西住みほの舎弟が往く!ーたとえ世界が変わっても貴女についていくー   作:西住会会長クロッキー

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第九話 強豪校との練習試合です!後編

緒戦において、二輌も戦車を撃破されたダージリンは内心で焦りを感じていると同時にワクワクしながら本気モードに入ってしまったのである。

 

「さすが誠也君ね。でも、これ以上貴方の好きにさせないわ。他のマチルダの乗員とクルセイダーの乗員は履帯が外れた戦車が復旧次第、町の方へ向かうわよ。町へ入ったら警戒を強めなさい。向こうはゲリラ戦術を展開するはずよ」

 

「敢えて二輌のクルセイダーを撃破せずに履帯を切断し、撃破した一輌を合わせた三輌で道を塞いで私たちの行動を停止させるなんて。ダージリン様が言っていた通り大友さんはただの武闘派ではなく。風変わりな戦術を駆使する方ですね。これからこの戦い方は参考に出来そうです」

 

彼女はチームに必要な指示を行いつつ、大友の腕が落ちていないことに満足しながらティーカップいっぱいに淹れた紅茶を口に含む。

初めて大友の戦法を目の当たりにしたオレンジペコは、彼の戦い方に対して素直な感想を口にする。

 

「こんな格言を知っているかしら?未来とは、今である。あの子は目の前のことに全力を尽くす子よ。仲間のために時間を稼ぐなんて公式試合では中々見れないものよ」

 

「そうなんですか。だとすれば油断は禁物ですね。そこまで出来る余裕があるなんて」

 

ダージリンは、格言を交えてオレンジペコに対して大友について少し語る。それを聞いた彼女は、先程のような調子で言葉を返す。

 

「ダージリン様っ!偵察は私たちにお任せくださいませっ!敵の隠れ場所をあぶり出して見せますわっ!」

 

「ええ、任せたわよローズヒップ。この町は入り組んでいるから十分注意なさい」

 

「もっちろんですわ!では、行ってまいります!」

 

二輌のクルセイダーの修理が完了したのだろう。ローズヒップが血気盛んな声でダージリンに意見を具申する。彼女はローズヒップに対して念を入れて忠告したあと、それを承諾する。

承諾の言葉を聞いた彼女は同じテンションでそう言いながら二輌のクルセイダーを引き連れて再び大友達の後を追い始めた。

 

「……ダージリン様。よかったのですか?ローズヒップさんを先に行かせて」

 

「ええ。ローズヒップだってただのスピード狂じゃないのよ。彼女ならうまく逃げ切るはずだわ。さぁ誠也君……わたくしを楽しませてくださいな。全車前進」

 

ダージリンはオレンジペコと会話を終えると自らも残った四輌のマチルダを率いて町の方へと向かって行くのであった。

そんな彼女の一言を彩るかのように、チャーチルの改造が施された砲塔に取り付けられた17ポンド(76.2mm)砲が太陽に照らされて少し輝く。

 

 

 

 

町で囮役を務めていた典子が率いるアヒルさんチームは町の路地を微速で走り回っていた。囮役は彼女達だけでなく、生徒会四人組のカメさんチームや大友のイタチさんチームの計三輌が囮役であった。

他のメンバーは町のどこかに身を隠しており、隊長のみほや副隊長の大友の指示があり次第動くという戦法であった。

 

「今頃敵チームはパニくっているんだろうな~西住隊長が考えた作戦は頼りになる」

 

「そうですねキャプテン。私達は敵が来ればあそこに誘導すればいいんですから」

 

彼女は操縦手の忍と言葉を交わしながらキューポラから身を乗り出して周囲を見渡している。典子からすれば、大洗の町は庭といっても過言ではなく。

敵を誘い込んで身を潜めている仲間たちのもとへ誘導すれば火力不足の八九式中戦車でも役に立つのである。

丁度その時がやって来たというべきだろうか、一度来た住宅地の交差点の左側からルクリリが乗ったマチルダⅡが右折してきた。

典子とその少女は数秒間見つめ合った後、彼女達の戦車によるカーチェスが幕を開けるのであった。

 

「会敵しました!これより誘きだします」

 

「はいっ!作戦通りあの場所へ誘導してください。カメさんとイタチさんも敵を発見次第、他のチームのもとに誘き寄せてください。余裕があればその場で撃破してください」

 

『了解っ!』

 

他のチームはみほの指示を聞くと行動を開始した。その間にも八九式中戦車はマチルダⅡの執拗な攻撃を躱しながら待ち伏せ場所へと誘導する。

ルクリリは、途中で見失った八九式中戦車が残した排気ガスの匂いを頼りに立体駐車場へとやって来た。

 

「馬鹿ね。あんなジリ貧砲でマチルダの装甲が貫けるわけないじゃない。楽にしてあげるわ」

 

彼女はそう言いながらブザー音が鳴っている建物のシャッターの前に戦車を進める。シャッターが開き始め、彼女はどんどん黒い微笑みを浮かべるのであった。

だが、それと同時に後ろの昇降機が上がり始める。間もなくしてそれに気づいたルクリリが戦車の正面を後ろに向けて姿を現した八九式中戦車に照準を合わせるが。左側面に強い衝撃が走り、そのまま撃破された。

 

「ありがとう。カバさんチーム」

 

「礼には及ばない。次の目標を探し出すぞ!」

 

ルクリリは駐車場奥の昇降機が上っていることに気づく余裕がなかったのだろう。そこからカバさんチームのⅢ号突撃砲が覗き込んでおり、八九式に気を取られていた隙をみて撃破したのであった。

アヒルさんチームとカバさんチームの二輌は次の獲物を探し出すべくその場から離れた。

 

 

 

その頃、カメさんチームは二輌のクルセイダーに追われていた。38t軽戦車の車内では桃が秀人に対して装填を急かしながら二輌に向けて砲撃を浴びせているが、全く命中せず。全て明後日の方向へと飛んでいくのであった。

 

「河嶋さん。38tは現代戦車みたいに走り撃ち出来るわけじゃないんですから、あまり撃たないでくださいよ。それにそろそろお銀さんや園先輩と合流するので」

 

「こうして撃っておかないとけん制にならないだろうっ!」

 

「桃ちゃん。ひで君の言う通りだよ。弾の無駄だし」

 

「桃ちゃんと呼ぶなっ!」

 

桃が小山姉弟とそんなやり取りをしながら次々と砲弾を乱射している。しかし、さすがに空気を読んだのだろう。発射トリガーから手を放して砲塔を正面に戻す。

相手の二輌はカメさんチームが諦めたと思ったのか一気に加速して距離を詰めるが、加速した場所が悪く。

商店街のカーブだったためカーブを曲がり切れずに肴屋本店という場所に二輌同時に突っ込み、近くの路地で待ち伏せていたカモさんチームとサメさんチームによって砲撃を加えられてそのまま戦闘不能になった。

店に突っ込んでいる状態で砲撃を浴びせたためか、建物がその反動で派手に倒壊したのだが。因みにこの店の所有者は観客席で狂喜乱舞していた。

 

 

 

大洗学園側は一気に相手の戦車を半分の五輌まで減らして優位に立っていたのだが、相手側の聖グロリアーナ女学院もやられてばかりではなく。

反撃の狼煙を上げたのであった。手始めにローズヒップが搭乗するクロムウェルがカメさんチームと合流しようとしたウサギさんチームとアリクイさんチームの目の前に現れて単独で二輌を撃破し、ダージリンのチャーチルに率いられた三輌のマチルダⅡが港近くの交差点で合流したカメさんチームやカバさんチーム、アヒルさんチーム、カモさんチーム、サメさんチーム、レオポンさんチームを包囲殲滅する形で撃破した。

遅れてやって来たみほと大友の二人によってもう三輌のマチルダⅡは撃破されたものの、二対二と互角な状況であった。

 

「誠也君、そのまま市街地のほうで方を付けるよ。誠也君がクロムウェルを狙っているように見せて私たちがクロムウェルを撃破するわっ!」

 

「分かりましたっ!クロムウェルに突っ込むふりをするんで、クロムウェルが姉貴の方にケツを向けた瞬間撃ってください!」

 

あんこうチームとイタチさんチームはしつこく距離を詰めて来るクロムウェルの迫撃から逃れながら撃破の手順を打ち合わせていた。

このクロムウェルの走り方は、クルセイダーとは異なり。戦車でありながら峠の走り屋のように器用にカーブでドリフトしたりしながら距離を詰めて来て二輌は撃破されかけていた。

それに終止符を打つべく大友は賭けに出た。もう少しで市街地にある小さめの交差点に出ようとしたところで道幅が三車線分に広がったのである。

 

「よし、今だ!」

 

「おう!」

 

彼の掛け声に合わせて左折してすぐのところで木村がバックギアに入れたのでそのままE-25は後退する。賭けが吉と出たのだろう。

クロムウェルが左折した瞬間に後退したため、自然とすれ違ったのである。

彼の思惑通りクロムウェルは慌ててドリフトターンをして正面を大友達に向けるが、そこに隠れていたみほのⅣ号戦車が現れて換装した長砲身の試し撃ちとばかりにクロムウェルの背面装甲に砲弾を叩き込む。

装甲より速度を重視した巡航戦車に耐えられるわけがなく。あっさりと撃破されてしまう。

 

「これでダージリンさん一輌のみになりましたね。このままケリをつけましょう」

 

「そうだね。もう来たみたいだよ」

 

ラスボスの登場と言わんばかりに堂々とした風格でチャーチルMK.Ⅶは二輌の前に現れた。この戦車が誇る分厚い装甲だけでもその存在をアピールし、今日にいたっては17ポンド砲が装備されているため威圧感が倍増している。

 

「行きますよ……みほ姉貴。せーのっ!!」

 

「「はいっ!!」」

 

二人の掛け声と共に二輌はチャーチルMK.Ⅶに向かって駆け出した。ローズヒップやルクリリが搭乗していたクロムウェルやマチルダⅡとは訳が違って装填の速さが尋常じゃなく。

砲撃の精密さもこちらが圧倒的に優れており、何発か二輌の装甲を掠めていく。

チャーチルもずっと突っ立っているというわけでは無く。車一台が入れるか入れないかの路地に入って弱点の背面装甲を隠そうとすべく後退しながら抵抗を続けている。

 

「行かせてたまるか。英雄、そのままチャーチルに突っ込め。桔平は履帯を切断しろ。みほ姉貴、さっきと同じように後ろに回り込んでください!俺らが何とかします!」

 

「分かった。誠也君、上手く撃破されないでね」

 

「……ええ、賭けてみます」

 

E-25は更に加速し、Ⅳ号戦車は後ろに回り込む機会を伺いながら回避行動を続ける。チャーチルもこの二輌の行動を読むことが出来たのか車体を左右に振りながら後退し始める。

それでもなお二輌の勢いは止まることなく。E-25がチャーチルに衝突するというところで急ブレーキを踏んで停止し、そのまま左の履帯に砲弾を叩き込む。

Ⅳ号戦車はドリフトターンで後部に回り込むと同時に背面装甲に向けて砲撃し、チャーチルは履帯よりも隊長車であるⅣ号に釘付けだったため。ほぼ同じ速さでⅣ号に合わせて砲塔を旋回し、同時に砲撃を浴びせる。

三発も砲弾が同時に撃ち出されたため。三輌の周りは黒煙が覆いつくす。

しばらくして煙が晴れて分かった光景は、Ⅳ号戦車が砲塔側面に大きなかすり傷を作って停止し、チャーチルはキューポラの横から白旗を上げて鎮座し、E-25は車体を斜めにして鎮座しているというものであった。

 

『大洗学園残存車輌数二輌、聖グロリアーナ女学院全車戦闘不能。よって大洗学園の勝利!!』

 

みほは自分達の勝利を告げるアナウンスにあっけを取られ、勝利を確信するのに数十秒の時間を要したのであった。

E-25の車内では四人が自身の腕が訛っていないことに安堵し、静かに勝利を喜んでいた。

 

 




ありがとうございました!次回は第十話を投稿する予定です!
次回もオリジナル展開を増やしていこうと考えています。
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