西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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ご覧いただきありがとうございます!今回は大友とみぽりん以外の日常回です。引き続きお楽しみください!


第二十九話 二人が居ない間の仲間達です!

みほと大友が熊本県へと向かった日の夕方、大友連合会舎弟頭の村川は華の実家に訪れており。

厳粛な空気に圧倒されていた。普段は陽気で真面目な彼だが。彼女と共に五十鈴邸の正門を潜り、彼女の母である五十鈴小百合と対面してからずっと表情を一つ変えずに真顔であった。

村川を緊張させすぎて申し訳なく思った小百合と華が早速、戦車道に関する話題を振った。

 

「村川さん。華さんから貴方が戦車道の経験が長いことから色んな事を教えてくれて頼りになる可愛いお友達と言っていましたが。本当に華さんとは仲睦まじいようですね」

 

「そうですよ。お母様、武君は最近転校してきた子で前の学校でも戦車道部だったみたいで。可愛らしさがある反面、その経験を活かして私に色んなことを教えてくださるんです。それにこの前の華道の展覧会で使った戦車型の花器を一緒に選んでくれたんです。そうですよね?武君」

 

「は、はい!お…僕自身、華さんに仲良くしていただいてることもあってすごく感謝しています」

 

村川は彼女ら二人の口から出た「可愛い」という一言に赤面しそうになりながら声を震わせて華に対して思っていることを口にする。

 

「それは母親である私としても嬉しく思いますわ。だからこそ私からお願い事があります村川さん。……転学してもこの子のそばに居てくれませんか。華さんもそう思っているでしょう。十七年間貴女と共にいて見抜いてないと思ったかしら?」

 

「ふふっ。お母様は流石ですわ。武君、私は貴方の事が大好きです。強引かも知れませんが私とお付き合いをお願いできませんか?」

 

「そんなの……良いに決まってるじゃないか華さん!出会って短いけど転校して来た日に最初に話しかけてくれたし。あと同じ砲手という事もあって。気が合うと感じたし、何なら華さんみたいに肝が据わった女性がタイプだったりするから。俺は今すごく嬉しいんだ」

 

小百合からの思わぬ一言から始まり。華から想いを告白された事で赤面してしまう村川であったが。

嬉しくなっていてもたってもいられなくなった彼も華の想いを受け入れることにした。

 

「武君。ありがとうございます!お友達を飛び越えて恋仲になっちゃいましたけど。これからも宜しくお願いしますわ」

 

「ああ。よろしくね華さん。俺、大友の兄貴がみほさんを愛するみたいに頑張るよ!」

 

小百合が二人を見つめて微笑んでいる傍ら、華と村川はそう言いながら手を繋いで見つめ合っている。

この微笑ましい光景を三人に気付かれないように襖を少し開けて覗き込んでいた新三郎に関しては華に村川という男が出来た事が嬉しかったのか。静かに涙を流して喜んでいた。

 

「そうだわ。華さんと村川さんに私からお話ししておきたいことが……今更になって申し訳ないのですが。私はあの時、戦車なんて鉄屑になれば良いとか言っていたワケについて話しておきたいと思うの」

 

「お母様、そのワケとは何でございますか?」

 

「私が戦車そして戦車道を嫌いだった理由についてよ。村川さんや他のお友達の男の子達なら今から話す事は絶対しないと思うけど……私は高校生の頃通っていた学校で入学して来た新入生達が率いていた真闘派という不良戦車道チームによって純粋に戦車道を勤しんでいた親友達の心や尊厳をズタズタにされた挙句、廃人同然にまで変えられたの。それからしばらくしてある人達によって殲滅された真闘派の残党の言い分は『我々は男子を蔑み戦車道を独占しようとする悪どい女子共を成敗し、戦車道男子の時代を築くための正義の軍団だ。』なんて言っていたけど、私の親友やその学校の戦車道乙女は悪どいどころか聖人君子という人物の子で傲慢無礼では無かった……なのにそんな厚顔無恥で強欲な輩に最後まで向き合い助けようとしたのに廃人同然に変えられた。……それで私は真闘派が悪いのに戦車や戦車道が嫌いになったの。それと華さんが戦車道を始めた時はあそこまで酷く言ってしまったの。だけど、貴女が一生懸命に勤しみ。村川さんという戦車道男子も負けず劣らずな姿というものを見させて貰ったおかげで嫌いじゃなくなりましたわ」

 

「お母様にそんな過去が……だから反対なされたのですね」

 

「真闘派がやばい奴らという事は噂に聞いていたが。そこまでやる奴らだったとは……」

 

小百合は戦車道を嫌っていた理由と高校生の頃、自分の身に起こったことを二人に話す。彼女もまた間接的に真闘派から傷つけられた者の一人であり。

そんな彼女の過去を聞いた華と村川は驚きが隠せないでいた。

 

「辛気臭い話をしてしまってごめんなさい。話を変えましょう。華さんと村川さんはお互いのどこに惹かれたのかしら」

 

「そうですね。見た目の可愛らしさに反しての力強さそして優しさですわ。武君は私の友達の一人である大友誠也君という子と一緒に数々の戦いを潜り抜けてきたこともあり。とても戦車戦に長けているんです。また、どんな子にも優しく接したりする子ですから惹かれていったんです」

 

「じゃあ、俺は肝が据わっていたり。砲手の模範になるプレーが多いという多彩なところに惹かれたからなんだよね。あとは花の扱いがとても丁寧なところが良いと感じたんだ」

 

こうして五十鈴家にも穏やかな空気が流れ始めてこのような微笑ましい談笑は夜の七時頃まで続いたようだった。

 

 

 

一方、微笑ましいやり取りをしていたのは村川と華だけでなく。我妻と麻子も二人で近くの神社の祭りに訪れており。

彼と彼女は人がそこそこいる中、人混みから離れているベンチに腰掛けながらベビーカステラを頬張っていた。麻子に関しては我妻とは仲が他の男子と比べて特に良かったためか。

自然と互いの身体を寄せ合っていた。二人は内心でその事に気づきながらもくつろいでいると、麻子の口が開いた。

 

「ところで清弘君って好きな子とか出来たことが無いのか?」

 

「そう言われてみれば無いな。大友の兄貴や平形本部長みたいにパンツァー・ハイというか戦車バカというか。恋愛がどうとか言う前に戦車に乗る事ばっかり考えていたよ」

 

「やっぱり。類は友を呼ぶとはこの事だな。ということは前の学校でもそうだったんじゃないか。よかったらその昔話を聞かせてくれないか」

 

「ああ。もっとも俺が転校してくる前は平形本部長や黒木組長、長瀬さん、武の兄貴、諒介と俺の六人で伯爵高校に通っていてそこでも毎日戦車を乗り回していたよ。大洗学園みたいに学校行事の参加不参加が自由だったから。そんな時はマリナちゃんっていう先輩に部費を稼いでくるとか言ってタンカスロンでガッポリ稼ぐとかだったな。本当に今まで戦車にべったりだったよ」

 

「でもそう言いながら私が話しかけてみたら今まで出会ってきた男の子よりかなり開放的なところが多かったりして可愛げがあって良いと思っているぞ。だからこそ聞いてくれないかその……清弘君ともっと仲良くなりたいし君の事をもっと知ってみたいから私とお付き合いをしてくれないか?」

 

「へ?」

 

我妻は麻子に恋愛に関する事について聞かれた後に自身の昔話も終えると彼女は静かに笑い。

自身の想いを打ち明けてからそのまま顔を彼の右肩に乗せる。急な出来事に思考が停止していた我妻は蚊が鳴くような声を漏らす。

 

「すまない。急すぎた」

 

「そんなことないよ。今まで麻子ちゃんの想いに気付かないでいてごめんね。その……初めて告白されたから嬉しいよ俺は。それに普段から仲良くしてくれるから断る理由なんて無いからいいよ」

 

「ありがとう。これからもよろしく(沙織も相談に乗ってくれてありがとう)」

 

「ああ。よろしく。そうだこれからちょっとした記念としてファミレスで何か食べないか?好きなデザートとか奢るよ」

 

「いいのか清弘君……うん!行こう!」

 

我妻は麻子が自分をそこまで思っていてくれた事が嬉しくてしょうがなかったため。

無論、想いを受け止めるのであった。対する麻子も嬉しくなると同時にこの事で相談に乗ってくれたかけがえの無い親友に内心で感謝していた。

それから二人はお互いを見つめ直すと手を繋いでその場を後にするのであった。

 

 

この日の晩、山本と優花里は寮から離れた先にある展望台で星空を眺めながらベンチに腰掛けていた。

ここはみほと大友が同じようにして腰掛けていた場所であり。二人もまた健全的な意味で良い感じの雰囲気に包まれていた。

 

「兄貴とみほさんも楽しんでいるかな?しかし、近くに海の眺めが良いところがあったとは思わなかったよ」

 

「そうですね。諒介殿。それに月が綺麗ですね」

 

「今日は満月だからはっきりとしていて本当に明るく見えるよな。あとそれってこの前テストに出てたやつだよね。俺、国語が苦手だから意味を忘れちゃったから教えてくれない……って優花里ちゃん?」

 

「諒介殿……月が綺麗の意味は。私流に言えば諒介君が大好きだという意味です。誰も見ていない満月の夜だから言えたんです」

 

言葉の意味が気になった山本が優花里に言葉の意味を聞いた瞬間。彼女は今だと言わんばかり彼を優しく抱きしめる。

赤面する山本に対して優花里は母性を感じさせるような声でその意味と自身の想いを耳元で囁く。

 

「優花里ちゃん……俺みたいなパンツァー ・ハイ野郎で良かったら良いよ。それに兄貴がみほさんを愛しているみたいに俺も愛してみるよ」

 

「諒介君、本当に愛してる。実は私のお母さんもお父さんに告白する時にこの台詞を使ったんだ」

 

「そうなんだ。親子でロマンチストっていいよね。あっ流れ星。優花里ちゃんとずっと仲良くありますように!」

 

「ありがとう諒介君。私もそう思うよ」

 

山本と優花里はお互いに愛し合う事にしたのであった。その瞬間、あたかも二人の関係が良い方向へと進む事を示唆するかのようにひとすじの流れ星が輝く夜空を駆け抜ける。

山本が咄嗟に願い事を口にすると優花里は彼に共感しながらもう一度、彼を抱きしめるのであった。

 

 

 

安倍は親分である大友が熊本県の西住流本家に赴いている中、自身のタンカスロンでの愛車である五式軽戦車・ケホに乗り。

弟分の伊達や岡崎、上田の三人を連れてカエサルとカルパッチョが待つ待ち合わせ場所である海辺の駐車場へと向かったのだが。

到着した途端、彼女ら二人が二輌のC.V.38の持ち主であろうサングラスをつけた上、特攻服を身に纏った合わせて六人の少女らの内一人が木刀をカエサルに突きつけている光景が四人の目に入った。

 

「なっ?!あいつら……聡!そのままあいつらの前に割り込め」

 

「はい。兄貴」

 

彼の指示通り動いたケホがカエサルとカルパッチョに加勢するかのように正体不明の不良戦車道乙女の前に割って入る。

それから安倍は車長席から飛び降りて初めて尊敬する先輩の前で怒りの姿を露わにする。

 

「おい!てめぇら。何やってるか分かってんのかコラァ。ああん?」

 

「何すかお前。私達はこの二人が私達のシマで女同士でイチャイチャしてたからお話ししてただけっす。ほら、痛い目をみたくなかったら部外者はあっちに行けよ」

 

「チッ。やっぱ話し合いをするだけ無駄か。誠己、鈴木先輩とカルパッチョさんを連れて離れていろ。それと今、近くのタンカスロンショップに居る慎司と本部長達に連絡を取れ。俺はこの馬鹿共とやり合わねえと腹の虫が収まらないんだ」

 

「へい。兄貴。鈴木先輩、カルパッチョさん。こちらへ」

 

「安倍君!それはダメだ。君の身に何かあったら私は…」

 

「そうよ安倍君。たかちゃんの言う通りよ」

 

上田によって安全な方向へ誘導されているカエサルとカルパッチョは今にも泣き出しそうな表情で今にもがっつこうとする安倍を引き止めようとする。

 

「こんな半端モンの後輩ですんません。鈴木先輩。でも、俺は貴女やその友達であるカルパッチョさんを守りたいんです」

 

「かっこいいっすね〜。後悔すんなよ戦車道男子!」

 

安倍は笑顔で二人の方を見つめるとそのまま戦車に乗り込み。不良の挑発を無視すると同時に万が一のために積んでいた砲弾を装填する。

 

「後悔するのはてめぇらの方だ!チンピラ戦車道女子。いくぞオラァ!」

 

「はーい!ストップ!」

 

「ストップ?……ってチンピラをよく見たらペパロニさんにアマレットさん、ジェラートさん、パネトーネさん?!それにドッキリ大成功?」

 

カルパッチョの陽気な掛け声に調子が狂った安倍が指示を出す前にその方向を見ると、彼女がカエサルと共に『ドッキリ大成功』と書かれた看板を手に持っており。

チンピラと思っていた女子達の方を見ると同じ看板を持ったペパロニ達の姿が目に入った。

 

「安倍君に他のみんな。本当に悪かったっす」

 

「たは〜っ!俺はてっきり本当に不良戦車道女子かと思いましたよ。たまにはこんなスリルもありですね。皆さん」

 

「いいですよ。皆さん凄みがある演技をしていて見てるこっち側も気持ちよかったので」

 

「良いに決まってるじゃないすか。何ならVシ○マに出ていても違和感ないかも」

 

「全然許しますよ。というかちょっと怖かったかも」

 

ペパロニ達アンツィオ高校の女子達が安倍達四人に必死に謝るが、四人はドッキリと分かると幼気な笑顔でそれを許して戦車から降りてそのままもたれかかる。

 

「安倍君。これは単なるドッキリと思うか?」

 

「はい?」

 

「安倍君、私やひなちゃんを守ってくれてありがとう。ドッキリなんて手荒な真似をして悪かった。だけど受け止めて欲しいんだ私の気持ちを……雄飛君大好きだ!それに愛している……っ」

 

カエサルいや、貴子はそのまま安心してもたれかかっている彼の目の前まで行くと力強く抱きしめて嬉し泣きをしながら自身の想いを彼に語り終えると一旦離す。

赤面して身体を震わせている彼の小さな顔を両手で支えると彼の両頬に二回キスする。

 

「あ、あ、あ、ありがとうございます!!鈴木先輩っ!!俺なんかで良かったら。それに鈴木先輩を大事にします!!」

 

「ふふっ。君は本当にかわいいな♪そう言ってくれて私も嬉しいぞ」

 

「「「お二人ともおめでとうございます。お幸せにっ!!」」」

 

安倍は貴子の想いを理解し、感謝の言葉を口にすると抱きしめ返す。彼女はそんな彼の姿を愛らしく思いながら頭を優しく撫でる。

その傍らで伊達や岡崎、上田の三人も兄貴分である彼と先輩である彼女という一組のカップルが成立したことが嬉しかったのだろう。拍手しながら二人の幸せを祈る言葉を口にする。

 

「なんだなんだ。チンピラ戦車道女子どころかアンツィオ高校の皆さんや鈴木先輩がいらっしゃるぞ」

 

「あっほんとだ。あれ?安倍の兄貴、これは一体どういう状況なんだ」

 

「それに。よく見たらドッキリ大成功って書いてあるから。大したことは無かったんだろうね」

 

「ああ。ちょっと手の込んだ先輩からの告白かな?」

 

「そうだったのか。つまりこのドッキリは先輩が兄貴を振り向かせるために仕組んだものだったのか。鈴木先輩に安倍の兄貴、おめでとうございます」

 

「とりあえず。二人がついにくっつくとは……これは尊いそしてめでたい」

 

「ああ。愛し合う戦車道乙女と戦車道男子という最強の組み合わせだ。おめでとうございます」

 

その次に7TP軽戦車で乗り付けてきた慎司や秀人、塚原の三人が安倍からの説明でドッキリであった事を理解すると他の三人のように安堵し、同じように二人の幸せを祈るような発言をする。

 

「よっ慎司君!久しぶりだな。お姉ちゃんとのラブラブはどうだ?それに好きな子は出来たか!」

 

「あっ。お久しぶりですペパロニさん。好きな子は相変わらず出来ていませんね。憧れている人なら居ますけど」

 

「何だって?!好きな子は居ないけど憧れている人ってのはどこのどいつだ!」

 

「あっえっと……同じ大洗に通うレオポンさんチームのナカジマさんやホシノさん、スズキさん、ツチヤさんの四人です」

 

「あーあの。ポルシェティーガーの姉さん達か。ふふっ慎司君、たまにはこのペパロニとデートはどうだ?」

 

「ぺ、ペパロニさんとデートすか?!」

 

「そうだ。男の子が女の子の事をよく知るためには差しでデートする方が良いってウチのアンチョビ姐さんが言ってたからな。というわけで行くぞ慎司君!」

 

「なるほど。男が女性のことをよく知る為には差しでデートする方が良いならそうします。それに最近、気になる事が幾つかあるのでそれもペパロニにさんに相談したいと思います」

 

「よし。このペパロニに任せとけ!」

 

ペパロニにデートから誘いを受けた慎司はナカジマをはじめとする異性のことで相談したいこともあったのだろう。

彼は言われるがまま彼女の後をついて行き、一緒のC.V.38に乗り込んでその場から走り去って行くのであった。

 

『『さあ、他の皆んなもどうする〜♪』』

 

「お誘いどうも。悪いけど俺はこの後、ある子から呼び出しを受けているんだ。また今度機会があれば」

 

残った秀人や伊達、岡崎、上田、塚原の四人は他のアンツィオ生に取り囲まれてナンパされるが。

秀人は約束事を思い出したのか誘いを丁寧に断ると7TP戦車に乗ってその場を後にするのであった。

程なくして貴子やカルパッチョ、安倍の三人とナンパされた三人もそれぞれ分かれてその場を後にするのだった。

 

 

小山秀人は、実姉の柚子と親友の姉である妙子から呼び出しを受けて閑散とした臨時生徒会室に入る。

彼は何らかの相談があるのだろうと思いながらソファーに腰掛けて待っていた彼女達二人の向かい側にあるもう一つのソファーにどっかりと腰掛ける。

 

「二人ともどうしたんだ。何か困ったことがあるのか?この前園委員長達に絡んだ輩達がこの辺りにまた出て来たとか。足りないものが有るとか他に何か相談したいことがあるなら気軽に話してくれ」

 

「ふふっ。ひで君ならそう言ってくれると思った。さあ、妙子ちゃん!」

 

「相談事はね……私、秀人君の事がシンちゃんと同じくらい大好きなの!戦車道大会中に色んなお話をした事や決勝戦前に他の皆んなに内緒で学園艦のお風呂に入った時とかこの前シンちゃんがナカジマ先輩達にハグされているところ見て寂しそうにしていたところを慰めてくれた時からあなたの事が大好きになっちゃったの……だから私みたいにエッチな身体をした女で良かったらお付き合いして欲しいの」

 

「(まじかよ妙子ちゃん。俺は仲間として好きだけど、ここまで思ってくれてたなんて。嬉びと感謝しか浮かばねえよ)……断る理由なんて無いよ。だからこれからは恋仲として妙子ちゃんを大事にするよ」

 

「ありがとう秀人君……これからもよろしくね!」

 

「ああ」

 

秀人は妙子からの大胆な告白によって度肝を抜かれてしまい。完全に硬直しながら内心で悩んでいたが。

彼は次第に元の冷静さを取り戻して彼女の想いを受け止める事にしたのだった。

 

「二人とも仲良くなさいね。ひで君が女の子と結ばれてよかった。お姉ちゃんは今すごく嬉しいわ!」

 

「ありがとうございます。柚子先輩!私、秀人君を柚子先輩に負けないくらい愛でてそして仲良くします!」

 

「ありがとう柚子姉。絶対に妙子ちゃんを幸せにするよ」

 

「さあ二人とも。こんな埃くさい生徒会室を後にして別のとこへ行ってらしゃい!楽しんでね」

 

「「行って来まーす!!」」

 

「そうだ柚子姉。今までブラコンとか言ってきたけど。本当はどこか嬉しかったし楽しかったよ。本当にありがとう」

 

「……どういたしまして」

 

姉の柚子は弟に彼女が出来た事が嬉しくてしょうがなかったのか二人を励ますと同時に穏やかな笑顔で部屋から出る二人を見送るのだが。

途中で秀人が立ち止まって彼女に本心を打ち明けると同時に感謝の言葉を口にする。

同じように柚子も相槌を打つと静かに見送り。二人の姿を見送るとソファーに腰掛け直すと弟との思い出浸った後に改めて愛する彼の成長が嬉しくなったのか。両目から涙を流し始めた。

 

 

 

秀人や柚子、妙子の三人のやり取りを生徒会室の隣にあったマット置き場の壁に耳を当てて聴き終えた木村と忍は同じように二人が付き合い出した事を嬉しく思いながらその場を去ろうとするが、忍が木村を呼び止めた。

 

「ねえ木村君。たしか木村君は好きな子が出来た事が無いって言ってたよね。だからこの際だから聞いて欲しいの…」

 

「だったら。いきなり過ぎて引くかもしれないけどさ、俺忍ちゃんの事が好きだ」

 

「私は木村君の事が好きなの!」

 

「「え?」」

 

お互いが好意を抱いていることもあってか想いを打ち明けるタイミングがほぼ同時になってしまったため。

思わず驚く二人であったが、それも束の間。忍の方から木村をマットに優しく押し倒して抱きしめる。

 

「木村君も私の事を好きだと思ってた。だっていつも私に気を使ってくれるし。戦車の事で分からない事があったら誰よりも早く教えてくれるから。それにそんなかわいい顔と体付きだからとても愛らしくて仕方なかったの。だから私のものになってくれないかな。私達二人でならこの先も走って行ける気がするの」

 

「……忍ちゃん。俺は今、すごく嬉しいよ。だってお互い好き同士だからさ。ああ、このまま何処へだって一緒に走って行こう。大好きだよ忍ちゃん」

 

「私もよ木村君」

 

それから両想いだった二人はそれぞれの想いを打ち明け終えると好意の言葉を口にした後にそのまま抱き合いながらお互いの顔を見つめ合い始めるのであった。

 

 

 

この日の晩、桃と柚子が二人で近くのコンビニに行ってから帰る道中で男女間の恋愛に関する話で盛り上がっていた。

この二人は秀人と妙子が付き合い始める以前から大友とみほの関係にも気付いており。ずっとその事で持ちきっていた。

 

「そう言えば大友と西住は今、熊本の実家に帰ってるようだな。あの二人は大会の間ずっとチームを支えてくれてたから少しでもゆっくりしてもらわないとな……二人とも楽しんでいるのかな」

 

「そうだね。あの二人だからずっと愛し合ってそう。だって同級生なのに西住さんのことを「みほ姉貴」って言ってるぐらいだから。私もあの子みたいに舎弟さんが欲しいよ桃ちゃん」

 

「柚子ちゃんには秀人がいるだろう!って今はもう近藤の姉の方と付き合い始めたらしいじゃないか」

 

「もうそれ知ってたんだ。嬉しいけどちょっぴり寂しいかな」

 

「はぁ。柚子ちゃん。もうブラコンは卒業したんじゃなかったのか」

 

桃は柚子の中にある特殊な感情が残っていることに突っ込みながら話を進める。

彼女は歳が離れた弟や妹達がいる為、柚子や妙子が特殊な感情を抱いていることに関しては理解を示しており不快に思っていなかった。

そんなやり取りが続いているうちにコンビニから少し離れた先にある小規模な駐車場に一輌のコメット巡航戦車が停めてあるのが目に入り。

それだけでなく。一人の少年が砲塔の上に座って夜の海を眺めていたのだった。

 

「あのコメットはまさか……おーいっ!そこの君!」

 

「あの子がこの前桃ちゃんが話していた子ね」

 

咄嗟に桃が走りながら少年に声を掛ける。彼はそばまで来た桃と柚子の存在を理解すると砲塔から降りて二人に向かって頭を下げる。

 

「はぁはぁ。ようやく会えたな」

 

「こんばんわ。河嶋さんと小山柚子さんですね。あっそうだ。この前は用事があったため名乗れませんでしたが。この辺り出身で楯無高校一年生の『桐村遥馬(きりむらはるま)』って言います。今晩はゆっくりお話が出来そうですね」

 

「君の名前は遥馬君というのか。楯無高校か……聞いた事が無い学校だな。その学校、戦車道チームはあるのか?」

 

「残念な事に俺が入学する前に廃部となったそうです。ですがこうして俺は自分が小さい時から世話になってるこの子という愛車がありますから。社会人や学生が混合で試合をするイベントがある時はこの子で昔から戦ってきました」

 

「そうか。君は戦車道を小さい頃からやっていたのか」

 

「桃ちゃん。私は今、戦車との縁を感じちゃった。私の家にもひで君が乗っている7TPがあったのを思い出したわ」

 

桐村と名乗るこの少年は軽く自己紹介を交えながら早速桃と柚子の二人とも打ち解けあっていた。

彼女ら二人は同じ学校の戦車道男子と似ているような似てないような気がすると感じながら彼と戦車に関する話で盛り上がる。

 

「あの。二人は悩み事とかありませんか?よかったら相談に乗りますが……」

 

「良いのか?だったら二つほど聞いてもらうか。私は砲手もやっていたりするが。砲手の腕に関しては皆無に等しい。戦車道に関する事は以上だ。その次に学校に関する事だ。このままだと全校生徒全員が希望する学校への転学もしくは無条件で転学斡旋される高大一貫校への転学が行われた際、今後他の生徒達になんて言えばいいか分からないのだ」

 

「桃ちゃん…」

 

桐村は大洗学園が置かれている状況や戦車道大会で桃の弱点を知って居たのだろうか。

彼女らを気遣うかのように彼は相談事や悩み事に乗ろうとする。桃はどこか気が楽になったのか自身の悩み事を彼に打ち明ける。

その傍らで柚子が悩み事を語る桃の手を優しく握る。

 

「なるほど。確かに砲手は難しいですよね。シュトリヒの計算とかもありますから。でも俺的に河嶋さんは何もできないという人じゃ無い気がします。小山さんもそう思いませんか?」

 

「そうだね。桃ちゃんは時々パニックになったりするけど、寮に来た時は自分から問題解決に動こうとしたり。一回戦の時も舞い上がりそうだったみんなを抑えたし、サメさんチームの子達からもすごく頼りにされているから砲手の腕が全てって訳じゃないし。桃ちゃんは装填がとても上手じゃない」

 

「あとはせっかく戦車道界に希望を与えた大洗学園がこのままだと廃校になってしまうのは俺も悲しく感じます。ですが、河嶋さんや小山さんが罪悪感を感じる必要はありません。悪いのは学園艦教育局の強引なやり口です。俺からすれば高大一貫校への入学斡旋とは名ばかりの学園乗っ取りであり。結局は私立化して思うがままにしたいだけでしょう。特にあの辻という局長には何らかの裏があると俺は踏んでいます」

 

桐村は柚子と一緒に桃を励ましつつ。彼自身の大洗に対する思いやほぼ間違いではない推測を彼女らに語る。

そんな二人の励ましが声を奏したのか、桃は完全に元気を取り戻したのであった。

 

「……ありがとう二人とも。落ち込んでいる暇はない。会長分まで頑張らねば」

 

「桃ちゃん。私のことも忘れないでね!」

 

「ああ。そうだったな。遥馬君、相談に乗ってくれて助かった。申し訳ないがそろそろ私達は寮に戻らなければならない時間だ」

 

「待ってください。夜道なので戦車でですが二人をお送りします」

 

「何から何まですまないな。お言葉に甘えさせてもらおう」

 

「ふふっ。いつも通りの桃ちゃんに戻ってよかった」

 

彼女達二人は桐村の気遣いに感謝しながらコメットに乗り込んで寮に戻っていくのだった。

この時一部の者達を除いてこの桐村遥馬が大洗学園の廃校問題という名の暗闇や辻の野望に抗い切り裂かんとする者の一人である事は桃と柚子を含めてまだ誰も知る由がなかった。

 




ありがとうございました。次回は第三十話を投稿する予定です。また次回も捏造設定がかなり割り込んできます。
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