もし、とか、たら、とか、れば、の話   作:眼鏡熊@ヒロアカ完走

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幕間にして、ターニングポイントになります。
30分後にもう1話出ます


別離と、介錯

ある日、善逸はとある場所に訪れていた。

 

「ここに、()()()()()()()がいるのか」

 

少し前の事。

 

―――――――――

 

産屋敷で。

 

「鬼となった兄弟子を討ちに行く?」

「はい。実は俺の記憶がもどる少し前、兄弟子は『上弦ノ壱』に遭遇したんです」

 

その言葉に、御館様は少し驚いたようだった。

 

「成程。それで死ぬか鬼になるかで鬼になる事を選んだ。と」

「はい。この事を、師範はまだ知りません。なので、どうか――――――」

 

ガァン!と額を床に打ち付け、懇願する。

 

「鬼となった兄弟子は、俺が必ず塵に返します!ですので、どうか!どうか!!」

 

―――――兄弟子は、上弦ノ壱に殺されて殉職した。ということにしてください⋯ッ!

 

「師範は⋯ッ、爺ちゃんは、『前』に、兄弟子が鬼になったと知れば、介錯も無く腹を斬りました!もう獪岳は助けられないけど、爺ちゃんは、爺ちゃんだけは、助けたいんです!勝手な事だって、巫山戯た事だって分かっています!どのような処分も、受ける所存です!だからどうか⋯!!」

 

爺ちゃんに腹を斬らせないで下さいッ⋯!

 

「⋯頭を上げて。善逸」

「は、はい」

 

御館様は、優しい声で、俺に顔を上げるよう促した。

俺は顔を上げて、御館様の顔を真っ直ぐに見る。

 

「君は優しい子だ。育手である慈悟郎を思いやって、家族(兄弟子)殺しの重みを背負おうとしている。確かに、君が言っている事は隠蔽だ。とても許される事じゃない。だけどね?」

 

御館様は、全てを受け止めるような音を奏でながら、俺にこう言った。

 

「君のその思いはとても尊いものだ。それを失ってはならない。僕は応援してるよ、頑張ってね。善逸」

「⋯ありがとう、ございます⋯!!!」

 

―――――――――

 

 

 

その夜の事。

ああ、あの音だ。間違えるはずも無い。

 

「⋯本当に鬼になったんだな。獪岳」

「相変わらず貧相な風体をしてやがる。久しぶりだな。善逸」

「そんな事はいい。俺はアンタの介錯をしに来た」

「介錯だぁ?」

「ああ。鬼になったアンタは必ず俺が殺してみせる」

「はっ!やって見ろよ!壱ノ型しか使えねえカスが!」

「俺がカスならアンタはクズだ!()()()()()使()()()()()()()()()()()使()()()()()()()!後継者に恵まれなかった爺ちゃんが気の毒でならねぇよ!」

 

その言葉に、獪岳は激高した。

 

「俺をてめえみてえなカスと一緒にするんじゃねえええ!」

 

雷の呼吸 肆ノ型・遠雷!!

 

瞬間、俺は踏み込んで獪岳の首筋を撫切りした。

 

「おっせーんだよ。クズ」

 

「――――――ッ!てめええええ!!」

 

弐ノ型・稲魂!

 

五連撃が俺に振るわれる。透明な世界の恩恵により全ての『動き』が感知できるため、全てを最小の動きで回避する。

 

「よけんなぁ!」

 

参ノ型・聚蚊成雷!

 

獪岳が俺の周囲を高速で旋回しようとしたので踏み込んでその場を離脱する。

 

「チョロマカチョロマカしてんじゃねえ!」

 

 

伍ノ型・熱界雷!

衝撃を伴った強烈な斬り上げが俺に迫る。そのまま横に避ける。

 

ああ、やっぱり。

 

「お前、まだ()()()()()()な?」

 

そう。馴染んでいないのだ。音がズレている。呼吸が乱れている。根本的に、致命的に『合っていない』。

鬼狩りの力が鬼に馴染みにくいがゆえだろう。

 

「うるせえうるせえうるせえ!!てめえを殺すのにゃあ充分だろうがぁああ!」

 

陸ノ型・電轟雷轟

広範囲に雷の様な斬撃を炸裂させて俺の前身を切り裂かんとする。避ける気になればよけれるだろう。しかし――――

 

「なっ」

 

俺はそれを甘んじて受けた。

これは自戒だ。獪岳を止められなかったことの。獪岳の幸せの箱の穴に気づきながらも何も出来なかった自分への。

そして、構えを変える。

 

「全集中・雷の呼吸――――――――――()ノ型」

 

 

火雷神!!!

 

 

その一刀は、確かに獪岳を切り裂いて―――――

 

 

 

「畜生!畜生!やっぱりあの爺贔屓しやがったなあ!!なんでお前にだけ教えて俺に教えなかった!」

「違う。じいちゃんはそんな人じゃない。これは俺の型だよ。俺が考えた、俺だけの型。この技で、いつかアンタと肩を並べて戦いたかった」

 

もう、叶わないけど。

 

「ごめんな、獪岳」

 

―――――俺の、たった1人の兄貴。

 

 

―――――――――

 

 

「ごめんな、獪岳」

 

なんだよ、謝るくらいなら殺すんじゃねえよ。カス。なんで、今更そんな顔してやがんだよ。

なんで、そんなに泣きそうなんだよ。

 

―――――俺の、たった1人の兄貴。

 

――――――こいつは、今なんて言った。

兄貴?俺が?お前を虐げて、認めもせずに突き放して、ついには殺そうとした俺が?

馬鹿じゃねえのか。馬鹿だ。阿呆だ。狂ってやがる。

なんだよ。俺のこと嫌いなんじゃねえのかよ。

なんで、泣いてんだよ。

 

「泣くんじゃねえよ、()()」 

 

――――――――

 

「泣くんじゃねえよ、()()

 

――――――――っ!?

 

「あっ、」

 

聞こえた。か細い声だ、けど―――――――

 

「獪岳ッ、⋯兄貴!!」

 

手を伸ばして、全速力で駆ける。でも

獪岳は、泣き笑いで塵に帰った。

 

「あ、ああ、ああああああああぁぁぁ!!!」

 

涙が溢れた。

 

「ごめん!獪岳ごめん!!お前を助けられなくてごめん!お前と歩めなくてごめん!!!おれ、おれ⋯!」

 

言葉にならない。言葉が上手く繋がらない。

 

「お前の事、嫌いだったよ!けど、けど特別だったんだ!⋯兄貴、みたいに見えたんだ。もうこれから泣かないようがんばるから!だから!」

 

今だけ、今だけは泣かせてください。

 

 

―――――――――

 

俺は、獪岳の勾玉だけを取り、あとは隠の人達に獪岳の服を任せた。

 

「―――――――待っててくれ。獪岳」

 

俺もきっと、地獄に行くからさ。だから、

先にそっちで待っててくれ。

 

「そして、上弦ノ壱」

 

獪岳を鬼にした、直接の原因。

爺ちゃんの命を奪うきっかけになった鬼。

 

「お前だけは赦さない⋯!必ずその頸を切り落としてみせる⋯!」

 

待っていろ⋯!

 

 

――――――――

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