「私はな、奴が脅威となる前に潰しておきたいのだ」
「・・・ああ黄金騎士は俺の獲物だ、任せておけ」
「お前には期待しているぞ斬吼狼」
「フハッ期待とは・・あんたらしくもない」
「口を慎め・・と言いたいがお前は特別だ多少の無礼は許そう」
「そいつはどーも、じゃ俺行くわ無惨さん」
「・・・・・・忌々しい金色の光また私の邪魔をするつもりか」
カナヲが蝶屋敷へと戻ってから数日後、煌牙は休暇を貰い浅草へと訪れていた。
「え〜〜〜〜煌牙、一人で浅草行っちゃうの〜〜?私も私も一緒に行くから〜〜」
「悪い桜花、個人的な用があって今回は連れていけないんだ。それに俺がいない間の管轄を桜花に任せたいし、任務の伝令が来るかもだろ?」
「米吉?伝令来ないよね?うん来ないと言って〜」
「既に来てるかもヨ、ペッタンコにはまだ言ってないだけダヨ?」
「・・・は?・・・え?米吉君♪よく聞こえなかったからもう一度いいかなぁ〜〜?」
(あ、ヤバい桜花がキレた米吉いいか絶対俺に振るなよ、いいな絶対だぞ)
「任務の伝令は届いてるヨ、ペッタンコ・・・煌牙君が言えって言ったんダヨ?ペッタンコだって言ってタヨ?」
(米吉〜〜!俺に振るなって言っただろー、いや言ってないけども
空気読めよ、ネタ振りじゃねえからな!そもそも桜花の体型とか全く興味ないからな、ペッタンコとか初耳だからな)
「煌牙はそんな事言わないもん、朴念仁だし」
(何気に貶されてるよね俺、まあ矛先がこっちに向かなくて良かったけども)
「とりあえず後はよろしくな桜花、んじゃ」
「ん〜〜わかった、お土産よろしくね〜♪後米吉は覚悟してね♪」
「煌牙君助けてヨ〜、裏切り者〜」
(自業自得だろ?俺は知らないからな)
浅草に来る前そんなやり取りが行われ逃げるように屋敷を出た煌牙は
都会の喧騒を煩わしく思い、人気の少ない路地で一休みしていた。
「あ〜疲れた。相変わらず浅草は賑やかだな〜よし、豊さんのうどんでも食べにいきますか」
煌牙は浅草でいきつけのうどんを食べて気力を養おうと、知り合いの店主の元に歩き出した。
煌牙の知り合いである店主、豊さんは屋台でうどん・そばの商いをしていて偶然通りかかった煌牙がうどんを気に入り、それ以来浅草に来るたびに豊さんの店に訪れていた。
「うどんもいいけど蕎麦も捨て難い、どっちに・・」
「煌牙」
「ああ、鬼の気配がするな」
うどんか蕎麦か悩みながら屋台へと近づく煌牙は屋台の方向から鬼の気配を感じると口を閉じ、同じく鬼の気配を感じたザルバの呼びかけに頷くと、急いで屋台へと走り出す。
やがて屋台が見えてくると店主の豊さんと客であろう一人の女性が椅子に腰掛けているのがわかる。
女性は少女だろうか、遠目からでははっきりと分からないが煌牙はなんとなくそんな風に捉えていたもののその少女から感じる気配は鬼の気配・・・だが今まで斬ってきた鬼とはどこか違うようなーーーー
煌牙は妙な感覚に少し戸惑いながらも屋台へと向かう。
「豊さん久しぶり、うどん食べに来たけど今大丈夫?」
店主の豊さんに声をかける煌牙、他の鬼とは違う気配とはいえ鬼である少女がいる為、豊さん自身を含めて大丈夫なのかという意味を先程の言葉に込めていた。
「おう煌牙久しぶりじゃねえか、うどん食いに来てくれたのか
とりあえず座って待ってろ」
「そうするよ、とりあえず月見うどんで」
豊さんから返答がくるとそのまま客席へと座るように言われ、うどんの注文をして腰掛ける煌牙は鬼である少女に目を向ける。
(鬼の気配なんだけど、どこか違うようなう〜ん・・あの人達と同じような・・というかなんで口枷付けてるんだ?これ桜花いなくて良かったわ、猿轡系ヒロインとか言い出しそうだし・・あれ?俺が言ってるよ、俺も桜花に毒されてきたな)
煌牙が頭の中で色々と考えていると鬼の少女が煌牙のいる方向に振り向き、視線の先にいる煌牙を見つめ出した。
(ん?俺を見てる?なんだろう?敵意は感じないな、それに眼が)
煌牙を見つめる鬼の少女からは敵意を感じることはなく、見つめる瞳もどことなく優しげな、そんな雰囲気を纏う鬼の少女は突如立ち上がり煌牙の元へと駆け寄ると頭を撫でてほしいのか、そんな仕草を煌牙に見せる。
鬼である故に多少の警戒心はあるものの敵意は感じない為、戸惑いながらも鬼の少女の頭を撫で始める煌牙、鬼の少女は喋る事はないが
意志や思い等が声として煌牙の頭に流れ込んでくる。
「そっか・・・君は優しいんだな。うん、お兄ちゃんがいるのか
戻って来るのを待ってる?そっかそっか」
鬼の少女から聞こえる心の声と会話するような煌牙、その煌牙を見つめる鬼の少女は自身の声が届いたのが嬉しいのか目を細めてそのまま頭を撫でてもらっていた。
「へいお待ち、煌牙お前さっきから一人で何喋ってんだ?」
豊さんが注文したうどんを渡しながら独り言を言ってる煌牙に話しかける、鬼の少女は喋っているわけではないので煌牙が一人で喋っているようにしか見えない豊さんは煌牙に聞いてみるも煌牙もそう見えた事は仕方ないにしろ、恥ずかしいのか言葉を濁しながら目の前のうどんへと箸を伸ばす。
「むーむー」
頭を撫でられて微睡んでいた鬼の少女は突如煌牙の手が離れた事に不満を持ち抗議と思わしき声を出すも、うどんを出された煌牙は箸を持っている為撫でてあげる事は出来ない。
「ちょっと待っててな、そういやお兄ちゃんっていつ戻るんだろ?」
鬼の少女に少し待ってほしいと告げる煌牙はうどんへと箸を伸ばし
食べ始めると、美味しそうな表情をしながら頬を緩め舌鼓をうっていた。
(あ〜やっぱり豊さんのうどんは美味いなぁ〜・・・そういやあの娘のお兄ちゃんって鬼?でもあの娘がアレだし人間って可能性も・・というか俺鬼殺隊だよね?柱だよね?このまま放置って訳にはいかないよな?)
うどんを食べながら考え事をしていた煌牙、ふと鬼である少女の兄が鬼か人間かを考えていたが自身の立場を思い出し、鬼である以上少女を放置出来ない事を考えていた。
「禰豆子〜」
ふと誰かを呼ぶ声が聞こえ、声のする方へ視線を向けると一人の少年がこちらに走って来るのが見える。
少年がこちらに近づいて来るにつれ煌牙はその少年の服装が見覚えのある服装だと気付き、うどんへと伸ばした箸を止める。
(鬼殺隊員?この娘の頸を斬りに?にしては雰囲気が・・それに禰豆子ってこの娘?)
こちらに走って来る少年が鬼殺隊である事が分かると、隣にいる少女を斬りに来たのかと思うがその割には殺気もなく寧ろホッとしたような穏やかな雰囲気を纏う少年、先程禰豆子と呼んでいた事から隣にいる少女がそうなんだろうと考え、この少年が少女の兄であるかもと予測していた。
「禰豆子〜、他所様に迷惑かけちゃ駄目だろ?すいませんすいません、妹がご迷惑をおかけしました」
少年はやはり少女の兄らしく、隣にいる煌牙に迷惑をかけてると思い
頭を下げて煌牙に謝る。
「いや、迷惑なんてかかっていないから謝らなくていいよ、気にしないで」
(鬼を連れた鬼殺隊員?いや、隊律違反だろ下手すりゃ打ち首だぞ
この娘が普通の鬼とは違う事は分かってるけど他の柱達が、はいそうですかって納得するわけがない・・育手が誰かは知らないけどこの事は知ってる筈・・お館様ももしかしたら・・はぁ〜俺今見逃したら隊律違反だよね?休暇中なのに隊律違反とか・・仕方ないとりあえずもう少し様子見てから考えよ)
少年からの謝罪に対応している最中に頭の中で少年が隊律違反を犯している事、育手やお館様がこの事態を把握している可能性、自身の鬼殺気隊としての対応等を考えていたが、結論がすぐに出る筈もなく
様子を見てから二人の対応を考えることにした。
少年は煌牙から気にするなと言われていたが、彼から困惑の混じる匂いが漂っていた為、匂いで相手の感情を嗅ぎ分ける事の出来る少年は
煌牙が本当は迷惑していたが気を遣って、気にするなと言ったのだろうと思い謝る事を続けた。
「いえ、妹が貴方に迷惑をかけたのは事実です、長男である俺が謝らないと示しがつきません」
「そっか・・いやこちらこそありがとな、家族思いの良い妹さんだな」
少年からの謝罪を受け取る事にした煌牙、鬼としての本能に抗い人としての理性を保ち家族を想う少女に出会えた事は煌牙には嬉しい誤算であり、その意味を込めて少年にお礼を言うと、豊さんが出てきて
少年に向かい怒鳴り始める。
豊さん曰く、うどんを食べてる途中で少年が妹を残してその場からいなくなり、お金じゃなく自分のうどんを食べないという心積もりが許せないらしく、少年にその旨を告げる。
少年も申し訳ないらしく、うどんを頼むも豊さんが本当に食べるのか少年に聞くと、少年も食べます!と大きな声で主張する。
豊さんはそれを聞くと禰豆子という少女に向かい、うどんを食うなら竹を外せ、箸を持てと詰め寄るも少年が庇うように出てきて妹の分も含めてうどんを二杯豊さんに注文すると、出てきたうどんを物凄い勢いで食べ始める。
その様子を見てた豊さんと煌牙の二人は、少年の食べっぷりに衝撃を受けたかのような表情になり、煌牙は妹の為に頑張る少年を好ましく思っていた。
うどんを食べ終わった少年は、屋台から出て何処へと歩き出して妹の禰豆子も少年の後を付いて行く・・が煌牙の腕を掴んで一緒に連れて行こうと引っ張っていた。
「ちょ⁈まだうどん食べてるんだけど、まあ溢れたんだけどね」
少年が振り返るとむーむー言いながら必死に煌牙の腕を掴んで引っ張っている禰豆子を見て慌てて煌牙から禰豆子を離そうと禰豆子の腕を掴む。
「禰豆子?一体どうしたんだ?迷惑かけちゃ駄目だ手を離すんだ」
少年が言い聞かせながら手を解こうとするも、頭を横に振り頑なに抵抗する禰豆子。少年と煌牙の二人は彼女に一体何があったのかわからず困惑してしまい、顔を見合わせる。
「妹が本当にホント〜〜にすいませんでした。」
「はは、一体どうしたんだろな?」
少年は再び煌牙に頭を下げて謝るが煌牙は苦笑いしながらこの状況に困惑していた。
煌牙は二人の様子を見るつもりでいたが、一緒に付いて行く気は無かった。少年と少女の二人は信用出来る、ほんの僅かだが少年と接した際に感じた少年の真っ直ぐな性格、少女の頭を撫でた時に流れ込んで来た彼女の心、それを直に感じた煌牙は監視する必要もなく様子を見て二人の対処を決めようと決めていた。
そもそも浅草に用があり訪れていた煌牙はうどんを食べてから用を済ます筈だったのだが、その予定も二人の対処も禰豆子が煌牙を連れて行くという予想外の行動により実行出来ないでいた。
煌牙なら禰豆子の手を解く事は簡単なのだが、煌牙を見つめる瞳はどこか寂しげでそれ故に無理やり解くのは気の毒だと思った煌牙は仕方ないと諦め少年に少しの間、自分が同行する案を尋ねてみる。
「このままじゃ埒もあかないし、少しの間一緒に付いて行こうか考えてるんだけど駄目かな?」
「えっ⁈・・・これから人と会う予定なので同行は・・」
「だよな〜、悪かったな変な事言って」
「いえ、迷惑かけてるのは俺達ですし。ほら禰豆子いい加減離れるんだ」
煌牙と少年のやり取りで同行は出来ない流れになり、少年は再び禰豆子の腕を解こうとして、少年の手が煌牙の手に触れる。
(・・・は?珠世さんに愈四郎?この子、二人に会ったのか・・・待て!無惨?嘘だろ?無惨と遭遇してる?浅草にいるのか・・・)
少年の手を介して少年の記憶や心の声が聞こえた煌牙、少年の記憶から煌牙の知人である珠世と愈四郎の二人に会っている事そして、鬼殺隊が血眼になって追っている鬼の首魁、鬼無辻無惨と偶然だが遭遇している事が煌牙に声として流れ込んでくる。
「少年、君達がこれから会う人にコレを渡してほしい。ちょっと急用が出来てね、行かなきゃいけないんだ・・禰豆子ちゃんもまたね」
煌牙が浅草に訪れた用件、知り合いである珠世という女性にあるモノを渡す用があり浅草に来ていた。
珠世という女性・・鬼ではあるが人に仇なす鬼ではなく寧ろ協力的な鬼である為、煌牙は彼女を鬼として頸を斬る事を良しとせず密かに連絡を取り互いに協力しあっていた。
鬼殺隊である煌牙はこれが隊律違反にあたる事も承知していたが煌牙の矜持、悪鬼滅殺ーー人に仇なす鬼は迷わずに斬るが、人としての理性を保つ鬼、本能に抗う鬼はその心に守るに値する光があると自身の課した守りし者としての矜持に従い黙認していた。
ついさっき会った禰豆子という鬼の少女もまた鬼としての本能に抗い
人としての理性を保っている故に、煌牙は禰豆子を鬼ではなく人として扱おうと考えていたが、会ったばかりで情報が少な過ぎる為に早急な決断は出来ないと考え保留する事にした。
煌牙は少年に自身の用件を頼むと、禰豆子の手を優しく解き頭を撫でながら別れの挨拶をする。
少年の記憶から聞こえた無惨との遭遇、人が多すぎて煌牙もザルバも音や気配を察知出来ないでいたが目の前の少年は確実に遭遇している
時が過ぎ無惨の痕跡は辿れないかもしれない、だが何かしろの手掛かりでもあればと、その場へと急いで向かう煌牙。
振り返り走り出す煌牙を少年は呆然と見ていた。
唐突に何かを渡されて、自分がこれから会いに行く人に渡すように言われると妹の手を解き、頭を撫でてから走り去る。
少年は質問も出来ないまま流されるように事が進んだ為、疑問に思った事を解決出来ないまま時が過ぎてゆく。
「あの人まるで俺が誰と会うか分かってたような・・それにあの匂い
何処かで・・・最終選別・・カナヲ?」
「むーーー」
少年は煌牙がこれから会う人を分かってたような口ぶりをしていた事が不思議に思って煌牙の事を考えるも名前も聞いてないので何もわからずにいたが、少年が嗅いだ煌牙の匂いは以前嗅いだ事のある匂い、或いは似た匂いだと気付くと、記憶を辿り最終選別で一緒に戦ったカナヲを思い出す。
煌牙とカナヲ血の繋がった実の兄妹であることから匂いが同じ、もしくは似た匂いなのだが、今の少年には二人の関係が分かるはずもなく
答えが出ないままでいた。
禰豆子は手を解かれ煌牙が走り去った事から、不満の声を漏らし煌牙の去った方向を眺めていた。
禰豆子は初対面だが煌牙に懐いていた、少年の育手である元水柱
鱗滝から人間を家族として見えるよう暗示を掛けられていて、煌牙も家族の一員として見ていた。
カナヲが最終選別後に言っていた、炭治郎と兄さんは似ている。
禰豆子もまた煌牙が纏う雰囲気が自分の兄である炭治郎と似ていると感じ尚更親近感が湧き懐いていたのだった。
二人はそれぞれ思いを馳せていたが、まだやるべき事がある為振り返ると手を繋ぎ歩き出す。
無惨の手掛かりを探す為に繁華街を歩く煌牙、人の多さからくる様々な音が煌牙の耳に届くと煩わしそうな表情を浮かべ、苦言を漏らす。
特別耳が良い煌牙ではあるが、この時ばかりはそれが仇になり頭を悩ませる、普段なら耳に意識を持っていかなければただ聴こえるだけで
やり過ごせるが手掛かりを探す為に目で見える範囲だけではなく耳から届く情報も合わせていた。
「こんな人混みの中に紛れ込むなよ、耳が痛い」
人混みの中から手掛かりを探す煌牙は無惨へと愚痴を零すも、それが聞こえるわけもなくただ時が過ぎてゆくだけで手掛かりを見つけられないでいた。
「煌牙僅かだが鬼の気配を感じるぞ、恐らくはもうその場にはいないだろうがな」
「だとしたら無惨の可能性はあるな、ザルバ案内してくれ」
しばらく歩いているとザルバから僅かながら鬼の気配がすると教えられるも、鬼がその場にいない可能性を示唆される。
先程まで、少年・・炭治郎が遭遇するまでは誰一人として無惨の手掛かりさえ掴めなかった事から、痕跡すら残さない無惨の可能性はあると煌牙は判断する。
煌牙だけなら残された僅か気配を感じることは出来ないが、ザルバなら僅かな痕跡でも感じる事が出来る為、煌牙はザルバを信頼していた
とはいえ人が多すぎて、色んな人の気配が混じる為にその場に近づかないと感じ取れない事はこの様な場では不利であったが、それでも
痕跡を辿れるだけマシである。
本来無惨なら痕跡を残さないのだが、今回は何かしらの理由で僅かながら痕跡を残していた、ザルバでなければ気付かないのかもしれない
だがその今回の時にザルバがいた。
それ故にその気配をザルバに覚えられ、無惨は知らずのうちに鬼殺隊へ自身に繋がる手掛かりを与えてしまっていた。
「・・・死んでるな・・・一人は跡形もない・・ザルバ」
「ああ、この液体から感じるぞ。僅かだがそれでも今までの鬼よりも濃い、恐らくは」
「無惨」
煌牙は僅かな気配を察知出来ないでいたが、女性だと思われる着物に手を触れて着物に残る記憶を聞き出す。
(・・・そんな理由でこの人達を・・何が限りなく完璧に近い生物だ
ふざけるな・・・追っ手?花札の様な耳飾り?・・・あの少年が危ない)
着物から記憶を聞き出した煌牙は、無惨の傲慢さに怒りを露わにするも先程の少年に追っ手が差し向けられた事を聞いて急いで少年の元へと駆け出す。
少年は恐らく知人である珠世と会っているはず、だとしたら珠世と愈四郎も危ない。焦燥感に駆り立てられながらも、心を呼吸を乱す事なく全速力で走る煌牙。
人混みの中を掻き分けて走ると嫌でも時間がかかる為、建物の屋根へと飛び込み、屋根伝いに駆けるーーーー
ーー呀の呼吸 参の型 刹那の呀ーー
急ぐ煌牙向かって黒い影が一瞬見えるが直ぐに影が消える・・が
突如煌牙の頬から鮮血が飛び散り、煌牙は急ぐ足を止めて振り返る。
「へぇ〜今のを避けるか、流石は黄金騎士ってとこか?まあお前が死ねば黄金騎士の系譜はまた途絶えるんだけどな」
黒い影は掠めたとはいえ自身の攻撃を避けた事で黄金騎士である煌牙を褒める・・が煌牙が死ぬ事で黄金騎士の系譜はまた途絶えると告げ
煌牙の前に立ちはだかる。
「・・・・嘘だろ?何で鬼が・・いや魔戒騎士が鬼に・・」
煌牙の前に立ちはだかる黒い影はその影を解くとその正体を煌牙に見せる。だがその正体を見た煌牙は目を疑う程信じられない出来事に
動揺を隠せずにいた。
影の正体、鬼が影を解くとその姿は鬼の姿であるものの鬼が着ている物は紛れもなく魔戒騎士と同じ魔法衣、そして手にしているのは魔戒騎士の象徴でもある魔戒剣、守りし者である魔戒騎士が鬼へと堕ちた
その事実を目の当たりにした煌牙はその現実についていけずに、呼吸を乱してしまう。
「この程度で呼吸を乱すとはな、鬼狩りとしても魔戒騎士としてもまだまだだな。だからこそお前はここで死ぬ・・じゃあな」
魔戒騎士の鬼は煌牙は未熟と告げると、魔戒剣を煌牙に向けて突き刺す・・・がその剣が煌牙に届く事は無かった。
「はぁ〜やっぱりやめた、今のお前殺しても満足出来ね〜し、戦っても滾らねぇ、所詮お前は牙狼になれただけの未熟者、かつての大牙のような魔戒騎士には程遠い、お前じゃ誰も守れねぇよ」
魔戒騎士の鬼は自身の欲望を満たせない事から煌牙に手をかけることをやめ、煌牙が先代牙狼とは程遠く誰も守れないと指摘する。
「そうだな・・・俺は牙狼になれただけの未熟者だ、大牙さんにも及ばないし牙の真髄にも至ってない、だけどそれでも誰かを守りたい
俺は死ぬつもりもないし、系譜も途絶えさせない」
「フハッ!挑発したんだが、お前冷静だな」
「俺が弱いって事は自分でも嫌って程分かるよ」
「へぇ〜次会う時が楽しみだな、せいぜい楽しませてくれよ黄金騎士さんよ・・俺の名は斬吼狼、お前は?」
「四ノ宮煌牙」
「煌牙か・・じゃあな」
斬吼狼と名乗る鬼は影を纏うと、夜の闇に溶けるように消え去り
その場に煌牙一人が残される。
「あいつの言う通り俺はまだ弱い・・牙狼になれただけか〜痛いところ突いてくるなあいつ、斬吼狼って言ってたっけ?上弦の弐が言ってた奴ってあいつの事か・・でも最初から敵意は感じなかった、魔戒騎士の鬼、大牙さんも師匠も何も言ってなかったけど」
「花蓮はともかく大牙も知らない事だからな、奴は昔死んだと思っていたがまさか鬼として生きていたとはな、俺様も驚いた」
「ザルバ何が知っているのか?」
「ああ、奴は400年前大牙と共に飛ばされた魔戒騎士だ・・・あのババア何か噛んでやがるな。煌牙、朔弥の所に向かうぞ」
「・・・・え〜〜、俺あの人苦手なんだけど?」
「奴は斬吼狼の真相を知っている筈だ、寧ろ関係している」
「はいはい分かりましたよ、行きます行きます。その前にあの少年の所に向かうからな」
煌牙は斬吼狼から言われた事を噛み締めながら、斬吼狼が何者なのか考えていた。二年前上弦の弐から告げられた斬吼狼という名、その事から斬吼狼は無惨の配下或いは協力者だと考えるのが妥当なのだが
斬吼狼から敵意が感じなかった為、不思議に思っていた。
鬼ではあるが魔戒騎士でもある斬吼狼、師匠の花蓮や先代牙狼の大牙からもそのような話は聞いた事がない為、わからずにいたがザルバが斬吼狼が鬼となる前の事を知っていると煌牙に告げるも、斬吼狼の背後に煌牙やザルバの知り合いである朔弥という、ザルバ曰くババアがいる事を察し煌牙に朔弥の元に向かう事を告げる。
煌牙は朔弥という人が苦手らしく行くのを躊躇うがザルバから斬吼狼に関係していると言われ、半分ヤケになりながら行く事を決めた。
朔弥の元に向かうと決めたがその前に当初の目的、少年達を助ける
その事をザルバに話すと、煌牙は再び走り出し少年達の元に向かう。
「新しい牙狼はどうだった?斬吼狼ちゃん♪」
「あいつはまだまだだな、だがいつか大牙をも超える牙狼になるそんな気がする・・てか斬吼狼ちゃんって呼び方やめろよ朔弥」
「だよねだよね♪あの子眼がキラキラって♪可愛いんだから〜♪」
「煌牙って言ってたな・・こいつに気に入られて大変だな」
「そ・れ・よ・り〜無惨ちゃんの情報は?斬吼狼ちゃんプリーズプリーズ♪」
「ウゼー・・無惨は牙狼が再び脅威になる事を恐れてるぞ、俺に討伐命令しやがったからな、無惨が呼び出す度に呪いかけ直すの面倒なんだがな」
「うんうん♪新しい魔導具作ったからさ〜試してみてよ♪その名も愛しの無惨様♪イェイ♪」
「お前ふざけてるだろ?」
「またまた〜♪説明するね♪それ付けてたら思考が無惨様万歳、無惨様フォーエバー♪って無惨ちゃんに読み取られるから♪居場所もどっか適当に点々と♪」
「・・ないよりマシか、不本意だがな!」
「斬吼狼ちゃん?煌牙ちゃん真髄に至るかな?」
「さあな、アイツ次第だろ?まあその為に俺がいるんだがな」
「うん、斬吼狼ちゃんも煌牙ちゃんと一緒に月を・・ううん黒死牟をやっつけてね?」
お互いに自己紹介はしてないけど、ようやく竈門兄妹と主人公が会話する所までいけた(泣)