もし、とか、たら、とか、れば、の話   作:bear glasses

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遅れましたァ!


刃を研ぎ澄ませ

―――――――――――――――――

 

コケコッコー!と、鶏の朝の鳴き声がする頃、岩屋敷にて。

柱の全員としのぶを除く逆行組が集まっていた。

しのぶは既に、珠世と毒の研究をしている。早めに協力して、より苦しむ毒を開発したいらしい。

 

「では、現時点での残りの十二鬼月の情報を開示します」

 

といい、炭治郎は纏められた書類を柱たちに配る。

 

 

「では、今は上弦の弐、参、陸は討ちましたので。先ずは()の世界のでの上弦の伍の情報ですね。」

 

と言い、一通り説明を終えた後に、少し唸る。

 

「でも、この鬼⋯」

「なんだァ?」

「前の世界で無一郎くんの損傷を見ても⋯」

 

と、一拍おき

 

「⋯恐ろしく弱いんですよねえ」

 

ズサーッ、と何人かの柱が転げた。

 

「なんだァソリャ!?」

「いえ!通常の鬼に比べたら強いんです!もちろん強いんですよ!?ですけど⋯他の上弦が柱+隊員とか、柱達でどうにか打ち破ったことを鑑みると⋯血鬼術を攻略したら恐らく上弦最弱⋯」

 

その言葉に、何人かが微妙な表情をする。

 

「で?見たところこの血気術はかなり厄介だなァ」

「趣向も塵芥とみえる」

「兎に角血鬼術に気を付けて戦闘だなァ」

 

それしかねェ。と言う言葉に全員が頷きつつ、次に移る。

 

「次が上弦の肆ですね」

 

と、一通り説明し、

 

「⋯これは」

「つまり甘露寺以外は音波攻撃で肉片って事じゃねえか」

「分身攻撃が厄介だ。本体が小さい。と言うのも中々だな」

「⋯悲鳴嶼さんの日輪刀が1番相性がいい気がする」

「だなあ」

 

と。これも以外と簡単に対策がまるまっていく。

 

「そして、上弦の壱⋯これは、元鬼殺隊士です」

「はぁ!?」

 

その衝撃の一言に、全員が驚愕の声を上げた。

 

「南無⋯何故鬼殺隊士が?」

「この隊士は⋯」

 

そして炭治郎は語る。記憶の中の縁壱が話してくれた、その関係性と全てを。

 

「始まりの剣士の⋯兄?」

「月の呼吸の使い手、更には時透少年の祖先とはな⋯」

「⋯ジジイ?」

 

「しかも、この鬼は『痣』持ちです」

「『痣』ってのはなんだよ?」

「『痣』というのは⋯」

 

そして、語られる。人の寿命を削り取って、限界値の力を作り出す人の身に余る秘法が。

 

「⋯オイ」

「なんでしょうか」

「なんで、最初に話さなかった?この力がありゃあ、もっと早くに力が―――――「それじゃダメだからです」なんだとォ?」

「『透明な世界』へと至った状態で『痣』が発現すれば、寿命の問題は解消されます」

「何?」

()()()()()()()し、なにより、『始まりの剣士(縁壱さん)』もそうでした」

「だとしても、話すだけでもとか、あったんじゃあねえか?」

「そうしたらあの時の実弥さんは絶対に『痣』から出してましたよ」

「⋯チッ」

「宣言します。俺は、()()()()()()()()()()()()()()

「はっ――――――随分な大口叩くじゃねえか」

「南無⋯余りに非現実的だ」

「凄い自信だね?」

 

その柱達の、思い思いの視線に対し、炭治郎は。

 

「だってそうでしょう?なんであんな臆病者に貴方たちの命をくれてやる必要があるんですか」

 

と、言い切った。

 

「お、臆病者ってお前な⋯」

「だってそうでしょう?『始まりの剣士』が怖くて寿命で死ぬまで隠れて逃げて、今度はその呼吸を継ぐ俺たちが怖いから俺たちの家を襲って、そのくせこれまでずっと陽の光が克服出来なかった臆病者で小心者のチンピラもどきですよ?」

 

散々な言い様である。いや、間違ってはいないのだが。

 

「お、おぉ、そうか」

「だから、死なせません。完膚無きまでに、完全無欠に勝利して、鬼舞辻無惨を絶望の果てに叩き落として殺します」

 

これは宣言。目標では無い。必ず成す。その意志のもと行われた宣言である。

 

「そのためにも、上弦の壱と鬼舞辻無惨の能力、弱点、素質を解説します」

 

 

と、その日は全員で只管に作戦会議と訓練が行われた。

 

 

――――――――

 

そして、月が空の中央で輝く頃。

 

炭治郎は一人蝶屋敷の裏で日輪刀を構え、静かに佇んでいた。

 

呼吸を整える。記憶を想起する。

身体を動かす、只管に。

刃を研ぎ澄ませ、無駄を排除せよ。

今はただの刃でいい。ひたすらに繰り返すのだ。

 

 

()()()()―――――――

 

 

円舞

碧羅の天

烈日紅鏡

幻日光

火車

灼骨炎陽

陽華突

飛輪陽炎

斜陽転身

輝輝恩光

日暈の龍・頭舞い

炎舞

 

繰り返す。

 

繰り返す。

 

繰り返す。

 

 

繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して

 

繰り返して。

 

頭の中全てが空っぽになる。世界と同化していく。

 

分かる。解る。わかる。

 

より良い動かし方が、繋げ方が。

 

この身をより深い所まで『透明な世界』へと浸らせる。

 

身体が熱くなる。熱が迸る。

身体の調子がどんどん上がる。

そうだ。そうだ。この感覚こそが――――――

 

 

『痣』

 

 

この舞を踊る度、かの記憶が去来する。

忘れるなと。寸分の狂いもなく継いでいくのだと、それが、約束なのだと。

 

どんどんと、舞いが高速化して行く。

リズム自体は変わらず、純粋な速度が上がっていく。

やがて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()錯覚を覚えるほどに、早くなって行く。

 

不思議な感覚だ。疲れが無い。寧ろ高揚感すらある。

この身が、まるで限界など無いと、刀を振るい続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、明朝。

 

カナヲは目が覚めたので、裏庭へと向かう事とした。

そこで目にしたのは⋯

 

焔を纏ったような刀で、只管に舞い続ける炭治郎だった。

 

優雅だった。華麗だった。鮮烈だった。

なんと美しい舞だろう。まるで精霊のような、人の届かぬ様な位置にある舞だ。

今、カナヲは自身の高い視力に感謝していた。

全てを見ている。焼き付けている。忘れぬ様に、刻み付けるように。

そして――――――

 

「――――あ!カナヲ!」

 

吸い込まれそうになる直前、その声に引き戻された。

 

「―――――炭治郎」

「おはよう!早いね。どうしたの?」

「目が覚めたから、裏庭にでも行こうと思ったの。炭治郎は?」

「昨晩の任務帰りで、みんなが寝静まった後からずっと舞ってた」

「―――――――ずっと?」

「ずっと」

 

思わず、少し引いた。

いくら疲れないからってそれは無いだろう。

 

「じゃあ、お風呂準備するね」

 

スッキリしたいでしょ?

と続けると

 

「⋯そうだな!お言葉に甘えるさせてもらうよ!」

「じゃあ準備するね」

 

と、風呂場まで2人で向かい、私が風呂場の外で火を起こして、安定するまで燃やす。

 

『カナヲー!入ったよー!』

 

すると、炭治郎が脱いで風呂場に入ってきたのか、私に話しかけた。

 

「もう燃やしてあるから、温度確認してー!」

『わかったー!』

 

と、少しすると。

 

『ちょうどいいよカナヲー!』

「わかった!じゃあ私はそろそろアオイと朝餉の準備してくるねー!」

『あ!待ってカナヲ!なら俺も少ししたら行くよ!もう少し後だろう!?』

「うん!そうだけど」

『そろそろ御飯を炊かないと腕が鈍ると思って!』

「なるほど⋯」

 

という事は、今日は炭治郎のご飯が食べられるということか。

思わず、期待に胸が高鳴る。

 

『ふふっ、カナヲから期待の匂いがする』

「だって、炭治郎の炊いた御飯すごく美味しいから」

『そっかあ』

 

と。すこしして

 

『そろそろ上がるねカナヲ』

「うん。わかった。じゃあ私も中に入るね」

 

カナヲは手早く火を消して、蝶屋敷の家屋の中に入る。

そして、少し待って。

 

「お待たせ!カナヲ」

 

任務がないからか薄青の浴衣に何時もの緑と黒の市松模様の羽織をした炭治郎が出てきた。風呂上がりなので髪は下がっていて、目を避けて流されている。何時もの痣は髪で隠れている。

⋯実を言うと、この炭治郎はあまり他人に見せたくない。

何時もの印象よりもかっこよく見えるし、風呂上りだからか顔も上気していて、少し艶っぽいのだ。

 

「そんな事ないよ。行こう炭治郎」

「ああ」

 

 

取り留めもない話しをしながら、調理場に向かう。

やれ、伊之助が意地でも休まないアオイににゃんにゃん(意訳)して無理矢理休ませただの、しのぶさんと珠世さんが前世より強力な毒の組み合わせに成功しただの、善逸が寝ぼけた禰豆子に抱き締められて声にならない叫び声を上げつつ顔を赤くしていただの、蛇柱が恋柱と楽しそうに食事していただの。

笑顔が零れる。炭治郎の表情が変わる度に、目が離せなくなっていく。

ああ、やっぱり。

 

――――――――――好きだ。なあ。

 

すると、炭治郎の顔が『ボッ!』と真っ赤になる。

そして、口元を隠して、

 

「その、そんなに甘い匂いをさせないでくれ⋯」

 

抱き締めたくなってしまう。

と目を逸らしながら言う炭治郎に、私の顔も赤く染まる。

 

「その、い、いい、よ?炭治郎なら」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」

 

瞬間、炭治郎は距離を詰めて、私を抱き竦めて、耳元で、こう呟いた。

 

「我慢できなくなってしまう、から」

 

余り煽らないでくれ。

 

「⋯はっ⋯ぁ」

 

熱の籠った、声。その声に、息が詰まった。

 

「⋯はあ」

 

炭治郎は私をいきなり離して。

 

「これ以上は、ダメだな」

 

嫁入り前のカナヲに手を出したくない。

 

「けど」

 

これ位は許してくれよ?

 

と、炭治郎が言ったと思ったら、炭治郎はいきなり首筋に吸い付いた。

 

ちぅ、ちゅっ。

 

と音をたてて離して。

 

「虫除け。隠さないでね」

 

と、艶やかな笑みを浮かべた。

 

「〜〜〜〜〜〜っ!!!!!????????」

 

私はヘタリ、と、腰が抜けてしまって、動けなくなった。

 

「じゃあ、俺はアオイさんを手伝ってくるから」

 

すぐ来てね。と、言って炭治郎は調理場へと足を進めた。

 

「⋯ずるいよ。炭治郎のばか」

 

と。私は負け惜しみの様な言葉しか言えなかった。

 

 

 

 

――――――――

調理場に行くと、丁度アオイさんと鉢合わせた。

 

「あら?早いですね。炭治郎さん」

「ああ、今日はアオイさんとカナヲを手伝いたくて」

「なるほど⋯で、肝心のカナヲは?」

「もう少ししたら来るよ」

「⋯少しは優しくして差しあげてくださいね?」

「失敬な。俺はカナヲを心の底から愛してます」

「愛情表現が過激なんですよ!まったく、伊之助さんといい、貴方といい、善逸さんの愛情表現が1番まともだったなんて⋯」

「あ、いや⋯善逸はむしろ⋯」

「むしろ、なんですか?」

「いや、俺からは控えるよ。うん」

「なんでですか!?気になります!」

「いや、あれは⋯ううん。うん。知らない方がいい」

 

と、抗議するアオイさんを黙殺し、ご飯の準備を行う。

 

 

 

 

 

「―――――――――――――(善逸と禰豆子の愛が重すぎて、愛情表現の時の感情が凄い匂いしてるなんて、言えないよなあ)」

 

と、炭治郎は一人ごちた。

 

その日の朝食は大好評で、昼も!と隊士達に強請られたそうな




注釈?補足?

ぜんねずの愛情表現

「善逸さん、(貴方が他の人に奪われたらその人を殺した後に貴方を閉じ込めて一生愛し尽くすくらい)大好きです!」

この時、噎せ返るくらいの愛情の匂いと恋慕の匂いに加えて、引くくらい粘着質な執着と独占欲の匂いが混ざって、とても複雑な匂いがしてる。

「俺も(君が離れそうになったら無理矢理にでも繋ぎ止めて閉じ込めて、一生二人で愛し合いながら暮らしたいくらい)大好きだよ」

この時、禰豆子と同じ匂いがしていて、お互いがお互いの愛の重さを理解しているのか、それすら喜び、愛してる様な節がある。

「絶対離さないからね(ガチ)」
「一時たりとも離さないでくださいね(ガチ)。私を⋯貴方に繋ぎ止めて」

多分かまぼこで1番拗らせてる。



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