西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

6 / 35
ご覧いただきありがとうございます。今回も原作とは違ったオリジナル展開を入れてみました。
引き続きお楽しみください!


第六話 姉貴と舎弟のお手合わせです!

みほ達をはじめとする生徒達に発見された戦車の整備が自動車部と大友連合会の幹部達の手によって早いうちに終わり。次の日には完全に動かせるようになっていた。

今日は戦車に乗る授業が行われるのだが、その教官は豪快かつアバウトな印象の女性だった。

名前は蝶野亜美。国防陸軍の大尉でみほの母である西住しほの教え子であり、現在は国防軍の機甲教導隊所属の隊員も務めつつ日本戦車道のプロリーグ強化委員も務めている人物だ。

 

「蝶野大尉。お久しぶりです。……あの、そろそろ離れてくれませんか?そこまでされると少しキツいので……」

 

「いいじゃない。それに、この間までアメリカに合同軍事演習に行ってた時のくせが抜けてないの」

 

『大友先輩ってモテモテだ~』

 

普段の豪快さを物語るかのように、乗って来た10式戦車から降りて一同に自己紹介をした直後、自身の胸に彼を押し当てる形で大友に抱きついたのであった。

彼も抱きつかれるとは思っておらず。彼女によるスキンシップの激しさに少し困惑する。

一年生六人組の様子を見てさすがの蝶野も観念したのだろうか、抱きつくのをやめた。

 

「それではみなさん。戦車道の本格戦闘試合をやってもらうわ。七輌いることだし、大友君以外の六輌で三対三でフラッグ戦の模擬戦闘をしてもらうわっ!」

 

「あの、教官っ!どういったチーム振り分けにしますか?」

 

「そうね。Ⅳ号戦車とM3Lee、八九式中戦車で白チーム。LT-38軽戦車とⅢ号突撃砲、三式中戦車・チヌで組む黒チームでフラッグ戦をやってもらうわっ!」

 

「でも、私たち。戦車を触ったことがまだないので」

 

「それなら、あなた達のDチームには水野君。Bチームには木村君が。Eチームには小山君が乗って三人をサポートして。あと、Cチームには安倍君がついてね。それじゃあみんな戦車に乗ってね!大丈夫、何事も経験よ。さぁ、みんな乗って乗って」

 

梓の質問に蝶野は答えながら簡単にチームの編成をし、素早く試合の段取りをする。それから各チームが戦車に乗り込んでいったところで戦車道の授業が本格的に始まるのであった。

 

 

 

 

二つのチームはそれぞれのスタート地点に着き、蝶野から簡単な指示を受けていた。戦車道の公式試合におけるフラッグ戦とは、どちらかの旗がついた車輌を撃破すればそのチームの勝利という至ってシンプルな形式だ。

その他には殲滅戦なるものも存在し、こちらはどちらか一方が全滅すれば勝利といった試合形式である。

前者の試合形式で模擬戦を行うことになった大洗学園戦車道履修者一行は、ドキドキや緊張といった心理感情だった。

 

「改めて初めまして。白チームの隊長をすることになった西住みほです。早速ですが、山の中腹にある橋に向かいましょう。そこで黒チームを待ち伏せて持久戦に持ち込みましょう。特にCチームのⅢ号突撃砲には注意してください。あの戦車がもつ75mm砲は特に強力なため、命中すればひとたまりもありません。それでは、前進してください」

 

『了解っ!』

 

みほがBチームとDチームのメンバーに対して軽い自己紹介をしたのち、分かりやすく指示を出したうえ強力な車輌の注意喚起を行う。それから三輌の戦車は前進する。

 

「ねぇねぇ。他の戦車には大友連合会の子達が乗っているけど、私たちは五人だけだね。でも、みぽりんの指示って何か分かりやすいし。それにみんなの性格に合わせて役割配置しているからすごく頼りになるっ!だから、ガンガン指示を出してね」

 

「ありがとう……実は初めてみんなに頼りにされたからすごく嬉しい。じゃあ……遠慮なく指示を出させてもらいますっ!」

 

「西住殿っ!どんどん指示を出してください。西住殿が操る戦車の搭乗員になれて嬉しく思います」

 

「戦車の砲撃の反動というか衝撃を一度味わってみたかったので、お手柔らかにお願いします」

 

「西住さんには恩があるし。どこまでも走ってやるぞ」

 

Ⅳ号戦車の車内はみほを信頼する声で溢れていた。それを物語るかのように、彼女が操る戦車の動きは彼女が率いる他の二輌とは違って初々しさすら無く。悠々堂々と山道を駆け抜けている。

 

「そうそうその調子だよ桂利奈ちゃん。コツが掴めてきているから焦らずマイペースで良いからね」

 

「あーいっ!」

 

「それと梓ちゃん。前も言ったと思うけど、攻撃する時は上の副砲で相手の履帯を切ってから主砲でドカーンもいいし。装甲が薄いチヌのような戦車にはいきなりドーンと主砲でとどめを刺すか、至近距離なら37mmを使っても問題ないからね。まぁ、この戦車の車長は梓ちゃんだから。君の好きなようにしたらいいよ」

 

「ありがとう水野君。また分からないことがあったら水野君に聞くわ」

 

「お安いご用さ。じゃんじゃん聞いてくれても構わないぜ。というか、沙希ちゃんそっちばかり見ていてもだめだぞ。装填手なんだから」

 

「……っ?!」

 

Dチームが乗るM3の車内に乗り込んだ水野はこの戦車の指南書を手に持ちながらも自分なりの考えを交えながら操縦手の桂利奈をフォローする。彼女だけでなく、車長の梓にも彼は自身の考えを交えつつアドバイスをする。

いざ水野自身も戦車に乗って何らかの役割をすると武闘派の名の通りの腕を発揮させるが、彼女達六人がせっかく成長する機会なのでその腕は敢えて出さず。六人に対するアドバイスに徹しているのであった。

チーム内の一人一人を気にかけており、自身の膝の上に乗せていた沙希が明後日の方向を向いていたため。彼女の体と顔をまっすぐにする。

 

「操縦歴が長い木村君の教え方もあってスムーズに進めるようになったわ。あとは根性ね……」

 

「ははっ。根性まで行っちゃうと奥T摩周遊道路とかH奈道路にいる走り屋みたいになっちまうぜ忍ちゃん。まぁ、その方が結構戦車道に役立つんだけどな」

 

「やっぱり根性もこういうところでは役に立つんだ……佐々木、河西、近藤。それに良かったら木村君も。せーのっ!」

 

『根性っ!!』

 

操縦手歴が長い木村の教え方もあってか、Bチームの八九式中戦車は快調に進んでいる。戦車探しから行動を共にすることが多くなったため、彼は車長の磯辺典子をはじめとするメンバーのノリに合わせる。

大友組の幹部二人が加わったことでこの二輌もみほ達のⅣ号戦車のように快調な動きを見せつつある。

そうこうしているうちに中腹の橋に向かう分岐点にやって来たのだが、ここで黒チームの三輌と鉢合わせてしまう。

 

「みなさん。交戦を避けてそのまま橋に向かいます。Dチームは先頭に出てください。私たちでBチームを挟むようにして守りながら進みますっ!」

 

みほの咄嗟の指示でDチームがBチームの先頭に出て走りだす。彼女のⅣ号戦車が最後尾を蛇行しながら走行し、フラッグ車の八九式を狙う黒チームの射線を妨害する。

相手の黒チームも彼女たちのようにコツを掴んだのだろう。三輌から放たれた砲弾がⅣ号戦車の側面装甲を掠めていく。

 

「……ひぇっ」

 

「大丈夫だよ沙織さん。そのままBチームとDチームの無線を聴いていて大丈夫だから」

 

「ありがとうみぽりん」

 

砲弾が装甲を掠める音に対する恐怖心が勝ったのだろう。沙織は小さく悲鳴を漏らすが、それを見たみほが優しく彼女をなだめる。

彼女が元来持つ優しさが効果を発揮したのか、沙織はいつもの調子に戻る。その様子を確認したみほは静かに微笑むと、キューポラから身を乗り出して後ろを振り向く。

黒チームの三輌は千鳥縦列を組みながら彼女達白チームを追いかけているが、幸いにも機動力でこちらが勝っているため、引き離しつつある。間もなくして橋のある場所に着いた。

 

「ここで方を付けます。Dチームは再びBチームを護りつつ橋を渡ってください。麻子さん、バックしながら橋をゆっくり渡ってください。上手く渡れないふりをして相手の三輌が出て来た瞬間。華さんは真っ先に三突を狙ってください。相手は必ず私たちのⅣ号に対して一斉に主砲を向けるはずです。Bチームは38tを。Dチームはチヌを撃ってください」

 

『了解っ!』

 

三輌は彼女の指示通りに動き、しばらくして相手チームが姿を現した瞬間。相手はみほが心の中で予想していた通り38tを先頭にチヌが続き、最後尾に三突といった組み合わせで姿を現して三輌は予想通り一斉にⅣ号戦車に対して主砲を向ける。

 

「今です。撃てっ!」

 

みほがそう言った途端、華は冷静沈着な面持ちで主砲の発射トリガーを引き、見事に三突に命中させて撃破する。それと同時に三突が撃破されて少しパニック気味になる38tとチヌの二輌にとどめを刺すように、DチームのM3が後退を始めたチヌの履帯を副砲で切断し、装甲が薄い左側面に75mm砲から放った砲弾を撃ち込み撃破する。

 

「お嬢さん方やるじゃねぇか。自分達の実力だ。そのままの調子で続けるんだ」

 

「おぉ!さすが水野のカシラっ!カシラのおかげですっ!」

 

テンションが上がっているDチーム六人組の中で特にテンションが高かった桂利奈が声を上げてそう言う。

 

『ファイトー!おーっ!』

 

Bチームのメンバーと木村が車内でそう叫ぶと同時に八九式中戦車の主砲から放たれた砲弾が、逃げたはいいものの近くの泥濘地に背面装甲を晒してハマっていた38tに撃ち込まれるとこちらも撃破されてしまった。

相手の三輌は撃破されたといってもエンジンから白煙を上げてキューポラの横から白旗を出して沈黙していたのであった。

 

『無事勝利出来てよかったです。みほ姉貴』

 

「誠也君、戦車に乗って来たんだ」

 

撃破された三輌が通って来た山道から大友が乗るE-25が姿を現したと思いきや、無線で彼女に対してそう言うと戦車から降りて橋の上で鎮座するみほのⅣ号戦車の前まで歩いていき、指導役を担当していた水野や木村、安倍も降りて来て同じようにⅣ号の前まで行く。

四人揃ってみほ達の前に立つとそのまま両手を膝について謙虚に頭下げて大友は次のように言った。

 

「みほ姉貴の指示は蝶野大尉と一緒に居た際に、聞かせてもらっていたのですが。素晴らしいものでした。そこで俺自身の恥を忍ぶ形になりますが。三対一でみほ姉貴とBチームとDチームの三輌と俺のE-25の一輌でそのまま勝負してくださいっ!!」

 

『お願いしますっ!!』

 

「ふぇっ?!三対一で?……誠也君達がいいなら私はいいよ。BチームとDチームのみんなはどうかな?」

 

『問題ありません』

 

「ありがとうございます。それでは、舎弟・大友誠也とその若衆達は貴女と全力でぶち当たらせてもらいますっ!!」

 

「うんっ!よろしくね」

 

これには、みほを含めた全員が驚いたが。彼女達はこれを快諾し、撃破されたCチームやEチーム、Fチームの三輌の戦車が自動車部と大友組に回収されたのちに勝負が始まったのであった。

 

 

 

この勝負は、最初のスタート地点から始まり。それぞれの戦車が配置に着くと勝負が始まったのであった。車長兼通信手には大友。砲手には水野。装填手には安倍が。最後に操縦手には木村という構成でE-25は走り出したのであった。

 

「お前ら、相手はあのみほ姉貴だ。何があるか分からん。取りあえずBチームとDチームの撃破だ。それからみほ姉貴とやり合うぞ」

 

『はいっ!』

 

「親父、それだったら林の中から近づいてカシラに撃ってもらった方が良いと思うぜ」

 

「そうだな。英雄、桔平そうしてくれ。この戦車は車高が低めといえども塗装がジャーマングレーだからすぐにばれちまうからな。桔平が撃った後にすぐ動いてくれっ!」

 

「おう。分かった」

 

「分かりました。親分」

 

彼は、兄弟分達と一連の段取りをすると木村の提案通りに先程白と黒の二チームが鉢合わせた分岐点の真ん中の林から進入していき、しばらく進んでから速度を落として微速で前進する。

進んでいるうちに橋のある場所の少し前にある平野が見え、ちょうど三輌が縦列を組んでいる姿が目に入る。

 

「桔平。そのままⅣ号の後ろのBチームだ。流石にこの距離じゃこいつでもⅣ号の正面はきついからな。撃てぇ!」

 

大友が指示を出すと、水野は発射トリガーを引く。主砲から発射された砲弾はⅣ号の後ろを走行していたBチームに命中し、撃破することが出来たのだろう。白旗を上げる。

彼の予想通り隠れている場所がばれたのか、残った二輌が一斉に主砲をこちらに向けて攻撃を開始する。

 

「いくぜっ!兄貴っ!」

 

木村がそう言うと、E-25はそのまま林から飛び出して砲弾を避けながら一気に距離を詰めていく。二輌に近づくにつれて砲弾が車体を掠める音が増えていく。

そろそろ二輌とE-25が激突してもおかしくない距離まで来ると、E-25はドリフトターンを決めてDチームのM3を撃破する。

 

「残るは姉貴のⅣ号だけだ。何とか近づいて方を付けるぞお前らっ!!」

 

『はいっ!』

 

BチームとDチームの二輌とは訳が違い、距離を詰めても彼女達は逆に射線内に入らせないようにしているのだろう。大友達のE-25に対して正面から体当たりを繰り返している。

 

「このままじゃ埒が明かん。そのまま時計回りに後退して逆に後ろに回り込むぞっ!」

 

「おう。任せてくれっ!」

 

この時点での彼の考えは間違っていなかった。だが、次の瞬間みほ達のⅣ号は反時計回りに後退を始めたためにE-25は側背面を晒すこととなり、その隙を逃さなかった華が操る主砲から砲弾が発射され、そのまま命中して彼らも撃破されるのであった。

 

「すまねぇなみんな。俺の判断ミスだった」

 

「いえ、今のは俺らも予想できなかったのでみほさんの方が更に上手だったというべきでしょう」

 

大友と水野が何気ない会話を交わしながら外に出ると、BチームとDチームのメンバーがみほを取り囲んで賞賛の言葉をかけていた。

それを見た大友はみほの前まで駆け寄ると、さっきのように膝に手をついて頭を下げて同じように彼女に賞賛の言葉をかける。

 

「さすがみほ姉貴ですっ!貴女が探し始めた”新しい戦車道”が俺には垣間見えましたっ!この調子で頑張ってくださいっ!」

 

「ありがとう誠也君。正直私達も冷や冷やしたよ。でも、これからみんなで頑張っていこうね」

 

『はいっ!』

 

こうしてチーム内での練習試合は、みほの本領発揮が確認できたうえで幕を閉じた。彼女の舎弟である大友は、尊敬する姉貴分に打ち負かされたということにむしろ喜びを感じ、内心と声に出しながら彼女を応援するのであった。

そして、西住みほは今。覚醒の時を迎えようとしているのであった。

 

 




ありがとうございました!次回は第七話を投稿する予定です。なお、次回以降原作とは異なった展開を増やしていこうと思います!
評価やご感想、お気に入りへの登録などお待ちしております!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。