もし、とか、たら、とか、れば、の話 作:眼鏡熊@ヒロアカ完走
もし、とか、たら、とか、れば、の話
無限城の、最奥で。
『竈門禰豆子!人間化成功!!繰リ返ス!!竈門禰豆子!!人間化成功ッ!!心
その報告に、鬼舞辻が絶望する。
「な、あ―――――――」
好機は今しかない。と、弟弟子が駆け抜ける。
「ヒノカミ神楽――――――『
弟弟子の――――――炭治郎の刃が、鬼舞辻の
鬼舞辻はその頭ごと灰へと還った。
終わったのだ。姉を殺し、兄弟子を、姉弟子を、
鎹烏が、勝鬨の声を上げるが如く、否、正しく勝鬨を上げているのだろう。いつもよりもけたたましく、叫ぶ。
『カァアアアアアア!!!義勇!!炭治郎!!行冥!!三名ニヨリ!!鬼舞辻無惨撃破!!撃破ァアア!!トドメヲ
無限城が崩壊する。
鬼舞辻から生まれた鬼は、須らく灰へと還る。
充足感と、達成感と、消えない喪失感。
嗚呼、嗚呼。何故、
「俺は
昏い思いが去来する。
しかし、今は、今だけは。
この想いに、身を任せよう。
――――――――――――――――――――
鬼舞辻が死んで、朝になって。
俺達は
「先ずは、ありがとう。炭治郎。君のお陰で、全ての因縁が終結した」
「いえ、
「それでも、だよ。君のお陰だ。と、さて、これ以上は話が長引くだけだね。皆も疲れているし、怪我をしているものも多い。取り敢えず、『これから』の話をしよう」
そう。これからだ。
鬼舞辻が死んだ今、鬼殺隊の存在意義は消えた。
であれば、これからはどうして行くべきなのか。
「例え鬼舞辻無惨を滅したとして、第二第三の鬼舞辻無惨や、鬼舞辻無惨の血が薄い鬼は、まだ残っている。事実、鬼舞辻無惨の呪いを跳ね除けている珠世殿は生きているし、血を多く受けとっていない愈史郎殿もまだ生きている。だから、鬼殺隊はまだ暫くやって行かねばならない。その後も、第二第三の鬼舞辻無惨が現れた時の為に、呼吸は次の世代へと受け継いで欲しい」
成程、道理だ。
輝利哉様は1拍置き、こう続けた。
「全ての鬼を滅した後は、君達は会社に務めてもらう。勿論、無理強いはしないよ。鬼殺隊以外の生き方を知らなかった子達は、私達が経営する便利屋の様なものに入ってくれてもいい」
詳しくはその時に説明するから。と言い、
「鬼舞辻無惨は死んだ。後もう少しだ。皆頑張ろう。とは言え、今は休んでおくれ。無限城の戦いに参加した子達は暫く休んでね」
以上。解散。
の言葉を最後に、俺達は
暫く休み⋯か。
―――――――――――――――――――――
暫くして、義勇は蝶屋敷に訪れていた。
ばたり、と。炭治郎達に会う。
炭治郎と、禰豆子と、善逸と伊之助。良くチームを組んでいた4人だ。
「義勇さん!?どうしたんですか!?」
「約束を果たしに来た」
「約束?」
「ああ。胡蝶との、約束だ」
瞬間、炭治郎の顔が悲痛に歪んだ。
「そう、ですか」
「お前たちは何故ここへ?」
「俺は、カナヲに会いに来ました。禰豆子も来たがっていたので」
「そうか。では一緒に入るか」
「そうですね。そうしましょう」
失礼します!と、元気な声に続き、俺達も蝶屋敷に入る。
「炭治郎!善逸君に、伊之助君、禰豆子ちゃんも!え!?水柱様!?」
「?何故驚く?」
「どのようなご要件で?」
「⋯胡蝶に聞いていなかったのか?」
不思議だ。あの胡蝶がこんなに大切な事を伝えていないなど。
「いえ、なにも」
「胡蝶に、頼まれていた。『自分に何かあったら、蝶屋敷の子達を頼みます』、と」
その言葉に、
「⋯師範っ⋯!」
「カナヲ⋯」
炭治郎は、泣きそうな
自分が⋯泣かせたのだろうか。
少し居づらさを感じて、懐に忍ばせていた金平糖の瓶を取る。
「⋯
「へ、あ、はい!」
「泣くな。その、金平糖をやる」
その言葉に、
「ふふっ、水柱様は師範から聞いていた通りの方なんですね」
「⋯胡蝶が何か言っていたのか?」
少し心配になる。あの人をからかうのが趣味のような胡蝶の事だ。嫌われているだのなんだの話したのではないか。と、少し勘ぐった
「不器用で、無表情で、だけれど優しい人だと。師範は言っていました」
しかも口下手だから直ぐに他人を勘違いさせてしまう困った人だ。とも。
その言葉に、思わず、心が揺れた。
そんな事を、思っていたのか。胡蝶は
「そう、か」
「ああ、そう言えば。師範の自室に。水柱様宛ての手紙があったんです。机の上に置いてあるので、是非師範の部屋で読んでください」
俺宛て?
「わかった。炭治郎。
そう言うと、炭治郎と
さて、胡蝶の自室に向かうとしよう。
――――――――――――――――――
胡蝶しのぶの自室にて。
机の上に、綺麗な字でしたためられた文があった。
冨岡義勇様へ
と書いてあるそれは、なんの為のものであろうか。
取り敢えず中身を読もう。と、封を開く。
―――――――――――――――――――――
冨岡さんへ
貴方がこれを読んでいる時、私はこの世に居ないでしょう。
生きていれば、この手紙は日の目を見ない筈ですから。
前に言ってあった通り、蝶屋敷と、あの子達の事は頼みましたよ。
と言っても、アオイは伊之助君が、カナヲは炭治郎君が何とかしてくれる筈ですから、貴方は安心して下さい。
もう一つ、私からお願いがあります。
幸せになって下さい。嫁を娶って、夫婦になって、私の事なんて忘れて幸せになって下さい。
それが私の最後のお願いです。
胡蝶しのぶ
―――――――――――――――――――――
「⋯すまない。胡蝶、最後の願いは聞き届けられない」
今更、お前以外を愛せる筈が無い。
『冨岡さん、冨岡さん』
『そんなんだから嫌われるんですよ』
俺を呼んでくれるお前の声が好きだった。
俺を見つめるお前の瞳が好きだった。
ついぞお前の作り笑いは止めさせられなかったけれど。
胡蝶姉が生きていた時の勝気なお前の笑顔が、きっと好きだった。
俺は幸せになる資格なんかないと、意固地になっていたから、気付くのに存外時間がかかってしまったようだ。
喪ってから気づく等、それこそ救えない。
「胡蝶⋯胡蝶⋯胡蝶⋯」
しのぶ。と。そう呼びたかった。
そう呼べば、お前はどう反応しただろうか。
焦っただろうか、気にもしなかっただろうか、でも、そんな事すらも、分からずじまいで。
「嗚呼、本当に」
救えない。
義勇の生涯は、4年後に幕を閉じた。
痣の弊害で、25までしか生きられないからだ。
義勇は24の時には蝶屋敷を出ていた。
きよ達も立派に立ち直り、カナヲは炭治郎の、アオイは伊之助の嫁となり、2人を支えている。
炭治郎も日柱となり、カナヲも花柱となり、善逸も禰豆子と身を固めて鳴柱となり、伊之助も獣柱となった。
25の死ぬ間際、義勇は墓参りに行っていたという。
兄弟子と、姉弟子と、姉と、
―――――――――――筈だった。
ドタン!
2つの音が重なった。
「ぐっ!?」
「きゃっ!?」
――――――――!?
この声は。間違いない。間違える筈もない。
「
「冨岡、さん?」
「血気術か⋯?いや、まて、有り得ない。鬼舞辻は炭治郎が殺した。鬼ももう居ない。そんな筈は―――――――」
とまで続けると、声がした。
「何!?鬼が居ない!?どういう事だ!?」
声がする方に目を向けると。
「―――――煉獄?」
「ああ、俺は煉獄
否、煉獄だけではない。煉獄の方に目を向けると――――
柱だ、柱たちがいる。煉獄、宇髄、甘露寺、
「
「
2人も愕然としていた。
「義勇⋯?義勇なのか?」
「しのぶ⋯しのぶなの?」
何故、何故死んだ筈の2人がいる?
「冨岡義勇に胡蝶しのぶだと!?笑わせるな、冨岡義勇は
ああ、そうか。わかった、この世界は―――――――
俺と
なら、ひとつ聞きたい。
「錆兎、真菰は、生きているか?」
「何を聞く、義勇。真菰は生きているぞ。俺の
嗚呼
「そうか――――――良かった」
思わず、微笑みがこぼれた。
隣で、胡蝶がギョッとしている。
「と、冨岡さんが、笑った⋯?」
失礼な。俺も嬉しいことがあれば笑いもする。
「⋯義勇」
と、そこに、
「待ちやがれ!まだその冨岡とやらと胡蝶妹が本物だとわかった訳じゃあねえ!ニセモンの可能性だって有るんだぞ!?何をホンモン前提で話してやがる!」
そこに、静謐な声が届いた。
「―――――――なんの騒ぎだい?」
間違いない、この声は―――――
「御館様」
「君は⋯誰だい?その半々羽織は
「⋯長くなりますが、話を聞いていただけますか?」
「何言ってやがる!?てめえの話なんぞ⋯!」
「⋯階級を示せ」
そうして、右手の甲を前に出し、力を込める。浮き上がるのは―――――――
「水、だと!?水柱だってのか!?」
「⋯胡蝶」
「はいはい。階級を示せ」
「胡蝶妹も、む、
「⋯これで、話を聞いていただけますでしょうか」
「勿論。僕が知らない柱ともなれば、話を聞かないわけにも行かない」
促され、話す。
炭治郎の事を、俺達が経験した事を。
全員、愕然としていた。
「俺が⋯死ぬ?」
「炭治郎が⋯鬼舞辻の
「俺が最終選別で死んでいた、か」
「そっちではしのぶではなく私が死んでいたのね」
「派手に、実感が湧かねェな」
「訳が分からない」
「壮絶ねえ⋯」
「⋯そうか、鬼舞辻無惨は、君たちの世界では死んだのか」
「はい。俺たちの世界では現当主たる
「君達は、この世界でも僕について来てくれるかい?」
そんな事は、とうに決まっている。目を合わせると胡蝶も、同じようだった。
「はい。全ては
「鬼殺隊として全ての鬼を滅する所存です」
「そうか、なら」
よろしく頼むね。義勇。しのぶ。
懐かしい、俺たちを呼ぶ声に、思わず心が弾んだ
「「はい!」」
「しかし、どうしようか?」
「どうしよう。とは?」
「いやね、2人とも柱だろう?しかし急に2人も柱が増えては流石に混乱してしまうじゃないか」
しかも2人とも死んだことになっているし。
「一般隊士と同じ扱いで構いません」
「そうですね。その方が動きやすいですし」
「⋯しかし、柱級の戦力をそのまま。というのもねえ」
「でしたら、俺が義勇を引き取ります!俺の屋敷であれば、真菰もいますし、義勇も過ごしやすい筈です!」
「私もしのぶを蝶屋敷に引き取ります!例え平行世界でも私の妹なのですから!」
「
「姉さん⋯」
嗚呼。やはり、
「でも、平行世界で、唯一の顔馴染みと離れるというのも辛いだろう?」
「それは⋯」
痛いところを突かれた。
本音を言えば、今すぐ胡蝶を抱きしめてしまいたい。
もう二度と手放したくなど無いし、胡蝶を殺した鬼を今すぐ八つ裂きにしてしまいたいくらいにはグラグラと腸が煮えている。
やっと再会できたというのに、会えなくなるのは辛い。
しかし、我儘を言っても変わる訳でも無い。
「⋯大丈夫ですよ。
「⋯俺も同じ意見です」
「どうせだから蝶屋敷と
「「は?」」
思わず、声が出た。
「
「しかし、嫁入り前の娘が男と暮らすのは⋯」
「そ、そうですよ!なにか間違いがあったら⋯!」
「その通りです!これでなにかあれば!」
「そんな事を言う時点で義勇は手を出さないさ。それに、
「ふぐっ⋯!」
「うう、そうですけれど」
「⋯」
痛い所を突かれた。しかし、胡蝶と暮らすなど、心臓がいくらあっても足りない。
「⋯なんですか、冨岡さんはそんなに私と暮らすのが嫌なのですか?」
「えっ!しのぶ、まさか!」
「なんだ、どういう事だカナエ」
「⋯そうでは無いが、何故そんなことを聞く?」
「だって明らかにしのぶが義勇君にホの字じゃない!」
「そ、そうなのか?」
「女心がわからない人ですね。そんなだから嫌われてるんですよ」
「そうよ!だって、義勇君と話してるしのぶがこんなにもイキイキしてるんだもの!」
「そういうものか⋯?」
「俺は嫌われていない」
「そういうものなの!」
こんな会話も懐かしくて、少し泣きそうになる
「⋯ふふふ、そんなに仲がいいなら大丈夫だね」
これで決まりだ。と笑う
どうしようもなく、居た堪れない。
「⋯はぁ」
俺は理性を保てるだろうか?蔦子姉さん。力を貸してくれ。
この世界の義勇さんは鬼がいない世界を経験してるので以外と表情筋が緩まってます(炭治郎達のおかげ)