もし、とか、たら、とか、れば、の話   作:bear glasses

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新年1発目です。
※童磨と猗窩座が討たれているので、上弦の鬼は黒死牟以外全て数字が二つ繰り上がっています。
※炭治郎達がチート故に、音柱は現役です。
小芭内さんかっこよすぎて惚れたマンです


逆行組と御館様

時は少し流れ、遊郭での任務を音柱含む隊員達が終えた際のこと。

 

「柱合会議に俺達が呼ばれると?」

「はい。そうなります。今回の任務にて『上弦の肆』が討たれた為に上限の鬼が三体も討たれたこととなり、急遽それに関わりの深いあなた方と竈門炭治郎たちが呼ばれる事となりました」

 

義勇としのぶは自邸で隠の話を聞いていた。

 

「成程、もしかして柱稽古あたりの話になるのでしょうかね?」

「恐らくは、後は俺達の実力の絡繰だろうな」

「それもありますか」

「それと、日程ですが、これから出発して頂いても大丈夫でしょうか?」

「かなり急だな」

「何分、急を要するものでして」

「いや、俺は構わない。しのぶは?」

「私も構いませんよ」

「ありがとうございます」

「では、俺たちは出立する。貴方たちも戻るといい」

「はっ。そういえば、場所は分かりますか?」

「御館様の住居だろう?」

「その通りにございます」

「ではな」

「はっ!」

 

そして、隠の人間は去っていった。

 

「⋯義勇さん。()()()()話すおつもりでしょうか」

「『赫刀』と『透明な世界』は確定しているが、『痣』の事は正直迷っている」

「⋯寿命が代償ですものね」

「しかし、こうも考えている」

「⋯なんでしょうか」

「もしも、『透明な世界』に十全に入っている状態で『痣』を発現すれば、寿命を浪費しないのではないか。とな」

「⋯確証は?」

「実際に『生まれた時から痣者』であった『始まりの剣士』は25以降も普通に生きていたらしい。彼はそもそも『透明な世界』を生まれた時から見ていたもの。であるなら、『透明な世界』に入れてかつ、『痣者』であれば、普通に生きていられる可能性が高い」

「成程」

「更には、前の世界の知識もある」

「確かに、初見殺しは格段に減りますね」

 

会話を続けつつ、準備を整えて。

出発。

 

 

―――――――――――――――――

 

産屋敷邸にて。

 

 

明朝、産屋敷邸に全ての柱と、義勇、しのぶ、炭治郎、善逸、伊之助、そしてカナヲと禰豆子が集まる。

 

「今回は急の要請に集まってくれてありがとう。今回は、義勇達の『知識』をみんなに分けてもらおうと思ってね」

「⋯知識。ですか」

「うん。君たちの世界では『無惨滅殺』が成されたそうだから、それについて聞こうと思ってね」

「承知」

「じゃあ早速。君達には『痣』は発現しているかい?」

「『前の世界』では発現していましたが、今回は発現していません。代わりに、『透明な世界』という物が見えています。そして、『赫刀』も発現出来ています」

「『赫刀』?あの『始まりの剣士』しか使えていなかった技能かい?」

「その通りでございます。前の世界では始めに別の形で炭治郎が、次に、正式な形で時透が発現。その後術理を理解した状態で伊黒が発現させました」

「その術理とは?」

「『ひたすらに日輪刀を握り締めること』です」

「⋯それだけ?」

 

あまりの単純さに思わず御館様が驚いていた。

 

「そんなことで出来たらとっくに発現しているはずだろうが!?」

 

不死川も思わず怒り心頭となる。

 

「大切なのは、『強い衝撃により刀の温度を上げる』事。死の淵にこそ発揮される万力のような力を以て、赫刀は顕現する。後で実際に見せるから安心してくれ」

「じゃあ次だね。『透明な世界』って?」

「一種の『悟り』の様なものです。その世界が見えるようになると、相手の身体が『透けて』見え、弱点が分かります。さらには、殺気の無いまま刃を振るえますし、自身の力を十全に(100%)発揮できます。」

「⋯それは、誰でも至れるものかい?」

「はい。この力は一種の境地。()()()()()()()()()()()()()()()()。全ての道の果てに行き着くものですから」

「⋯分かった。では、近々、()()()を行うにあたって、この二つを柱の皆に出来るだけ伝えて欲しい。やってくれるかい?」

「承知。しかし、伊之助と炭治郎は感覚派故に、教授にはあまり向いていません。するとしても同じ感覚派の人間にした方が懸命かと」

「そうなのかい?じゃあ、赫刀と透明な世界の伝授については、担当を義勇としのぶに一任するから、上手い具合に分けてくれる?」

「承知致しました」

「承知」

 

 

 

暫くして、

 

「担当だが、このように決まった」

 

炭治郎―甘露寺蜜璃

我妻善逸―宇髄天元

     伊黒小芭内

     時透無一郎

冨岡義勇―悲鳴嶼行冥

     不死川実弥

     鱗滝錆兎

     煉獄杏寿郎

栗花落カナヲ―胡蝶カナエ

胡蝶しのぶ―医務担当

嘴平伊之助―組手担当

 

「何故竈門と甘露寺が一対一なのだ⋯!」

「感覚派がこいつらだけだからだな」

「よもやよもやだ!」

「煉獄さんが理論派なのは少し意外⋯」

「じゃあ、早速明日からだね」

 

 

 

翌日。

 

我妻善逸のところでは。

 

「えー、先ずは『透明な世界』への接続ですが、大切なのは『正しい呼吸』と『正しい動き』です」

「『正しい呼吸』と『正しい動き』?」

「はい。血管の一つ一つまで意識して、最小限の動作で最大限の力を引き出していきます。また、炭治郎達の家では、ヒノカミ神楽を一晩中舞い続ける。即ち、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という行事を一年に一度必ず行っていたそうです」

「なんと⋯」

「マジかよ!?派手に頭おかしいことしてやがるな」

「事実炭治郎の家のものはずっと行っていましたし、それを行う事で『疲れない身体の動かし方』と言うのが分かってくるそうです」

「⋯へえ」

「と、言う訳で」

「と言う訳で?」

 

今から全員明日の朝迄ひたすら型を最初から最後まで繰り返しましょうか。

 

語尾に音符が着くくらいの弾む声で、地獄のような宣告を善逸は行った。

 

「⋯南無」

「⋯今日が命日かなあ」

「⋯嫁達に遺書書いといてよかったぜ」

 

地獄の鍛錬の始まり始まり〜

 

 

――――――――――――

 

所変わって冨岡義勇。

 

「では、先ずは『透明な世界』に至るための鍛錬からはじめる」

「おい待てェ。単純な戦力増強ならまず『赫刀』じゃねえのかァ?」

「お前の意見はたしかに分かるが、残念ながら今の筋力の使い方では『赫刀』に至ることなど夢のまた夢だ」

「⋯どういう事だァ?」

「『赫刀』を発現させる為には、『死の淵で発揮される力』、即ち脳の枷を外した限界以上の力か、それと同等の力が必要になる」

「成程。今の俺達の力では出て三割程度になってしまうから、『赫刀』等出来ないというわけか」

「そういう事だ。錆兎。では鍛錬の内容の説明に移ろう。やる事は至って簡単だ。今から『明日の朝迄一切休むこと無く最初から最後まで型の練習を()()()()()()()で行う事』だ」

「⋯なっ⋯!?」

「なんと⋯!」

「正気の沙汰じゃねェ⋯」

 

反応としては正しいだろう。朝から晩迄型の練習を休むこと無く。など、頭がおかしいと思われてもしょうが無い。

 

「事実俺たちは可能だ。ひたすらに正しい動作をすれば、限りなく少ない体力で大きな力を発揮出来る」

「それでなんになる?」

「それが行えるようになれば、()()()()()()()()()。鬼との戦いにおいて、これ以上の利があるか?」

「――――――!!」

 

そう、これは恐ろしく大きなアドバンテージなのだ。

体力が尽きないこと=持久戦に持ち込みやすくなる。ということ。

これにより、鬼舞辻無惨を朝日によって焼き殺す事の難易度がガクッと下がる。

 

「まあ、善は急げとよく言うだろう?」

 

鍛錬開始だ。

 

――――――――――

 

炭治郎とカナヲは一緒の所で鍛錬をすることを決めたようだ。

 

「まず始めに、『透明な世界』の鍛錬をしようと思います」

 

炭治郎は説明に適さないため、カナヲが代走している。

 

「は〜い」

「わかったわ!」

「『透明な世界』に至る為には大前提として、『正しい動作』と『正しい呼吸』があります。これは恐らく自身の呼吸の『最適解』です」

「最適解?」

「はい、『一番正しい呼吸の仕方』で『型を一番正しい動きで行う』という事が肝要で、それを行い続ける事で小さな動作で凄まじい力を発揮出来ます」

 

カナエと蜜璃は感心しながら良く聞いている。

 

「その為の訓練として、姉さんと恋柱様には明朝まで『最初から最後までの型を、繰り返し全力で練習』しましょう」

「――――――――エッ?」

「⋯あらあら」

 

地獄(鍛錬)、開始―――――――!!!

 

――――――――

 

 

その頃のしのぶと伊之助。

 

 

「―――――つまんねえ!」

「だめですよ伊之助君。騒いだら」

「だってつまんねえんだよ!」

「そうですねえ、確かに退屈ではあります」

 

透明な世界への接続が出来ないしのぶと、そもそも教えるのに炭治郎以上に向いていない伊之助には、あまり出番はなく、暇を持て余す結果となった。

 

 

「そうだ、伊之助君。暇ですし、何か話しでもしませんか?」

「話?いいぜ」

「アオイは最近どうですか?」

「ん〜、変わらねえよ。相変わらず騒ぐし、怒るし」

「伊之助君がすぐ無茶するからでは?」

「まあな。でもよ、前より笑ってるぜ」

「そうですか!それは良かったです」

 

アオイの笑顔が増えたのが自分の事のように嬉しいのか、笑顔を浮かべる。

 

お前ら(カナエとしのぶ)が生きてるからだろうな。前よりふわふわしてんぜ」

 

自分でも気づいていないだろうが、ふわり、と頬を綻ばせる。

 

「⋯ふふふ、伊之助君も嬉しそうで何よりです」

「ああ?嬉しいに決まってんだろ?」

 

アイツが笑ってると俺もほわほわするからな。

 

変わったものだなあ。としのぶは感慨に耽ける。

 

人の形をした獣。といったような子供だった彼は、

幾年もの時を経て、牙を磨き刃と成し、

それこそ乱暴で棘だらけだった気性も柔く優しくなって行ったのだろう。

 

それを見届けられなかったのは、少し寂しいけれど。

今度はきっと、見届けられるのだろうか。と。

遠い未来に思いを馳せる。

 

 




※今年からきちんとコメ返信します!
今までもきちんと目を通してましたが、返信を怠っていて申し訳ない⋯

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