西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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ご覧いただきありがとうございます!
今回でハーレムタグは回収されたかと思います。引き続きお楽しみください!


第三話 意外な再会とお友達が増えます!

いつの間に寝てしまったのだろうか、大友はみほと出会った日の夢を見ていた。

当時、彼は水野や木村、安倍といった三人の子分達と共にタンカスロン界隈でその名を轟かす武闘派として全国のライバルたちを各個撃破して順調に勝ち進んでいた。

だが、そんなある日。熊本県に西住流主催の戦車道の試合に訪れた際、運命の人と出会った。それが、後の姉貴分となる西住みほであった。

この時、大友達は彼女とその姉である西住まほの助っ人役として参戦していた。

 

『今日はよろしくね。それに、二人が乗るⅡ号戦車はとても頼りになりそうだし、腕も期待しているよ』

 

『よろしくねっ!みほとまほって呼んでねっ!』

 

今とは真逆に少々やんちゃ気味であった幼少期のみほが元気にそう言う。

 

『よろしく頼むねっ!みほさん、まほさん』

 

しかし、試合開始直後。大友達が動きだす前にⅡ号戦車は華麗なる回避行動と敵を惑わす動きで三輌をまとめて相手にし、彼がこの時乗っていたT-15軽戦車と他の三人の戦車が動きだした頃には、みほ達の攻撃によって敵の戦車は全て履帯を切られて身動きが取れなくされているのであった。

 

『こ、この人はとんでもない人だっ……』

 

この時の大友達四人は、全員この考えにはまってしまったのである。

 

『今だよっ!撃って!』

 

みほの一言によって自然と身体が動き、とどめの一撃を三輌に浴びせたところで試合が終了した。

 

『……すげぇ。対戦相手じゃなくてよかった』

 

四人は同じ言葉を口から放つと武闘派と呼ばれて浮かれていた自分たちがみじめに思えて来たのであった。

負けた時と同じ気分になってその場に座り込んでいるとみほがやって来た。

 

『あれ?勝ったのに何で落ち込んでいるの?勝ったんだし、みんなで喜ぼうよっ!』

 

『二人の役に立てなかった僕達だよ?いいのかい』

 

『役に立たなかった訳ないよっ!最後にみんなでとどめを刺したからいいのっ!”みんなそれぞれ個性”があるんだからっ!』

 

『そうだぞ。皆で得てこその勝利だからな』

 

四人は、みほとまほが慈しみの女神様に見えたほどであった。特に最後の一言は同時に彼ら四人を完全に虜にしてしまった。

この日を境に大友は西住姉妹と戦車道やタンカスロンなどを通じて交流を重ねていくうちに仲良くなっていった。

それから月日が経って彼女が黒森峰女学園中等部に入学したころ、大友はみほに対して今の彼を完全に築き上げた一言を放つ。

 

『みほさん………いや、みほ姉貴。俺は今まで貴女から沢山の事を学ばせていただきました。どうか俺を舎弟にしてくださいっ!!』

 

『わ、私がお、お姉ちゃん?!……誠也君が良いならそれでいいよ。ふふっ。血の繋がりは無いけどかわいい弟が出来て良かった♪』

 

こうして大友は今、新たな戦車道を切り拓こうとするみほのそばに寄り添って行こうとしている。

そんな懐かしい夢の世界から目が覚めたのであった。

 

「おっと、寝てたのか俺。って……みほ姉貴っ?!」

 

意識がはっきりして分かったのは、みほが覆い被さるようにして大友の身体に足を絡めて抱きつき、すべすべとした艶やかな頬を彼の右頬に密着させていたのであった。普段の彼女からは想像できないこの姿は誰にも予想できないだろう。

大友は、みほを起こさないよう慎重に彼女から離れて洗面所に向かって昨日の夕食前に買って来た使い捨ての歯磨きセットで歯を磨き、それが終わると顔を洗う。

 

「そうだ。姉貴が起きるまで時間もあるし、何か飯でも作るか」

 

彼は台所まで行くと、冷蔵庫の中に余っていた食材を使って料理を作り始めたのであった。

作り始めてから十分経った頃だろうか、みほがいつもより早く目を覚ました。

 

「おはようございます。みほ姉貴」

 

「誠也君おはよう………朝ご飯を作ってくれたのっ?!」

 

「暇だったので、なんとなく作ってみました」

 

驚く彼女の目の前のテーブルには、白ご飯とベーコンとほうれん草のバター炒め、残り物の玉ねぎのみそ汁やデザートにはヨーグルトが置かれていた。

 

「ありがとうっ!いただ……おっとその前に」

 

みほはハンガーに掛けていた制服を持って慌てて洗面所に向かうと、五分くらい経った後に鼻歌を歌いながら戻って来た。

 

「どうぞ、召し上がってください」

 

「はーいっ!いただきますっ!」

 

元気にそう言って楽しそうに食事を頬張るみほの姿を大友は微笑ましく思いつつ、牛乳を片手にこしあんパンを食べていた。

彼は、何か会話のネタになるものが無いかと近くにあったテレビのリモコンを手に取り、電源をつける。

そこに映し出されたのは、再び男女混合化されてから五年経った戦車道の状況についてのニュース映像であった。

映像には戦車道連盟の大物達が映し出されており、右から戦車道連盟理事長の児玉七郎や国防軍の大尉蝶野亜美、極めつけは島田流の家元、島田千代の三人が出演していた。

 

「っ?!……児玉理事長や蝶野大尉、島田先生まで出ているとは朝から豪華だなぁ」

 

「戦車道の男女混合化か……誠也君みたいにタンカスロンから来ている子達も居るのかな?」

 

「もちろん居ますよ。ただ、みんなシャイというか。謙虚過ぎるというか……そんな子達ばっかりですけどね」

 

大友とみほが戦車道に関する会話をしていると、彼の携帯電話にメールの通知が届く音がする。気になった彼が送り主を見ると言葉を失いかけた。

 

「うぉっ……(相変わらず変わらないな先生は。前よりも本格的な勧誘と個人的な感情が強くなってんなぁ。丁寧に写真まで送りつけてきてるし)」

 

「どうしたの?誠也君」

 

「いや、Y〇utu〇eで好きな人が動画を更新したから驚いただけですよ。気にしないでください」

 

「ふふっ。そうなんだ」

 

彼女の舎弟である大友であっても見せたくない島田流家元、島田千代からのメールは以下のようなものであった。

 

ー久しぶりね。誠也君、朝のニュースは見てくれている?まぁ、タンカスロン界屈指の武闘派である貴方なら見ていると思うけど、気持ちは変わったかしら?私の貴方に対する気持ちは変わらないわ。

私のかわいい娘、愛里寿も同じよ。今からでも遅くないから島田流主導で日本の戦車道に更なる改革をもたらすと同時に……私の息子になるか愛里寿の婿に来ることを考えなさい。親子で貴方を愛しているわ。島田千代よりー

 

この文章の一番下には、写真ファイルが添付されており。何となく開いてみると、そこには二人で手を合わせてハートの形を作った千代とその娘、島田愛里寿の姿があった。

大友は、この一年前。島田流に何度か世話になったことがあり、当然ながら島田親子に対して感謝と敬意は大いに持っている。

だが、まだ夫が健在している千代からのアプローチやいくらなんでも早すぎるだろうと言いたいぐらい愛里寿から求婚を求めてきたり……今の写真のようなアプローチがちょっとした悩みの種であったりするのだ。

 

 

 

朝からくつろぎ、余裕を持ってマンションから出た二人は他愛のない会話を交わしながら通学路を歩いていたが、マンションから出てすぐの角を曲がった瞬間、ふらつきながら歩いている少女が二人の視界に写る。

次の瞬間、彼女はその場に座り込んでブツブツと独り言をつぶやき始める。

 

「辛い。ずっと夢の世界だったらいいのに……だがっ行かねば……」

 

「大丈夫ですかっ?!」

 

「あんた、しっかりしろ。俺がおぶってやるから学校までに目を覚ませよ。みほ姉貴、悪いんですが。俺の鞄を持ってくれませんか?」

 

「う、うん。しっかりしてください」

 

「……かたじけない」

 

大友とみほは、今にもそのまま歩道に寝ころびそうな彼女を介抱すると。彼がそのまま少女をおんぶし、みほは彼女が落ちないように背中に手を重ねている。

そんなやり取りをしているうちに学校に間に合い。校門を通ろうとするが、すぐそばで立っていたおかっぱ頭の風紀委員……園みどり子(以下そど子とする)が三人を呼び止める。

 

「もう……冷泉さん、二人に感謝しなさいよ。大友君と西住さんだったかしら?彼女をあまり甘やかさないで、厳しく言っておいてね」

 

「ははあ。園先輩、みほ姉貴は気遣いが良い人だからそれはちょっとな……」

 

「あなたはほんと人が良いわね。まぁ、いいわ」

 

「……そど子も相変わらずだな」

 

「冷泉さんっ!何か言った?」

 

「別に。何も言ってない」

 

大友がそど子と何気ない会話をしていると、いつの間に彼から降りたのだろう。ふらついていた少女こと、冷泉麻子が彼女を揶揄うように小さくあだ名で呟くと、それを最後に三人は校舎の中へと進んでいく。

二人の少し前を歩いていた麻子が二人の方を向くと、軽く頭を下げて感謝の言葉を口にする。

 

「二人ともさっきはありがとう。ところで、私をおぶってくれた大友君に聞きたい。前にどこかで会ったか?」

 

「いや、気のせいだよ。他人の空似ってやつかもな……みほ姉貴、俺は駐車場に用事があるのでこれにて失礼しま……」

 

「おはようっ!みほ、麻子!それに、誠也君っ!」

 

大友は、麻子に対してそう言いながらその場を去ろうとするが。三人の後ろから沙織や華、優花里が手を振りながらやって来る。

 

「誠也君……大友君?……あっ」

 

「麻子どうし……ええ?!」

 

「あら……」

 

「何とこれはっ?!」

 

沙織は幼馴染の行動をスカートのポケットに仕舞っていた眼鏡を掛けてまで二度見したほどであった。

先ほどまで眠たそうにしていた麻子は目がはっきりと開き、嬉しそうな表情で大友に抱きついていた。

 

「誠也君っ!何で黙ってここに来ていたんだ?一人で去年入学して来た男子生徒は誠也君だったのか……」

 

「やっぱり。麻子ちゃんだったんだ!それはその……黙っていて悪かった。それと事情が色々あってな。麻子ちゃん。お父さんとお母さん、おばあちゃんは元気にしているか?」

 

「うんっ!三人とも元気だぞ」

 

彼女は無邪気な笑顔で彼と会話を楽しんでいる。その傍らでは、みほ達四人が微笑ましく二人を見つめている。

大友もさすがに参ったのだろう。麻子の頭を優しく撫でている。

 

「そうだ。麻子ちゃん。寝坊寸前になるまで夜更かしするのはヤバいだろう」

 

「だって。夜は親友だから……」

 

「夜も魅力的なところを持っていたりするけどよ。こうして朝、良い友達と会えるんだから朝と仲直りするのもいいと思うぞ。よし、俺はこれで行くからよ。みほ姉貴や他の三人とも仲良くしてくれよな?この子達もすげー良い子なんだぜ。じゃあな」

 

彼は、可愛らしく頬っぺたを膨らませる彼女の頭を優しく二回ぽんぽんとたたくと、大きく手を振ると駐車場の方へと歩いていくのであった。

 

 

 

大友が向かって行った先は、屋根が付いたあまり使用されていない駐車場であった。そこにポツンと貫禄のある戦車が鎮座している。

史実では、本土決戦のために温存されていたが。この世界線では史実より早く(三年早い一九四十年に)完成して量産されたため、日本帝国軍において使用されて第二次世界大戦の太平洋戦線やオーストラリア攻略戦で活躍し、連合国と講和後に国防軍に改編されても数年間は予備兵器や訓練用兵器として使用されて来た三式中戦車・チヌであった。(※フィクションです)

それを楽しそうに眺めている猫耳が付いたカチューシャを身につけた長い金髪の少女……ねこにゃー(猫田)に彼は声を掛ける。

 

「よぉ。あんたは戦車が好きかい?」

 

「わぁっ?!ど、どうも」

 

「おっと。いきなり済まないね。俺は二年の大友って言うんだ。戦車道が復活するからシブいこいつを眺めに来たんだ」

 

「僕はねこにゃー……猫田です。戦車道が復活かぁ。ボクも出たいんだけど、二人くらい居る友達がネットの向こうでしか話したことが無いんだよね……あっでも。戦車の操作方法はある程度知識があるから……」

 

「知識か……良いと思うけどよ。実際に触ってみたくないか?大丈夫、人手の事なら俺に任せてくれ。あっでもネットの向こうにその友達がいるんなら、その子らも誘えばいいじゃねぇか。チヌがゴ〇ゴ13みたいに敵戦車を狙撃して足止めする。是非とも生で見てみたいなぁ。それと戦車道がやりたいんだったら、俺がうまいことやっとくからよ」

 

「えっ?!いいの?」

 

「そりゃ、一期一会ってもんだろう。じゃあ、戦車道の履修申請をすべきだと思うぜ」

 

「は、はいっ!」

 

彼は、彼女とそんなやり取りをするとその場を去っていった。ねこにゃーは気分が良くなったのだろう。好きなアニメの主題歌を歌いながら再びチヌを眺めるのであった。

こうして後日、多めの履修者と一輌でも多くの戦車を確保することに成功した大友であった。

 

 




ご覧いただきありがとうございました!
今回もオリジナル展開と設定を混ぜ込んでみました。麻子さんと大友の関係ですが、次回以降明らかにしていきます。
最後になりますが。評価やご感想、お気に入りへの登録などお待ちしております!

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