ーーカァァァァ!伝令!伝令!牙柱四ノ宮煌牙ァ!隊士栗花落カナヲォ!鬼ト交戦中
柱ハ至急応援ニ向カエェェ!鬼ハ十二鬼月、上弦ノ壱ノ可能性アリ!至急四ノ宮邸ヘ向カエェェーー
鎹鴉が柱達に応援要請を出したその夜!煌牙は命を、そして牙狼の称号を失った
時は遡り三日前〜
煌牙の騒動から数日が経ち炭治郎達の怪我も癒えた事から機能回復訓練に実戦形式の訓練を加え、炭治郎達は煌牙と対峙していた。
「今日から実戦を模した訓練を始めるぞ、機能回復訓練で身体能力は戻ったとしてもここ数ヶ月実戦から遠退いてたからな、鈍った勘を取り戻すんだ」
煌牙はそう言いながら木刀を肩に担ぎ炭治郎達を見渡す
「煌牙さんよろしくお願いします‼︎」
「柱と戦うのぉ〜⁈死んだ俺死んだわ、死んだからもう休ませて」
「よっしゃぁ‼︎俺が真の山の王だって事を証明してやるからなぁ!」
ヤル気を見せ気合を入れる炭治郎と伊之助に対し既に戦意喪失している善逸、煌牙はそんな善逸を一番手に指名し善逸は悲鳴を上げながら逃げようとする。
これじゃ訓練にならないと見兼ねた瑠花は善逸の手を握り笑顔で語る。
「善逸さんのカッコイイ所見てみたいです、頑張ってください」
瑠花のお膳立てに興奮してヤル気になった善逸は勢いのまま煌牙へと突っ込んでいく。
「うん、ヤル気になって結構結構、んじゃやりますか」
煌牙は突っ込んでくる善逸に戦闘態勢に入った事を教える為に殺気を飛ばし木刀を構え出すが
「は?善逸⁈嘘だろ?」
煌牙の殺気に当てられ瞬時に気絶し倒れ込む善逸、まさかの出来事に動揺を隠せない煌牙だったが、その動揺はすぐに警戒へと切り替わる。
気絶した善逸から放たれる気配を感じ取った煌牙、立ち上がり居合の構えを取る善逸を見て煌牙は目を見開く。
(あの構えあの呼吸・・鳴柱の爺さん、良かったな)
蒸気が噴き出すような独特の呼吸音、構えから善逸が雷の呼吸の使い手だと悟り今は亡き鳴柱 桑島慈悟郎に想いを馳せる煌牙、そんな煌牙に向かい善逸は型を繰り出す。
ーー雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃ーー
神速の踏み込みから一瞬で煌牙に迫る善逸、木刀を振り煌牙に斬りかかるが煌牙は善逸の右手を抑え斬撃の初動を封じ込める。
「やっぱ霹靂一閃は速いな、木刀なのが惜しい」
霹靂一閃の速さに感嘆する煌牙はその分木刀なのが惜しいと告げる
本来の居合斬りならば鞘走りにより刀身を加速させるものだが鞘もない木刀による斬撃はその加速を得られない、それ故に煌牙に止められるのだが霹靂一閃の速度は凄まじく、それに対応出来る煌牙の身体能力は柱随一と呼ばれるにふさわしいものであった。
善逸を掴んでいた手を離すと煌牙はすかさず後退し善逸に対し構えを取り直す。
善逸もまた型を繰り出そうと居合の構えを取り始め、さっきと同じ型を使うのか?と煌牙は疑問になるも構えは崩さず善逸を見据える。
ーー雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃 六連ーー
神速の踏み込みを繰り返し煌牙を翻弄すべく動く善逸、霹靂一閃ならば
同じ型を使う煌牙は対応出来たのだが、六連全ての動きに対応するのは流石にキツいと即座に判断した煌牙は目を閉じて耳を澄まし善逸の音に耳を傾ける。
常人より動体視力が優れている煌牙でも全ての動きを捉える事が難しい六連だが目で見るのではなく音で聞き分ける事により翻弄される事なく
斬り込んでくる音を察知すると弍の型を駆使して善逸の木刀を弾き飛ばす。
時を同じくして善逸が目覚め、現状を見るや喚き声を上げ降参すると
煌牙も構えを解き善逸を誉め出す。
「善逸凄いな!霹靂一閃を六連か、鳴柱の爺さんも喜ぶぞ」
ー
「へ?六連?何それ?それより爺ちゃんの事知ってんの?」
「ああ俺の型にも霹靂一閃と同じ型があるんだ、昔それで世話になってな」
「ふーん」
煌牙と善逸はそう話すと、伊之助が鼻息を荒くしながら今か今かと待ち侘びていて今にも煌牙に突っかかりそうな態度を見せていた。
「オイ!紋逸いつまで話してんださっさと変わりやがれ!糞長羽織
は俺がぶった斬る」
「糞長羽織・・糞長羽織⁈ちょっと待て!俺は煌牙だ!変なあだ名付けるなよ」
伊之助にそう返すとちょっとイラッとした煌牙は大人気なく参の型を使い一気に伊之助の懐へと飛び込むと伊之助の木刀を弾き飛ばす。
「コイツめちゃくちゃ速え〜!それにこの威圧感、コイツは間違いなくヤバい奴だ」
「いいか伊之助!俺は煌牙!糞長羽織じゃないからな、ちゃんと覚えろよ」
「オーガだな!ちゃんと覚えたぜ」
「それ和訳すると鬼って意味なんだけど・・はぁ〜まぁいいや面倒だしそれで良いよ」
「オーガ!次はぜってぇ勝つからな!覚えとけよ」
「ああ、伊之助はもっと強くなれる次頑張ろうな」
大人気ない煌牙によってあっさりと終わってしまった伊之助との訓練、次は勝つと意気込む伊之助に煌牙は激励を送ると矛先を炭治郎へと向けるとようやく自分の番だと意気込み、元気よく煌牙の元に走ってくる炭治郎。
善逸、伊之助との訓練で初めて見た煌牙の実戦、まだほんの少ししか見れてないのだが自分とは明らかにかけ離れたその実力を目の当たりにした炭治郎は努力次第でここまで強くなれると煌牙と剣を交える事に胸を昂らせていた。
「炭治郎、俺を鬼だと思って全力でかかって来な。まぁオーガだし?」
「はい!」
「突っ込みは無しか・・まぁわかってたけどね、はは」
ちょっとした冗談をスルーされた煌牙、乾いた笑いを浮かべるが気を取り直し炭治郎に向き合う。
(これが煌牙さんの匂い対峙して分かる、あの時戦った下弦の鬼なんかよりも強い!でもあの場に現れた鬼はもっと・・いや今は煌牙さんとの戦いに集中しろ)
煌牙との戦いに集中する為考える事をやめた炭治郎はどうやって煌牙の間合いへと入ろうか思考を巡らせ、善逸や伊之助との戦いを振り返っていた。
善逸の霹靂一閃ならば瞬時に間合いに入る事は出来るがそこで抑えられ
伊之助のように一瞬で間合いを詰められる事もあると想定し炭治郎は参の型 流流舞いでうねる様に動きながら煌牙へと近付いて行く。
更にその流れから拾の型 生生流転へと切り替え回転による斬撃の強化を図りながら煌牙の間合いに入り込むと重みを増した一撃を煌牙目掛けて振り下ろす。
煌牙は炭治郎の動きを冷静に見極め、木刀を反転させると切っ先を地に擦り付けながら円を描き木刀を振り上げる。
ーー牙の呼吸 漆の型 荒狗鷲ーー
円回転により勢いをつけた斬撃は上昇気流を巻き起こしながら炭治郎の生生流転と激突する。
生生流転の威力を増した一撃ならば善逸のように止める事は出来ないだろうと炭治郎は考えていたが、煌牙が巻き起こした気流は炭治郎の勢いを削ぎ落とし回転により威力を増した一撃も減退する。
そんな炭治郎の一撃は、煌牙の斬撃を上回る事が出来ずに弾き飛ばされ
炭治郎は煌牙に降参を告げる。
「炭治郎、流流舞いから生生流転へと繋げる流れは良かったよ!」
「はい!それでも通じませんでしたけど、あれしかないと思いました」
「そこから更に滝壺へ繋げたらまだ威力上がったんじゃないか?」
「それだ!あの時も生生流転から円舞に繋げたんだ!煌牙さん次は同じようにいきませんよ」
「楽しみにしてるよ(円舞ってヒノカミ神楽の舞だよな?水の呼吸にそんな型無かったし)」
煌牙と炭治郎はそうやり取りすると炭治郎は何かを考えながら戻って行き、煌牙は一休みしようとするが既に準備万端とご機嫌な瑠花に手を引かれ再び木刀を握り直すと今度は瑠花との稽古に突入する。
「お兄!私の型ちゃんと見ててね!ちゃんと見てくれないと嫌だよ?」
「瑠花!兄ちゃん瑠花の型ちゃんと見てるから悲しそうな顔するなよ」
「うん!じゃあ行くよ」
瑠花はそう言うと、大きく息を吸い始め煌牙を一目見て笑うと、その場から消えるように動き出し煌牙の間合いへと一気に踏み込む。
ーー雲の呼吸 肆の型 流れ雲ーー
緩急を付けた独特の歩法で煌牙の間合いに入る瑠花は間合いに入った途端一瞬動きを止めると同時に軸足を交差させながら急激に横方向へと旋回して一気に煌牙の後ろへと回り込む。
ーー雲の呼吸 参の型 乱れ雲ーー
腕を鞭のようにしならせ不規則かつ変幻自在の斬撃を煌牙に放つ瑠花だったが、肆の型を防御に回した煌牙によってあと一歩届かず、木刀を弾かれて稽古は終わる
「うん、前より型の精度は上がってるぞ!動きがいまいち掴みにくい」
と煌牙は瑠花の型を評価するが瑠花は煌牙に届かなかったことを不満がり
「でも届かなかったじゃん!お兄とやるなら捌の型使わないと」
と瑠花が言うと煌牙は焦り気味に
「いやアレはマズイ、俺もヤバイ」
と煌牙は瑠花に話して最後の稽古相手、カナヲを呼び今まで以上に集中を高める
「カナヲ!本気で来い!」
煌牙はカナヲにそう言うと木刀を構えだしカナヲも煌牙を見て息を吸い集中を高めると
「よろしくお願いします」
カナヲはそう返すと煌牙に向かう事なくその場から動かず隙を見せない煌牙にどう打ち込もうか思案していたが煌牙の方からカナヲに迫り鋭い
一撃を叩き込む
カナヲは咄嗟に横へと飛び退き上段から叩き込まれる一撃を躱すとすぐ様反撃に出ようと体勢を整えるが、カナヲを追った煌牙の鋭い眼光に気圧され体を硬直させてしまう
(兄さんに近付けない!どうにか隙を作らないと)
隙を見せない煌牙の気迫に押され思考を巡らせるカナヲ、煌牙の隙を作る為にカナヲは型を繋ぎ攻撃の手を止めない手段を選ぶと花の呼吸を駆使して煌牙に連撃を叩き込んでいく
(連撃で俺の隙を狙うのは良い考えだけど)
カナヲの猛攻を飄々と躱し続けながら煌牙はカナヲの意図を褒めるが
そう簡単に隙は作らないといつでも反撃が出来るような体勢をとっていた
(カナヲは眼が良いからな〜・・・よし!アレ試してみるか)
動体視力に優れたカナヲを翻弄しようと考えた煌牙は自身が改良した型を使うべく大きく後退すると型を放つ構えをとりカナヲを見据えた
ーー牙の呼吸 参の型・改 閃空鳴御雷ーー
霹靂一閃と同じく神速の踏み込みでカナヲに迫る煌牙、カナヲも煌牙に反応して身を構えるが煌牙が眼前に近づいた途端、視界から煌牙が消えてしまう
(え⁈兄さんが消えた?どこにいったの?)
突如煌牙が消えたことで一瞬戸惑ってしまうカナヲだったが背後から感じる鋭い威圧感に反射的にその場から離れようとするカナヲだったが
時すでに遅し、カナヲの首筋には煌牙が突き付けた木刀が添えられおり
カナヲは降参を認めるが先程の出来事が理解出来ず煌牙に詰め寄る
「兄さん今の型は何?目の前から消えたと思ったらいつの間にか後ろにいて・・眼で追えなかった」
そんなカナヲの質問に煌牙は上手くいったと少しドヤ顔になりながら
先程使った型をカナヲに説明しだした
「えーとな、牙の呼吸参の型に瑠花の使う雲の呼吸肆の型を取り入れたんだよ。ほら善逸が六連使っただろ?あの技の応用みたいな?至近距離で小回りしたら簡単に背後取れるかなって」
そうカナヲに話す煌牙、いとも簡単に説明するが煌牙が使った参の型改は扱いが難しく常時使える型ではなかった、霹靂一閃同様爆発的な加速を生かして瞬時に敵を斬る参の型、唯一の欠点といえば直線的な動きしか出来ない事だったが何とか改良出来ないかと試行錯誤を重ねた末瑠花の使う歩法を合わせる事で煌牙独自の参の型が完成した
爆発的な加速の中一瞬踏み止まり瞬時に方向転換するとともに再加速それを瞬間的に繰り返す事で神速の移動速度を維持したまま緩急自在に動けるようになるが瞬間的な加速を無理矢理止め再加速を繰り返すこの型は身体能力の高い煌牙といえど負担も大きく使用頻度はそれほど多くはなかった
「兄さんのやってる事は凄いけど、凄すぎて逆にわからないよ」
「簡単に見切られたら使った意味ないからな、まあ鬼相手にどこまで通用するか分からないけど」
そう会話しながら実戦訓練を終えた煌牙は一休みすると再び実戦訓練を再開し全員満身創痍になるまで追い込むと今日はここまでと切り上げ場所を移しヒノカミ神楽の呼吸の訓練へと移っていった
「はぁ〜・・強いってわかってたけどいざ実戦で戦ってみたら俺達と全然違った」
「柱ってのは皆人間辞めてるんだよ‼︎なんなの⁈何であの後一人で訓練行くんだよ!馬鹿なの?」
「オーガのヤロー‼︎一人で強くなろうとしやがって!抜け駆けは許さねえぞ!」
「善逸さんお兄の事馬鹿って言うのやめて下さい!お兄は強くなる為の努力は惜しみませんから!」
「・・・兄さんは・・誰よりも強い・・だけど・・誰よりも弱い」
「カナヲ?」
「ううん、今のは気にしないで炭治郎・・私兄さんに用があるから行くね」
煌牙が去った後炭治郎達は煌牙について話していたがカナヲの放った意味深な言葉に炭治郎は疑問を持つがカナヲは何でもないと告げ煌牙の元へと走っていった
(ふぅ〜〜!呼吸も安定してきたけど常中となるとちょっとキツイな!
まだまだ鍛錬が足りないか・・にしてもヒノカミ神楽か〜単純に舞を舞う為だけにこの呼吸って必要なのか?牙の呼吸より負担もデカいし)
場所を移し一人でヒノカミ神楽の呼吸の訓練に没頭していた煌牙、呼吸の訓練もひと段落したしたところで大きく息を吐きながら思考を巡らせていく
そんな煌牙に近づいて来るカナヲ、煌牙に声をかけるが考え事に集中している煌牙にはカナヲの声が届かず、カナヲは何とか気付かせようと背後から煌牙を抱きしめ煌牙に囁き出した
「兄さんまた考え事してる、昔から一人で抱え込むの悪い癖だよ」
「カナヲ⁈どうしたんだ?ビックリするから後ろから抱きつくの辞めてほしいんだけど・・」
「嫌・・戦ってる時は触れる事出来ないけど、今ならこうして兄さんに触れられるから」
「お・・おぅ、まあいいや、俺に用があるんだろ?」
「ないよ、ただ兄さんと一緒にいたかっただけだから」
「ははは、カナヲは可愛いな」
「ふぇ⁈・・あ・・えと・・その言葉しのぶ姉さんに言ってあげたほうがいいと思う」
「しのぶに?・・・いや!なんか隠し事を疑われて自白剤盛られそうだから・・うん!やめとく」
「兄さん隠し事してるの?」
「どうだろうな?カナヲはどう思う?」
「兄さんは隠し事してる、いつも一人で背負い込むし・・兄さん私じゃ駄目?桜花さんみたいに私にも頼ってほしいよ」
「カナヲ・・約束したろ?二人で支え合おうって、だからさ俺が困ってた時はカナヲに助けてほしい、頼りにしてるよ」
「うん・・兄さんのそばにいるから、もう離れないから、ずっと一緒だからね」
「そうだな」
「ところで隠し事って何?」
「え?・・ないよ?」
「・・怪しい」
そんな会話をした後煌牙は再び呼吸の鍛錬をやり始めカナヲは煌牙を暖かく見守るのだった
そんな日々を過ごした煌牙達は三日後、花蓮に用があると告げ四ノ宮邸へと向かう
「しのぶ!前にも言ってたけど師匠に用があるからちょっと戻るわ」
「わかりました、煌牙さん気を付けて下さいね。ちゃんと帰ってくるんですよね?」
「俺の今帰る場所はここだろ?ちゃんと帰って来るよ」
「・・・約束ですよ」
「ああ!」
しのぶとそう交わした煌牙はカナヲと一緒に歩き出すと、慌てた様子で瑠花が追って来て一緒についていくと言うと煌牙にしがみ付き無理矢理付いて来るのだった
「お父さん、お母さんただいまぁ〜!」
「おやっさん、師匠ただいま帰りました」
「お邪魔します」
四ノ宮邸へと帰って来た煌牙達は帰ってすぐに泰造と花蓮の元に向かい戻って来た旨を伝えると泰造達は煌牙達に微笑みかけ話し出した
「やあ、三人共お帰り!煌牙は色々と大変だったね、瑠花も見ない間に少し変わったかな?カナヲちゃん久しぶりだね」
「カナヲちゃんゆっくりしていってね、瑠花は急に帰ってこなくなったからお母さん寂しかったわ、煌牙は・・知りたい事があるから帰ってきたという訳ね」
二人がそう話す間に煌牙達はソファーに腰掛け花蓮の話に続くよう話出した
「師匠!炭治郎達の事ありがとうございました!師匠が炭治郎達の為に命を賭けたのは俺が命を賭けたからだけじゃないですよね?あの時は分からなかったけど今なら分かります!炭治郎達が炭十郎さんの子供達だから!ですよね?」
「そう・・覚えていたのね、というより思い出したのかしら?そうね、私があの子達を助けたいと思ったのは煌牙だけが理由じゃないわ、煌牙の言う通りあの子達が炭十郎さんの子供だからよ!不思議な縁ね、炭十郎さんに助けられた煌牙が炭十郎さんの子供達を助ける・・きっと偶然じゃない気がするわ」
「炭治郎も同じような事言ってましたね・・それと師匠!おやっさん!ヒノカミ神楽ってご存知ですか?」
「知らないわ」
「僕も聞いた事ないな」
「ん〜やっぱり知らないかぁ〜」
「そのヒノカミ神楽がどうかしたのかい?」
「最近炭治郎にヒノカミ神楽を教わってるんですが、その呼吸が昔炭十郎さんから教えてもらった呼吸法で師匠達なら呼吸について何か知ってるんじゃないかって」
「そうね、今まで鬼殺隊が使っていた呼吸の中にヒノカミを連想する呼吸はなかったわ、炎の呼吸に近いようだけどおそらくは別の呼吸だと思うわ」
「花蓮!炎の呼吸は火の呼吸と呼んではならない!と聞いた事あるだろう?もしかするとだよ?ヒノカミ神楽の呼吸というのはそれに由来する可能性があるのかもしれない」
「それはつまり炎の呼吸より前に編み出された呼吸という事かしら?」
「確証はないよ、ヒノカミが火の神なのか日の神なのか分からないけど
もし炎の呼吸より先に編み出された呼吸であるならば炎の呼吸は火の呼吸とは呼べないだろうって思っただけだよ」
「おやっさん!それってもしかして・・」
「ああ!ヒノカミ神楽の呼吸は始まりの呼吸!全ての呼吸の原点かもしれない」
「始まりの呼吸・・呼吸の原点」
「黄金騎士牙狼、煌牙だけの呼吸はもしかするとその呼吸が関係してるかもしれないわね」
「俺も考えてました、牙の呼吸より負担の大きいこの呼吸を使いこなせれば俺は今よりも強くなれる!必ず俺だけの呼吸を見つけます」
煌牙、花蓮、泰造の三人は熱心に話をしている中カナヲや瑠花もその話に聞き入っていたが執事のゴンザがお茶と菓子を運んできたので皆んなで休憩を取ると煌牙達はそれぞれの自室に戻って行った
自室に戻り自分のベッドに座る煌牙とその隣に座るカナヲ、カナヲは先程の話で気になった事を煌牙に伝えた
「ねえ兄さん?炭治郎から教えてもらってるヒノカミ神楽、それが前に話してくれた真髄に至るって事なのかな?」
「う〜ん・・どうだろうな?仮にヒノカミ神楽の呼吸がそうだとしても多分それだけじゃないと思う」
「研ぎ澄まし襲し時月をも砕く真髄に至るだったよね、呼吸だけじゃ足りないって事?」
「まあ・・そんな気がしてな、そもそも呼吸を極めてないからそれ以前の話だけどな」
「うん、兄さん私に出来る事ってないかな?」
「そうだな〜次はヒノカミ神楽の呼吸を実戦訓練に取り入れたいしまた付き合ってくれよ」
「うん!私も頑張るからね!」
煌牙とカナヲの二人はそう話しながら次の訓練に向けての方針を決めると煌牙は一休みしたいとベッドに寝転び仮眠を取るとカナヲも煌牙に続くように仮眠を取り始め二人が起きたら辺りは既に夜になっていた
「うし、よく眠れたし俺は英霊の塔に行くけどカナヲはどうする?」
「私も兄さんについて行く」
寝起き直後、煌牙は英霊の塔に行くとカナヲに告げるとカナヲも煌牙について行くと言うと二人で四ノ宮邸の敷地の奥にそびえ立つ英霊の塔へと向かい出した
「兄さん・・敷地広すぎだよ、なんで敷地内に森があるの?」
「俺も思った、無駄に広いし敷地内に森がある意味が分からない」
英霊の塔へと向かう二人だったが、敷地面積が無駄に広く英霊の塔へと続く森に入っていったカナヲは煌牙に愚痴を零すが煌牙も同じ事を思ってたようで愚痴を零す
「そうよね無駄に広いのよねこの土地、私も同感だわ」
「師匠⁈」
「花蓮さん⁈」
煌牙達の会話に同意を示す花蓮だが突如現れた事により煌牙達は驚きを隠せないでいた
「師匠!来るなら来るで普通に歩いてきて下さいよ!術使って出てくるのは驚きますから」
「ふふ♪貴方は耳が良いから普通に現れたら面白くないじゃない」
「術の無駄遣い‼︎」
「兄さん・・花蓮さんも桜花さん達みたいに思考がヤバい人なの?」
「炭治郎もだけどカナヲって素直な反面、サラッと心を抉る一言言うよな?師匠落ち込んでるぞ?」
「え⁈あっ!その・・花蓮さんごめんなさい!」
「カナヲちゃん気にしないで、瑠花にもよく言われるのよ」
「お母さんとお姉は色々と残念って言われてますね!ってそれより師匠はどうしてここに?」
「煌牙蝶屋敷にいる間牙狼剣の浄化はしてないでしょ?貴方が英霊の塔へと向かうならついでに浄化もしちゃおうって」
「そういえば!師匠お願いします」
歩きながらそう話す煌牙達は森を抜けると開けた場所に辿り着く
英霊の塔が眼前に見え始めたところで煌牙と花蓮は歩みを止め周りの気配を感じ取りながら花蓮は煌牙に話しかける
「煌牙もういいんじゃないかしら?」
「そうですね・・・コソコソと隠れてないでさっさと出てこいよ‼︎」
煌牙がそう言うと後方の森から四つの人影が現れ、そのうちの一つが凄まじい速度で煌牙達に向かい飛び込んで来る
「まずはそこの女からだぁぁぁ‼︎」
そう言いながら花蓮に突っ込んで来る人影、花蓮を殺すべく迫るが花蓮は慌てる事なく日輪刀を構え一閃
ーー牙の呼吸 弐の型 虚空の牙ーー
人影の正体、鬼が迫る瞬間神速の一閃を振るう花蓮、頸と胴体が別れ視界が傾く鬼は何が起きたのか理解出来ない顔になり叫び出した
「女!何をした?何で俺の体がそこにあるんだ!」
「あら?貴方はもう頸を斬られたのよ?分からなかったかしら?」
「馬鹿な‼︎十二鬼月であるこの俺が!」
十二鬼月下弦の参病葉は未だ理解出来ないまま徐々に灰になりながらそう叫ぶ
「引退したとはいえ元柱よ?下弦の鬼相手に遅れをとるわけにはいかないわ」
花蓮はそう言いながら日輪刀を鞘に収めると消えゆく病葉から視線を外し煌牙に視線を移すと煌牙は既に臨戦態勢に入っており煌牙から放たれる鋭い気配を感じると残りの鬼は煌牙に任せ鎹鴉を飛ばす
「そんな⁈下弦の参がやられた!」
下弦の参病葉があっさりと頸を斬られた事に驚愕する下弦の陸釜鵺
その横で下弦の肆零余子が震え出し逃げたい衝動に駆られていた
「ぁ・・そんな・・・あの男!黄金の鎧を纏う柱・・この男を殺さないと私達はあの御方に始末される・・でもあの化け物には勝てない!殺される‼︎」
目の前にいる柱、煌牙を殺さないと鬼無辻に始末される、だが煌牙には勝てないと取り乱す零余子は涙を流し死を覚悟していた
「落ち着くんだ下弦の肆!私達は下弦とはいえ十二鬼月、その十二鬼月が三人もいるんだ!あの御方にもう一度認めてもらう為に今こそ力を合わせるべきだ」
そう言いながら自分を鼓舞する下弦の弐轆轤は零余子と釜鵺と共に煌牙を始末しようとするがその瞬間
ーー牙の呼吸 玖の型 大蛇薙ーー
渾身の一振りで周囲の大地を抉り斬りながら迫る巨大な斬撃刃が轆轤の体の大半を抉り、抵抗する間も無く倒れ伏す轆轤
「ありえん!私は十二鬼月だぞ!」
体の大半を失い取り乱す轆轤だったが失われた肉体も再生し始め立ち上がろうとしたが
「それは良かったな!」
轆轤に対しそう言うと煌牙は居合の構えを取り大地を力強く踏み抜く
ーー牙の呼吸 参の型 閃空の牙ーー
一瞬のすれ違い様に日輪刀を一閃した煌牙によって轆轤は頸を刎ね飛ばされ、宙を舞う轆轤の頭部が零余子の目の前に転げ落ちる
「こんな・・こんなはずじゃなかった!下弦の鬼全員でたった一人の柱を殺すだけのはずだったのに・・何でこんな事に」
下弦の鬼達が鬼無辻から言われたのは黄金騎士牙狼の称号を持つ柱を殺す事、鬼無辻の命により別行動している下弦の壱、死亡した下弦の伍を除く下弦の鬼全員でかかれば柱といえど殺せるだろうと踏んでいた
だが焦るあまり先走ってしまった病葉が元柱にあっさりと殺されてしまい有利だと思っていた状況が傾き始め下弦の弐轆轤が下弦を纏めようとするがそんな轆轤も標的である柱にあっさりと殺されもうどうする事も出来ないと諦め地に膝をつく
「どうせ俺達は死ぬんだ!せめてあの女だけでも殺してやる」
下弦とはいえ自分より上の階級の鬼があっさりと殺され自暴自棄になった釜鵺はせめてカナヲだけでも殺そうと叫び出すがその直後体を硬直させ冷や汗を流しながら震え出した
「なぁ?誰を殺すんだ?もう一回言ってみろ」
「ぁ・・ぁ・・・」
煌牙から明確な殺意を向けられた釜鵺、尋常ならざるその気配に身が竦みまともに喋る事も出来ない釜鵺は煌牙を凝視する事しか出来なかった
(なんなんだコイツは⁈おかしい、明らかに普通じゃない!まるであの方に睨まれたような)
釜鵺が畏怖する存在、鬼無辻無惨に睨まれたような感覚に陥る釜鵺
それ程までの殺気を放つ煌牙は冷徹な眼差しを釜鵺に向け慈悲など与えるつもりはないといわんばかりに、ただ淡々と日輪刀を振るい釜鵺の頸を斬り落とした
全く動く気配を見せず人形の首を斬るかのような一連の流れ、下弦の陸とはいえ十二鬼月を葬った事で鬼狩りとして喜ばしい事だがカナヲは十二鬼月を斬った煌牙を見て不安に駆られていた
(ずっと考えないようにしてた・・兄さんに再会出来たのが嬉しくて・・言えば兄さんが消えてしまいそうで怖くて言えなかった・・兄さんは昔より凄く強くなった!だけど心は弱いまま!兄さんは今でもあの時の事を引きずってる、だから自分を追い込むように強くなろうとする・・兄さんは信頼してるって言ってくれたけど私に弱音は吐かない・・心はどこまでも強くなれる!あれは私だけじゃなく自分にも言い聞かせてたんだよね?あの人達から守れなかった弟や妹達の事、自分の弱さに押し潰されないよう必死に守ってたんだよね?・・・・小さな時から兄さんを見てた、兄さんだけをずっと見てたから・・苦しいよ!)
カナヲが心の中で思っていた心情、釜鵺が煌牙の殺気は普通じゃないと感じた事は間違いではなかった
鬼に家族を殺された者が鬼を恨み憎しみ怒り復讐する為、仇を討つ為に鬼狩りになる。それならば強い殺意を抱くのは分かる。
だが煌牙は鬼に家族を殺された訳ではないし鬼に恨みや憎しみを持って戦っている訳ではない、それを知っているカナヲはだからこそ煌牙の殺気は異常だと感じ心配していた
煌牙を失い心が壊れたカナヲと同様煌牙もまた心が壊れていた
両親に弟や妹を殺された!自分が弱いから守れなかった!その重圧が煌牙の心には常に重くのし掛かっていた、普段の煌牙から感じ取れないその重圧は四ノ宮家の者では気付かないが小さな頃から煌牙を見てたカナヲだからこそ気付けた違和感だった
大切な者を失う恐怖、それを奪う者は容赦しない!
それこそが心の壊れた煌牙の放つ異常な殺気の正体だった。
「残る鬼はお前だけだ!下弦の肆!命乞いはするなよ?散々人を喰い散らかしてきたお前らが自分の命は惜しいとか言う資格はないからな!」
恐怖に怯え座り込む零余子に冷徹な眼差しを向ける煌牙、煌牙の放った慈悲のない言葉に絶望し涙を流す零余子
(怖い!怖い‼︎あの御方よりも目の前の柱の方が怖い‼︎逃げきれない‼︎逃げてもあの御方に始末される!嫌!死にたくない!死にたくない!)
そんな零余子などお構いなしに日輪刀を構え今にも斬りかかろうとする煌牙、だがそんな煌牙を花蓮は引き止めた
「煌牙!待ちなさい!」
引き止めた花蓮に何の用だと睨む煌牙、花蓮は煌牙のそばに寄ると煌牙を諭すように話しかける
「煌牙何があったか分からないけど憎しみに囚われちゃいけないわ、貴方は魔戒騎士、守りし者それを忘れないで」
それを聞いた煌牙は目を瞑ると深呼吸し昂っていた気持ちを落ち着ける
「師匠ありがとうございます」
花蓮に一言礼を言うと煌牙は零余子に向き直し話しかけた
「下弦の肆!今まで人の命を奪ってきたお前が命乞いをしても俺は助ける気はない!命を奪うってのは逆に自分も命を奪われる覚悟がないといけないんだ!」
「・・・はい・・・貴方の言う通りです・・」
「もし俺達がお前を見逃せばお前はまた人を喰う、だからこそ俺達はこれ以上命を奪われない為に鬼を斬る!分かるよな?」
「はい!もちろんです‼︎・・あ!いえ!私はもう二度と人を襲いません!誓います‼︎絶対に人を襲いません‼︎」
「いや、そうじゃなくてだな!・・・そもそも十二鬼月は信用出来ない」
「それはごもっともです!ですが!私達下弦はあの御方に用済みとされ解体されかけたんです」
「それで?」
「どうせ始末するのなら最後に貴方を殺してこいと言われました!返り討ちにあえば手間が省ける、仮に殺す事が出来れば再び下弦として認めると言われ・・・申し訳ございません‼︎申し訳ございません‼︎」
煌牙と零余子はそう会話すると煌牙は再び眼を閉じ深呼吸して零余子の頭を触り始めた
「なるほどね、どうやら本当らしいな!・・・下弦の肆!お前名前は?」
「へ⁈・・・零余子!零余子と言います!」
「零余子か・・お前これから人の為に生きてこれまでの罪を償うって約束出来るか?」
「・・・助けてくださるのですか?・・・許してくださるのですか?」
「許すのは俺じゃないし、これからのお前次第だろ?それにムカつくんだよ‼︎テメェの都合で鬼に変え、テメェの都合で始末するなんてな!
鬼無辻の思い通りになんかさせたくない結果俺はお前を斬らない!別に助けた訳じゃない」
「・・・ありがとうございます!ありがとうございます‼︎私は貴方様に忠誠を誓います‼︎」
「胡散臭っ!別に信用した訳じゃないからな!」
零余子の頭に触れ記憶を読み取った煌牙は零余子とそう会話すると花蓮とカナヲに振り返り
「これで良かったんだよな?」
「そうね、鬼にもやり直せる機会があるのなら」
「カナエ姉さん、しのぶ姉さんの夢の実現の一歩かな?」
煌牙の問いかけに頷く二人、カナヲは煌牙が落ち着いた事に安心したが
一つ疑問が浮かび上がった
(でもどうして?あれ程殺意を振り撒いていた兄さんが落ち着いた
魔戒騎士としての、守りし者としての誇り?でももしその誇りさえも捨ててしまうような事があれば・・その時兄さんは・・)
カナヲがそう考えていると背後から下弦とは比べ物にならない重厚な威圧感が押し寄せ煌牙達は戦慄する
「やはり下弦如きでは手も足も出ないか」
そう聞こえると煌牙達は日輪刀を構えながら振り返るが誰もいない事に気付く
「下弦の肆、まさかあの御方を裏切る訳じゃあるまいな?」
振り返った煌牙達の背後からまたもや声が聞こえ再び振り返ると
そこには侍のような出で立ちの六つ目の鬼が零余子を睨みながら威圧していた
「ぁ・・・ぁ・・・そんな・・・何で上弦の壱がここに」
十二鬼月最強の鬼、上弦の壱黒死牟に睨まれた零余子は震えながら何故上弦の壱がここにいるのか問うと黒死牟は
「わからぬか?下弦の肆!貴様ら下弦は最初からただの捨て駒、あの方は私に黄金騎士を殺すよう命じられたのだ」
黒死牟は零余子にそう言うと煌牙達に視線を移し
「まさか鬼狩りが鬼を、それも十二鬼月を庇うとはな!」
黒死牟は呆れた眼差しを向けながらそう言うと花蓮が
「あの子は罪を償いやり直そうとしてるの!殺す必要なんてないわ」
花蓮が黒死牟にそう反論すると
「奴はあの方を裏切ったのだ!鬼が罪を償うなど笑止千万‼︎私が貴様らごと葬ってやろう!」
黒死牟がそう叫ぶと
ーー月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮ーー
血鬼術による斬月刃を伴う高速の横一閃が花蓮に襲いかかると咄嗟に後退し刀による裂傷を避けるが血鬼術による斬月刃が腹部を切り裂き跪いてしまう花蓮
「師匠‼︎」
そう叫びながら黒死牟を睨みつける煌牙、一度は落ち着いていた殺意が再び増幅し黒死牟へと斬りかかる
「ほう!その若さでよくここまで練り上げた、私を殺そうとするその殺意も今まで葬ってきた柱以上!だが!貴様の先代の黄金騎士には及ばん!」
煌牙の斬撃を受け止めた黒死牟はそう言うと刀を振り抜き煌牙を弾き飛ばす
「黒死牟ーー‼︎」
怒りで我を忘れ黒死牟の名を叫びながら再び斬りかかる煌牙
「怒りで己を見失うと攻撃が単調になるぞ」
そう言いながら黒死牟は再び型を放つ
ーー月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮ーー
ーー牙の呼吸 弐の型 虚空の牙ーー
黒死牟の型に対し煌牙も型を放つ事で黒死牟の斬撃を食い止める
「なるほど!刀を振り切らせぬ事で私の術を封じたか」
そう関心する黒死牟をよそに煌牙は視線を黒死牟から逸らさずカナヲに
「カナヲ‼︎師匠を連れてここから離れろ‼︎」
そうカナヲに言うがカナヲは首を縦に振らず
「でも!兄さんが」
煌牙を心配し離れる事を躊躇うカナヲだったが煌牙は黒死牟へと斬りかかりながら
「これは柱命令だ!カナヲ!師匠を助けてくれ!」
カナヲに花蓮を託し共に逃げてくれる事を願う煌牙は黒死牟をカナヲ達の元に行かせまいと足止めし一人留まる事を決意する
「私がこのまま見逃すと思うか?」
そう言うと黒死牟は鍔迫り合いのまま
ーー月の呼吸 伍の型 月魄災禍ーー
刀を振るう事なく無数の斬撃を発生させる黒死牟、直前に嫌な予感がした煌牙は瞬時に後退し斬撃を辛うじて躱すと
「厄介だなその斬撃!」
そう言うと煌牙は居合の構えと取り深く呼吸をする
ーー牙の呼吸 参の型 閃空の牙ーー
神速の踏み込みで黒死牟を一閃しようとするが
「お前の動きは全て視えている」
黒死牟はそう言いながら煌牙の斬撃を受け止め
ーー月の呼吸 弐の型 珠華ノ弄月ーー
刀を振り上げながら煌牙を弾き飛ばし煌牙へ三連の斬撃を放つ
足場のない煌牙は日輪刀を地面に突き刺し無理矢理着地すると体を捻りながら跳躍し斬撃による致命傷を避けるが月輪の斬撃まで躱し切れず至るところに裂傷を負ってしまう
「ホントに厄介だな!今までの鬼なんか比べ物にならない、これが上弦の壱」
黒死牟に対し決め手がない煌牙はそう呟きながら呼吸による止血をすると日輪刀を構え直す
「兄さん‼︎」
煌牙の名を呼びながらカナヲが並び立ちと日輪刀を構え黒死牟を見据える
「カナヲ!お前何で来たんだ‼︎俺は『兄さんを一人にさせない!もう離れないって決めたから!それに花蓮さんが兄さんを助けろって』」
「・・・ふぅ〜・・・零余子‼︎最初の人助けだ!師匠を連れてここから離れろ!お前なら出来るだろ?・・・俺はお前を信じる」
「・・・はい!やれます!必ず逃げ切ってみせます」
カナヲの決意と花蓮の願いを汲み取った煌牙は零余子に花蓮を連れて離れるよう促す、先程まで敵であった零余子に全幅の信頼は寄せていないがこの状況下で頼めるのは零余子だけである為悩みながらも託すしかなかった
「兄さん?」
「カナヲ、鴉を飛ばせ!」
「うん」
煌牙はカナヲに鎹鴉を飛ばさせ鬼殺隊本部に報告すると
「私は言った筈だ!貴様らを逃さんと」
黒死牟はそう言いながら
ーー月の呼吸 陸の型 常夜孤月・無間ーー
黒死牟が刀を一振りするだけで広範囲に縦横無尽かつ無数の斬撃が放たれる
ーー牙の呼吸 肆の型 空谷の跫音ーー
轟音が響きながら風が吹き荒れ煌牙が一転、瞬間的に放たれた斬撃を躱しきれないと判断した煌牙は致命傷を避けるべく肆の型を防御に回し
黒死牟の斬撃と撃ち合う
「兄さん⁈」
煌牙が防いだ事でカナヲに届く斬撃が減り辛うじて躱す事が出来たカナヲは煌牙を見て眼を見開く
致命傷を避けたとはいえ向かってくる無数の斬撃を全てを相殺する事は出来ず、避ければカナヲに斬撃が届くと踏んだ煌牙はその身に斬撃を受け血塗れになっていた
「カナヲ大丈夫だ!深い傷は負ってない」
煌牙の纏う魔法衣の強度、下に纏う隊服の強度が重なり比較的傷が浅い煌牙はそう言いながら深呼吸をすると
ーー牙の呼吸 陸の型 龍穿の咢ーー
ーー牙の呼吸 玖の型 大蛇薙ーー
高速の二連で生み出した真空刃を撃ち抜き巨大な竜巻を黒死牟にぶつける煌牙、竜巻に呑まれた黒死牟に追い討ちをかけるべく玖の型を放つと
一度後退し警戒しながら刀を降ろす
「カナヲ!まだ終わってない!集中を切らすなよ」
「分かってる」
煌牙の忠告に頷き警戒するカナヲ、煌牙は次の型を放つべく居合の構えを取りながら警戒を続ける
「良い技だ!流石は牙を冠する呼吸、故に惜しい!呼吸がお前に合えば私も少しは危うかっただろう」
竜巻が消えると黒死牟がそう言いながら姿を表す
竜巻と巨大な斬撃によって袴が破れ右腕と刀を消失した黒死牟は煌牙の技量を褒めるも牙の呼吸が煌牙に合ってない事を見抜きそう告げる
「しかし!たかが右腕と刀を奪った程度、私には何も支障はない!」
黒死牟はそう言いながら瞬時に右腕を再生させ刀も新たに精製させると
刀身を伸ばし七支刀のような形状に変化させる
「兄さん!」
「・・・・カナヲ・・・・黒死牟はここで終わらせる」
黒死牟から放たれる重厚な威圧感が増し思わず煌牙の名を呼ぶカナヲ
煌牙はそんな威圧感など最早どうでもいいと割り切りある決心をする
ーー月の呼吸 漆の型 厄鏡・月映えーー
黒死牟は刀を斜めに一閃すると先程より巨大化した複数の斬撃とうねる月輪の斬月刃が煌牙達に迫る
優れた動体視力でその斬撃を躱すカナヲと煌牙、瞬時に煌牙は日輪刀としまうと牙狼剣を取り出し抜刀、切っ先を頭上に掲げ召喚陣を描こうとする
ーー月の呼吸 玖の型 降り月・連面ーー
煌牙に向かって複雑な軌道の斬撃が無数降り注ぐ
ーー牙の呼吸 漆の型 荒狗鷲ー
それに対し煌牙は牙狼剣を巻き上げるように斬り上げ上昇気流を伴う斬撃で黒死牟の型を相殺する
「私が黄金の鎧の召喚を許すと思うか?私があの御方から言われたのは貴様の殺害!万が一等起こらぬよう黄金の鎧は纏わせん」
牙狼の召喚を阻む黒死牟はそう言うと煌牙は
「だったら止めてみろよ!」
そう挑発する煌牙は牙狼剣を鞘にしまうと居合の構えをとる
「先程の型か、その型は既に見切っている」
やるだけ無駄だと言いたげな黒死牟は刀を構え返り討ちにしようとするが
ーー牙の呼吸 参の型・改 閃空鳴御雷ーー
神速の踏み込みから強制的に方向転換、緩急をつけた歩法で一瞬で黒死牟の背後に回る煌牙に黒死牟も反応が遅れ振り向きざまに刀を振るい煌牙を斬ろうとするが
ーー牙の呼吸 壱の型 断空の牙ーー
参の型から壱の型に切り替え跳躍しながら黒死牟の斬撃を躱すと空中で召喚陣を描き牙狼の鎧を纏う煌牙
牙狼の鎧を召喚された事に内心苛立つ黒死牟は牙狼を早々に始末すべく型を放つ
ーー月の呼吸 捌の型 月龍輪尾ーー
巨大化した横薙ぎの一閃が牙狼に迫るが牙狼は牙狼剣を構えその斬撃を受け止める
「黒死牟!俺の刃がお前に届かなくても!俺は必ずお前を殺す!例え俺の命が尽きようとも‼︎」
そう言いながら牙狼は牙狼剣を振り抜き黒死牟を弾き飛ばすと
ーー牙の呼吸 玖の型 大蛇薙ーー
煌牙に宿る黒死牟への怒りが反応し牙狼が烈火炎装を纏うと魔導火を纏った大蛇薙が黒死牟へと迫る
ーー月の呼吸 拾の型 穿面斬・蘿月ーー
回転鋸のような斬撃を複数横並びに放つ黒死牟、牙狼の放つ大蛇薙とぶつかり合い対消滅すると
ーー花の呼吸 伍の型 徒の芍薬ーー
黒死牟の型が消滅した隙を狙ってカナヲが高速の九連撃を放ち黒死牟に斬りかかる
ーー牙の呼吸 捌の型 六根清浄・舞天狼ーー
牙狼もカナヲに続くように流麗な軌道を描きながら高速の六連撃を放ち黒死牟に斬りかかる
ーー月の呼吸 拾陸の型 月虹・片割れ月ーー
牙狼とカナヲに向けて上空から三日月のような斬撃を振り降ろす黒死牟
魔導火を纏った牙狼剣で斬撃を受け止め斬り上げて消し飛ばした牙狼
回避が間に合わず肩口から裂傷を負い倒れ込むカナヲ
「カナヲ⁈・・・カナヲ‼︎」
カナヲが負傷した事で即座に近寄り心配する牙狼にカナヲは
「兄さん、私は大丈夫だから!そんなに深くないから心配しないで」
痛みを堪え無理して気丈に振る舞うカナヲ、そんなカナヲを見て牙狼は
「・・・・・・殺してやる・・・俺の家族を奪う奴を・・・殺す・・殺す・・・」
その声はあまりに静か、だが激しい憎悪が溢れる牙狼の左半身に亀裂が生じ亀裂から煌牙の憎悪が生み出した炎が噴き出す
怒りに満ちた煌牙に反応し橙色に輝く牙狼の瞳が深紅に染まりその視線が黒死牟へと向けられる
「何だ⁈あの姿は!暁大牙の時でさえあのような姿は見た事がない!
それにこの身が震えそうな程の殺意!一体奴に何が起こったのだ!」
牙狼のあまりの変わりように驚く黒死牟、煌牙から放たれる殺意に気圧され思わず震えそうになる黒死牟はこれ以上牙狼を野放しにすると危険だと判断し牙狼を殺すべく型を放つ
ーー月の呼吸 拾肆の型 兇変・天満繊月ーー
巨大かつ無数の斬撃と月輪の斬月刃が広範囲に放たれ牙狼とカナヲに襲いかかる
ーー牙の呼吸 拾の型 星牙一天ーー
一瞬のうちに無数の斬撃を広範囲に放ち黒死牟の斬撃を撃ち消す牙狼
煌牙は無意識のうちに牙の呼吸からヒノカミ神楽の呼吸に切り替えると
ーーヒノカミ神楽 日暈の龍・頭舞いーー
炭治郎から教わったヒノカミ神楽の演舞を無意識のうちに模倣する牙狼
ーーヒノカミ神楽 斜陽転身ーー
続けてヒノカミ神楽の演舞を模倣する牙狼、急激な呼吸の変化と型に黒死牟も反応が鈍り牙狼剣による裂傷を負わされる
「まさか奴もあの呼吸を使えるというのか忌々しい‼︎縁壱!暁大牙‼︎」
牙狼がヒノカミ神楽の呼吸使うのを知り苛立ちを隠せない黒死牟
そんな黒死牟など気にも止めず再度攻撃を仕掛けようとする牙狼
だが!牙狼の動きが急激に止まり微動だにしなくなる
「奴の動きが止まった・・奴は何を考えている」
牙狼の不可解な行動を理解出来ない黒死牟はそう言うが牙狼は未だに動かない
(殺す・・殺す・・黒死牟を殺す・・・)
(そうだ!奴を殺す為に力に身を委ねろ!家族を!お前の大切な者を奪う奴らを皆殺しにするんだ!お前の中の炎を燃やせ‼︎)
自らの怒りに呑まれた煌牙、そんな煌牙の心に話しかけてくる声は力に身を委ねろと煌牙に言うと薄ら笑いをしながら煌牙の中へと戻っていった
「煌牙‼︎早く鎧を解除しろ!このままじゃ鎧に魂を喰われるぞ!」
この時既に鎧を纏う制限時間は過ぎており煌牙は牙狼の制御が出来なくなっていた、怒りに呑まれた煌牙はザルバの警告を無視し鎧の解除を解かないでいると
ーードクン‼︎ーードクン‼︎ーー
牙狼から心音のような音が響くと牙狼の鎧が肥大化し始めやがて本能のままに暴れ狂う巨大な金色の狼のような怪物へと変貌していく
心滅獣身牙狼 煌牙の制御出来る限界を超え鎧が煌牙を蝕みながら本能の赴くままに暴れ狂う破壊の化身、目に見えるもの全てを敵とみなす牙狼は黒死牟を睨み突進
ーー月の呼吸 捌の型 月龍輪尾ーー
迫り来る牙狼を斬り払う黒死牟、直撃を受け僅かに怯むもその鎧に傷を付ける事は叶わず突進する牙狼の鋭利な爪による一撃を受けてしまう黒死牟
思いの外深い傷を負った黒死牟は跪き牙狼を見上げると牙狼はカナヲの方へと向かって突進しだす
「グォォォォ」
咆哮を上げならカナヲに迫る牙狼に黒死牟は
「あの娘は奴の・・奴は妹にまで手をかけるのか」
敵味方見境なく暴れ狂う牙狼に困惑を隠しきれない黒死牟はそう呟くが無情にもその凶刃はカナヲへと振り降ろされようとしていた
「お兄!カナヲさん無事でいて!」
焦りながらそう呟く瑠花、鎹鴉からの伝令を聞いた瑠花は現場に最も近い事から真っ先に煌牙達の元へと向かっていた
本来柱への応援要請だったが煌牙達が危険な為、いてもたってもいられずにいた
「辰巳お兄や春お姉が居てくれたら心強いけど」
そう呟く瑠花、辰巳と春の二人は任務で不在の為今はいないが階級が高い二人がいたら心強いと思いながら森の中を駆け抜けていた
「わあ!黒死牟殿が面白そうな事やってるから混ぜてもらおうと思ってたけどこんな可愛い娘が目の前にいるならこっちの方が楽しそうだね、ねえ?君俺と遊ばない?」
瑠花の目の前に現れた鬼、上弦の弐童磨は瑠花を見つめてほくそ笑む
上弦の壱と上弦の壱、暴走する煌牙、混迷する戦況は更に加速していくのだった。
零余子ちゃんは可愛い