕の形にしてから自身の鞄の中からイヤホンと携帯電話を取り出し、そのままイヤホンを携帯電話に繋いでから好きな曲が入った曲を集めたリストの再生ボタンを押すと同時にぐっすりと眠り始めた。

 

 

 

昼寝を始めてからどれくらい経ったのだろうか。誰かが付けていたイヤホンの左側を外すと同時に目が覚めたのであった。

すぐ起き上がれずにいた為、しばらくは右のイヤホンから流れてくる『24時間シンデレラ』という曲のリズムに乗ってその歌詞を口ずさむ。

 

「素直にI love you.届けよう。きっとYou love me.伝わるさ君に似合うガラスの靴を探そう。二人でstep&goいつまでも……って。ま、まほさんすみません」

 

「おはよう誠也君。もうすぐ夕方だし、よかったら一緒に晩ご飯の材料を一緒に買いに行かないか?みほが今、戦車の準備をしてくれているんだ」

 

歌詞を口ずさんでいるうちに意識がはっきりとしてわかったのは。左イヤホンで同じ曲を聴いているまほに膝枕をされており。

彼の額を優しく撫でつつ母性を感じさせるような微笑みを向けながら買い物に誘う。

 

「ええ。是非ご一緒させていただきます。みほ姉貴は玄関の方ですか?」

 

「ああ。今から一緒に行こうか」

 

大友は勧誘を快諾すると、縁側に置いていた靴を持ってまほと共に玄関に向かい。靴を履いてから玄関を出ると、みほがⅡ号戦車の砲塔の上に座っており。

二人の姿を視界に入れると元気よく手を振る。まほと大友がゆっくり手を振り返すと砲塔から降りてそのまま大友の隣まで行き、右腕を抱きしめる。

 

「おはよう誠也君!今から私やお姉ちゃんと一緒に三人デートだね。今日の晩ご飯は何が食べたい?」

 

「おはようございます。そうですね。俺的にはお二人が好きな食べ物や今食べたいというものに合わせたいと思っています」

 

「そうなのか。遠慮なんかしなくていいんだぞ誠也君。でも、そう言うなら私はカレーがいいかな。みほは何がいい?」

 

「じゃあ私もお姉ちゃんの好きなカレーということで。家から三十分くらい走った先にあるスーパーに行こう!」

 

「そうですね。みほ姉貴、まほさん。運転なら俺に任せてください。お二人はゆっくりして下さい」

 

「すまないな誠也君。じゃあ運転は任せよう。さあ、行こうか二人とも」

 

大友による運転のもとで近所のスーパーへと向かい。食材などを購入して再び家に戻る途中でみほが夕焼けに染まった風景を楽しむ傍ら、大友とまほは車内で戦車に関する会話を交わしていた。

 

「そう言えば誠也君。君がタンカスロンを主体に戦車を乗って来ている姿を見て思ったことなのだが。その……君みたいに可愛らしい男の子が戦車に乗っていたらギャップ萌えというものを感じるんだ。どうして戦車乗りになろうと思ったんだ?」

 

「ははぁ。ギャップ萌えですか……そうですね。俺の父さんと母さんが少し前の俺みたいに二人で戦車に乗って戦車道チーム。それこそ江城連合会の大幹部としてタンカスロンやその本流である戦車道を転戦していたんです。だから今は亡き両親に憧れていつも近所で一緒に遊んでいた桔平や雄飛、英雄と一緒に戦車に乗るようになってみほ姉貴やまほさん。他の諸先輩方と出会えたんです」

 

「そうなのか。タンカスロンは戦車道と違ってより本格的な戦車戦だし、何より戦車の改造規定が緩いから相手も容赦なく立ち塞がってくるだろう。そう言う相手にはどうしているんだ?」

 

「そんな時は、改造戦車には改造戦車をぶつける。だとか戦車道連盟が公認している模造対戦車火器などを使用したりしてますね。あとは相手の動きを予想するとかですね。俺が乗っているT-15も今じゃ特注の自動装填装置を乗っけて国防軍の90式戦車や10式戦車みたいにポンポン撃ちまくってますね。あと、超信地旋回も可能です。それ故かギリギリタンカスロンに参加できる10.99トンです」

 

「相変わらず徹底した戦い方を好むんだな。大洗で戦車道を復活させる以前もタンカスロンに参加して来たということは、それを知ったクラスメイトの子たちは皆んなびっくりしたんじゃないか」

 

「ははっ。そんなこともありましたね。一年生の二学期の時、タンカスロンで大きい稼ぎが狙える大会があったのでそれに出るために学校の体育祭を不参加にして。不参加者用の課題を提出するために戦車を使って学校へ訪れたら俺のクラスの子たちと担任の先生がその練習をしていたんでそのまま戦車から降りたら驚かれましたね。優花里ちゃんという子はその事を知っていたんでいつも通りの反応でしたが。タンカスロンということもあってか皆んなからさらに心配されましたね」

 

「ふふっ。やっぱり君みたいな子が戦車に乗っていると皆んなからそんな反応をされると思ったよ」

 

「まほさんはやっぱりなんでもお見通しにされる方ですね。参りました。おっともう帰ってきましたね」

 

まほが大友に対して思っている事を問い掛けると、彼は自分が戦車乗りになった経緯や今まで経験してきた戦い方、周囲の反応などを彼女に対して覚えてる限り語る。

そんな思い出話をしているうちに家に到着したのであった。それから夕食や入浴などを経て就寝する時間になった際、大友に色んな意味で越えるべき壁に遭遇した。

 

「誠也君。どうしたのおいで。私とお姉ちゃんと三人で一緒に寝ようよ」

 

「誠也君。タンカスロンの時の勇猛果敢な君は何処へいったんだ?戦車だけでなく寝床も共にしないか。大丈夫、みほも良いと言っているんだ」

 

「みほ姉貴、まほさん。俺は枕と掛け布団だけでいいので……」

 

「「だーめっ♪」」

 

「でしたらこの事は先生と三代目には内密でお願い致します。では、失礼します」

 

みほとまほは大友を三人用の布団へと誘っていた。彼は彼女達二人が自分に好意を持ってくれているということを嬉しく思いながら決断に悩んでいた。

何故なら彼女ら二人の両親にバレることだけでなく。

愛するみほの許しがあるとはいえ、他の女性それも彼女の姉であるまほも一緒ということになり。

寝床を共にする場合はどう考えても自分がサンドイッチされる西住サンドというものが出来上がってしまうのだ。

結局大友はみほを寂しく思わせたくないという結論に達したことから三人で寝床を共にするということを選択した。

 

「みほ姉貴、まほさん。おやすみなさ……ひゃうっ?!」

 

「ふふ。お姉ちゃん流石だね。誠也君を可愛がる方法をよく知っているね」

 

「ああ。みほ、お前のことだからこうする事ぐらい私に分かるぞ。誠也君の頬っぺたは本当にマシュマロみたいに柔らかいし、いい匂いがするな。安心して眠れそうだ。おやすみ二人とも」

 

「おやすみなさい。お姉ちゃん、誠也君。明日はいっぱい遊ぼうね」

 

「は、はい。おやすみなさい」

 

みほとまほは脚を大友の身体に絡めたり抱き枕のように抱きしめたりした後に頬同士をくっ付けて眠りについた。

彼にとってこれだけでも十分な刺激になったのだが、その翌日は今までにない経験をすることになる。

 

 

 

次の日もあっという間に過ぎて一日が終わりを迎えようとした頃、大友が茨城の寮に戻る準備を終えて仲間達と連絡を取り合ったりしているうちに夜が更けてきたのであった。

さて、もう寝る時間か。と彼がそう考えながら昨日と同じ寝床に行くと案の定、昨日の様にみほとまほが彼を待っていたとばかりに手招きする。

 

「ははぁ。今晩もですか……失礼します。みほ姉貴、まほさん」

 

「昨日はあんなに恥ずかしがっていたのに今日は素直だね誠也君」

 

「ああ。そうだな。何だかんだ言って三人で過ごす夜もこれで最後になるな……みほ、頼んでいた通りに頼むぞ♪」

 

「はーい。お姉ちゃん。誠也君、今晩は私達二人の愛を受け止めてね♡」

 

「お、お二人の愛ですか?」

 

みほとまほは、昨日と同じよう大友を抱きしめると彼の耳元でそう語りかける。対する彼の脳内は真っ白になっており。ただ唯一入ってきた「二人の愛」という言葉に釘付けになる。

 

「誠也君、私はみほと同じように君の事が大好きだ。だが、君はみほという愛すべき人間が出来た。だからこそ今晩だけでもいい。みほの愛だけでなく。私の気持ちを受け止めてくれないか?そうする事でまた別に君以外に愛すべき人間を作るきっかけになるかもしれないんだ。今更になるが絶対に一線は越えない」

 

「お願い誠也君。私は構わないから今晩だけでもお姉ちゃんの気持ちを……ね?」

 

「みほ姉貴、分かりました。今晩きりですがよろしくお願いします。まほさん」

 

大友は二人の気持ちを受け止めることにし、何をされてもいいやと思うのだが。やはり彼にとって刺激が強すぎる結果となる。

 

「ダージリンやケイ、千代美そしてみほからから聞いたのだが。抱きしめるよりもキスする方が可愛い反応をするんだって?だったら私にもさせてくれないか」

 

「お姉ちゃん!誠也君はね。ほっぺたにしてあげるとすごくかわいい反応をするんだよ。そうだよね誠也君。……ちゅっ」

 

「は、はい……」

 

「本当だな。みほ、悪いがここからは私にさせてくれ」

 

「はい。どうぞ。誠也君、後はお願いね!」

 

「誠也君。大好きだ。ちゅっ♡」

 

「ひゃ、ひゃい……」

 

「お姉ちゃん。今度は二人で同時にだよ♪」

 

「ああ。誠也君、君は本当にかわいい。だから受け止めてくれ」

 

「「せーの。ちゅっ♡大好きだよ(ぞ)誠也君」」

 

「俺も大好きです……」

 

大友はある程度の覚悟を決めていたものの。みほからの優しいキスから始まり。

まほから左右の頬と額と合わせて三回のキスから二人同時のキスで止めを刺されたのだろう。好意を口にするとそのまま卒倒するように眠りについたのだった。

 

「ふふっ。ぐっすり眠ってしまったな。ありがとうみほ」

 

「どういたしまして。私は誠也君が皆んなから可愛がられるのを見ていると舎弟にして良かったと思うの。だからお姉ちゃんも誠也君の事を可愛がってくれてありがとう」

 

「みほ、誠也君とならずっと幸せにいられると思うから。ずっと仲良くするんだぞ。おやすみ」

 

「おやすみなさい。お姉ちゃん」

 

二人はぐっすり眠ってしまった彼を抱きしめ直すとそのまま同じようにして眠りについた。

翌朝、みほと大友は軽く朝食を交えた後にまほに途中まで見送られてから大洗学園の仲間達のもとに戻るのであった。

 




ありがとうございました!次回は第二十九話を投稿する予定です!
今回はオリ主×西住姉妹という組み合わせでした。
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